天売島の鳥たち



天売島は、当研究室の研究フィールドの一つです。 この島は、北海道北西部の日本海に位置します。周囲10km、人口400人程の小さな島です。 島の西側は標高100mを超える断崖が連なり、多くの海鳥がコロニーを作って繁殖しています。

ウミネコ

天売島では約1万つがいのウミネコが営巣しています。
これはコロニーの一部の写真です。
しかし、個体数は減少傾向にあります。原因の一つは天売島で増加したカラスが 卵や雛を捕食することと考えられています。写真は、ハシブトガラスを攻撃するウミネコです。
彼らがどこに移動してるのかを確かめるために、ウミネコを捕獲し、翼に印をつけて放しました。 繁殖地の移動については未だよくわかっていませんが、北海道各地を移動することや、 冬に瀬戸内海で見つかる個体、韓国で見つかる個体がいることがわかってきました。

ウトウ

この島のウトウのコロニーは世界最大で、約30万つがいが営巣しています。
餌を取りに出ていたウトウは夕方になると島の近海に戻ってきます。 既に卵が孵化し雛になっている巣の親は、餌を運んできます。 しかし、ウトウの親鳥が餌を持ってくるのを待っているのは、雛だけではありません。 先程紹介したウミネコが、ウトウの持って帰ってくる餌を狙って、巣の前で待っているのです。
そのため、ウトウは暗くなるのを待ちます。辺りが暗くなり始めると、 集団になり、魚を持ってコロニーに戻ってくるのです。

ウミウ

大阪ではカワウが見られることを紹介していますが、この天売島ではウミウが営巣しています。
この巣には3羽の雛がいます。


先程の写真ではわかりませんが、実は彼らはこのような断崖に営巣します。
そのため、観察する人間も一苦労です。

他にもこんな鳥がいます

オオセグロカモメは約2000つがいが営巣しています。 彼らは人間生活と密着していて、人の出すゴミなども食べます。 ウミネコの減少には、オオセグロカモメの増加も影響していると思っています。 2004年の繁殖期には、オオセグロカモメがウミネコのコロニー内を歩き回り、 ウミネコの卵や雛を壊滅的に捕食してしまいました。
ケイマフリは近年減少傾向にあり、今後の動態が心配されています。
ウミガラスも見かけられますが、数つがいが繁殖しているに過ぎず、 2004年の最高同時確認個体数は18個体でした。
ヒメウです。国内の繁殖状況はあまりわかっていません。 天売島でも20つがい程度が繁殖するに過ぎません。あまり注目されてはいませんが、 国内の絶滅が心配される種の一つです。
ウミスズメは、天売島で繁殖していることは間違いないと思われていますが、確実ではありません。 というのも、断崖の岩の隙間などに営巣するため、探索が困難なのです。
これらの海鳥を狙ってハヤブサも現れます。
また、この島では多くの小鳥も繁殖しています。右はノゴマです。
雌雄で異なった羽色をしています。
アオジです。
他に、カワラヒワ、シマセンニュウ、コヨシキリ、アマツバメなどがいます。 スズメやハクセキレイも繁殖しています。
更に、春の渡りの時期に通過する鳥の種類が多いのも天売島の特徴です。2004年にはヤマショウビンが現れました。 ほぼ同時期に、コウライウグイスも見られたようです。
他にも様々な鳥が天売島を通過していきます。写真のオオジュリン、 マミジロキビタキ、ベニヒワなどです。