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                                           平成30年7月1日
新任の挨拶

 2018年の4月に着任してから3ヶ月ほどが過ぎ,ようやく植物園の仕事にも慣れてきました。この3月までは金沢大学で働いていましたが,金沢大学もこの植物園と同様,自然豊かな里山にありました。しかし太平洋側に来てみると,里山の木々やその下に生える草の様子が日本海側とまるで違うことに,改めて驚かされます。
 私の専門は,化石の情報を生かして植物の進化を探ること(進化古植物学)です。例えば,化石と生きている子孫の形をくらべ,子孫の形を作るメカニズムを考え合せることで,化石植物の発生メカニズムを推定する研究をしています。また,化石植物と今生きている植物の類縁関係を推定し,私たちが普段目にする植物の歴史を紐解く研究をしています。
 古植物学を主な専門とする私が大阪市立大学理学部附属植物園にやって来たのは,当園が持つ歴史と深く関係します。他園にない当園の特徴は,日本列島の様々なタイプの森林が復元展示されていることです。しかもそれは,現在の森林だけでなく,過去の森林も含みます。例えば,当園にはメタセコイアとスイショウが生える水辺があります。どちらの植物もかつては日本の川辺に普通に生えていたものですが,100万年ほど前に絶滅してしまいました。当園の「化石の森」は,三代目園長であった故三木茂先生が中心となって復元したもので,三木先生もまた,古植物学を専門とされていました。ご存知の方も多いかもしれませんが,メタセコイアという名前は,岐阜県土岐市から見つかった約1100万年前の針葉樹の化石に対し,1941年に三木先生が名付けたものです。その後,生きたメタセコイアが中国で見つかり,メタセコイアは「生きた化石」として一躍有名になりました。
 また,現在の日本列島の森林復元展示は,二代目園長であった吉良竜夫先生のご尽力により出来上がったものです。日本固有の森林は,現在の気候風土だけでなく,植物が辿ってきた過去の歴史によって成立しました。このように,当園の展示物には過去という視点が盛り込まれており,その意味を来園者の皆様に伝えるのは,古植物学者である私の責務だと思っています。
 一方,植物園には未来への役割があります。私たちは現在「多くの野生植物を絶滅させてしまうかもしれない」という危機に直面しています。当園では,未来の世代に野生植物を伝えるべく,保全・保存活動にも注力する所存です。また,折に触れ,絶滅の恐れのある野生植物について,皆様と考える機会を設けたいと思います。
 私たちは,現在という時間を生きています。現在という時間の中で植物園にご来園いただいた皆様には,植物たちが発する過去からのメッセージを感じていただき,さらに未来へと想いを馳せていただければと願っています。

大阪市立大学理学部附属植物園 園長 山田 敏弘
   



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