熱くサイエンスを語り,理学部に所属するしあわせを実感する一時間です。

● 本シリーズは公開で行われるものですが、後期博士課程対象の授業である、生物分子機能学ゼミナール、生体機能生物学ゼミナール、自然誌機能生物学ゼミナール、の一環でもあります。
● 学外から世話人に問い合わせる場合は,それぞれの番号の前に06-6605-を付けて電話してください。



2020年12月18日 (金) 14:45〜、於:Zoom

島田敦広 先生(岐阜大学・応用生物科学部・助教)

タイトル: 精密な構造解析から明らかとなった、高度に制御されたシトクロム酸化酵素の反応機構

要旨: シトクロム酸化酵素(CcO)はミトコンドリア内膜に存在する呼吸鎖末端酵素で、上流の呼吸鎖タンパク質から伝達された電子とミトコンドリアマトリクスのプロトンを利用して、呼吸によって取り込まれた酸素を水へと還元します。この反応と共役してプロトンをマトリクスから内膜外へと能動輸送(ポンプ)することで、生体内の大部分の ATP の合成に利用されるプロトン濃度勾配と膜電位を形成します。したがって、CcO の反応機構解明は生体エネルギー論分野における最重要課題であり続けています。1924年に CcO が発見されて以来、分光学的な解析が精力的に行われ、酸素還元反応サイクル中には比較的安定な6つの中間体(R, A, P, F, O, E 型中間体)が存在することが明らかとなっています。1995年にウシ心筋由来CcOの結晶構造が 2.8 A 分解能で報告されてからは、ヘム a3 と CuB によって構成される酸素還元中心の構造や、プロトンポンプ経路(H-pathway)の構造が明らかとなり、CcO の反応機構の理解は飛躍的に深まりました。しかし、酸素が結合する前の完全還元型構造(R型)以外の中間体は実際に構造が捉えられたことはなく、CcO が酸素を安全に(活性酸素種を発生させずに)水へと還元する機構は推測の域を出ていませんでした。また、酸素の還元反応と共役した高効率プロトンポンプ機構についても謎でした。最近、我々のグループでは、CcO 結晶と過酸化水素を一定時間反応させた後に迅速に凍結することで、複数の反応中間体構造を含む CcO 結晶を調製しました。これらの結晶から、複数の反応中間体構造を含む高分解能(2.0 A以上)データを収集し、それぞれの中間体構造の存在比を温度因子に基づいて精密に評価することで、各反応中間体構造の決定に成功しました。本発表では、CcO による酸素の還元反応とプロトンポンプの共役機構について、最新の反応中間体構造と、我々のグループでこれまで行ってきた阻害剤をプローブに用いた複合体の構造研究に基づいて解説します。

世話人: 増井良治 (内線 2819)


2020年11月6日(金)16:00〜17:30 (日本時間)、於:Webex

藤岡 春菜 博士 (大阪市立大学 大学院理学研究科 情報生物学研究室:日本学術振興会PD)

タイトル: アリにおける役割に応じた時間の使い方 -育児と防御に注目して-

要旨: アリ、ハチといった社会性昆虫では、ワーカー間で採餌や育児、巣の建設、防御などのさまざまな仕事を分担する労働分業がみられ、仕事に合わせた形態的特殊化やさまざまな行動特性を進化させている。行動特性の中では、昼夜の時間的に変動する環境に合わせた、活動時間を調整が必要となると考えられるが、ワーカーが担当する仕事に応じてどのような活動時間を示すのかは、採餌など限られた仕事でしか分かっていない。そこで、本講演では、アリの労働分業の時間生物学的な側面に注目し、常時的に行われることが必要な育児と防御において、ワーカーがどのような活動時間のパターンを示すのかを紹介する。

その他の研究内容等は以下のURLを参照ください。
http://fujiokaharuna.com/

本セミナーは「自然誌能生物学ゼミナール」を兼ねます。

世話人: 渕側 太郎(内線2574)


2020年8月14日(金)11:00am〜12:10pm (日本時間)、於:Zoom

安田 涼平 先生 (米国マックスプランク、フロリダ研究所:科学ディレクター 兼 神経情報伝達研究部門長)

タイトル:  分子細胞からみた脳の機能

要旨: 分子細胞神経科学の基礎と最新の知見について議論します。特に、シナプス内での分子情報伝達の、記憶形成における過程については、私たちの研究も含めてお話しようと思います。
(1) In Vivo Imaging of the Coupling between Neuronal and CREB Activity
in the Mouse Brain., Laviv T, Scholl B, Parra-Bueno P, Foote B, Zhang C,
Yan L, Hayano Y, Chu J, Yasuda R., Neuron. 2020 Mar 4;105(5):799-812.e5.
doi:10.1016/j.neuron.2019.11.028. PMID: 31883788
(2) Mechanisms of Ca2+/calmodulin-dependent kinase II activation in
single dendritic spines., Chang JY, Nakahata Y, Hayano Y, Yasuda R., Nat
Commun. 2019, doi: 10.1038/s41467-019-10694-z.PMID: 31239443
(3) More publications are available at
https://mpfi.org/science/our-labs/yasuda-lab/#publications

世話人: 藤原郁子(内線3711)


2020年1月14日(火) 16:00-17:00 、於:理学研究科会議室(E108)

森住威文 博士(トロント大学医学部生化学教室)

タイトル: 電子常磁性共鳴(EPR)法を用いた光受容タンパク質および複合体の構造解析

要旨: タンパク質の機能発現には、多くの場合複数の状態間の構造変化が伴う。電子常磁性共鳴(EPR)法では状態間の遷移を具体的に観測できるため、従来の結晶構造解析と組み合わせることにより、生理的条件下でのタンパク質機能発現機構に関するより深い知見が得られる。本講演では、光受容タンパク質ロドプシンとそれに結合するエフェクタータンパク質をターゲットとした、最新の研究成果について議論する。

世話人: 寺北明久 (理学研究科 内3144) 


2019年11月27日(水)16:00〜17:30、於:理学研究科会議室(E108)

今井啓雄 先生(京都大学霊長類研究所ゲノム細胞研究部門)

タイトル: 霊長類の食行動と味覚受容体の進化

要旨: ヒトを含む様々な霊長類は、世界各地に生息し、その採食品目も多岐にわたる。我々は、その原因となる遺伝的背景の解明を目指して、味覚受容体の機能解析と行動実験を組み合わせた研究をおこなってきた。本セミナーでは、最近わかってきた苦味受容体や甘味受容体の機能を中心に、ヒト以外の霊長類の食行動との関連を解説する。特に、葉食性のコロブスの味覚(文献1,2)とキツネザルの苦味受容体における「インバースアゴニスト」の発見(文献3)について解説したい。
(1) Purba LH, Widayati KA, Tsutsui K, Suzuki-Hashido N, Hayakawa T, Nila S, Suryobroto B, Imai H: Functional characterization of the TAS2R38 bitter taste receptor for phenylthiocarbamide in colobine monkeys. Biology Letters 13, 20160834 (2017)
(2) Nishi E, Suzuki-Hashido N, Hayakawa T, Tsuji Y, Suryobroto B, Imai H: Functional decline of sweet taste sensitivity of colobine monkeys. Primates 59, 523-530 (2018)
(3) Itoigawa A, Hayakawa T, Suzuki-Hashido N and Imai H. A natural point mutation in the bitter taste receptor TAS2R16 causes inverse agonism of arbutin in lemur gustation Proc. R. Soc. B 286, 20190884 (2019)

本セミナーは「生物分子機能学ゼミナール」として開催されます。

世話人: 寺北明久 (内3144)


2019年11月1日(金) 16:30-18:00 、於:理学研究科会議室(E108)

今西由和 先生(Case Western Reserve University)

タイトル: hedding light on the biology of photoreceptor cell maintenance

要旨: これまでに、私たちは視細胞の発達と維持のメカニズムとプロセスに関するいくつかの重要な問題を解決し、私たちの研究は眼疾患の理解のみならず疾患の治療や診断の向上にも寄与してきた。具体的には、新しく合成されたタンパク質の蛍光標識を可能にする光変換技術を開発し、その技術によりアッシャー症候群*の病因の理解が劇的に向上し、治療可能な方法を発見した。 また、その治療法を発見するという目標を追求する中で、タンパク質を不安定化する遺伝子変異によって引き起こされる遺伝性疾患に適用できる新しい薬物スクリーニング法も確立した。
*アッシャー症候群:難聴と失明の組み合わせを引き起こす最も複雑な神経障害の1つで、出生25,000人に約1人で発生し、難聴と失明の複合的な原因。

本セミナーは「生物分子機能学ゼミナール」として開催されます。

世話人: 寺北明久 (内3144) 


2019年10月31日(木)16:00-17:00、於:理学研究科 会議室(E108)

松浦健二 先生(京都大学大学院農学研究科)

タイトル: 昆虫の社会進化とゲノムインプリンティング

要旨: 今、進化生物学は大きなパラダイムシフトの中にある。親のDNA情報だけでなく、親世代の表現型に関わった遺伝子発現修飾因子(DNAのメチル化やヒストン修飾などのエピジェネティック因子)の一部が、配偶子を介して子に伝わることにより、子の発生に影響を与えることが多様な分類群で明らかになっている。そして、世代を超えるエピジェネティック因子の伝達(transgenerational epigenetic inheritance)によって、従来の遺伝学では説明不可能だった様々な現象に解決の糸口が見出されつつある。我々の最新の研究により、シロアリのカースト決定や繁殖システムの進化、さらに真社会性の起源までエピジェネティック遺伝が深く関与していることが明らかになってきた。本セミナーではシロアリ生物学の最前線を紹介するとともに、そこから見えてきた生物進化の妙についてお話ししたい。
世話人: 渕側太郎(2574)


2019年10月29日(火) 15:00〜、於:理学部第4講義室(F205)

Dr. Lauren Des Marteaux

タイトル: Cool Bugs: The overwintering physiology of insects

要旨: Nearly 80% of all animal species are insects, and this incredibly diverse group has big impacts on global ecology and human life. Because insects are ectotherms their body temperature reflects that of the ambient (environmental) temperature. This can be a big problem in cold climates; biological reactions are slower and insects also risk becoming frozen! In this seminar we will learn about how insects survive low temperatures during winter, and also learn a little bit about the new JSPS visiting researcher, Lauren Des Marteaux (an insect ecophysiologist from Canada).

世話人: 後藤慎介(内線2573)


2019年10月4日(金) 13:00-13:40、於:理学研究科 第1講義室(F202)

井上裕一 博士 (シグマ光機)

タイトル: 自分でも作れてアップグレード可能な「コアユニット顕微鏡」

要旨: 光学顕微鏡のセミナーを開催します。「予算が少なくても、初心者であっても、学生であっても、独自の顕微鏡や光計測系は始めることができる。そして、メーカーの制約に縛られずに、自由なアップグレードが予算に合わせて可能になる。」そんな顕微鏡とオプション製品例をご紹介します。

世話人: 藤原郁子(内3711)


2019年9月20日(金)16:00〜、於:理学研究科会議室(E108室)

成谷 宏文 先生(広島大学大学院統合生命科学研究科)

タイトル: 薬剤耐性菌の問題と解決策を考える

要旨: 抗生物質は、細菌感染症治療に欠かせないものでありますが、医療分野はもちろん、農畜水産業での不適切使用の結果、現在、抗生物質が効かない細菌: 「薬剤耐性菌」の蔓延が人類にとって喫緊の問題となっています。新規抗生物質の開発が激減している現在、One Health “ヒト・動物・環境・(食)における総合的な健全性”の考えのもと、抗生物質の適正使用は勿論、抗生物質にかわる解決法の開発が課題となっています。その一つとして、バクテリオファージが持つ、 特定の病原菌だけを “狙い撃ちして殺す事ができる” 細胞壁溶解酵素:エンドリシンの潜在的利用価値が注目され、活発な研究が行われています。本セミナーでは、研究対象である食中毒菌 Clostridium perfringens (ウェルシュ菌) を例に、紹介したいと思います。

世話人: 山口良弘(3163)、藤田憲一


2019年7月25日(木)14:00〜15:30、於:理学部第4講義室(F205室)

朝倉淳博士(ミネソタ大学医学部幹細胞研究所・筋ジストロフィーセンター)

タイトル: 3Dイメージングによる骨格筋幹細胞の血管ニッチの解析と再生医療への応用

要旨: 骨格筋の幹細胞であるサテライト細胞は、生後の筋肉の成長・再生に関与している。我々はこれまでPluripotent細胞から骨格筋幹細胞を誘導する方法について解析を行ってきた。今回我々は、新たな転写因子bHLH型転写因子ASCL4がES細胞を骨格筋幹細胞に誘導する能力があることを見出した。また、胚盤胞補完法を用いることにより、我々はiPS細胞由来の骨格筋を動物内で構築することに成功した。この方法はiPS細胞を用いた筋疾患の再生医療に応用可能である。 さらに我々は、組織透明化技術を用いてマウスの骨格筋を3次元画像として解析することに成功し、骨格筋中で毛細血管がサテライト細胞に近接して存在しており血管ニッチを形成していることを明らかにした。血管ニッチの形成は サテライト細胞由来のVEGFが重要であり、我々は、血管ニッチからのNotchの活性化シグナルによってサテライト細胞の幹細胞維持が行われていることを明らかにした。

世話人: 小宮透(3160)


2019年4月10日(水) 17:00〜、於:理学研究科 第4講義室(F205)

藤原郁子(大阪市大・院理・助教)

タイトル: 細胞運動に必須のアクチン重合・脱重合の制御メカニズム

要旨: 真核細胞に多くあるアクチンは、生命を維持するために必須のタンパク質分子で、細胞分裂時の溝の形成、自らの形を保持・変形するための骨格、さらに細胞を前進させるためのモーター機能などを担っています。これらの機能を担うため、アクチンは数珠のように連なって紐を形成し(ポリマー化:(重合という))、またモノマー化(脱重合)を繰り返しています。このアクチン重合・脱重合を時間・空間的にコントロールするために、アクチンには100種類近くの調節するタンパク質があります。今回は光学顕微鏡を使い、精製したアクチンが重合してポリマー化するプロセスと調節タンパク質との相互作用を見ることで、タンパク質同士の結合・解離が、まるでオーケストラのように巧みに制御される仕組みをご紹介します。
世話人: 増井良治・後藤慎介(2819・2573)


2019年4月10日(水) 16:00〜、於:理学研究科 第4講義室(F205)

山田敏弘(大阪市大・院理・教授,植物園・園長)

タイトル: 種(たね)のはじまり

要旨: 陸上植物の体制進化において,種子の獲得は革新的であった。種子は胚の休眠を可能にし,種子植物(裸子植物と被子植物)が大繁栄する礎となった。そのため,約150年にわたり,種子の起源は植物学者を惹きつけ続けてきた。
 種子は大胞子嚢を種皮が包む構造物であるが,テローム説では枝が癒合することで種皮が生じたと考える。テローム説は多くの教科書で紹介されるなど,種子進化のドグマとも言える仮説である。ところが,化石記録を調べてみると,テローム説が仮定するような祖先状態を持つ化石種がいないことがわかる。一方,種子植物に近縁な化石系統群のほとんどは,枝の末端に大胞子嚢が集合した大胞子嚢穂を持つ。そのため,大胞子嚢の癒合で種皮が生じたと考えることができるが(集合胞子嚢仮説),それを直接的に支持する証拠は得られていなかった。
 私たちは,シロイヌナズナの種皮形成領域で,大胞子嚢形成のマスター因子の発現を抑制する遺伝子群を発見した。また,それらを多重に欠く変異体を作成したところ,種皮に代わって,複数の大胞子嚢が形成された。この結果は,種皮が大胞子嚢由来であることを示す初めてのデータであり,集合胞子嚢仮説を支持する。
世話人: 増井良治・後藤慎介(2819・2573)


2019年3月15日(金)16:30〜18:00、於:全学共通教育棟 810 教室(1階)

田中俊雄教授

タイトル: 高分子と低分子の微生物化学

要旨: 最終講義
世話人: 増井良治(内線2819)


2019年1月9日(水) 16:00-17:30、於:理学部第4講義室(F205室)

井上 圭一 先生(東京大学・物性研究所)

タイトル: 微生物の持つロドプシンの多様な世界

要旨: 微生物型ロドプシンは細菌や古細菌のほか真菌類や真核藻類など、主に単細胞微生物に存在するレチナールを発色団とする光受容型膜タンパク質である。近年は巨大ウイルスなどにも微生物型ロドプシンが存在し、また既存の分子と大きく配列が異なるヘリオロドプシンファミリーが見付かるなど、その多様性は大きな拡がりを見せている。本セミナーではこの様に急速な変化を見せる微生物型ロドプシン研究の最前線について概観すると共に、新種のAsgard古細菌より発見された新奇イオンポンプ型ロドプシンや、オプトジェネティクスツール開発に向けた機械学習法に基づくロドプシンの波長制御技術を中心とした、我々の最近の研究について紹介する。
世話人: 寺北明久 (内3144)


2018年12月13日(木) 17:30-18:40、於:第10講義室(E211室)

塩見 大輔 准教授(立教大学理学部生命理学科)

タイトル: 細胞骨格タンパク質とその制御因子によるバクテリア形態形成制御機構

要旨: バクテリアも真核細胞と同様にアクチン細胞骨格タンパク質を持ち、これが、細胞形態を制御している。形態異常は生育異常や病原性の低下を引き起こすことが知られている。わずか数ミクロンという微少な細胞であるバクテリアにとっても、その形態を維持することは生存に必須である。本セミナーでは、細胞形態を制御するMreBアクチンの機能や局在、動態に関する我々の最近の研究を紹介する。
世話人: 宮田真人(3157)


2018年10月30日(火)17:00-18:10、於:理学研究科第10講義室

Dr. Guillaume Dumenil (Institut Pasteur, Paris, France)

タイトル: Vascular colonization by Neisseria meningitidis

要旨: Neisseria meningitidis is a human pathogen responsible for fatal septic shock and meningitis. Post-mortem histological analysis of tissues from individuals infected with N. meningitidis show large bacterial aggregates filling the lumen of blood vessels. Recent work from our group explores how these large bacterial structures form, from initial attachment on the endothelium to proliferation and auto-aggregation.

