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                                           平成25年10月17日
市民講座「植物と私たちの生活」を開講

 市民講座の新シリーズ「植物と私たちの生活」をスタートさせ、その第一回目(副題:植物の冷却効果)を前月の14日に実施しました(受講者21名)。本学工学研究科の鍋島美奈子先生に「大阪のヒートアイランドと街路樹」というタイトルでご講演いただき、引き続いて、「葉っぱの冷却効果を調べてみよう」という実習を実施しました。実習を含めた市民講座は本園では初めての試みです。
 鍋島先生の講演では、大阪市におけるヒートアイランド現象の現状と街路樹の整備状況、および街路樹のもつヒートアイランド緩和効果について、先生ご自身の調査結果も含め貴重なお話を聞くことができました。実習では、街路樹として用いられている代表的な植物(イチョウ、クスノキ、トウカエデ、モミジバスズカケノキなど)を園内で観察しながら、鍋島先生が持参された特殊なカメラ(赤外線サーモグラフィーカメラ)を用いて葉の温度(葉温)を測定しました。
 この測定により、木陰の葉の温度は外気温よりも低いことが確認されましたが、日向の葉の温度は外気温より低いということはありませんでした。次に日が当たっている葉の裏側にサランラップを貼ってみました。これにより葉の温度が3度以上も上昇するのが観測されました。赤外線サーモグラフィーカメラは、視野の温度分布を温度に対応した色に変換して見せてくれます。最初、葉は青っぽい色の画像なのですが、サランラップを貼ると、その葉だけが見る見るうちに赤っぽい色にかわっていきました。参加者から「ぅお〜」という声が発せられました。葉温の低下は葉の表皮にある気孔からの蒸散により葉の熱が奪われることで起こります。気孔は一般的に葉の裏側に多くあります。その気孔を通気性のないフィルムでおおってしまえば蒸散が妨げられ、それによる葉温の上昇がこのカメラで観測できるかもしれないという発想による実験でした。予備実験なしの実験でしたが、思いのほか鮮明な結果でしたので、私も思わず「ぅお〜」と叫んでしまいました。
 気孔の働きは私の専門分野の一部でもありますが、気孔での蒸散が実際にどれだけ(またどれだけスピーディーに)葉温の低下に貢献しているかは知りませんでした。この実験に用いた赤外線サーモグラフィーカメラは、鍋島先生によると、10年ほど前までは今のものより大型で精度も劣っていたとのことで、軽量化・高精度化とともに値段もずっと安くなったそうです。それでも100万円以上はするとのことですが。近年技術的進歩をとげたこのカメラが植物学の分野で今回のような野外実験に用いられたことはなかったと思います。本講演の参加者は、世界初の植物学実験に立ち会ったとも言えるでしょう。
 実習の後半では、参加者が園内で採取した葉を用いて、葉の気孔を観察しました。これには葉の表面をそのまま拡大観察できる特殊な顕微鏡を用いました。この顕微鏡は私たちの研究室が所有するもので、今でも数百万円はします。生の気孔をリアルタイムで観察する実習も本園ならではのユニークなものであったと言えます。気孔の観察は、親御さんと参加されたお子さんに特に気に入ってもらえました。この実習をきっかけに植物学者を目指してもらえたらいいなと思う次第でした。
 さて、新シリーズの市民講座では私たちの生活と植物の密接な関係を様々な切り口から取り上げていきます。次回は、医学的視点からの話題提供を予定しています。春先までには実施したいと思っていますので、実施日が近づきましたら本HPでも詳細を案内させていただきます。。

