院生談話会(2015年度)

院生談話会(言わば,院生の院生による院生のための談話会)を開催することになりました。
通常の談話会はレベルが高く,また,先生がいると萎縮して自由に質問ができないのではないかと思い, 出席者は院生のみにしました。 これを通して,院生同士の分野を越えた交流を深めていきたいと思います。

院生談話会運営委員:
D1 塚本 真由 (m13sa30m19[AT]st.osaka-cu.ac.jp)
D1 橋詰 雅斗 (m.hashizume15[AT]gmail.com)
日時 2月24日(水)16:00~18:00
講演者(所属) 可香谷 隆(東京工業大学 理工学研究科)
タイトル 様々な外力項付き曲率流と接触角
場所 中講究室 (F415)
アブストラクト 平面曲線の動きを記述する方程式の一つとして曲率流方程式が知られており、曲線の長さの勾配流として導出されるため、曲線短縮方程式とも呼ばれている。 本講演では単純閉曲線に対する曲線短縮方程式の特徴や、 外力項によってその性質がどのように変化するのかを解説する。 さらに、ある領域上の動く曲線に対して接触角の境界条件を与えた場合、エネルギー構造や曲線の挙動がどのように変化するかについても解説する。
日時 12月25日(金) 10:30-12:00,14:00-15:30, 16:00-17:30
12月26日(土) 10:30-12:00, 14:00-15:30, 16:00-17:30
講演者(所属) 和田 堅太郎(信州大学理学部数理・自然情報科学科)
タイトル q-Schur 代数の表現論
場所 大講究室(E408)
アブストラクト q-Schur代数は対称群に付随したIwahori-Hecke代数のpermutation module達の直和の自己準同型環として定義される有限次元代数であり,準遺伝(quasi- hereditary)代数としての構造を持つ。q-Schur代数の有限次元 表現のなす圏からHecke代数の有限次元表現のなす圏へSchur関手と呼ばれる射影対象上fully faithfulである完全関手が構成でき,この関手を通じて両者の間の密接 な関係を調べることができる。一方で,q-Schur代数は, 一般線形リー代数に付随した量子群の自然表現のテンソル積表現を用いた,量子群とHecke代数の間のSchur-Weyl双対(一般線形群と対称群の間のSchur-Weyl双対のq-類似)を通じて,量子群の商代数として実現できる ことが知られている。量子群サイドから見れば,q-Schur代数は量子群の"多項式表現"のなす圏を与える有限次元代数となる。今回は,量子群サイドから,q-Schur代数の構造や表現論を解説する予定です。主に大学院生や 非専門家を対象として,予備知識を特に仮定せず,量子群の表現論の基本的なことからお話しする予定 です。
日時 11月26日(木) 16:00~18:00
講演者(所属) 三浦 達哉(東京大学大学院 数理科学研究科 後期博士課程1年)
タイトル On singularities of the distance function to hypersurfaces
場所 中講究室(F415)
アブストラクト ユークリッド空間内の超曲面への距離関数は,諸分野において基本的な道具として随所に現れるものである.しかしながら,その一般的な性質を捉えることは意外にも簡単でなく,特に曲面の複雑さに呼応して状況は複雑に なる.本講演では距離関数の特異性に着目し,その性質を能う限り多くの例や関連結果を交えて紹介する.
日時 10月15日(木)15:15~16:45, 17:00~18:30
講演者(所属) 木村 嘉之 (神戸大学理学研究科)
タイトル クラスター代数と箙の表現
場所 中講究室(F415)
アブストラクト クラスター代数とは、クラスター変異とよばれる双有理変換を用いて再帰的に定義されるクラスター変数と呼ばれる変数を生成元とする有理関数体の部分環であり、Fomin-Zelevinskyによって、2001年に導入された。クラスター 代数は、さまざまな分野と密接な関連をもち、活発に研究されている。講演では、クラスター代数と箙の表現のモジュライ空間との関係について解説する。
日時 10月15日(木) 10:30~12:00、13:30~15:00
講演者(所属) 大矢 浩徳 (東京大学数理科学研究科)
タイトル Relations between quantum groups and quivers via Hall algebras
場所 中講究室(F415)
アブストラクト Drinfeld-Jimboの量子群は対称化可能Kac-Moody Lie代数の普遍包絡環 のq-変形とみなされるHopf代数である. 特に対称Kac-Moody Lie代数にはDynkin 図と呼ばれる(無向)グラフが1対1に対応するが, そのグラフに 向きをつけて得られる箙の表現論が量子群の研究においてはしばしば用いられる. 本講演ではその 初期の一例としてRingel, Lusztigの結果, すなわち量子群(の半分)が有限対称 型のDynkin箙の表現の圏に対応する Ringel-Hall代数によって構成され, 量子群 のPBW基底がある意味で自然に現れる様子やさらにそれが量子群の標準基底の構 成につながる部分について解説する. さらに時間があれば量子群とHall代数に関連する最近の 話題についても解説を行いたい.