参考)
https://research.pasteur.fr/en/member/guillaume-dumenil/
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S009286741830463X?via%3Dihub

世話人: 宮田真人(3157)


2018年11月16日(金曜日)16:00-17:30 、於:全学共通教育棟816室

八尾 寛 先生(東北大学)

タイトル: オプトジェネティクスによる光と生命の融合

要旨: 以下の日程で、八尾 寛先生(東北大学)をお招きし、光遺伝学*に関するセミナーを開催します。
生物分子機能学ゼミナールとて開催しますので多数のご来聴をお願いいたします。講演者には分かりやすいイントロダクションをお願いしています。他学科、他学部の方も是非お越しください。
(*光遺伝学:光活性化タンパク質を、遺伝学的手法を用いて特定の細胞に発現させ、その細胞の機能を光で操作する技術。非侵襲的に神経細胞を操作できることから神経科学の発展に大きく貢献している。)
世話人: 寺北明久(内3144) 


2018年12月17日(月) 16:00-17:30、於:理学研究科会議室(E108室)

菅澤 薫 先生(神戸大学バイオシグナル総合研究センター)

タイトル: 遺伝情報の安定維持を保証するDNA損傷認識の分子基盤

要旨: ゲノムDNAは様々な内的・外的要因によって絶えず損傷を受けており、遺伝情報の正常な発現、維持、継承を保証するため、損傷したDNAを速やかに修復することが生物にとって重要である。DNA修復機構の異常はがん、神経変性、早期老化など、多様な病態を引き起こし得ることが示されており、特に長大なゲノムDNAに生じたわずかな損傷を効率的よく認識して修復するための分子機構の解明は生物学的、医学的に重要な意義を持つ。
 我々は、紫外線や化学変異原によって誘起される広範な塩基損傷を除去し、発がんの抑制に寄与する主要なDNA修復経路であるヌクレオチド除去修復(NER)を主な対象として研究を進め、色素性乾皮症C群(XPC)タンパク質を中心とするDNA損傷認識とその制御の分子機構を明らかにしてきた。本講演ではその成果を概説するとともに、最近我々が行っているNERの損傷認識因子とクロマチンとの相互作用の解析結果を紹介し、DNA修復に関わるクロマチン構造動態の新たな側面について議論したい。
世話人: 寺北明久 (3144)、増井 良治


2018年10月18日(木) 16:30-18:00、於:理学部第10講義室(E211室)

深津武馬 先生(産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門)

タイトル:  共生・進化・生物多様性

要旨: 非常に多くの生物が、特定の微生物を体内に恒常的に保有しています。このような現象を「内部共生」といいますが、最高の空間的近接性で成立する共生関係であり、きわめて高度な相互作用や依存関係がみられます。このような関係から、しばしば新規な生物機能が創出されます。共生微生物と宿主生物が一体化して、ほとんど1つの生物のような複合体を構築することも珍しくありません。
 共生関係からどんな新しい生物機能や現象がうまれるのか?共生することにより,いかにして異なる生物のゲノムや機能が統合されて1つの生命システムを構築するまでに至るのか?共に生きることの意義と代償はどのようなものか?個と個、自己と非自己が融け合うときになにが起こるのか?
 今回は特に陸上生態系の主役たる動物群、昆虫類に焦点をあて、共生微生物の代謝系を取り込むことにより可能となったさまざまな環境適応の進化について、私たちの最新の研究成果を中心にご紹介します。
世話人: 寺北明久 (3144)、後藤慎介 


2018年10月12日(金)16:00-17:30、於:理学研究科会議室(E108室)

深川竜郎 先生(大阪大学大学院生命機能研究科)

タイトル: 染色体分配に必須なセントロメア・キネトコアの形成機構

要旨: 染色体が安定に次世代細胞へ伝達されることは、生命維持にとって必須である。正確な染色体分配がおこらないと、染色体が不安定化して、細胞が悪性化するため、正確な染色体分配機構を理解することは、重要である。染色体の分配過程匂いて、両極から伸びた紡錘糸が染色体の特殊領域を正確に捉え、染色体を正確に娘細胞へと分配する。この紡錘糸が捉える染色体の特殊構造はキネトコアと呼ばれ、キネトコアが形成される染色体領域がセントロメアである。染色体上に、正確にセントロメア領域が形成されることは、染色体分配にとって必須であるが、興味深いことに、セントロメア領域は特定な塩基配列によって規定されているのではなく、エピジェネテティックな機構によって規定される。演者らは、セントロメア領域がどのように規定され、規定されたセントロメア領域上でどのようにキネトコア構造が構築されるのかという点に興味を持って研究を行っている。本発表では、セントロメア領域を規定するセントロメアクロマチンのエピジェネティックな特徴や、セントロメアクロマチンが形成された後にどのようにキネトコアが構築されるのかについて最新のデータを紹介してセントロメア形成に関与する分子機構について議論したい。
世話人: 寺北明久(3144)、中村太郎


8月8日(水) 17:00-18:10、於:理学研究科第10講義室

田代陽介(静岡大学学術院工学領域 講師)

タイトル: 細菌の飛び道具“Membrane vesicle” の謎に迫る

要旨: 近年、エクソソームなどの細胞外小胞の生理学的機能や生物工学的応用が注目されている。原核生物である細菌もエクソソームに類似した細胞外小胞を分泌している。Membrane vesicle (MV) と呼ばれるこの細胞外小胞は、細菌間での遺伝子伝播やシグナル伝達の他、宿主細胞への病原因子運搬など、いわゆる「飛び道具」として機能している。本セミナーでは、MVの形成機構ならびに生理学的機能に関する最新の知見を紹介する。
世話人: 宮田真人(3157)


7月17日(火) 17:00-18:10、於:第9講義室(E101)

稲葉一男 教授(筑波大学下田臨海実験センター)

タイトル: 繊毛の運動調節と進化

要旨: 真核生物の波打ち運動装置である鞭毛や繊毛は、原生生物、多細胞生物の精子や上皮細胞に存在し、細胞の運動や水流の発生に重要である。運動の原動力は、緻密に配置された微小管と分子モーター(ダイニン)であるが、この運動マシーンは細胞外の刺激に柔軟に応答することが可能である。また、この保存されたオルガネラから多様な生物を眺めると、生物の系統進化や環境適応など、マクロな世界も見えてくる。

世話人: 宮田真人(3157)


6月29日(金) 16:00〜17:00、於:理学研究科会議室(E棟1階)

橋本 隆(奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域教授)

タイトル:  環境ストレスは植物微小管を一過的に不安定化させる:その分子機構と生理学 的意義

要旨: 細胞周縁部を取り囲む表層微小管は外界からの物理的刺激により不安定化し、
再編する。近年、乾燥や塩ストレスによりチューブリン(微小管構成モノマー)
がリン酸化し、一過的な微小管脱重合が引き起こされることがわかってきた。
その分子機構と生物学的意義を議論する。

本セミナーは「生体機能生物学ゼミナール」として行われます。

世話人: 保尊隆享(2577)


2018年6月21日 16:00-17:30、於:理学研究科第4講義室(F205室)

神取秀樹 先生(名古屋工業大学大学院工学研究科 日本生物物理学会会長)

タイトル: 微生物ロドプシン研究の最前線

要旨: 我々の視物質とよく似たタンパク質(7回膜貫通でレチナール分子を結合)が1971年に古細菌から発見され、バクテリオロドプシンと名付けられた。以来、現在までに様々なタンパク質が報告されているが、GPCRとして機能する動物ロドプシンと異なり、微生物由来のロドプシンは(1)イオンポンプ、(2)イオンチャネル、(3)センサー、(4)光活性化酵素と驚くほど多様な機能を有している。またこれら動物が持たないロドプシンが動物の脳機能を解明するためのツールとして応用面でも期待されている(光遺伝学ツール)。本セミナーでは今も拡がり続ける微生物ロドプシン研究の最前線を紹介したい。
世話人: 寺北明久 (3144)


2018年6月21日(木)14:15-15:30、於:第4講義室(F205)

三野広幸 博士(名古屋大学理学研究科)

タイトル: パルス電子二重共鳴法により明らかにする光制御型転写因子および光合成光化学系タンパク質の構造と機能

要旨: 電子スピン共鳴(ESR)法はタンパク質の構造および電子状態を明らかにするための強力な手法である。中でもパルスESR法の一つであるPELDOR (パルス電子二重共鳴、DEER)法は80-100Åの分子間距離を正確に測定できることから、生体内の構造を知るため広範囲な適用が可能である。本セミナーではPELDOR法を中心に、フラビンセンサータンパク質Photozipperの構造および光合成光化学系Uタンパク質の構造、機能への適用例を示す。PELDORから得られた構造情報から導かれる、機能および結晶構造との相関を紹介する。
世話人: 荒田敏昭(3157)


4月26日(木) 17:00〜18:10、於:第9講義室(E101)

鎌田勝彦 博士 (理化学研究所 平野染色体ダイナミクス研究室)

タイトル: バクテリアSMC複合体とその染色体構造

要旨: 染色体を維持する過程には、まるで絡み合うDNAを櫛で梳くかのような動的機構が存在する。この原理はバクテリアの小さな染色体を維持し分配する過程においても重要であり、その中心的役割を担うのがリング状SMC(Structural Maintenance of Chromosomes)複合体である。講演者は、バクテリアSMC複合体の制御サブユニットの構造解析を端緒として、その全体構造の動的機構の理解へと研究を進めている。自身の構造生物学的及び分子生物学的研究結果も交え、急速に広まりを見せるSMC複合体によるDNAループ押出し機構など、最近のChromosome biology分野における進展についても紹介したい。
世話人: 宮田真人(3157)


2018年3月19日(月) 16:30-18:00、於:8号館 810号室

飯野 盛利 教授(本学植物園園長)

タイトル: 植物に語りかけて四十余年、学んだこと、思ったこと

要旨: 最終講義

世話人: 宮田真人(3157)


2018年3月15日(木)午後4時から5時ごろまで、於:理学研究科第10講義室(E211)

山下 高廣 博士(京都大学大学院理学研究科)

タイトル: 脊椎動物の眼と脳で働く光受容タンパク質の性質

要旨: 動物はものの形や色を認識する視覚だけでなく、様々な生理機能に光情報を利用している。このような光受容に共通して関わると考えられているのが、ロドプシンに代表されるオプシン類である。最近の動物のゲノム解読の進展により、オプシン類の遺伝子が多数見つかり、眼はもちろん脳などの組織にも発現することが確認されている。このような眼・脳などで機能するオプシンの性質の解明は、それらが関わる生理機能の分子基盤の理解につながると考えられる。本セミナーでは、暗いところでの視覚に関わる眼のオプシンと視覚以外の機能に関わる脳のオプシンについて分子の性質を紹介し、それらが関わる生理機能との関連を議論したい。

世話人: 寺北明久(3144)


2018年2月23日(金)17:00-18:10、於:第10講義室

竹田哲也 博士(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)

タイトル: ダイナミンによる膜リモデリング機構とその異常で起こる先天性ミオパチー発症機序の解明

要旨: ダイナミンは、エンドサイトーシスにおける細胞膜の陥入や切断(膜リモデリング)を行うGTPアーゼである。ダイナミンによる膜リモデリングは、GTP加水分解に伴う立体構造変化で起こるが、そのメカニズムは明らかになっていなかった。我々は近年、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて、ダイナミンの動的な構造変化の直接可視化に成功し、新規の膜リモデリングモデルを提唱したので報告する(Takeda et al., eLife 2018)。
またダイナミンは、筋肉の難病である先天性ミオパチー(中心核ミオパチー)の原因遺伝子として知られている。中心核ミオパチーの患者では、筋肉の興奮-収縮連関に必要な膜陥入構造(T管)の形態が異常になる。我々は中心核ミオパチーの発症機序を、膜リモデリングという観点から、分子、細胞、個体レベルで解析し、その発症機序の統合的な解明を試みており、その最新の知見についても報告する(Fujise et al., in preparation)。

世話人: 宮田真人(3157)


2017年12月19日(火)17:00-18:10、於:第9講義室

佐野健一 教授(日本工業大学 工学部)

タイトル:   生物を倣い、材料から習うナノバイオテクノロジー 〜高効率細胞内DDSキャリアの創製〜

要旨: 生体模倣、いわゆるバイオミメティックスと呼ばれる研究が再び注目を集め出している。生物が、数十億年に及ぶ時間をかけて行った進化の結果を工学に応用するのだが、単純に生物を真似るだけでは自ずから限界がある。そこで我々は、生物を倣うことからはじめ、さらに材料が生物に及ぼすさまざまな影響から習うというアプローチで研究を進めてきた。我々は、アスベストやカーボンナノチューブといった無機材料が示す構造的・力学的特徴と細胞との相互作用に着目し、これらの材料が示す特徴を模倣するような人工タンパク質をデザインした。驚くべきことに、この人工タンパク質は、HIVが細胞透過に利用しているタンパク質由来のTATモチーフなど既知の細胞透過性ペプチドの1/100〜1/1000の濃度で充分な効果を示す。さらに、この人工タンパク質を改変し、細胞透過性を評価したところ、構造的・力学的特徴が、細胞透過性に与える影響が明らかになった。現在、取り組んでいる他の課題と併せて紹介したい。

世話人: 宮田真人(3157)


2017年12月15日(金)17:00-18:15、於:第9講義室(E101)

荒田 敏昭 特任教授 (理学研究科・細胞機能)

タイトル: 電子スピン共鳴で捉えるタンパク質の構造と運動=反応×運動÷電子

要旨: 化学反応に伴うタンパク質複合体の高次な運動によって、一方向性、非線形応答、自励振動などの生物現象が達成される。私たちはタンパク質複合体が溶液状態で働く現場を原子レベルで捉えるため、あまり知られていない「電子スピン共鳴(ESR)高精度距離計測法」を中心に、X線小角散乱法、電子顕微鏡も併用して研究しました。セミナーでは、運動系マシナリー「筋収縮(アクチン - ミオシン)」と「心筋の調節(トロポニン - トロポミオシン)」、「輸送(キネシン - 微小管)」をはじめとして、最近の「膜イオンポンプ(P型ATPase)」、「時計 (KaiC ATPase)」についての研究を紹介し、作動原理を考察したいと思います。

https://www.youtube.com/channel/UCicKEkg6Dd-NGwu1C09YGyA

世話人: 宮田真人(3157)


2017年11月28日(火)15:00〜、於:第4講義室(F205)

名古屋大学 生命農学研究科 後藤寛貴(特任助教)

タイトル: 遺伝子の「使いまわし」による形態進化 - クワガタムシの大顎発達における付属肢形成遺伝子の機能を例に -

要旨: 20世紀の後半に多くの生物の遺伝子情報が集積するにつれ、生物が持っている遺伝子セットはそれまで考えられていた以上に高い共通性を示すことが明らかになった。これは様々な生物に見られる多様な形態は、ゲノム中に有する遺伝子セットそのものの違いにより生じているといよりも、むしろ共通した遺伝子セットの使い方の違いによるところが大きいことを示している。では、具体的にはどのような遺伝子の使い方が生物間で変化して多様な形態を作り出しているのだろうか?
 本セミナーの前半では、このような疑問に対して、異なる生物間での発生過程比較を通してアプローチする「進化発生学」、いわゆるエボデボについて、一里塚的研究を例に概観し、形態進化における遺伝子の使いまわしについて解説する。
 セミナーの後半では演者が大学院時代より取り組んでいる、クワガタムシの大顎発達のメカニズムについての研究についてその全体像を概観したのち、上記の遺伝子の使いまわしが大顎発達の進化に重要な役割を果たした可能性を示した研究例について重点的に紹介する。
 クワガタムシのオスは、俗に「はさみ」と言われる顕著に発達した大顎を有する。この発達した大顎は交尾相手を巡る闘争において武器として用いられることが知られる。大顎は口器の一部であり、基本的にすべての昆虫が有する構造である。つまり、クワガタムシは進化の過程で既存の口器構造の一部を巨大化させ、新たに武器として用いるようになったと考えられる。この大顎の巨大化の背景にある分子発生学的メカニズムとして、演者はなんからの遺伝子の使いまわしが関わっていると予想した。注目したのは昆虫一般で付属肢の先端部形成を担うDistal-less遺伝子と中間部の形成を担うdachshund遺伝子である。これらの遺伝子は昆虫一般的に大顎形成には関与していないと考えられているが、演者らはRNAiを用いた機能阻害実験により、クワガタムシのオスにおいてはdachshund 遺伝子が大顎の発達と形成に重要な役割を果たすことを示した。この結果は、クワガタムシの大顎発達の進化においても遺伝子の「使いまわし」が重要であった可能性を示唆している。

世話人: 後藤慎介(2573)


2017年11月10日(金) 15時〜 、於:第10講義室

鈴木芳人 博士(元中央農業総合研究センター総合的害虫管理研究チーム長)

タイトル: 雌雄が織りなす行動の進化:モンシロチョウ、タマゴバチ、ニクバエの性の世界

要旨: 1)モンシロチョウの交尾
求愛行動は、雌雄が互いに相手を同種の異性と認知し交尾に至る過程と考えられ ていた。このような雌雄間の協調性という認識から、雌雄間の利害対立に注目す ることになったモンシロチョウの世界を紹介する。交尾の主導権を握る本種の雌 は、雄の婚姻贈呈を進化させてきた。
2)タマゴバチの性比
子の性を調節できる寄生蜂の雌は、卵の性比をどう調節するのだろうか。1つの 寄主を巡る複数のタマゴバチの間でおこる産卵を巡るゲームを紹介する。
3)雄が雌より早く休眠に入るニクバエ
休眠蛹で越冬する温帯のニクバエ類では、雄が雌より早くから休眠に入ることが 知られている。この現象に対する従来の説明には弱点があり、雄の配偶戦略が休 眠の性差をもたらした可能性を追求する。

世話人: 後藤慎介(2573)


2017年9月15日(金) 17:00-18:10、於:第10講義室

Professor Bob Robinson (National University of Singapore, Okayama University)

タイトル: The Evolution of Actin Filament Systems

要旨: Elongating filaments systems, such as actin, are polymerizing motors that drive movement in many biological processes. The actin filament is astonishingly well conserved across a diverse set of eukaryotic species. It has essentially remained unchanged in the billion years that separate yeast, Arabidopsis and man. In contrast, bacterial actin-like proteins have diverged to the extreme, many of which are not readily identified from sequence-based homology searches. Here, I will contrast the properties of eukaryotic, archaeal and prokaryotic actin filament systems and discuss how they have evolved, and why mammalian actin is an Achilles’ heel for pathogen modulation. I will use the example of Yersinia pestis, a human pathogen and the causative agent of the bubonic plague. Yersinia’s virulence stems, in part, from its ability to evade the host’s immune defense by the injection of Yersinia outer proteins (YOPs) into phagocytic cells. One such YOP YopO is a kinase that specifically disables actin polymerization-dependent phagocytosis. Our data suggest that YopO uses actin as a bait to recruit and directly inactivate actin polymerization machineries at the membrane while phosphorylating these proteins for potential release in order to cripple phagocytosis and ensure Yersinia’s survival in the human host.

http://www.imcb.a-star.edu.sg/php/robinson.php

世話人: 宮田真人(3157)


2017年 7月27日 (木)〜 28日 (金) 、於:理学研究科 会議室 (E108)

三嶋 雄一郎 先生 (東京大学 分子細胞生物学研究所 RNA機能研究分野 助教)

タイトル:   遺伝暗号によるmRNAの安定性制御機構

要旨: mRNAの安定性は遺伝情報の発現量やタイミングを規定する重要な要因であり、様々な機構によって巧妙かつ動的に調節されている。特に近年、microRNA(miRNA)に代表される配列特異的なmRNA分解機構の研究により、mRNA安定性制御は真核多細胞生物の生命機能に必須な制御階層であるとの認識が確立されつつある。一方、mRNAの安定性が単純なシス配列では説明できない例も散見され、mRNAの安定性を規定する未知要因の解明が急務となっている。
 多くの動物では、卵内に蓄えられた母方ゲノム由来のmRNA(母性mRNA)のうち30-60%程度が、受精後一定時間が経つと急速かつ選択的に分解される。ゼブラフィッシュ胚をモデルとして用いた解析からは、このうち約10%程度がmiRNAの一つであるmiR-430によって分解されることが明らかとなっている(1)。
しかしながら、残りの大部分の母性mRNAについてはその分解メカニズムは長らく不明であった。そこで今回、miR-430に依存せずに分解される母性mRNAについて詳細な解析を進めたところ、これらの母性mRNAの一部はポリA鎖の短縮を介して特異的に分解されるものの、その特異性は既知のシス配列では説明がつかないことがわかった。次にレポーターmRNAによる実験と情報解析を組み合わせて検証を進めた結果、これらのmRNAの安定性はORFのコドン組成と強く相関することが明らかとなった。すなわち、分解される母性mRNAのORFはゲノム中で出現頻度が低いコドンが多く含まれており、安定なmRNAでは出現頻度が高いコドンが多い組成となっていた。さらに同義コドンを人工的に置換したレポーターmRNAを用いて検証を進め、コドン組成の偏りが翻訳依存的にポリA鎖の短縮効率に影響を及ぼすことを実験的に証明した。(2)。
 これらの結果は、コドンには「アミノ酸配列を指定する」という古典的な遺伝暗号としての役割に加え、「mRNAの安定性を決める」という隠された役割があることを意味している。セミナーではこの新規mRNA分解機構のメカニズムと意義について、予備的な実験結果も含めて議論したい。

(1) Giraldez AJ, Mishima Y, et al. Science 2006
(2) *Mishima Y and Tomari Y. Molecular Cell 2016

7/27 (木):10:00〜16:00
7/28 (金): 9:00〜14:30
7/28 (金) 13:00〜14:30 はセミナー

世話人: 小宮透 (3160 )


2017年5月18日(木) 17:00-18:10、於:学術情報総合センター1階文化交流室

野地博行 教授(東京大学)

タイトル:   1分子生物物理からイノベーション創出できるかな?