園長 飯野 盛利
「市民講座の様子」
   

   平成23年12月14日
友の会だより(第13号、平成23年8月25日発行)記事

植物園の地域貢献事業について


 本植物園は大阪市立大学理学部附属の教育・研究施設ですが、一般にも公開された市民利用の施設でもあります。近年、社会における大学の役割は多様化し、地域社会への貢献や生涯学習への寄与も重要な役割として期待されるようになってきました。本植物園は一般公開を開始してから今年で57年になります。大阪市立大学は本植物園をもつことにより、ずっと以前から市民の方々に密着した地域貢献を果たしてきたと言えます。
 植物は地球上の全生命を支える土台です。森林の破壊や植物多様性の喪失などに象徴されるように、私たち人類の活動により、この土台が危うくなりつつあります。この問題に対処し、人類の持続可能な繁栄を達成していくことは、今世紀の最重要課題として位置付けられています。このような社会情勢のもと、植物についての理解は様々な分野で益々必要とされ、植物園の社会的価値も必然的に増大しています。本植物園は大阪市立大学の地域貢献・生涯学習の拠点として発展することが益々期待されていると言えます。
 現在、大阪市立大学の次期中期計画が策定されつつあり、その中で本植物園の今後の在り方も検討されています。次期中期計画では「地域貢献」が主要な課題として盛り込まれる予定です。地域貢献は現在進められている中期計画でも主要な課題ですが、今検討されているのは、これまでのものを発展させる内容になっています。植物についての情報が様々な分野で求められていることから、今後、本植物園を植物が関係する全学レベルの研究と活動の拠点とし、学部という境界を越えて研究会・公開講座を実施していくことにより、地域貢献を果たしていこうというものです。これが実施されれば、植物に関する幅広く多角的な情報を社会に向けて発信していくことができます。大阪市立大学としても、植物園をもつ数少ない国公立大学の一つとしての特徴をより一層活かすことができます。
 今年度の植物園友の会の総会に参加させていただきました。参加された会員の皆さんから、植物園の在り方について率直な意見がだされ、議論は盛り上がりました。厳しいご意見には植物園への期待と思いが込められていることが伺え、有り難く思いました。活発に議論されたことの一つが植物園活動へのボランティア参加の可能性でした。ボランティアとして是非参加したいと言う強い意見もいただきました。多くの植物園がボランティアを受け入れていることは昨年発行の友の会だより(第9号)でも案内させていただいた通りです。市民の方々にボランティアとして参加していただくことにより、植物園の活動はより多様に、より活発になることが期待されます。また、地域貢献事業の新たな発展も期待されます。ボランティアの参加により植物園の管理運営は複雑になりますが、円滑に実施するための受け入れ体制をぜひ作っていきたいと思っております。皆さんのご協力をお願いする次第です。
 今年度は、今後の植物園の在り方を試行する意味も込め、これまでの観察会や各種イベントに加えて新たな地域貢献事業も企画・実施しています。その一つとして、年度始めの4月に講座「桜、その科学と文学」を行いました。朝日カルチャーセンターとの連携講座で有料でしたが、定員を上回る41名の方に参加いただきました。この講座は、文学研究科の村田正博教授のご協力のもと、学部の境界を越えて、理学と文学の融合を図ることを意図して企画されました。講座は予想以上に盛況で、その場で同じ講師陣による講座第二弾が予定されました。この講座第二弾は「紅葉、その科学と文学」のタイトルで11月19日(土)に行います。夜間開園による夜咲き熱帯スイレンの観察会を昨年初めて実施しましたが、好評でしたので今年も9月の2日と3日に行います。これから実施する講座・イベント等は本園ホームページでも案内していますので、そちらをご参照ください。

大阪市立大学理学部附属植物園 園長 飯野 盛利

   平成23年3月31日
市民講座「桜、その科学と文学」について

 大阪市立大学は、我が国で総合植物園をもつ数少ない大学の一つです。この特徴を活かして、本植物園で維持管理している植物を、理学部・理学研究科の枠を超えて、全学レベルで活用し、その情報を一般に発信していきたいと思っております。企画第一弾としまして、文学部・文学研究科の先生のご協力のもと、4月16日に市民講座「桜、その科学と文学」を本植物園で実施いたします。朝日カルチャーセンター梅田教室との連携講座で有料になりますが、興味をもたれる方はぜひご参加くださいますようご案内申し上げます。同じ桜を理学と文学の眼で同時に見ると、どのような”化学反応”が起こるか。私自身わくわくしております。
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大阪市立大学理学部附属植物園 園長 飯野 盛利

   平成23年3月29日
被災者救援募金のお願い

 植物園入口に「東北地方太平洋沖地震」義援金募金箱を設置しております。お寄せいただきました募金は日本赤十字社に送付されます。皆様のご協力をお願い申し上げます。

 大学で最も被災したのは仙台市にある東北大学で、植物園をもつ数少ない大学の一つでもあります。東北大学植物園の知人からメールをいただき、鈴木園長をはじめ、関係者は全員が無事とのことです。メールには「植物園はあちこちで崖くずれがあり、まだ閉園中です。城へ上る道が通行止め、太白区の鹿落ち坂も通行止め、それにガソリンが入らないので、毎日往復2時間以上歩いています。」と書かれていました。一日も早く開園できますことをお祈り申し上げます。
大阪市立大学理学部附属植物園 園長 飯野 盛利

   平成23年3月22日
市民の皆さんとともに歩む植物園

 本植物園は、発足から60年、開園から56年を過ぎようとしています。植物園がある場所は、1941年から終戦まで大阪市の興亜拓殖訓練道場(満蒙向け移民の訓練施設)でした。1945年9月からは大阪市の農事訓練所として利用され、1950年4月に大阪市立大学の理工学部附属植物園として再スタートを切りました。理工学部が理学部と工学部に分離した1959年からは理学部附属植物園となりました。
 本植物園は大学の学術利用目的の施設ですが、市民に公開された、市民利用のための施設でもあります。開園以来、本植物園には多くの方々が訪れ、植物園が交野市の私市(きさいち)区にあることから「私市植物園」という呼び名で親しまれるようになりました。時々、子どものときに来たことがあると言う方にお会いし、その時の印象を伺いますと、市民とともに歩む植物園の存在の大切さを実感します。
 本植物園は、大阪市立大学の市民貢献の一端を担うため、市民講座、展示会、イベントなど、市民参加の企画にも力を入れています。このたび植物園ホームページをリニューアルしました。これからもより一層、情報発信に努めてまいりますので、引き続きご利用いただけますと幸いです。私もこのコーナーで、できるだけ情報を発信していきたいと思っております。
 今月11日、我が国は未曽有の大地震と津波に襲われました。東北地方の東沿岸部を中心に、多くの方が亡くなられ、今も多くの方々が困難な生活を余儀なくされています。私も80歳を越す両親が二人きりで福島県郡山市に住んでおり、大変心配しました。現在も電話による連絡しかできず、食料、ガソリン、灯油が不足していると言うのを聞くことしかできません。末尾になりますが、被災された方々に心からお見舞い申し上げ、1日も早く立ち直られますことを切に願っております。
大阪市立大学理学部附属植物園 園長 飯野 盛利


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