日時 7月21日(火) 16:30~18:00
講演者(所属) 田中 清喜 (OCAMI研究所員)
タイトル ベルグマン空間について
場所 中講究室(F415)
アブストラクト 単位円板上の2乗可積分な正則関数全体のなす空間はベルグマン空間と呼ばれ、再生核をもつヒルベルト空間として様々な設 定下で研究が進められている。 本講演ではベルグマン空間について基本的な性質を述べ、 いくつかの例を紹介する 。
日時 6月25日(木) 10:00-12:00
講演者(所属) 筧 直太(大阪大学大学院 情報科学研究科情報基礎数学専攻 前期博士課程2年)
タイトル Cyclotomic quiver Hecke 環について
場所 中講究室 (F415)
アブストラクト Cyclotomic quiver Hecke 環とは元々、A型岩掘Hecke環の組成列に現れる既約表現について調べるため、ある affine Lie 環の highest weight 表現の圏化によって得られた代数である。 この代数は一般の量子群について の圏化として得られるKLR代数に一致することが知られている。 本公演では Cyclotomic quiver Hecke 環が具体的にどのような代数であるのか紹介する。​
日時 5月28日 (木) 16:00~18:00
講演者(所属) 橋本 要 (OCAMI研究所員)
タイトル Calibrated 幾何入門
場所 中講究室(F415)
アブストラクト キャリブレーションは部分多様体の体積最小性を示すのに有効な道具です. 例えば, Calabi-Yau多様体のキャリブレート部分多様体は特殊ラグランジュ部分多様体と呼ばれており, ミラー対称性に関連して注目され, 活発に 研究がおこなわれています. 本講演では, このキャリブレート部分多様体についての超入門的なお話をしたいと思います.
日時 4月22日 (水) 15:00 ~16:30, 16:45 ~18:15
講演者(所属) 源 泰幸 (大阪府立大学)
タイトル 非可換有理関数体について
場所 大講究室(E408)
アブストラクト 可換な変数の多項式や有理関数(=有理式)は皆さん小学校以来おなじみで、代数が専門でなくてもこれらが数学において基本的な対象である事を疑う人はいないでしょう。変数には色々なものを代入できますが、可換な 変数だと非可換なもの、例えば行列、を代入できません。そうすると非可換な変数の方がより基本的で重要だと思えてきます。今回は非可換な有理関数が全体がどの様な計算法則のもとにあるのか、つまり非可換有理関数が どの様な体を成すのか(それ以前に、成し得るのか)についてお話しします。非可換な有理関数というのは色々な場面に当然あらわれてきますが、一例を挙げると非可換な成分を持つ行列の逆行列です。たとえ成分が非可換で あっても然るべき仮定の下で逆行列が存在します。各成分が非可換で独立な変数の行列を考えて一般的に扱えば、後でそれぞれ好きなものを代入することが出来ます。その時に逆行列は元の行列の成分の非可換な有理関数と して得られるので、それらがどの様な関係を持っているのかが重要になって来ます。つまり、非可換な有理関数の成す体(非可換有理関数体)がどの様な体であるのかが鍵になります。この例に限らず、非可換有理関数全体の成す 体の性質は理論的のみならず応用にも大切です。非可換というとそれだけでなんだか難しく思う人も居るらしいですが、実は可換な多項式の成す環よりも非可換な多項式の成す環の方がある意味ずっと簡単だったりします。しかし、 有理関数の事を考え始めると事態は一変します。可換な有理関数の成す体(可換有理関数体)はその構成は可換環論の初歩で、ほとんどの人がそんなものは当たり前に存在してると思っていて、そしてそれで何の問題も ありません。一方、非可換な有理関数の成す体(非可換有理関数体)はその存在自体からそれほど自明ではありません。自明では無いにしても非可換な有理関数のなす体というのは存在します。しかし、実はそれは唯一には 定まりません。状況は複雑です。しかしながら、それでも、それらの体の中で一番普遍的(親玉的なポジション)なものが存在する事が証明出来て、それを非可換有理関数体(若しくは自由体)と呼びます。非可換有理関数体の 構成には何通りかあるのですが、今回は行列を用いたP.M.Cohnの方法を紹介します。これは非常に具体的であり、この構成から非可換有理関数体の性質を色々導く事が出来ます。(時間に余裕があれば紹介します。)今回は、 代数を専門としない人も多くおられるらしいので局所化(環に逆数を付け加える操作)や商体の定義から復習していきます。予定としては、環論の基礎事項の復習の後、非可換な有理関数の成す体が一意的に定まらない例を 見てから、上述のCohnによる非可換有理関数体の構成を紹介し、行列イデアルを用いたその普遍性の証明の粗筋を解説します。時間があれば非可換有理関数体に関する話題を何かやります。予備知識としては行列の計算が 出来て環と体の定義をなんとなくでも覚えていれば取り敢えずは大丈夫でしょう。
最終更新日: 2016年1月21日