要旨: 今年は、政府が定める第五期科学技術基本計画(2016-2020年度)の二年度目である。この基本計画では、一行目から再三にわたり「イノベーション」という単語がでてくる。ここからも分かる通り、国は基礎研究から生まれる成果をすみやかに社会実装する仕組みづくりを強化している。この施策に対する評価は今後に委ねられているが、否が応でも大学研究者はこの影響を受けている。この流れに対する個人レベルでの対応策の1つは、「自分の基礎研究の成果を、どのように社会実装(=実用化)に結びつけるか?(or結びつきそうだと見せるか?)」を考えることだろう。本発表では、元々ATP合成酵素の1分子計測をやっていた基礎研究者が、どのように成果をイノベーションに結びつけようとしているのか、その試行錯誤の現状を紹介したい。特に、現在進行中のJST ImPACT人工細胞デバイスプログラムの発足の経緯と、その現状について紹介したい。

本セミナーは「生体機能生物学ゼミナール」として行われます。

世話人: 宮田真人(3157)


2017年4月26日、於:17:00-18:10、第4講義室

渕側太郎 准教授

タイトル:  ミツバチ育児個体における概日リズムの社会的同調と体内時計

要旨: 社会性昆虫では巣仲間の間で行動が分業化しており、典型的には、巣外に採餌に出かける採餌個体と、巣内で子の世話をする育児個体に分かれる。ミツバチの育児個体はもっぱら巣の中心部という暗闇かつ温度一定の環境で活動している。本セミナーでは、それらの育児個体の(1)概日リズムの同調性、および(2)体内時計の働きの一端について、紹介する。

本セミナーは「生物分子機能学ゼミナール」、「生体機能生物学ゼミナール」、「自然誌機能生物学ゼミナール」として行われます。

世話人: 宮田真人(3157)


2017年4月24日(月)17:00-18:10、、於:第10講義室

安房田智司 准教授

タイトル:   交尾種・非交尾種を有する海産カジカ科魚類における生殖関連形質の多様性と進化

要旨: 世界に300種以上が知られる海産カジカ科魚類は、受精様式や卵の保護様式を著しく多様化させたグループであり、交尾や卵保護様式の進化に伴って生殖関連形質がどのように進化したのかを研究する良い材料である。本セミナーでは、1)受精様式と卵保護様式に関連した精子形質(形態や遊泳速度)の進化、および2)卵寄託と呼ばれる珍しい産卵行動と産卵管の進化、について紹介する。

本セミナーは「生物分子機能学ゼミナール」、「生体機能生物学ゼミナール」、「自然誌機能生物学ゼミナール」として行われます。

世話人: 宮田真人(3157)


2017年3月23日(木)17:00-18:10、於:第10講義室(E211)

Dr. Yi-Wei Chang (California Institute of Technology)

タイトル: Architecture of type IVa and IVb pilus machines

要旨: Type IV pili (T4P) are filamentous appendages found on many
bacteria and have been classified into T4aP and T4bP. T4aP are more
widespread and are involved in a variety of functions ranging from
cell motility, DNA transfer, host predation to electron transfer. T4bP
are less prevalent and mainly found in enteropathogenic bacteria
where they are utilized in host colonization. Using electron
cryotomography of intect cells and followed by subtomogram
averaging, we reveal 3-D in situ structures of the T4aP machine in
Myxococcus xanthus. The locations of all ten components within the
structure are identified by imaging mutants with individual proteins
either deleted or fused to tags. The resulting component map is tested
by building hypothetical models which are seen to fit the EM maps
well and satisfy all known connectivity and structural constraints. The
architecture of the T4aP machine suggests new mechanistic insights
into pilus extension and retraction and explains how the enigmatic
switch from extension to retraction occurs. We then use the same
techniques to reveal in situ structures of the T4bP machine in Vibrio
cholerae. Despite the presence of several non-homologous
components, the structures of the V. cholerae T4bP machine are
remarkably similar to that of the M. xanthus T4aP machine. We
deduce locations of the components homologous to the T4aP
machine, then imaged knockout mutants to map the locations of the
non-homologous proteins. The resulting architecture of the T4bP
machine shows that non-homologous proteins in type IVa and IVb
pilus machines form similar structures, suggesting new hypotheses for
their functions.
Other authors: Lee A Rettberg, Anke Treuner-Lange, Janet Iwasa,
Lotte Søgaard-Andersen, Andreas Kjær, Davi R Ortega, Gabriela
Kovacikova, John A Sutherland, Ronald K Taylor, Grant J Jensen

ref) Science (2016) .351, aad2001
http://science.sciencemag.org/content/351/6278/aad2001.long
世話人: 田原悠平(細胞機能学研究室、3711)


2017年2月17日(金)17:00〜18:10、於:第10講義室(E211)

末武 勲 准教授(大阪大学・蛋白質研究所)

タイトル: 「塩基配列の変化を伴わない遺伝」の分子機構解明 (新手法を用いたアプローチ)

要旨: エピジェネティクスには「ヒストン修飾」が大きく寄与する。ヘテロクロマチンタンパク質には、機能が異なるアイソフォームが存在するが、それらに生化学的な違いがなく、機能の違いを分子レベルで説明できなかった。私たちは、試験管内でヌクレオソームを再構成し、それを基質にすることで、初めて生化学的違いを見出した。一方、ヒストン修飾が、「DNAメチル化」の維持に貢献しうることも見出している。これらを紹介したい。
世話人: 宮田真人(3157)


2016年12月15日(木)15:00〜16:30、於:理学研究科会議室

北村俊平 准教授(石川県立大学 環境科学科)

タイトル: 熱帯の森に種子をまく巨鳥サイチョウとその保全

要旨: サイチョウ類はアジア・アフリカ熱帯林における最大の果実食鳥類で、その生態系の健全さを示す指標種である。しかし、乱獲や森林破壊などによる局所的な絶滅が著しく、その種子散布者としての生態系機能の解明は急務である。1998年から国内外の共同研究者らとともにタイの熱帯林で進めてきたサイチョウ類による種子散布の研究やタイの共同研究者が取り組んでいるユニークな保全活動である「サイチョウ里親プログラム」などについて紹介する。
世話人: 伊東明 (3165)


2016年11月24日 13:00〜14:30、於:第9講義室 (E101)

Shozo Yokoyama教授 (Emory University, USA)

タイトル: Evolution of dim-light and color vision pigments in vertebrates

要旨: Animals use vision as a principal means to interpret their environments and have consequently evolved diverse visual systems. The extensive data collected by vision scientists suggest strongly that this diversity is a result of organisms’ adaptations to various photic environments and to their new life styles. Did animals really modify their visual systems to adapt to different environments? If so, how did they do it? These questions touch on a remarkably difficult problem of molecular adaptation in evolutionary biology as well as on a central unanswered question in phototransduction in vision science. In theory, molecular analyses of spectral tuning in visual pigments became feasible when three achievements were made: 1) the molecular cloning of the bovine rhodopsin gene in 1983, 2) the development of the in-vitro assay in 1986 and 3) the characterization of the crystal structure of the bovine rhodopsin in 2000. In practice, however, neither the molecular basis of spectral tuning in visual pigments nor the adaptive mechanisms of color vision are well understood. I will review the results of the molecular genetic analyses of dim-light and color vision by considering rhodopsins (or RH1 pigments) and short wavelength-sensitive (SWS1) pigments, respectively.
世話人: 小柳光正 (2583)、寺北明久(3144)


2016年11月11日(金) 15:00-16:10、於:理学研究科会議室

高木博史 教授(奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科)

タイトル: 酵母に見出した「両刃の剣」一酸化窒素の合成機構と生理的役割

要旨: 一酸化窒素(NO)は哺乳類の細胞内でアルギニンからNO合成酵素(NOS)によって生成し、シグナル分子として血圧調節、神経伝達、アポトーシス、感染・炎症など幅広い生命現象に関わっている。高等生物のモデルとして、また発酵産業において重要な微生物である酵母Saccharomyces cerevisiae においても、NOはストレス応答に関与すると考えられるが、ゲノム上に哺乳類NOSのオルソログが存在しないため、その合成経路や生理機能についてはほとんど不明である。本セミナーでは、演者らが酵母に見出したNOの新規な合成系とその制御機構、生理的役割について紹介する。
世話人: 田中俊雄 3163


2016年11月1日(火) 13:00-14:30、於:第4講義室(F205室)

岩佐真宏 准教授(日本大学 生物資源科学部)

タイトル: 小型哺乳類の分布からみえるもの

要旨: 日本列島は,ユーラシア大陸の東端に位置する島嶼であるが,世界中でも希有な固有種の多い土地柄でもある.南北に長く,気候も多様で,地形の起伏も複雑な日本列島は,まさに箱庭的進化の実験室のようなものであろう.特に移動能力の低い小型哺乳類は,日本列島の特性に影響を受けながら,今日まで綿々と生き延びてきた.すなわち,彼らは日本列島形成史の生き証人でもある.現生の小型哺乳類の様々な特徴をみながら,日本列島における箱庭的進化の動態について考察したい.
世話人: 後藤慎介(2573)


2016年9月30日(金)11:00〜12:00、於:理学研究科会議室(E棟1階)

奥田一雄(高知大学理学部・大学院黒潮圏科学部門教授・副学長)

タイトル: 藻類の形態形成について

要旨: 藻類は酸素発生型の光合成生物のうち種子植物とシダ植物、コケ植物を除いた
残りのすべてであると位置づけられています。植物が陸上へ進出する一方で、
藻類は独自の進化をとげ、多様な構造や機能を身につけました。本セミナーで
は、1つの細胞に何千もの核をもつ多核緑藻を例にとり、陸上植物とはまった
く異なる細胞分裂や形態形成を行うことを紹介します。残りもの、寄せ集めの
藻類の生きざまに興味をもっていただければ幸いです。
世話人: 保尊隆享 (2577)


2016.8.26、於:理学部 第6講義室

中村修一 博士(東北大学)

タイトル: ネバネバ”を味方につけた細菌の運動メカニズム

要旨: 粘膜層で覆われた動物の体内には、実に多くの細菌が生息している。バイオフィルムも細菌にとって重要な住処である。このような粘度の高い環境の中でも、細菌は活発に運動できることが古くから知られている。私たちの常識に合わないこの現象の仕組みを理解する手がかりは、細菌が小さいがゆえの特殊な粘度の感じ方にあるらしい。本セミナーでは、高粘性環境で見られる不思議な細菌運動について、実験と理論の双方から解説する。
世話人: 浜口 祐(3711)


2016年6月29日 16:00 ~ 17:00、於:第6講義室(F214)

日比正彦 教授 (名古屋大学生物機能開発利用研究センター)

タイトル: ゼブラフィッシュを用いた体軸形成および神経回路形成機構の解析

要旨: 脊椎動物の体軸形成には、初期胚の背側に形成される背側オーガナイザーが重要な役割を果たしている。背側オーガナイザーからのシグナルにより神経外胚葉は誘導される。その後、神経外胚葉内で詳細な領域化・細胞分化がおこり、高次機能を制御する神経回路が形成される。本セミナー前半では、ゼブラフィッシュを用いた背側オーガナイザー形成機構を解説する。後半では、脊椎動物で比較的保存された小脳神経回路に焦点を当て、ゼブラフィッシュ遺伝学を用いた、神経回路形成と機能の解析に関して解説する。
世話人: 小柳光正(2583)、小宮透(2577)


2016年3月29日 17:00〜18:10、於:第7講義室

Tâm Mignot (CNRS-Aix Marseille University – Marseille France)

タイトル: The Myxococcus xanthus motility complex: moving parts and fixed anchor points

要旨: Myxococcus xanthus uses a novel class of intracellular motors to move protein complexes along the cell surface, promoting surface motility or assembly of a spore coat. During motility, the so-called Agl motor, a flagellar stator homolog, interacts with a trans-envelope protein complex to propel the cell. However, although several models have been proposed to explain the propulsion mechanism, it is still unclear how the motility machinery moves inside the cell, interacts with each of the envelope layers and ultimately creates propulsion. Here, high-resolution single cell approaches combined with a new total internal fluorescence microscopy assay revealed the fine molecular dynamics of the motility proteins and unveiled critical aspects of the propulsion mechanism. Together, the results address key unanswered questions of the motility mechanism and show that transient connections between the inner and outer membrane occurring through the peptidoglycan layer create a molecular rotor in the cell envelope that propels the cell.
世話人: Clothilde Bertin (細胞機能学研究室、3711)


2016年1月12日(火) 17:00~18:10 、於:第10講義室E210

木下佳昭 (学習院大学自然科学研究科生命科学)

タイトル: 真核生物・原核生物のべん毛とは異なるアーキアべん毛の運動研究

要旨: 生物の多くは、“べん毛”と呼ばれる運動装置複合体を用いて、運動を達成している。例えば、200~300 nmの太さを持つ真核生物の鞭毛は、ATPの加水分解エネルギーを用いて、ダイニンが滑り運動を起こすことでむち打ち運動をする。一方で、原核生物のべん毛は、プロトン流入の際のエネルギーを用いて、20 nm程度の細いフィラメントが回転する。1括りにべん毛と言っても、利用するエネルギー、構成タンパク質や機能は全く異なる。
アーキアのべん毛は、上記のべん毛とは構成タンパク質も異なり”第3のべん毛”と言える。このべん毛は、フィラメントの伸び縮みを利用しながら運動する線毛と非常に遺伝子の相動性が高い。しかし、アーキアのべん毛は、伸び縮みではなく、回転をすることで推進力を得ている。
我々は、アーキアべん毛を蛍光たんぱく質でラベルし、光学顕微鏡下において可視化することに成功した。更に、回転をハイスピードイメージングすることで回転の素過程の検出にも成功しつつある。本セミナーでは、最新の知見を紹介するとともに、他のべん毛との違いも強調しながら議論を行いたい。

世話人: Isil TULUM (細胞機能学研究室, 3711)


2015年9月30日(水) 17:00〜18:10、於:理学部 第6講義室 (F214)

川崎 一則 博士 (産業技術総合研究所)

タイトル: 細胞膜や水中のナノ構造体を急速凍結レプリカ法でみる

要旨: 急速凍結レプリカ法には、細胞膜の“生の構造”を電子顕微鏡で把握する方法として優れた特徴がある。細胞を急速凍結して非晶質氷中に固定した後、ナイフで割断して細胞膜の脂質二分子層間の疎水性界面を露出させる。割断面の凹凸を白金蒸着で影付けすると、内在性膜タンパク質の上では白金層が盛り上がり、“膜内粒子像”として観察することができる。また、深エッチングを組み合わせることによって、試料の親水性表面の観察も可能となる。この方法の対象は生体膜に限定さりない。水中に分散化したバイオマス由来のナノファイバーや、水中の微細気泡など、ナノ材料・ナノ物質の形状を評価する解析技術としても貢献が期待される。
世話人: 細胞機能学研究室 田原悠平 内線(3711)


2015年9月7日 16:00 ~ 17:00、於:理学研究科 1階会議室(E108)

松尾 亮太 准教授(福岡女子大学国際文理学部)

タイトル: ナメクジの脳におけるDNA増幅

要旨: ナメクジやアメフラシなどの軟体動物腹足類では、脳に巨大なニューロンが多数存在し、それらのゲノムDNAは大幅に増幅している。本セミナーでは、ナメクジの脳におけるDNA増幅が(1)体の成長に応じて起こること、(2)ゲノム全体の倍数化であること、(3)末梢臓器等への神経投射を介して起こるものであること、について示した研究を紹介する。さらに最近、ゲノムの倍数化が必ずしも全転写産物の一様な増加を引き起こす訳でもない、ということも明らかになってきた。ニューロンの物質合成能を上げるため、DNAをわざわざ増やすことの意義について議論したい。
世話人: 寺北明久 (3144)


2015年9月10日 14:30 ~ 16:00、於:理学研究科 1階会議室(E108)

N. Gautam教授(Washington University School of Medicine, USA)

タイトル: Using light to identify mechanisms that govern cell behavior

要旨: Dynamic changes in signaling protein activity across a cell direct critical cellular behaviors such as cell migration and neuron differentiation. Signaling activity constrained to organelles such as the Golgi or endosomes also likely plays a key role in regulating cellular functions. To help identify how such spatial variations in signaling activity govern cell behavior, experimental methods that control signaling activity at the subcellular level will be valuable. We have developed optogenetic methods based on GPCR opsins and modules of cryptochrome and CIB1 that exert this kind of control. Apart from spatial control these light based methods also provide tight temporal control over intracellular signaling that can be utilized to probe the role of signaling kinetics in regulating cell behavior. The biological insights obtained by using these tools, approaches to expand this library of optical tools and their wider application to perturb additional processes such as cardiomyocyte contractility, insulin secretion and collective morphogenetic cell migration will be discussed.
世話人: 寺北明久 (3144)


2015年8月3日(月) 17:00〜18:10、於:理学部 第6講義室

柴田敏史 博士(長崎大学 医歯薬学総合研究科 口腔病原微生物学)

タイトル: 滑走細菌Flavobacterium johnsoniae の滑走運動マシナリー

要旨: 細菌の多くは生存戦略として運動している。これまで様々な細菌運動様式が知られ、特にべん毛を使った運動に関しては多くの機能や構造などに関する知見が
得られている。一方その他の運動様式に関してはまだまだ謎が多い。私たちの研究はバクテロイデーテス細菌が行う固体体表面上での滑走運動に注目し、滑走運動装置の構造から滑走運動メカニズムを解明する事を目指す。本セミナーでは新しく見えてきた滑走運動装置に関する最近の知見を紹介し、その構造が滑走運動メカニズムとどうカップルするかを議論したい。

世話人: 浜口 祐(内線3711)


2015年 7月30日 (木) 13:00〜14:30、於:理学研究科 1階会議室 (E108)

和田 啓 准教授(宮崎大学・テニュアトラック推進機構)

タイトル: 生体必須コファクターである鉄硫黄クラスターはどのように生合成されるのか?

要旨: 鉄硫黄 (Fe-S) タンパク質は多様にしてかつ生物界に普遍的に分布しており、呼吸、光合成、アミノ酸やビタミン生合成、遺伝子制御に至るまで生命活動の根幹に関わる反応を担っている。それらの機能を支えるコファクターである Fe-S クラスターの生合成は、多成分タンパク質からなるマシナリーが担っていることが遺伝学的研究から明らかにされた。私たちは「Fe-S クラスターがどこで・どのように生合成されるのか?」、その分子レベルでの全容解明を目指している。
 これまでの演者の結果を俯瞰すると、鉄硫黄クラスター生合成マシナリーの作動機構は、生物界最大の膜輸送体スーパーファミリー (ABC-transporter) の作動原理と共通点があり、同じ原理で全く異なる機能 (クラスター合成と膜間輸送) を成し遂げるという可能性が見えてきた。本セミナーでは、本マシナリーの「作動モデルの提唱」に至る研究について概説する。

世話人: 増井良治 (2819)


31.03.2015 (15:00〜16:10)、於:E108

Dr. Masaki Osawa

タイトル: Liposome division by a bacterial contractile ring

要旨: FtsZ, a tubulin homolog, is a major component of the bacterial division machinery known as the Z ring. FtsZ polymerizes into short protofilaments, which further assemble into the Z ring. The Z ring then recruits other division proteins. We have previously reconstituted Z rings in multi-lamellar liposomes using membrane targeted FtsZ (FtsZ-mts) where an amphipathic helix was artificially added to the C terminal end of FtsZ. We concluded that FtsZ can form Z rings and generate constriction force by itself if it attached to the membrane. The reconstituted Z ring, however, could not complete division of the liposomes. Here we reconstituted the Z rings in unilamellar liposomes using FtsA, a natural membrane tether, as well as FtsZ. Unilamellar liposomes incorporating FtsA and FtsZ showed a variety of distributions, including foci and linear arrays. A small fraction of liposomes had obvious Z rings. These Z rings could constrict the liposomes and in some cases appeared to complete the division, leaving a clear septum between the two daughter liposomes. Because complete liposome divisions were not seen with FtsZ-mts, FtsA may be critical for the final membrane scission event. We demonstrate that reconstituted cell division machinery apparently divides the liposome in vitro.
世話人: Isil Tulum (3711)


2015年2月13日 17:00-18:10、於:81B (8号館一階)

古寺哲幸 准教授 (金沢大学理工研究域バイオAFM先端研究センター)

タイトル: 液中ナノメートル世界をビデオ撮影できる高速原子間力顕微鏡

要旨: 私たちは、活きた細胞やタンパク質の動きをナノメートルの空間分解能とサブ秒の時間分解能で観察できる高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を開発してきた。近年では、いくつかのタンパク質や細胞を高速AFMでビデオ撮影することによって、それらの構造形態や機能メカニズムを明らかにすることができてきている。本セミナーでは、高速AFMの計測原理や性能を簡単に説明した後、これまでに撮影された映像を紹介したい。
世話人: 笠井大司(細胞機能学研究室:2575)


2015年1月19日(月)17:00-18:10、於:81B(8号館)

寺島 浩行 博士

タイトル: 細菌III型分泌装置によるタンパク質膜透過のin vitro再構成

要旨: 細菌べん毛とニードル複合体は、III型分泌装置として分類されるタンパク質膜透過マシーナリーを持つ。III型分泌装置は、プロトン駆動力をエネルギー源としてタンパク質輸送を行い、また、ATP加水分解エネルギーを使って高効率な輸送を実現する。しかしながら、膜透過の分子メカニズム、エネルギー共役、複合体の構造情報についての情報は少ない。本研究では、条件を厳密にできるべん毛III型分泌装置のin vitro輸送再構成系の構築と、それを用いた輸送メカニズムの解析、そして、電子線クライオトモグラフィーによる構造解析の最新の結果を中心に紹介する。
世話人: Isil TULUM (Cell Function, 3711)


2014年12月26日(金)17:30-18:40、於:理学部会議室

瀬戸真太郎 博士(浜松医科大学感染症学講座)

タイトル: マクロファージの小胞輸送機構からひもとく結核菌の寄生戦略

要旨: 結核菌は結核を引き起こす細胞内寄生性細菌であり、生体内で初期感染防御機構をつかさどるマクロファージに貪食されても、マクロファージ内で増殖することができる。これまで、結核菌がどのようにしてマクロファージによる殺菌分解機構から回避しているか非常に多くの研究がなされているが、い まだその 詳細は明らかになっていない。本セミナーでは、結核菌感染マクロファージの小胞輸送機構に注目して明らかにしてきた結核菌の細胞内寄生戦略について紹介したい。

世話人: 浜口 祐 (3711)


2014年12月22日(月)17:30-18:40、於:225教室(旧教養地区2号館)

山中洋昭 博士(大阪大学大学院生命機能研究科パターン形成研究室)

タイトル:  Pigment patterning of zebrafish and an intrinsic chirality of melanophore

要旨: The zebrafish surface pattern is determined by the arrangement of primarily two types of pigment cells, melanophores and xanthophores. Previous studies have reported that interactions among these pigment cells are critical for pattern formation. To analyze the interaction, we established an in vitro system. With this system we found that xanthophores induced repulsive movement of melanophores by direct contact, and the xanthophores further chased the melanophores. The run and-chase movment” highlighted the importance of the direct cell interactions in the pattern formation. We also found that melanophores showed self-rotation movements. Interestingly, the direction of the rotation was invariably anti-clockwise. In the seminar, I also talk about this unique movement of melanophores.

世話人: 細胞機能学研究室 田原悠平 内線(3711)


2014年12月5日(金)15:45〜16:30、於:理学部会議室

Sabrina Russo 博士(University of Nebrasca-Lincoln, USA)

タイトル: Resource Allocation Trade-offs Among Bornean Tree Species: Consequences and Mechanisms

要旨: All organisms face trade-offs in how resources are allocated during a lifetime. For example, a juvenile tree growing in the understory of a closed-canopy forest accumulates carbohydrates via photosynthesis. Those carbohydrates could be used to make new leaves, or instead, they could be stored for future use, or used to synthesize defensive compounds. The evolutionary responses to these unavoidable trade-offs have produced a range of species' life history strategies. I will discuss the mechanistic basis for trade-offs in resource allocation that individual tropical trees make, how variation in resource availability affects those trade-offs, and how trade-offs at the individual level affect the distribution and diversity of tree species along environmental gradients in Bornean rain forest.
世話人: 伊東(3165)


2014年12月5日(金)15:00〜15:45、於:理学部会議室

上谷浩一准教授(愛媛大学)

タイトル: Evolutionary history of Southeast Asian dipterocarp species

要旨: Genetic variation in natural populations is strongly influenced by historical and ongoing evolutionary forces, such as mutation, genetic drift, gene flow and natural selection. Since genetic variation is source of adaptation of organisms in changing environments, its loss is thought to increase the extinction probability, it is important to characterize genetic variation in present natural populations and its changes over a long geological period. Tropical rain forests are characterized by high species diversity of trees, and so each recognized species survives in exceptionally low population density. Coexistence of the closely related species contributes high species diversity at the small spatial scale. Here, I present our molecular evolutionary studies about the Southeast Asian dipterocarp species, including molecular phylogeny, extents and patterns of genetic polymorphisms and divergences, and the interspecific hybridizations naturally occurred between species in the
genus Shorea.
世話人: 伊東(3165)


2014年11月11日(火)午後4時から5時10分、於:理学部第二講義室(D213)

増井良治教授(大阪市立大学大学院理学研究科)

タイトル: 機能未知タンパク質の機能発見をめざして

要旨: 要旨:現在ではゲノム配列は容易に決定できるようになったが,どの生物種においても,全遺伝子の1/3〜1/2が「機能未知」の状態で残されている。生物を分子レベルで理解するためには,遺伝子産物であるタンパク質の機能を同定しなければならない。「機能未知タンパク質」については,まず<アミノ酸配列→立体構造→機能>という原理に従い,(予測)立体構造情報に基づいて分子機能の推定が行われている。また,細胞機能推定のためには,その遺伝子をノックアウトした場合の表現型の変化だけでなく,プロテオミクスやメタボロミクスなどのゲノムワイドな機能解析も利用されている。しかし,真の機能を同定することは未だ非常に難しい課題であり,実験的な検証が不可欠である。今回のセミナーでは,高度好熱菌 Thermus thermophilus HB8 の機能未知タンパク質を例に,各種 omics 解析を含めた統合的なアプローチの試みを紹介する。
世話人: 中村太郎


2014年10月2日(木) 14:40〜15:40、於:於:理学部第二講義室(D213)

中村 昇太 助教(大阪大学微生物病研究所遺伝情報実験センター)

タイトル: 次世代シークエンシングの感染症研究への応用

要旨: 2005年に登場した次世代シークエンス技術は、2014年の今、ゲノム解析のみならず、転写産物の定量や染色体構造の解析など多様な応用が行われており、次世代とはもう呼べないほど定着している。我々はこのシークエンシング技術を用いて、ゲノム解析による病原体の性状解析やメタゲノム解析による病原体検出法の開発などを行っている。第二世代、第三世代とシークエンシング技術が変化する中、どの技術がどのような感染症研究に応用できたのかを実例で紹介する。
世話人: 橘 真一郎(2573)


2014年10月14日 午後4時30分〜午後5時30分、於:理学部会議室(B棟202室)

Klaus Peter Hofmann 教授(IMPB Charité and BPI HU Berlin, Germany)

タイトル: Precision and flexibility in G protein-coupled receptor function

要旨: Hofmann教授は、Gタンパク質共役受容体であるロドプシン(光センサータンパク質)が、光受容にともなってどのように構造変化しGタンパク質に情報を伝えるかについて、不活性状態の結晶構造および活性化状態の結晶構造に加えて、Gタンパク質の部分ペプチドが結合した活性化状態の結晶構造を解明され、相次いでNature 誌に発表されました。長年のロドプシン研究から得たGPCRの活性化からGタンパク質への情報伝達について最近の発見を含めてご講演をお願いしています。さらに、情報伝達を遮断するタンパク質であるアレスチンとGPCRの結合についてもご紹介頂けると思います。
世話人: 寺北明久 (3144)


2014年10月23日 午後4時〜5時、於:理学研究科会議室(B棟202室)

坂本 亘 教授(岡山大学資源植物科学研究所)

タイトル: 葉緑体ゲノムの母性遺伝と組織特異的ゲノム分解:植物の多様な生存適応戦略

要旨: 葉緑体(プラスチド)は、今から10億年前に光合成細菌の細胞内共生により生じた。進化の過程で殆どの遺伝情報を核に移行させたが、一部を葉緑体ゲノムとして保持し続けている。このため、光に依存した葉緑体の分化と光合成機能の維持には、核と葉緑体ゲノムが協調して制御されなければならない。また、細胞内に共生した葉緑体は、新たに形成されることなく分裂して増殖し、次代へと伝わるが、被子植物の多くは母方のみから伝わる母性遺伝を示し、葉緑体ゲノムが融合されることはない。我々の研究室では、プラスチド母性遺伝の意義や分子機構に興味を持ち、「受精に際して雄性配偶体のオルガネラDNAが分解される」という仮説のもと、シロイヌナズナを用いて研究を進めている。その結果、DPD1と呼ばれるヌクレアーゼが雄性配偶体(花粉)でオルガネラDNAを分解する現象を最近明らかにした。ところが、このDNA分解が母性遺伝を決定する絶対的な因子ではなく、他の生長過程(葉老化)でもDNAを分解していることがわかってきた。今回は、植物の母性遺伝とDPD1による組織特異的なDNA分解について紹介するとともに、植物がなぜプラスチドDNAを維持し続けるのかについても考えてみたい。
世話人: 寺北明久(3144)、保尊隆享(2577)


9月18日(木) 10:00〜11:00、於: 理学部第二講義室(D213)

池野知子(Department of Psychology,Michigan State University)

タイトル: 季節性情動障害と概日時計

要旨: 季節性情動障害とは、一年のうち決まった季節にうつ病を発症する脳機能障害である。哺乳類の季節性については、生殖の制御機構を中心にして研究が進められてきたが、情動の制御機構に関しては未だ多くが未解明である。これまで私は、夜行性・昼行性のげっ歯類を用いて、情動の季節性にどのように概日時計システムが関与しているのかを解明すべく研究を行ってきた。本セミナーではそれら研究の成果を報告するとともに、現在進行中の研究についても紹介したい。
世話人: 後藤慎介


9月11日(木) 17:00〜18:10、於:理学部第二講義室(D213)

和田浩史 准教授 (立命館大学理工学部物理科学科)

タイトル:  らせんの左右を切り替える:それはアートかトリックか?

要旨: らせん型の細菌スパイロプラズマは、らせんの右巻きと左巻きをフリップさせながら液体中を遊泳する。こんな興味深い観測が報告されてからはや10年が経とうとしている。しかし、そんな劇的な菌体の運動が一体どのようにして起こるのか、未だ深い謎に包まれている。本セミナーの目的は、この難しい問題に取り組むための「話題提供」である。具体的には、最近宮田研で進行中の急速冷凍レプリカ法をもちいたスパイロプラズマの電子顕微鏡写真をもとに議論を展開する。また、少し視線を広くして生物界を見渡してみると、左右のらせんが共存する形態例が他にもみつかる。興味の幅を広げて、そのような例から学べることについても考えてみたい。
世話人: 笠井大司(細胞機能学研究室:3711)


9月5日(金曜日) 17:00〜18:10、於:理学部D棟 第二講義室(D213)

林 史夫 助教(群馬大学大学院理工学府分子科学部門)

タイトル: サルモネラべん毛繊維に学ぶナノスケールの構造変化制御機構

要旨: サルモネラべん毛繊維は直径23ナノメートル,平均長約10マイクロメートルのらせん形をしたタンパク質超分子であり,そのらせん形態をダイナミックに変えることで,直進遊泳と方向転換を可能にする.この形態変化機構を原子・分子の言葉で説明し,形態変化を司る要素構造や要素概念を見つけ出すこと,そして,戦略的にデザインされた高次機能性超分子の創出に貢献することを目指している.べん毛繊維は,約20,000分子もの単一タンパク質“フラジェリン”から成っており,繊維の形態変化はフラジェリン間にある無数の相互作用の中の,特定の相互作用の切り換えであることは容易に想像できる.しかしながら,フラジェリンを構成する494個のアミノ酸残基,約7,000の原子のうち,どのアミノ酸残基が,どの原子が,どのようなメカニズムで形態変化を導いているか,ほとんど不明である.本セミナーでは,形態変化の鍵となるスイッチアミノ酸残基,現在考えている形態変化機構について,最新の成果を交えて紹介したい.
世話人: 細胞機能学研究室 田原悠平 内線(3711)


2014.08.01 Friday 17:00〜18:10 、於:Meeting room (B202)

Ms. Marie Trussart (Centre for Genomics Regulation, Barcelona)

タイトル: The three-dimensional genome structure of Mycoplasma pneumoniae

要旨: A recent study, involving a genome-reduced bacterium, Mycoplasma pneumoniae, one the smallest self-replicating organism known to date, has revealed impressive transcriptome complexity. Using recent Hi-C method, enabling purification of ligation products followed by massively parallel sequencing, allows unbiased identification of chromatin interactions across an entire genome. We are seeking to build a 3D model of the genome conformation of the Mycoplasma pneumoniae using Hi-C data. Indeed direct analysis of this genome-wide library of ligation products reveals numerous features of genomic organization, that change from exponential to stationary phases of growth. Combining fluorescence in situ hybridization (FISH) and immunofluorescence, we were able to estimate that the terminal of replication is localized near the attachment organelle. All these will hopefully help us to understand the complex transcriptional regulation of prokaryotes.

http://sb.crg.es/serrano_lab/home

世話人: Isil Tulum (3711)


7月17日(木曜日) 15時00分 〜 16時10分、於:225教室(旧教養地区2号館)

新井宗仁 准教授(東京大学 大学院総合文化研究科)

タイトル: タンパク質の構造ダイナミクスと機能デザイン

要旨: タンパク質はダイナミックに動くことによって機能を発揮する。しかし、タンパク質がどのような運動を通して機能を発揮するのかについては未解明の点が多い。そこで我々は、タンパク質の中で最もダイナミックに動いて機能を発揮する天然変性タンパク質が、どのようにして標的分子を認識するのかを明らかにすることを目指して研究を行っている。また、非常に高速で動くマイコプラズマの「足」の役割をするタンパク質の立体構造とダイナミクスの解明を目指した研究を進めている。このような基礎研究と並行して、産業や医療への応用に向けたタンパク質デザインも行っている。特に、生物によるエネルギー生産の高度化のために、ラン藻由来のアルカン合成関連酵素の高活性化を目指した研究を進めている。本セミナーでは、これらの研究によって得られた最新の成果をご紹介したい。
世話人: 浜口 祐(内線3711)


7月4日(金曜日) 13時00分〜14時10分、於:理学部D棟 第二講義室

垣内 力 准教授 (東京大学大学院薬学系研究科)

タイトル: タイトル:黄色ブドウ球菌の病原性を制御する機能性RNA

要旨: 要旨:病原性細菌である黄色ブドウ球菌は移動能力を持たないと考えられてき
た。我々は黄色ブドウ球菌が軟寒天培地の表面を広がる能力(コロニースプレッ
ディング能力)を有していることを見いだした。本セミナーでは、黄色ブドウ球
菌のコロニースプレッディング能力の違いを指標に同定した機能性RNAについて
紹介する。また、上記内容の他に、昆虫モデル(カイコ)を利用して同定した黄
色ブドウ球菌の病原性遺伝子についても紹介したい。
世話人: 世話人:笠井 大司(3711)


2014年7月3日(木) 17:00-、於:理学部会議室 (B棟202室)

厚井 聡先生 (大阪市立大学 理学研究科)

タイトル: カワゴケソウ科のボディプランの進化

要旨: 陸上に生育する維管束植物は、根・茎・葉の3つの基本器官からなる共
通したボディプランをもつ。カワゴケソウ科は急流中の岩上に固着して 生育す
る水生の被子植物で、その特異な環境への進出に伴い著しい形態の特殊化と多様
化を遂げている。本セミナーでは、カワゴケソウ科植物で起こっ たボディプラ
ンの進化に関する研究成果を紹介する。
世話人: 細川賢人(植物進化適応学研究室M1, 院生会議長)


2014年8月21日 午後5時 ~ 6時、於:理学研究科会議室(B棟202室)

深田 吉孝 教授(東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻)

タイトル: 行動の日周リズムを規定する時計タンパク質の修飾クロノコード

要旨: 睡眠覚醒リズムやホルモンリズムに代表されるように、さまざまな生理現象が約24時間周期の規則的な変動を示す。これらの概日リズムは、生物が地球の明暗環境の24時間サイクルに適応して獲得した生理機能であり、概日リズムを生み出す生体計時システムは概日時計と呼ばれる。哺乳類の行動リズムの制御では、視床下部の視交叉上核SCNが中枢時計として機能する。一方、全身のほぼ全ての細胞も自律的な時計機能を有し、これらの末梢時計が中枢時計と同調して生体の様々な概日リズムを生みだしている。このような体内時計システムの中で、私たちの日内活動の開始と終了を規定する神経ネットワークは謎に包まれている。この難問にヒントを与えるような遺伝子変異マウスの行動リズムを記録したので紹介したい。
世話人: 寺北明久 (3144)


2014年7月31日 午後4時30分~6時、於:理学研究科会議室(B棟202室)

Satchidananda Panda 教授(The Salk Institute, USA)

タイトル: Melanopsin expressing retinal ganglion cells in health and disease

要旨:  哺乳類の眼の網膜には桿体、錐体、そして、メラノプシン発現網膜神経節細胞という3種類の光受容細胞が存在します。桿体および錐体はおもに視覚を担う一方、Gタンパク質共役受容体であるメラノプシンを発現するごく一部の網膜神経節細胞は、概日時計の明暗周期への同調、瞳孔の収縮、偏頭痛の光による悪化など、視覚以外の光応答を担うことが知られています。
 最近、Panda 教授らは、化合物スクリーニングからメラノプシンに特異的に作用する拮抗薬を見出し、メラノプシンの機能を薬理学的に阻害・調節することに成功しました。この成果は、メラノプシン遺伝子の変異の関わる疾患治療という観点から大変注目されています。今回は、これらの発見に最近の知見を交えて講演して頂きます。

世話人: 寺北明久 (3144)


2014年6月26日(木)17:00〜18:10、於:8号館 81A室

豊島陽子 教授(東京大学大学院総合文化研究科)

タイトル: ダイニンの自己運動制御機構

要旨: ダイニンは微小管上をマイナス端方向に運動する分子モーターであるが、分子構造や運動特性 にお いて、他のコンベンショナルな分子モーターであるミオシンやキネシンと大きく異なる。哺乳動物の細胞質ダイニンの組換え体を作製し、微小管上 の挙動を解析した結果、積み荷(カーゴ)を背負っていないダイニン1分子は特殊な 形態 をとり、微小管上を拡散的に動いて効果的に運動することができないが、積み荷に2分 子 以上結合した場合にはマイナス端方向へ運動することがわかった。1分子での運 動阻害 は、ダイニンの自己制御機構によるものと考えられる。
世話人: イシル・トゥルム(内線3711)


2014年5月21日(水)13:30-15:00 、於:2号館225教室

神村学 博士 【(独)農業生物資源研究所】

タイトル: in vivo リポフェクション:様々な昆虫に様々な遺伝子を超簡単に発現させるクールな技術

要旨: (本セミナーは自然誌機能生物学ゼミナールを兼ねます)
 発生、生理、環境適応などに関わる多様な生命現象の制御にどのような遺伝子が関わっているか、RNA-seqなどのトランスクリプトーム解析技術の発展もあり、以前に比べてはるかに容易に推測できるようになってきた。さらに、注目する遺伝子の機能解析についても、RNAiによる遺伝子ノックダウンが広く行われるようになっている。しかし、逆に遺伝子を発現させてその影響を調べたり、個体を使ったレポーター・アッセイにより遺伝子の発現制御機構を解析するのは一部のモデル生物を除きまだ非常に難しい。私は、培養細胞への遺伝子導入に汎用されるリポフェクション法を使って、様々な昆虫に簡単に遺伝子を発現させる技術を開発することを目指しており、現在までに9目150種以上の昆虫にルシフェラーゼ遺伝子を発現させることに成功している。昆虫の脱皮や変態を誘導するホルモンである脱皮ホルモンの不活性化酵素の遺伝子を発現させて色々な昆虫の脱皮や変態、休眠を操作した実験例などを紹介しながら、この遺伝子発現法を使って何ができるか議論したい。

関連文献:
Kamimura M, Saito H, Niwa R, Niimi T, Toyoda K, Ueno C, Kanamori Y, Shimura S, Kiuchi M. (2012) Fungal ecdysteroid-22-oxidase: a new tool for manipulating ecdysteroid signaling and insect development.  J Biol Chem 287: 16488-16498
Kanamori Y, Hayakawa Y, Matsumoto H, Yasukochi Y, Shimura S, Nakahara Y, Kiuchi M, Kamimura M (2010) A eukaryotic (insect) tricistronic mRNA encodes three proteins selected by context-dependent scanning. J Biol Chem 285: 36933-36944.

世話人: 後藤慎介(内線2573)


2014年5月16日(金) 午後5時10分から、於:理学部会議室

Dr Clothilde BERTIN(フランス・リヨン大)

タイトル: Characterization of Exopolysaccharides,Pathogenic Determinants Secreted by Mycoplasma mycoides subsp. mycoides, Agent of the  Contagious Bovine Pleuropneumonia.

要旨: Since 1937, Mycoplasma mycoides subsp. mycoides, agent of a critical disease in cattle, has been known to produce sugar macromolecules: exopolysaccharides. These exopolysaccharides are pathogenic determinants and are released to growth medium and blood of infected cattle. The characterization of these exopolysaccharides has failed because of the complexity of its medium growth.
In this work, we have developed a methodology allowing composition and structure characterization of these molecules for the first time. Moreover, we have shown that this organism is able to modulate its production of polysaccharides, by a novel control system.
世話人: 濱口 祐(3711)


2014年5月8日(木)午後5時から、於:理学部会議室

山口良弘 博士 (大阪市立大学 複合先端研究機構 ・理学研究科)

タイトル: 原核生物における suicide genes の生理的役割

要旨: アポトーシス(機能的細胞死)およびプログラム細胞死は真核生物にのみ存在し、分化などに必須の機能であることが知られている。では、原核生物にアポトーシスは存在しないのだろうか?近年、原核生物にも多数の自殺遺伝子が存在することが明らかとなり、様々な生理機能を有することが示唆されてきた。本セミナーでは、原核生物で細胞死を制御する toxin-antitoxin system について、その生理機能並びに toxin を用いた応用技術を紹介する。
世話人: 中村 (3156)


2014年4月2日 17:00-18:10、於:第二講義室(D棟2階)

Dr Morgan Beeby (Imperial College London)

タイトル: What structural dissection of bacterial flagellar motors in situ tells us about molecular mechanism and evolution

要旨: Understanding how proteins act as nanomachines is of critical importance. An excellent case-study in protein nanomachinery is the bacterial flagellar motor, which both spins the flagellar filament to propel the cell to favourable environments, and self-assembles using an ntegral "type III secretion system". To study these two mechanisms, we have employed electron cryo-tomography to produce 3-D images of flagellar motors /in situ/ at resolutions sufficient to resolve individual proteins. The foundation of our studies was a comparative imaging study of flagellar motors from a range of phylogenetically diverse bacteria that revealed widespread elaborations upon the 'normal' /Salmonella enterica/ or /Escherichia coli/ motors. This study enabled us to augment our comparative electron cryo-tomography approach with genetic screens and bioinformatics to pinpoint the location of the two energy-transducing proteins involved in type III secretion self-assembly, enabling us to develop a working model on the mechanism of type III secretion. Our studies also revealed variations in the torque-generating components between motors from different species, enabling us to correlate structure with function and hypothesize about evolution of additional complexity seen in some species. In conclusion, electron cryo-tomography enables us to brides scales from the organism to atomic structure of proteins and construct mechanistic hypotheses regarding the function of macromolecular machinery.
世話人: 田原悠平 (3690)


3月10日(月)13:30〜、於:理学部第2講義室 (新しい棟に移転しています)

立花和則先生 東京工業大学大学院・生命理工学研究科・生命情報専攻 准教授

タイトル: 卵母細胞の減数分裂における細胞周期制御---オスは本当に必要か?---

要旨: 動物の卵母細胞が受精可能になる卵形成の最終段階を卵成熟という。卵成熟は減
数分裂を行って染色体数を半減するというゲノムレベルでの成熟と 精子と融合
するための細胞表層の状態の変化などの細胞表層の成熟、また、精子核を正しく
リモデリングするために必要な卵の細胞質の成熟などが 並行して進行する重要
な時期である。この卵成熟の前に卵母細胞は減数第一分裂の前期に細胞周期を停
止しており、排卵に伴ってこの停止を解除し 減数分裂を再開することが卵成熟
と開始となる。そして精子の受容のためにタイミングをはかるために再度動物種
により異なる減数分裂の段階で停 止する。この卵成熟過程における卵母細胞の
細胞周期制御の分子機構を明らかにしようとしたのが我々のこれまで行ってきた
研究である。今回のセ ミナーでは、卵成熟の過程での細胞周期調節に主要な働
きをする分子である細胞分裂停止因子(cytostatic factor、CSF)の活性を担う
原がん遺伝子産物のc-mosの機能解析とCSFの進化的変遷についてのわれわれの研
究を通して、CSFは有性生殖の 鍵を握る重要な因子であることを紹介したい。

世話人: 志賀向子


2014年2月24日 17:00-18:10、於:理学研究科会議室(C棟2階206室)

中根大介博士(学習院大・物理)

タイトル:   戦車のような仕組みで動くバクテリア

要旨: バクテロイデテスに属する土壌細菌/Flavobacterium johnsoniae/ は,ガラスや寒天などの固形物表面上で,前進・後進・反転・回転する,複雑な運動をおこないます.この動きは何十年も前に見つかっていましたが,詳細な運 動メカニズムは全く分かっていませんでした.最近,私たちは,一見,複雑に見える上記の運動様式が,実は,簡単な2つの要素によって生じるこ とを示しました.1.表面タンパク質が,左巻きらせんのループに沿って外膜上を動き回ること,2.表面タンパク質が,固形物表面との接着力を 変えること,です.これは,戦車の走行装置である『無限軌道』とよく似ています.本セミナーでは,この運動装置に関する,私たちの最新の研究 成果について紹介させていただきます.

世話人: 田原悠平 (3690)


2月14日(金)午後5時から6時20分まで、於:理学部会議室

柏ア 隼 氏

タイトル: 分裂酵母のゴースト:収縮環が縮む仕組みをin vitroで調べる

要旨: 動物や菌類の細胞質分裂を担う収縮環の収縮のメカニズムはアクチン―ミオシンの相互作用以上にははっきり分かっていない。菌類の場合、収縮環の収縮だけでなく隔壁(細胞壁)の合成も必須であり、収縮環に焦点を絞った研究が難しかった。この点を解決すべく構築した「分裂酵母の細胞ゴーストを用いた収縮環のin vitro収縮系」について紹介する。この手法により、収縮環の構造や物理学的性質など多くの知見が得られると考えている。

世話人: 中村(3156)、宮田(3157)


2014年2月8日(土)13:00〜14:30頃(質疑込み)、於:C棟2階会議室

池田譲 教授(琉球大学理学部生物学科)

タイトル:  その「こゝろ」イカに聞け

要旨: イカ類はタコ類、オウムガイ類とともに頭足類という軟体動物の一門閥をつくる一群で、世界の海洋に450種ほどが分布しています。日本人にとっては寿司や天婦羅など食材としてのイメージが強く、実際に日本で最もよく食されている水産物の一つがイカ類です。一方で、イカ類は無脊椎動物の中では例外的な巨大脳とヒトに酷似した精巧なレンズ眼をもつなど、無脊椎動物らしからぬ特異な生物像を示します。これらの解剖学的な知性基盤は学習や記憶などの能力として現れますが、イカ類の特異性はそれに留まりません。本講では、群れという名のもとにイカ類がつくる社会、その中で織り成される群像、そして、そのような事柄に関わるかもしれない自己鏡像に対する振る舞いなど、一連の社会認知の側面をアオリイカについて行ってきた研究事例から物語ります。
世話人: 幸田正典・高木昌興


平成26年2月21日(金) 16:00〜16:25、於:理学研究科会議室(C棟2階206室)

平澤栄次 教授

タイトル: 売れる?教科書の作成技術 〜はじめての生化学改訂版(化学同人、今年末発売予定)〜

要旨: この教科書(初版)作成のころは、本が業績になる時代ではなかったのですが、いまは大学教育職への応募では教育業績もカウントされる時代になりました。また論文での引用数以上に、本は読まれてなんぼの世界でもあります。セミナーを引き受けたからには、本を書く技術を院生に伝えたいと思っています。自分はまだ若いから無理と思っていませんか?院生でも学生でもやり方ひとつで本屋に並ぶ本が書けます。自費出版でなくISBNのある本の出し方をお教えします。次のステップでは売れる(?)本を書くコツをお教えします。まあ売れなくても専門書を書けば教育業績にはなるのでしょうが。いまも「本書くひまがあれば、実験するべき」がほとんどの研究者の本音ですが、まあ15分のセミナーの間だけでも辛抱して聞いてみて下さい。
世話人: 武方宏樹 (内線2574)


2014年1月20日 16:00-17:10、於:81A講義室

Dr. John E Heuser, M.D., Director, Electron Microscopy Center, WPI Institute for Cell and Material Sciences ('iCeMS'), Kyoto University.

タイトル: How can we image frozen cells best in the electron microscope?

要旨:   Why must we study frozen cells? Because chemical fixation is just no good (well, that's too strong wording; it’s not definitive, it’s been done, and it really doesn’t work at all if you want to (1) catch specific molecular interactions (since fixation glues everything together), or if you want to (2) catch fast events (since fixation is really, really slow), or if you want to (3) catch membrane events (since aldehydes simply don’t fix membranes, not at all.) 
  So, what is the alternative to fixation? Well, stopping time itself, of course!
(Well, that’s pretty hard to do, so the next best thing to do is to freeze cells.)
Now, this talk will not discuss how to freeze cells -- this 'methods'-topic has been covered in depth in many other venues -- but it will focus on the following question: How to look at frozen cells in the electron microscope?
  We must remember that the electron microscope operates in a vacuum, and remember that the electron-beam is extremely hot and has very low penetrating-power, and it images only by atomic mass (by the atomic-number of the atoms, all of which are low in biological samples, just like water). This all means that there are lots of problems with imaging frozen cells with the electron microscope: they're too thick, they get so hot that they melt, and they have almost absolutely no contrast.
  So, in the end, the only way that frozen cells will ever be imaged properly in the EM will be to freeze-dry cryo-sections made with an ultramicrotome, of cells that have been quick-frozen direct from life, without any fixation, and to do this freeze-drying on the cryo-stage of the EM, right before viewing. That way, the samples will be enough thin to see through, and they'll have enough contrast because the background-water that obscured their contrast will have been removed.
  ((Too bad, this approach is utterly, totally, unavailable to anybody today!
Good luck guys...it's for you, the next generation, to accomplish this master goal! Today, I'll just have to talk about second-best alternative ways.))
http://www.icems.kyoto-u.ac.jp/e/ppl/grp/heuser.html
http://www.heuserlab.wustl.edu/

世話人: 宮田真人(内線3157)


2013年12月26日 15:30-16:40、於:810講義室(向って左端の階段教室)

岡田康志 チームリーダー(理化学研究所)

タイトル: モーター分子が細胞内で迷わないのは何故だろう?

要旨: 細胞内物質輸送は、細胞の様々な機能を支える物流システムである。
我々の社会の物流システムの主役がトラックであるのに対し、細胞内物質輸送は
キネシンやダイニンなどの微小管依存性モーター分子が主役である。このモーター分子1個の大きさをトラック1台程度に拡大すると、細胞の広さは大阪府よりも広い。我々はカーナビを用いることで迷うことなく車を走らせることが出来る。では、細胞内でモーター分子が目的地に到達することが出来るのは何故だろう? 本セミナーでは、細胞内に存在する「カーナビ」について、議論する予定です。
http://www.qbic.riken.jp/japanese/research/outline/lab-07.html

本セミナーは「生体機能生物学ゼミナール」として行われます.

世話人: 宮田真人(内線3157)


2013年12月18日(水)18:00 - 19:30、於:理学研究科会議室

井上圭一 先生(名古屋工業大学/科学技術振興機構 さきがけ)

タイトル: 海洋性の細菌から見つかった光駆動型ナトリウムポンプ

要旨: 微生物型ロドプシンは細菌などの微生物の持つ、光受容型の膜タンパク質である。その多くは光駆動型のイオントランスポーターであり、これまで外向きプロトンポンプや内向きクロライドポンプ、カチオンチャネルなどが知られてきた。その中で我々は最近海洋性細菌から、新たに外向きナトリウム(Na+)ポンプとして働くロドプシンを発見した。講演ではその性質や反応メカニズムについて述べるとともに、微生物型ロドプシンを用いた光操作技術(オプトジェネティクス)のための新奇分子開発についても紹介する。
世話人: 寺北明久 (3144)


2013年12月17日(火)16:30 - 18:00、於:学術情報センター1F 文化交流室

上田泰己 先生(東京大学医学系研究科/理化学研究所)

タイトル:  個体レベルのシステム生物学の実現に向けて -体内の「時間」を 理解する-

要旨: 上田泰己先生は、システム生物学分野のトップランナーとして活躍されている先生で、生物の体内時計をモデル系として、動的で複雑な生命現象の“システム”的理解を試み、数多くの優れた成果を発表されています。
 本講演では、体内時計・体内カレンダーの解明の現状を含めた生命科学の現在について、さらには、個体レベルのシステム生物学の実現に向けた試みについてもお話しして頂くことになっています。

世話人: 寺北明久(3144)、小柳光正(2583)


2013年12月11日(水)13:30-15:00、於:理学研究科会議室(C棟2階206室)

宮竹貴久 先生(岡山大学大学院環境学研究科 教授)

タイトル: ある昆虫の活動性と適応度を制御する仕組み

要旨: 生物の形質には個体差がある。しかし、野外で観察できる生き物の個性を支配する生理活性物質の(おそらくわずかな)違いを検出するのは困難なことが多い。生物の行動や性質を 制御する至近 メカニズムの究極性を解くための有効なアプローチの1つが人為選択実験である。本セミナーでは、とくに昆虫を用いて活動性を基礎とした行動の メカニズムと 適応度の関係に関する研究事例を紹介する。

世話人: 志賀向子


2013年12月10日(火)17:00-18:10、於:理学研究科会議室(C棟2階206室)

春田 伸 准教授 (首都大学東京理工学研究科 生命科学専攻)

タイトル: 滑走運動する糸状性光合成細菌の生理と生態

要旨: 糸状性光合成細菌Chloroflexus aggregansは、温泉から分離された70℃まで生育できる高度好熱菌で、最古の光合成生物の一つと考えられている。本菌は、約3μmの桿状細胞が一列につながった長さ80〜400μmの糸状性の細胞が直進するように滑走運動し、その速度は3μm/sに達する。本セミナーでは、本菌の滑走運動の生理的・生態学的性質について最近、明らかになってきた知見を紹介する。

世話人: 宮田真人(内線3157)


平成25年11月28日(木)15:00〜16:30、於:理学研究科第2講義室 (C棟2F)

丸 幸弘((株)リバネス代表取締役CEO)

タイトル: 実践者に聞く、博士号の使い方

要旨: 丸氏は、ポスドクが集まってキャリア開発のために作ったリバネス社の創業者で、
博士課程修了者の就職やキャリアに関して、深い知識と情報をお持ちです。現在、
科学技術の普及と応用や理科教育に関わる、多くのプロジェクトを推進されてい
ます。翌11月29日の博士人材開発フォーラムでも基調講演をされます。

世話人: 科学のプロ育成プロジェクト


2013年10月26日(土) 14:00-15:30、於:8号館 813教室
278.jpg

ハワード・C・バーグ教授 (ハーバード大学・分子細胞生物学科,物理学科)

タイトル: バクテリアべん毛の伸長(学部向け講義,約30分+日本語解説,聴講歓迎)

要旨: べん毛を緑と赤の二色に染める実験を行い,バクテリアべん毛の伸長速度がべん毛が長いときも短いときも同じであること,そして,べん毛タンパク質分子をべん毛軸の管の片側からもう片側へ送るのが,一列にならんだ分子の受動的な拡散で充分であることを結論づけた.

“Growth of bacterial flagellar filaments.” I’d like to describe the green/red labeling experiments that led us to the conclusion that growth occurs at a rate that does not depend on the initial length of the filaments, as well as the arguments that passive single-file diffusion is adequate to get flagellin subunits from one end of the axial pore to the other.
http://www.rowland.harvard.edu/labs/bacteria/people/hberg.php

*本学の方ならどなたでも聴講が可能です.

世話人: 宮田真人(内線3157)


2013年11月1日 15:00 - 16:30、於:理学研究科会議室

元場一彦 (日本農薬株式会社)

タイトル: 近年開発された殺菌剤・殺虫剤等の作用機構

要旨: 農作物の病虫害防除に用いられる農業用殺菌剤や殺虫剤に対して抵抗性を示す標的生物が次々と現れることから、新規に開発される化合物では既存の化合物とは異なる作用機構であること、換言すれば交差抵抗性の関係ないことが開発の成否を握る重要な鍵となっている。また農業用殺菌剤とヒト感染症用殺菌剤でも交差抵抗性を発達させないため、異なる作用機構の化合物を用いることが望ましいのかも知れない。このような状況を背景に、近年では開発着手時にその作用機構に検討が加えられる例が多くなり、種々の知見が蓄積されている。そこで、近年開発された農業用殺菌剤や殺虫剤について、その作用機構をいくつかのトピックスを交えて紹介する。
世話人: 田中俊雄


2013年11月1日(金) 17:00-18:10、於:理学研究科会議室(C棟2階206室)

Prof Howard C. Berg (Department of Molecular & Cellular Biology and of Physics, Harvard University)

タイトル: Adaptation at the output of the chemotaxis signaling pathway

要旨: Much is known about the motile behavior of Salmonella and Escherichia coli. I will mention some history and then describe two recent vignettes, involving adaptation at the output of the sensory-transduction pathway. Receptor methylation is required for adaptation on the second time scale, which enables cells to make temporal comparisons and swim up spatial gradients of attractants.  Without methylation, one still observes partial adaptation, on the minute time scale, as the motor shifts its operating point. The motor also adapts to changes in viscous load. When the load suddenly increases, additional force-generating units are added one by one; thus, the motor is a mechanosensor.


ハワード・バーグ教授は1970年代にバクテリアの遊泳がスクリューの回転で起こっていることを発見されて以来,現在まで,バクテリアの運動と生体分子一分子計測の分野をけん引して来られました.分野の異なる聴衆にも伝わるようにお話しいただけるとのことです.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=berg+hc
http://www.rowland.harvard.edu/labs/bacteria/people/hberg.php

本セミナーは「生体機能生物学ゼミナール」として行われます.

世話人: 宮田真人(内線3157)


2013年8月26日(月) 17:00-18:10、於:理学研究科会議室(C棟2階206室)

柴田敏史 博士(長崎大学歯学部)

タイトル: バクテロイデーテス細菌の滑走運動マシナリーの構造とダイナミクス

要旨: 細菌の運動は生存戦略であり、病原性との関わり、工学的利用の観点から重要な研究対象である。バクテロイデーテス細菌は固体表面にはりつき、滑る様に運動する。この滑走運動には、べん毛やType IV 線毛といったこれまでよく知られている運動マシナリーは使われておらず、新奇運動マシナリーが関与している。本セミナーでは滑走運動マシナリーの構造とその運動様式についての最近の知見を紹介する。
世話人: 宮田真人(内線3157)


2013年8月6日(火) 17:00-18:10、於:2号館 225教室

柿澤 茂行 博士(産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門)

タイトル: 全ゲノム操作技術を用いた難培養性細菌の研究

要旨: 培養できない細菌(難培養性細菌)の研究は一般的に難しいため、新しいアプロー
チが必要である。演者は近年開発された全ゲノム操作技術を用い、まず難培養性
細菌ゲノムを酵母において丸ごとクローニングし、そしてそれを使った新たな研
究を進めている。本セミナーでは、これまでの結果と今後の展望についてご紹介
したい。
世話人: 宮田真人(内線3157)


平成25年6月4日(火)16時30分〜18時、於:理学研究科会議室(C棟2階206室)

須藤 雄気 博士(名古屋大学大学院理学研究科、分子科学研究所)

タイトル: 微生物型レチナールタンパク質の理解と利用

要旨: 光は生物にとって第一義的に重要なエネルギー源であり情報源である。生物が光を認識する分子実体は光受容タンパク質であり、古くからその機能発現メカニズムについて盛んに研究が行われている。また、近年、光受容タンパク質の特性を利用し、細胞や個体の行動を光で操作する手法(オプトジェネティクス:光遺伝学)が開発され、ツールとしての利用も盛んである。
 ビタミンAのアルデヒド型であるレチナールを発色団とする7回膜貫通型光受容タンパク質は、総称して“レチナールタンパク質”と呼ばれる。10年ほど前までは、比較的限られた生物種のみが持つ稀なタンパク質と考えられていたが、現在では生物の三大ドメイン(古細菌、真正細菌、真核生物)に万を越える分子が幅広く存在することが知られている。これらレチナールタンパク質の光反応は、フェムト秒で起こるレチナールのトランス<->シス異性化という“共通のイベント”により開始されるが、最終的な生理機能は“多様”であり、イオン輸送体としてエネルギー産生に関わるだけでなく、光センサーとして情報伝達を司る。私達は、様々なテクニックを駆使して、微生物型レチナールタンパク質の単離・同定と機能発現機構の理解を目指した研究を行っており、最近では、分子科学に立脚した光操作ツール開発も行っている。
 本発表では、最近の成果を中心に、分子特性や機能発現機構、さらには光操作ツールとしての応用的側面についても議論し、5年後、10年後の光受容タンパク質研究を考えたい。

世話人: 寺北明久 (3144)


2013年5月9日(木)16時〜18時、於:理学研究科会議室(C棟2F)

橋本 主税 博士(JT生命誌研究館 主任研究員)

タイトル: 両生類胚の原腸形成運動とは?

要旨: 両生類の原腸形成運動の研究は一世紀に渡って続いており、近年では分子生物学の知見の集積により、過去の実験発生学の諸問題が遺伝子レベルで解明されてきている。その発展に最も大きく貢献したのはツメガエルと分子生物学の相性の良さであろう。すなわち、イモリなどの発生現象をツメガエルの分子生物学によって解明してきたという図式が大まかになりたつ。その前提には少なくとも両生類の発生過程は基本的に共通であるという認識が存在し、だからこそ、その実験に最も適している動物で解析した結果を統合して共通理解とするわけである。しかし、発生過程を丁寧に観察すると、どうも昔から教科書に書かれているような形態形成運動が少なくともツメガエルでは起きていないように見える。ではツメガエルの形態形成運動は実際にはどのように進むのか?それは他の両生類種と質的に異なるのか?あるいはやはり共通な機構でなされているのか?という疑問が必然的に生じる。
 これらの疑問に答えるために、我々はツメガエルとアカハライモリの発生過程を比較しその原腸形成運動が互いにどう似ておりどう異なっているのか?それらをどう解釈すれば共通理解に至るのか?についての研究を行なっている。その結果として、一見すると極端に異なっているように見える両者の形態形成運動が視点をずらすことでかなり似通って見えることを見いだした。これらの知見について本セミナーでは簡単に紹介させていただき、内容に関して活発な議論をお願いしたい。さらに、この両者の比較から導き出せる原腸形成運動の「両生類モデル」が少なくともトリの原腸形成に似ているように見えることから、両生類モデルが脊椎動物全般の原腸形成過程を説明する統一モデル構築への議論に耐えられるのかについても討論をさせていただきたい。遺伝子や分子の難しい話はいっさい出てこないので、学部学生にも理解できる内容である。ぜひ皆さんからの新鮮なコメントをたくさんいただけることを期待する。

世話人: 水野寿朗(内線3159)


平成25年3月8日(金)14:00〜15:30、於:理学研究科会議室 (C棟2F)

曽我亜紀 (ユニード国際特許事務所)

タイトル: 知的財産を守る: 弁理士の仕事

要旨: 科学のプロ育成プロジェクト講演会

世話人: 科学のプロ育成プロジェクト講演会


2012年11月21日(水) 17:00-18:10、於:2号館 225教室

島袋 勝弥 博士 (宇部工業高等専門学校 物質工学科)

タイトル: Ascaris精子をもちいたアメーバ運動装置のin vitro再構成

要旨: 線虫精子は鞭毛を持たずに、アメーバ運動で基板上を這って移動する。通常、アメーバ運動にはアクチン細胞骨格が使われる。しかし、線虫精子はアクチンを持たず、全く独自の細胞骨格タンパク質、MSP(Major Sperm Protein)を利用してアメーバ運動を行う。昨年、我々は線虫の一種、豚回虫(Ascaris)を用いて、MSPのアメーバ運動装置をin vitroで再構成できることを示した。本セミナーでは、まず線虫精子の運動とMSPについて紹介し、そしてin vitro再構成系と、そこから見えてきたアメーバ運動の仕組みについて議論したい。

世話人: 宮田真人(内線3157)


2012年10月15日(月) 17:00-18:00、於:理学研究科第二講義室

鎌田勝彦 博士 (理化学研究所)

タイトル:  バクテリアSMC蛋白質の制御機構

要旨: 真核生物の分裂期における染色体の凝縮は、遺伝情報の正確な伝達に必須な過程である。それには、SMC(structural maintenance of chromosomes)とよばれる一群の蛋白質が、染色体構造の維持に深く関わっている。一方、原核細胞の染色体DNAは、核様体と呼ばれる形で原形質に存在しているが、一部のバクテリアでは、一定単位の配向性をもって細胞内に存在している。講演者は、バクテリアの制御サブユニットの分子構造の理解を端緒として、染色体分配機構へ結びつく包括的な理解へ研究を進めている。今回、バクテリアのSMC複合体の制御サブユニットによるSMC蛋白質のATP加水分解制御機構を、構造生物学的及び分子生物学的アプローチで明らかにした。

世話人: 宮田真人(3157)


2012年10月11日(木)17:00-18:00、於:理学研究科会議室(C206)

Dr. Bárbara M. Calisto (European Synchrotron Radiation Facility)

タイトル:  A structural biology approach to unravel the functioning of Mycoplasma genitalium terminal organelle

要旨: Mycoplasma genitalium is the bacterium with the smallest genome found in self-replicating organisms. One of its most remarkable features is the presence of a complex cytoskeleton that forms a protrusion at the cell membrane, the terminal organelle. This protrusion, which is involved in cell motility, cell division and adhesion to host cells, is composed by twelve proteins that form three major structural parts: terminal button, electrondense core and wheel complex. In order to identify ‘crystallizable’ targets out of these ultra-structures we combined data from biochemical, biophysical and structural biology methodologies which revealed the protein-protein interactions that lead to the formation of the wheel complex.

ヒト病原菌,“マイコプラズマ”が運動,分裂,接着を起こすための器官を構成するタンパク質の研究です.

世話人: 宮田真人(3157)


2012年9月19日, 17:00-18:00、於:理学研究科会議室 (C206)

Joshua W. Shaevitz PhD (Physics and Genomics, Princeton University)

タイトル: Collective pattern formation and group behaviors from molecules to populations

要旨: From wildebeest herds to biological molecules and every scale in between, how individuals self-assemble into large, spatially complex groups is a key problem in understanding collective behavior, development, multicellularity, and cellular function. I will discuss recent measurements we have made that explore the molecular origin of cell size determination and the emergence of collective motion in populations of social bacteria.

Joshua SHEAVITZ教授は,2004年まで,RNA重合酵素の反応素過程を光学顕微鏡でとらえる研究をしていました.2004年からは細菌の未知の運動メカニズムや,細菌の細胞や細胞集団の構築メカニズムにかんする研究を行い,数多くのたいへん重要な発見をされてきました.
https://sites.google.com/site/shaevitzlab/
世話人: 宮田真人(3157)


2012年9月12日 11時〜12時、於:会議室 C206

Prof. Monika Stengl (Univ. of Kassel)

タイトル: Photoperiod-dependent plasticity of the circadian pacemaker center of the cockroach Rhyparobia maderae (Leucophaea maderae)

要旨: Lesion and transplantation studies located the circadian pacemaker
center of the Madera cockroach Rhyparobia maderae in the accessory
medulla (aMe) of the brain´s optic lobes. The aMe is innervated by
neurons which are abundant of many different colocalized neuropeptides
such as pigment-dispersing factor (PDF). Four different groups of
PDF-immunoreactive (PDF-ir) neurons arborize in the aMe controlling
locomotor activity rhythms and also synchronizing both bilaterally
symmetric pacemaker centers.
 To determine whether the circadian system of the Madeira cockroach
detects and responds to different photoperiods we searched for
photoperiod-dependent changes in the network and in the physiology of
the circadian pacemaker system. With immunocytochemical studies we found
that the network of PDF-ir circadian pacemaker neurons changes if
cockroaches were raised in different photoperiods. Also, when adult
cockroaches raised in 12:12 L:D cycles were transferred for a few weeks
into long- or short-day L:D cycles the network of PDF-ir neurons changed
respectively. With calcium imaging experiments it was shown that
photoperiod-dependent changes in electrical activity take place at the
level of single pacemaker neurons..
 Our preliminary data suggest that subgroups of aMe cells can distinguish
different photoperiods. Therefore, the circadian clock of this
circum-equatorial species can acquire some properties of a photoperiodic
clock. [Supported by DFG grants STE5
世話人: 志賀向子 (2574)


2012年7月27日(金)17:00-18:30、於:理学研究科会議室

小池雅文 博士 (大阪大学微生物病研究所)

タイトル: レジオネラIVB型分泌装置の電子顕微鏡による構造解析

要旨: 感染性細菌レジオネラはアメーバやヒトの細胞に侵入し、ヒトにおいては時に重篤な肺炎症状を引き起こします。レジオネラはプラスミド接合伝達系と起源を共にするIV 型分泌系に分類される病原因子分泌機構を用いて宿主へ感染します。IV 型分泌系は、アグロバクテリウムのものに近縁なIVA 型分泌系と、レジオネラに近縁なIVB 型分泌系に大別されます。どちらもプラスミド接合伝達系を起源に持ちながら、両者の構成要素はあまり似ていません。私たちはIVB型分泌機構の解明を通じてレジオネラ感染の実体に迫りたいと考えています。近年、IV型分泌系研究は、IVA 型分泌装置の構造解明が引き金となり、急速に進展しつつあります。一方、IVB 型分泌装置についても、当研究室における構造生物学的研究から色々なことが見えてきました。ところが、肝心の全体構造は未解明のままでした。今回は、レジオネラ感染の本質ともいえるIVB型分泌装置の電子顕微鏡による構造解析研究を紹介します。
世話人: 宮田真人(内線3157)


2012年7月27日(金)17:00-18:30、於:理学研究科会議室

佐藤啓子 博士 (長崎大学医歯薬総合研究科)

タイトル: バクテロイデーテス細菌の滑走運動と分泌

要旨: バクテローデーテスグループの細菌は動物の消化器官、水系、土壌など様々なところに生息し、このグループに属する運動性細菌の多くは滑走運動によって動く。滑走運動をおこなうには、運動装置を菌体表層に輸送するタンパク質分泌装置が不可欠だが、バクテロイデーテスではPorタンパク質分泌装置が、滑走タンパク質、および、その他の菌体表層タンパク質の輸送に関わることが分かってきた。このタンパク質輸送装置はバクテロイデスグループの運動性および非運動性菌の間で広く保存されている。少しずつ分かってきたこれらのことについて紹介したい。
世話人: 宮田真人(内線3157)


2012年6月29日(金)17:00-18:10、於:理学研究科会議室

南野 徹 准教授(大阪大学大学院生命機能研究科)

タイトル: バクテリアべん毛蛋白質輸送装置のエネルギー産生機構

要旨: バクテリアの運動器官であるべん毛は約30種類の蛋白質からなる超分子複合体で、回転モーターとして働く基部体、ユニバーサルジョイントであるフック、らせん型プロペラとして機能する繊維の3つの部分構造からなる。細胞質内で合成されたべん毛蛋白質は、べん毛基部に存在する独自の蛋白質輸送装置によって認識され、べん毛先端へと輸送される。本講演では、べん毛蛋白質輸送装置のエネルギー産生機構についての最近の知見を紹介する。
世話人: 宮田真人(内線3157)


2012年4月27日(金)16:30-18:00、於:8号館 816教室

古谷祐詞 先生(自然科学研究機構分子科学研究所、総合研究大学院大学物理科学研究科、科学技術振興機構さきがけ)

タイトル:  タンパク質のまちがい探し 〜赤外吸収差スペクトル法とは?〜

要旨: 生化学や分子生物学の教科書を開くと、ナノサイズのタンパク質の形がリボンやテープのようなもので表現され、その美しい絵に感動させられる。また、最近では回転したり、走ったりと躍動する姿まで見ることが可能になっている。しかしながら、実はそのような運動は微細な化学結合の変化によって引き起こされている。本講演では、タンパク質の構造のわずかな変化(まちがい)を赤外線を用いた分析手法(FTIR)で調べる方法について概説し、それがタンパク質のはたらく仕組みを理解する上でどのように利用されているかを紹介する。
世話人: 寺北明久 (内3144)


2012年4月27日(金)14:30−16:00、於:2号館225教室

田中哲也先生(イリノイ大学 畜産学部 ゲノム生物学研究所)

タイトル: 胚性幹細胞の奇形腫形成におけるGsk3βの役割

要旨: 哺乳類の着床前期胚から樹立される胚性幹細胞は、ほとんど全ての細胞種に分化する能力を保ちながら、半永久的に自己新生することの出来る幹細胞である。それ故に、胚性幹細胞は細胞分化の仕組みを解明するための系として基礎研究に広く用いられる一方で、再生医療を目的とした人工組織の作製にも応用されている。しかし胚性幹細胞は、成熟した宿主免疫不全マウスの皮下、精巣、あるいは腎臓へ移植されると良性の奇形腫を形成する。これらの特性は、分化した細胞から樹立されたiPS細胞にも確認されている。従って、ヒトiPS細胞を用いて作製された人工組織を患者へ移植することは、奇形腫を発生させる危険性を伴う。多分化能を持つこれらの幹細胞が奇形腫に分化する遺伝子レベルのメカニズムは、未だ明らかにされていない。
 当研究室は、無血清培地で維持されたマウス胚性幹細胞が奇形腫形成能を低下させていること、また同培養下の胚性幹細胞においてGlycogen synthase kinase 3β (Gsk3β) の活性を阻害すると、その奇形腫への分化が高い頻度で起こることを報告した (Li, et al., PLoS ONE 6, e21355, 2011)。そこで、恒常的に活性化されたGsk3β(S9A)を発現する胚性幹細胞は、通常培養条件下で奇形腫に分化しないという仮説を立てた。遺伝子導入により樹立した野生型Gsk3βとS9Aを発現する胚性幹細胞ラインを用いて得られた結果について報告する。
世話人: 小宮 透


2012年4月4日(水) 17:00-18:00、於:理学研究科会議室
199.jpg

西坂崇之教授(学習院大学理学部物理)

タイトル: Imaging Structure and Function of Motor Proteins under Advanced Optical Microscopes

要旨: Motor proteins are molecular machine that converts chemical energy into mechanical work. To establish the molecular basis of their mechanism, my research group has focused on both linear motors (myosin and kinesin) and a rotary motor (F1-ATPase), and applied 'single molecule technique' to them. In the seminar, advanced technique of optical microscopes and our recent model how motor proteins work will be presented.
世話人: 宮田真人(内線3157)


12月23日(金)13:00〜14:30、於:理学研究科会議室

高須英樹(和歌山大学教育学部・教授)

タイトル:   植物の雌雄性をめぐって

要旨: 高等動物と異なって、被子植物の性表現は非常に複雑です。これは送粉動物特に昆虫との共進化のたまものと考えられています。こうした被子植物の雌雄性の具体例を野外データに基づいて紹介したいと思います。
世話人: 平澤


2011年12月13日(火) 15:30-17:00、於:理学研究科会議室

井鷺裕司先生(京都大学大学院農学研究科・教授)

タイトル: 全個体遺伝子型解析による生物保全の試み

要旨: 生物多様性の重要性は広く認識されつつあるが、種の絶滅に関しては依然として深刻な状況にあり、個体数 が数十〜数百にま で減少した種も少なくない。これらの種に関しては、全個体の遺伝子型をすべて決定(ユビキタスジェノタイピング)し、その情報に基づいて 人工交配、移植、 生育地外保全などの策を講じることが有効である。この解析アプローチにより、100個体以上生存していると思われていた種が遺伝的には1個体であった例、個体群ごとに遺伝的特徴が著しく異なり個体群の遺伝的質と保全努力とが一致していない例、野生と思われていた個体群が過去に人為的に 増殖・移植されていた例など、絶滅危惧植物の興味深い実態が明らかになってきた。(自然誌機能生物学ゼミナール)
世話人: 伊東明・名波哲(3167)


2011年11月10日(木) 15:00〜16:30、於:理学研究科会議室

峰雪芳宣先生 (兵庫県立大学大学院生命理学研究科・教授)

タイトル: 3Dイメージングによる植物細胞の枠組み構築機構の解析

要旨: 峰雪先生は、電子線トモグラフィーやマイクロCTを使った植物細胞微細構造のナノ・マイクロレベルでの3D定量解析において、顕著な業績をあげておられます。最近は、局所・大局ライブイメージング顕微鏡システムを開発され、植物の細胞分裂面挿入位置の制御機構を解析されています。本ゼミナールでは、植物細胞の枠組み構築機構について、最新の知見を交えてお話しいただきます。
世話人: 保尊隆享 (2577)


20111014, 13:30-14:30、於:理学研究科会議室
162.jpg

植木雅志 先生(理化学研究所/専任研究員)

タイトル:  放線菌由来二次代謝産物生合成酵素の機能解析と基質特異性改変

要旨: サイトトリエニンは、HL-60 細胞などの動物培養細胞に対して低濃度でアポトーシスを誘導する物質として、土壌由来Streptomyces 属放線菌RK95-74 株の培養液から単離された。トリエン骨格を有し、アンサトリエニンの構造に類似していたが、側鎖部分にシクロプロパンを有する特徴的な構造を有していた。放線菌を含め、原核微生物よりシクロプロパン構造を有する代謝産物は極めて珍しく、その生合成過程に興味が持たれた。

世話人: 田中俊雄(3163)


10月13日 午後5時30分から、於:理学部会議室

高橋勇輔 博士(University of Oklahoma Health Sciences Center (Assistant Professor))

タイトル: Enzymatic properties of isomerohydrolase and its functional diversity.

要旨: Recycling of 11-cis retinal (11cRAL) through the retinoid visual cycle is an essential process for the regeneration of Visual pigments and for normal vision. RPE65 is a membrane-associated protein which is abundantly expressed in the retinal pigment epithelium (RPE). We and other groups independently identified that RPE65 is the isomerohydrolase, which Catalyzes the conversion of all-trans retinyl ester (atRE) to 11-cis retinol (11cROL), a key reaction in the RPE-dependent visual cycle.
In addition, it is considered that there is an alternative visual cycle in the cone-dominant retina. Accumulating evidence suggests that cone-dominant species express an alternative isomerase, likely in retinal Muller cells, in order to meet the high demand for chromophore by cones. Therefore, we initiated a project to clone and characterize novel isomerohydrolases in the RPE-independent (intra-retinal) visual cycle of cone-dominant species.
In this lecture, I will introduce recently identified two novel isomerohydrolases, RPE65c from the retina and 13cIMH from the brain of the cone-dominant zebrafish.(生物分子機能学ゼミナール)

世話人: 寺北明久 (3144)


9月29日(木) 13:00-14:30、於:理学部会議室
157.jpg

宇高寛子 博士 (ウェスタンオンタリオ大学・博士研究員)

タイトル: ゾウムシCuruculio glandiumの低温耐性 -カナダでの研究生活とその成果-

要旨: 昆虫はさまざまな環境下で冬の寒さをやり過ごす。土中で越冬する種は多いが、それらがどのような低温耐性をもっているのかは実はあまり知られていない。ゾウムシの一種Curuculio glandiumのメス成虫はドングリの中に産卵し、幼虫はドングリを食べその中で成長する。秋にドングリが地面に落下すると、幼虫はドングリから出、地中に潜って越冬する。本種の低温耐性を明らかにするため、凍結温度、致死温度や,野外条件での低温耐性の季節変化などを調べた。その結果、本種は凍結すると死亡し、冬季は体内の水分量を減らすことで低温耐性を高めている可能性が示された。

世話人: 志賀向子/平澤栄次(後藤慎介)(2573)


8月3日(水)午後4時30から6時ぐらいまで、於:学術情報総合センター5F AVホール

Professor Enrico Nasi (Universidad Nacional de Colombia, Bogota, Colombia and Marine)

タイトル: PHOTOTRANSDUCTION SCHEMES: BEYOND THE TRADITIONAL

要旨: Nasi教授は形態学的、進化学的に興味深い光受容細胞のシグナル伝達系を2次メッセンジャーとチャネルを中心に電気生理学的手法で解析し、光シグナル伝達系の多様性と普遍性について興味深い発見を多く発表されています。

It has long been thought that animal photoreceptor cells are partitioned into two distinct classes - with characteristic morphology, light-signaling cascades, and physiology - and that these follow the vertebrate/invertebrate taxonomic boundary. This is a curious notion, in view of the fact that both photoreceptor lineages precede the split between protostomia and deuterostomia. Moreover, molecular analysis of a large pool of organisms has recently uncovered additional rhodopsin subclasses, hinting at the existence of a more diverse spectrum of phototransduction pathways. The classical view was first called into question by the presence in the eyes of Pectinidae mollusks of ciliary photoreceptors with a hyperpolarizing receptor potential and a cyclic-nucleotide-based phototransduction cascade. This is not just a transgression of the separation between vertebrate and invertebrate vision: the novel photoreceptors express a different G protein, Go, which, as shown by pharmacological and siRNA manipulations, mediates light sensitivity. Moreover, the mechanism of cyclic nucleotide mobilization seemingly entails light-dependent regulation of their synthesis - rather than degradation &#8211; in a way that parallels transduction by chemoreceptive neurons. An analogous surprise shook the long-held belief that rods and cones are the only type of photoreceptors of vertebrates, when melanopsin-utilizing light-sensitive retinal ganglion cells were discovered. Photopigment homology and physiology prompted the suggestion that such ‘circadian’ receptors are ancestrally linked to invertebrate rhabdomeric photoreceptors, even though the defining microvillar architecture is conspicuously missing. The primitive chordate, amphioxus, has melanopsin-expressing microvillar photoreceptors that bridge this gap and provide an interesting model system to examine phototransduction mechanisms. The physiology of their light response and the demonstration of an underlying Gq/PLC/Ca-dependent cascade supports the representation amongst chordates of a lineage of photoreceptors previously considered a prerogative of invertebrates, shedding new light on the genealogy and evolutionary history of photoreception.(生物分子機能学ゼミナール)


世話人: 寺北明久 (3144)


8月2日(火)午後4時30から6時ぐらいまで、於:学術情報総合センター5F AVホール

Professor Shaun P. Collin (The University of Western Australia)

タイトル: A window to an ancient environment: Visual and non-visual

要旨: Collin教授はオーストラリアに生息する進化的に重要な動物の光受容システムについてユニークな研究を展開されています。今回は、数種類のヤツメウナギの解析に基づいて、視覚や非視覚進化や光環境の変遷について議論される予定です。

The cyclostomatous lampreys are the earliest representatives of the first vertebrates and are divided into three families, the Petromyzontidae in the Northern hemisphere and the Geotriidae and Mordaciidae in the Southern hemisphere. Our research has examined both visual and non-visual photoreception in representatives from each of these three families and found remarkable differences in the complement of photoreceptors, their spectral sensitivities and their visual pigments (opsin genes). My lecture will compare visual (image formation) and non-visual (circadian entrainment) photoreception in the inner and outer parts of the retina and the epiphyseal (pineal) complex of the central nervous system of three key representative species. Based on anatomical, spectral and molecular data, we suggest that each species occupies a unique ecological niche according to the levels of environmental light and spectral filtering it encounters. These studies provide a unique window to life in an ancient environment.(生体分子機能学ゼミナール)

世話人: 寺北明久 (3144)


7月27日(水) 15 :00〜、於:理学部会議室

呉 恒寧 (細胞機能学研究室)

タイトル: マイコプラズマ・モービレの抗原性変化と、表面タンパク質の網羅的同定

要旨: 学位取得希望者の学位論文中間発表会を行います。多数ご来聴くださいますようお願いいたします。また、生体機能生物学ゼミナールとして開催しますが、他大講座の方 の来聴も歓 迎いたします。(生体機能生物学ゼミナール)

世話人: 中村太郎(3156)


2011年7月12日(火)午後5時から6時30分、於:8号館 830教室

Shozo Yokoyama 教授 (Emory University (USA))

タイトル: Synthesis of experimental molecular biology and evolutionary biology

要旨: 視覚の薄明視を例に、適応進化を変異体を用いた実験により解明するというお話しで
す。視物質の分子進化では、トップランナーのお一人です。

Natural selection has played an important role in determining various
phenotypes, but molecular mechanisms of phenotypic adaptation are not well
understood. The slow progress is consequence of mutagenesis experiments
using modern DNA sequence and the limited scope of statistical methods used
to detect adaptive evolution. To appreciate fully phenotypic adaptation,
the precise roles of adaptive mutations during phenotypic evolution must be
elucidated by engineering and manipulating ancestral phenotypes.
Experimental and quantum chemical analyses of dim-light vision reveal some
surprising results and provide a foundation for a productive study of
adaptive evolution of various phenotypes.(生体分子機能学ゼミナール)

世話人: 寺北明久 (3144)


2011年6月30日(木),13:30〜14:30、於:理学部会議室

関 さと子 博士 (大阪府・バイオ人材マッチング推進委託事業・コーディネーター,テンプスタッフ株式会社) 

タイトル: キャリアセミナー「研究者のキャリアパスを考える」

要旨: 博士号取得者の進路は研究職に偏っていますが、ポスドク等の有期雇用が多く、期間の定めのない研究職の求人はアカデミア・民間ともに少ない状況です。一方で、大学院で得られる知識や能力は様々な分野でいかすことができます。
 このような状況では、研究職を目指す場合にも、キャリアチェンジを考える場合にも、自己分析と具体的な目標設定が重要です。なぜ要求と強みを把握する必要があるのか、具体的な例をあげて解説します。 また、企業が修士卒と博士卒に期待することを紹介するとともに、実際に大阪府の事業から就職した博士の事例をあげて、博士のキャリアの多様性について具体的に紹介します。

世話人: 幸田正典 (2584)


2011年6月17日(金)13:30〜、於:理学研究科会議室

上田純一先生 (大阪府立大学大学院理学系研究科・教授)

タイトル: 植物の重力応答反応とオーキシン動態

要旨: 上田先生は、植物ホルモンの1つであるジャスモン酸の発見者で、ホルモン類の生理活性に関して顕著な業績をあげておられます。また、STS-95スペースシャトルにおいて宇宙実験を行い、オーキシン極性輸送に対する重力の作用を明らかにされました。本ゼミナールでは、植物の重力応答反応とオーキシン動態の関係について、最新の知見を交えてお話しいただきます。(生体機能生物学ゼミナール)

世話人: 保尊隆享 (2577)


June 9th, 2011, 13:00-14:30、於:理学部会議室

Prof. Jean-FranCois Picimbon (Shandong Academy of Agricultural Sciences)

タイトル: From biological studies to agricultural aspects of insect olfaction, ORSA new weapons against insect infestation

要旨: Pheromones are traditionally seen as key messengers of sex partners seeking for mating. The chemical nature of pheromones is well known in insects and in particular in moths. It rather remains a field of explore in vertebrates. As a result, pheromone structures, pheromone production and pheromone perception mechanisms are extensively studied but with studies restricted to insects. More recently, pheromones have been set up for insect pest control management. Pheromone applications remain, however, limited generally to monitoring of insect and in particular moth populations. Discovery of the molecular mechanisms underlying insect olfaction (odor binding proteins, olfactory receptors) have led to a new concept for the control of insect pests. Odorant Receptor Suppressing Agents are proposed to help solve the insect problem by interfering with the chemosensory capacity of insects.
世話人: Sakiko SHIGA (2574)


20110513, 17:00-、於:225教室

森本雄祐 博士 (大阪大学大学院生命機能研究科 プロトニックナノマシン研究室)

タイトル: バクテリアがもつハイスペックな回転モーター

要旨: 大腸菌などのバクテリアは、べん毛と呼ばれる運動機関を用いて水中を自由に動き回っている。べん毛の根元に存在する回転モーターは細胞内外に形成される水素イオンの電気化学ポテンシャル差を利用してトルクを発生させることにより高速回転する。しかしながら、この高効率なエネルギー変換機構についての詳細は明らかになっていない。べん毛モーター研究における最新の計測手法と、それによって得られた結果を紹介する。
世話人: 宮田真人(3157)


4月13日(水)午後5時から午後6時30分ごろまで、於:学術情報総合センター5F AVホール

富岡憲治 教授 (岡山大学大学院自然科学研究科)

タイトル: 昆虫概日時計の振動機構の解析

要旨: 昆虫概日時計の振動機構の解析はキイロショウジョウバエで進んでおり、periodを始めとする一群の時計遺伝子とその産物タンパク質によるフィードバック機構が約24時間の振動を作り出すと考えられている。しかし、この仮説の一般性は十分には検討されていない。われわれは、RNAiを利用した時計関連遺伝子の機能解析により、コオロギ、シミなどの非モデル昆虫の概日時計分子機構を明らかにしつつある。このセミナーでは、これらの昆虫の時計機構がハエよりもむしろ脊椎動物に類似していることなど、最近われわれが得た知見を紹介する。

世話人: 寺北明久 (3144)


3月17日午後5時から午後6時30分ごろまで、於:学術情報総合センター5F AVホール

嘉糠洋陸 教授 (帯広畜産大学 基礎獣医学研究部門/原虫病研究センター)

タイトル: 病原体を媒介するハエのバイオロジー

要旨: 感染症の本質は、個体と病原体に存在する「侵入する・侵入される」という単純な生物学的関係にあるといえる。感染症に関わる宿主側調節因子や病原性因子が明らかとなり、そこから病原体と宿主間で成立する相互関係が理解されれば、感染症を支える共通フレームの俯瞰に結びつくと期待される。そのためにも、近年の生命情報の革新的進歩を踏まえ、病原体と個体(宿主・媒介者)の“一対一の局面”の中でどのような現象が起きているのか、あらためて見直す必要に迫られている。
宿主は、病原体に対峙したとき、二通りの異なった抵抗戦略をとると考えられる。侵入した病原体に対して、それらを排除するための「レジスタンス機構」、もうひとつは、その病原性と共存する「トレランス機構」である。前者には自然免疫や獲得性免疫等が含まれるが、後者については、その存在を含め大部分が明らかになっていない。また、一見すると共生関係が成立している関係においても、このレジスタントとトレランスが複雑に絡み合っていることが徐々に明らかとなってきた。
我々の研究グループでは、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を病原体媒介モデル生物として用い、主にトレランスなどの病原体?媒介者間相互作用について研究を進めている。これらのモデル生物を軸に、感染事象を徹底的にマニピュレーションすることによって明らかにした感染 抵抗性に関わるメカニズムについて、我々の最新の知見を紹介したい。(生物分子機能学ゼミナール)
世話人: 寺北明久(3144)


2011.3.3, 16:00〜17:20、於:理学研究科第二講義室

片山栄作 博士 (千葉大学・工学部・共生応用化学部)

タイトル: アクチン滑り運動にともなうミオシン頭部の構造変化

要旨: 片山先生は,アクチン繊維の上を滑っていくミオシン頭部を瞬間的に凍結し,
フリーズフラクチャー電子顕微鏡観察を行うことで,
運動時におけるミオシン頭部の構造変化を明らかにされました.
長年にわたって生体運動研究と電子顕微鏡技術を牽引されてきた片山先生の集大成です.(宮田)

世話人: 宮田真人 (3157)


2010年11月5日 午後4時から5時、於:理学研究科会議室

本学客員教授 元場一彦 氏(日本農薬株式会社)

タイトル: 殺虫剤フルベンジアミドの作用機構: カルシウム動態への影響

要旨: *
世話人: 田中俊雄(3163)


2月4日(金)13:30-15::30、於:理学研究科会議室

東 正剛 教授 (北海道大学大学地球環境科学研究院)

タイトル: 自然誌機能生物学ゼミナール

要旨: @ツムギアリを用いたレフュージア仮説の検証
A生物はどこまで過酷な環境に耐えられるか、モデル生物となったヨコヅナクマムシの話

以下 補足(高木)
@は系統解析に基づいた話です。東アジアの昆虫などは一地域に起源します。インドにも同様のレフージアが存在した?の検証を試みるものです。
Aは札幌のある橋の上で見つかった極限耐性動物に関するものです。日本人が発見したヨコヅナクマムシの解析に最初に手を挙げたのはNASAでした。しかし、その動きに日本人研究者が敏感に反応し、短期間で全ゲノムの解析に辿り着いたという背景があります。
生態学系以外の方々にも楽しんでいただけるものと思います。(自然誌機能生物学ゼミナール)

世話人: 高木昌興


2011年1月21日(金)13:30-15:30、於:理学部会議室

岡ノ谷一夫 先生(東京大学大学院総合文化研究科 教授)

タイトル: 小鳥の歌と4つの質問

要旨:  小鳥の求愛のさえずりは、その音響構造の豊かさから「歌」とも呼ばれる。私
は20年にわたり、鳴禽類の一種であるジュウシマツの歌を、ティンバーゲンの
4つの質問(仕組み、発達、機能、進化)に基づき理解しようとしてきた。ジュ
ウシマツは約250年前に中国から日本に輸入されてきたコシジロキンパラを、
日本において繁殖効率のよさを基準に選択交配してきた家禽種である。歌につい
て選択交配を行った記録は一切ないが、ジュウシマツの歌とコシジロキンパラの
歌は大きくことなる。ジュウシマツは様々な音響特性を持った要素を複雑な系列
でうたうが、コシジロキンパラは変異の少ない音要素を一定の順番で並べてうた
う。このような差異が生じた理由を、脳で発現する遺伝子の差異から生態学的環
境の差異に至るまで、様々な視点で解明しようとした結果を解説する。なお、こ
の講演は筆者の近著である「さえずり言語起源論:新版小鳥の歌からヒトの言葉
へ」(岩波書店)にもとづいて行われる。(自然誌機能生物学ゼミナール)

世話人: 志賀向子 (2574)


2010年11月22日(月)午後5時より、於:理学部第2講義室

高松宏治 氏 (摂南大学薬学部)

タイトル: 枯草菌の胞子に含まれるタンパク質の局在性と機能

要旨: 枯草菌の胞子は熱などに対する耐久性と長期休眠能を備えている。蛍光 タンパク質を用いた局在解析や遺伝子破壊株を用いた機能解析などにより、胞 子に特異的な機能の獲得や構造体の形成に関わる因子を同定した。(生体機能生物学ゼミナール)

世話人: 中村太郎(3156)


2010年10月26日(火)午後4時から5時30分まで、於:学術情報総合センター1F 文化交流室

佐甲靖志 主任研究員(理化学研究所)

タイトル:  細胞膜情報処理蛋白質の1分子動態

要旨: 上皮成長因子受容体(Epidermal growth factor receptor: EGFR)は、細胞膜を1回貫通するチロシンリン酸化酵素型膜受容体に属する膜内在性蛋白質であり、細胞増殖にかかわる情報処理反応をおこなっている。EGFがEGFRの細胞外ドメインに結合するとEGFRは信号伝達のための2量体を形成し、細胞質側で相互リン酸化反応を起こす。EGFRのリン酸化は多種の細胞質蛋白質によって認識される。これらの認識反応の結果のひとつとして、細胞膜の細胞質側に存在する膜表在性蛋白質Rasの活性化がおこり、Rasは種々のエフェクター分子の活性化を制御する。本講演では、細胞内および再構成系における1分子蛍光計測法により明らかになった、EGFRとRasの情報処理反応について報告する。EGFとEGFRの結合反応、EGFRの多量体形成と信号伝達2量体の形成反応、活性化したEGFRとアダプター蛋白質Grb2の認識反応、Rasの活性化とエフェクターRafの分子認識反応などが話題である。1分子計測の結果は、EGFRやRafの動的な構造変化が、蛋白質1分子レベルでの複雑で合目的的な細胞内情報処理反応を可能にしていることを示唆している。(生物分子機能学ゼミナール)
世話人: 寺北明久(3144)


2010年10月20日(水)午後4時から5時30分まで、於:理学部会議室

石川冬木教授(京都大学大学院生命科学研究科)

タイトル: Bridge over troubled water

要旨: 真核生物の末端はテロメアと呼ばれ、線状DNAの末端部分に相当する。DNAの3’末端はDNA合成のプライマーとなったり、生体内に豊富に存在するDNA消化酵素や組換え酵素の基質となりうる。そのため、無保護のDNA末端は、さまざまな反応を介して、ゲノムの不安定化に寄与する。テロメアは、そのようなDNA末端が安定に維持されるために必須なドメインであり、その機能不全は老化やがん化などの疾患の原因となる。
最近、私たちは、テロメア最末端と内側の領域に架橋することで、テロメアを動的に制御しているものと思われる特異的複合体を同定したので、それらについてご紹介したい。(生体機能生物学ゼミナール)

世話人: 中村 太郎(3156)


2010年7月30日,17:00〜、於:理学研究科会議室

佐藤主税 博士 (産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門)

タイトル: 透過電顕と走査電顕を用いたタンパク質・細胞の新しいイメージング法

要旨: 電子顕微鏡は本来数Å程度の分解能を有する装置である。しかし、生物試料では照射できる電子線量が限られ、さらに真空中で観察しなければならない。そのため、応用範囲が限られてきた。この問題を克服するために、精製されたタンパク質の透過電顕画像に情報学による手法を組み合わせることで、タンパク質の3次元構造を広く決定できる電子線単粒子解析法を開発してきた。また、半導体加工用の薄膜技術で強靭な電子線透過膜を作製することで、膜越しに溶液中の細胞を大気下で観察できる全く新しい走査電子顕微鏡を日本電子と開発した。その可能性を議論したい。
(生体機能生物学ゼミナール)

世話人: 宮田真人(3157)


6月10日午後4時30分から午後6時ごろまで、於:学術情報総合センター5F AVホール

Samer Hattar教授

タイトル:   Rod photoreceptor retinal circuits impinge on melanopsin ipRGCs for influencing circadian photoentrainment

要旨: Samer Hattar 博士は、マウス網膜の神経節細胞の一部(ipRGC)が光感受性で概日リズムの光調節に関わり、ipRGCではメラノプシンと呼ばれるロドプシンの仲間により光受容されることによることを証明し、2002〜2003年にScience誌とNature誌に発表されました。今回は、それらの研究の発展として、桿体視細胞によりキャッチされた光情報とメラノプシンを含むipRGCによる概日リズムの調節の関係について講演されます。
The discovery of atypical ganglion cell photoreceptors (melanopsin containing intrinsically photosensitive retinal ganglion cells; ipRGCs) in the mammalian retina has greatly advanced our understanding of how light influences several non-image forming visual functions independent of image formation. Some of the non-image forming functions are the adjustment of our internal circadian rhythms to the solar day, which influence our mood, alertness and even learning and memory. We have studied extensively the contribution of outer retinal photoreceptors to the regulation of circadian photoentrainment. We find that rods are the predominant photoreceptor type responsible for circadian photoentrainment from the outer retina, with cones playing a minor role in this function. We further determine how the rod photoreceptors send this information to ipRGCs at different light intensities. Our data reveal an unappreciated role for rods in circadian photoentrainment and determine the retinal circuits of how this response is achieved.
(生物分子機能学ゼミナール,生体機能生物学ゼミナール,自然誌機能生物学ゼミナール)

世話人: 寺北明久 (3144)


2010年3月15日(月)13:30-15:00、於:学術情報センター1階文化交流室
24.jpg

山倉拓夫教授(理学部・生物学科)

タイトル:  熱帯雨林の動きはどこまでわかったか?(最終講義)

要旨: 山倉拓夫教授の最終講義が以下の通り開催されますので、ご案内いたします。
ご多忙中と存じますが、皆様のご臨席をお待ちしております。

世話人: 伊東 明


2010年2月12日、15:00〜、於:225教室

上村 泰央 博士 (株式会社ジナリス バイオIT事業部)

タイトル: 次世代シーケンサーとその応用 〜ゲノムレベルでの情報解析に 向けて〜

要旨: 次世代シーケンサーの実用化により、全ゲノムリシーケンス解析、全 トランスクリプトームシーケンス解析、ChIP-Seq解析といった 様々な用途で、次世代シーケンサーを活用した新しいアプローチによる 解析が実現されてきている。このような背景の中、1回のランで数百 Mbから数Gb以上にも達する次世代シーケンサーの出力データを、 効率よく処理し、膨大な解析データの中から重要な情報を見つけ出すた めに、バイオインフォマティクスの重要性が高まっている。株式会社ジナリスは、2007年8月より世界最大手のゲノム 解析受託サービス企業であるBeckman Coulter Genomics社(当時 Agencourt Bioscience社)と提携し、国内の大手企業および公的研究機 関を中心に次世代シーケンサーを用いたゲノム解析受託サービスを提供 してきた。そのノウハウと経験をもとに、膨大な次世代シーケンスデー タを手軽に分析できる環境として、クラウド型ゲノム解析プラット フォームGiNeS(Genaris integrated Next-gen Sequence Data Analysis Platform)の開発を行なっている。GiNeSを利用すれ ば、高価な計算機設備の必要なしに手軽に次世代シーケンスデータの解 析を行うことができる。 本セミナーでは、次世代シーケンシング技術を紹介するとともに、これ を活用した解析事例として、主にBCG社のデータを用いて発表す る。また、解析結果をゲノム上に可視化し、ゲノムレベルでの情報解析 を可能にする解析環境としてGiNeSを導入し、次世代シーケン サーの多様な解析用途に対し、どのように本システムが適用できるかに ついて議論する。

世話人: 小宮 透


2010年2月12日、16:00〜、於:225教室

的場 亮 博士 (株式会社DNAチップ研究所 研究開発部)

タイトル: 個別化医療のための新しい診断法

要旨: 1990年に始まったヒトゲノム解析プロジェクトは2001年に概要配 列が決定し、2003年には全塩基配列が決定した。ヒトゲノム計画 と関連して、様々な生物のゲノム解析が行われ、酵母、大腸菌、線虫、 ショウジョウバエなどのDNA配列の読み取りも、すでに完了して いる。一方、ゲノムDNA配列解析の進行と同時に、ゲノム上の遺伝子 の部分を大量に集めて、機能的な解析を行う技術、「遺伝子発現プロ ファイル」が盛んに行なわれてきた。これはいわゆる「トランスクリプ トーム解析」と呼ばれ、どの遺伝子が、いつ、どこで、どれだけ発現 し、機能しているかという情報を基に、生命の基本的な機能解明だけで なく、様々な病気の診断や薬品開発に役立てようという画期的なアプ ローチである。この技術を応用し、2007年、オランダのバイオベ ンチャーAgendia社が開発した乳癌予後予測診断キット 「MammaPrint」がアメリカFDA(Food and Drug Administration)から承認された。これは世界で初めて承認された「体外診断多変数指標測定(IVDMIA: in vitro diagnostic multivariate index assay)」 による診断キットである。今後、分子データに 基づいた個別化医療を今日の臨床に適応させるという新しい技術は、他の様々な疾病に拡大すると考えられる。本セミナーでは、我々が開発している「大腸癌転移予測診断チップ」や「関節リウマチ生物学的製剤効果判定チップ」などを例に挙げながら、IVDMIAによる診断法に関する最新の研究開発状況について理解するとともに、個別化医療システムについて考察する。

世話人: 小宮 透


2010年1月29日、13:30〜、於:全学共通教養棟8号館 831教室

河田 則文 教授 (大阪市立大学 医学部 肝胆膵病態内科学)

タイトル: 肝臓が硬くなるメカニズム解析とその研究から発見されたサイトグロビン

要旨: 肝臓病は日本の国民病の一つと言われており、1日100人以上が肝癌や肝不全で亡くなるのが本邦の現状ですが、症状がなく、世間の関心も高くないため、気がついた時には手遅れになっていることが多い病気です。C型肝炎は新薬の開発競争が目覚ましく治癒する病気になってきましたが、グローバル化が進み人的交流が旺盛な現在ではB型肝炎が再び脚光を浴びるようになってきました。また、いつの時代もお酒の飲み過ぎで肝臓は悪くなります。肝臓病は何十年にも渡る経過を経て、臓器線維症を惹起し、最終的に肝硬変に至ると肝癌や肝不全で人の死に直面するのが特徴です。この臓器の「硬くなる」機構が肝臓を構成する細胞や発現遺伝子を解析して徐々に明らかになってきました。また、その過程で、興味深い分子も発見されてきています。本セミナーでは、このような肝臓病にまつわる話題を臨床医としての立場からも紹介したいと思います。(生体機能生物学ゼミナール)

世話人: 小宮 透


2010年1月7日、16:30〜、於:813号室 (全学共通教育棟8号館)

松崎 文雄 博士 (理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター)

タイトル: 脳の発生:ニューロンを紡ぎ出す神経幹細胞の役割と振る舞い

要旨: 私たちの脳では莫大な数のニューロンが精緻な神経ネットワークをつくっているが、これらニューロンは少数の神経幹細胞から細胞分裂によって作り出されてくる。脳の発生においては、胎生期と生後間もなくの神経幹細胞の数と分裂回数が脳のサイズと神経ネットワークの複雑さを決めていると言ってよい。その神経幹細胞は、ひょろ長い形をした背の高い細胞であり、細胞核がとてもダイナミックな動きをしながら、ニューロンを作り出す。ダイナミックな性質を帯びた神経幹細胞がどのように自己複製と神経分化を進め、脳の形成にいかなる役割を果たしているか。この講義では、ショウジョウバエとマウスの遺伝学とライブイメージングを駆使した最先端の研究を紹介する。(生体機能生物学ゼミナール)

世話人: 小宮 透


2009年12月26日、14:00〜、於:理学部会議室

上田 恵介 教授 (立教大学)

タイトル: 托卵研究の新段階:カッコウ以外のカッコウ類における寄生者と宿主の軍拡競争

要旨: 講演者の上田恵介先生は、本学理学研究科で1985年に理学博士の学位を取得されました。現在は日本動物行動学会の会長をされています。近年はScienceやBiology Lettersなどに、 今回のセミナーに関連するカッコウ類の托卵に関する研究を公表さ れています。また、『一夫一妻の神話』をはじめ『擬態ーだまし合いの進化論<1><2>』『種子散布ー助けあいの進化論<1><2>』など、多くの著書があります。(自然誌機能生物学ゼミナール)

世話人: 高木昌興


2009年12月1日、14:30〜、於:AVホール (学術情報センター5階)

Klaus Peter Hofmann 教授 (Charite - Universitatsmedizin Berlin, Germany)

タイトル: Signal transfer from receptor to G protein: Insights fromspectroscopic and structural studies on rhodopsin

要旨: Hofmann教授は、Gタンパク質共役受容体であるロドプシンが、光受容にともなってどのように構造変化しGタンパク質に情報を伝えるかについて、分光学的な解析(UV/VIS, FTIR, EPRなど) を長年進めておられます。近年、活性化状態を考察できるオプシン(ロドプシンのタンパク質部分)の結晶構造とGタンパク質の部分ペプチドが結合したオプシンの結晶構造を相次いでNature 誌に発表されました。長年の研究から得たGPCRの活性化からGタンパク質への情報伝達について、最近の発見を含めてご紹介頂けると思います。(生物分子機能学ゼミナール)

世話人: 寺北明久


2009年11月21日、13:00〜、於:理学部会議室

Shirley Raveh 博士 (スイス Neuchatel大学 行動生態学研究室)

タイトル: コロンビアジリスの雄における配偶行動と繁殖成功への寄生虫の影響 Mating behaviour and the effects of parasites on reproductive success in male Columbian ground squirrels(Spermophilus columbianus)

要旨: Shirley Ravehさん(女性)は,多回交尾をするコロンビアジリスの雄の交尾戦略にかんする野外研究(4年間)で,最近学位を取られました.本ゼミナールでは女史の学位論文の内容をわかりやすく紹介していただく予定です.講演時間は45分の予定です.(自然誌機能生物学ゼミナール)

世話人: 幸田正典


2009年11月12日、16:30〜、於:AVホール (学術情報センター5階)

津田 基之 教授 (徳島文理大学 香川薬学部)

タイトル: ホヤによるシステムバイオロジーの構築 ―光受容から筋肉の駆動まで―

要旨: 原索動物ホヤはで、ヒトと同じボデープランをもつが、その幼生は全身で2600個、中枢神経細胞に限れば100個程度と至って少ない細胞数からなる。ホヤのゲノムサイズはヒトの20分の1であり、ヒトと相同の遺伝子が約3000あるため、これらの遺伝子ノックダウンによる行動解析による評価はヒトのシステム生物学を研究する上で重要である。本講演ではホヤの幼生が視細胞で光を受容して中枢神経で情報処理されモーターニューロンで筋肉を駆動するシステムに関する我々の研究成果を解説する。(生物分子機能学ゼミナール)


世話人: 寺北明久


2009年11月10日、16:30〜、於:813号室 (全学共通教育棟8号館)
9.jpg

安藤 敏夫 教授 (金沢大学 理工研究域)

タイトル: 機能中のタンパク質の動態を直接見る

要旨: タンパク質が機能している様子を高い解像度の動画として直接見ることは生命科学のひとつの夢でした。我々はこの夢を実現する新しい顕微鏡を開発しました。ミオシンV分子がアクチンフィラメントに沿って運動している様子や、バクテリオロドプシンが光照射に応答して変化する様子などを見ることができます。この装置の概略、どのような映像が得られているか、得られた映像から何を知ることができるかを紹介します。(生体、生物分子機能学ゼミナール)


世話人: 宮田真人


2009年11月7日、14:30〜、於:理学研究科会議室

原口 昭 博士 (北九州市立大学 国際環境工学部)

タイトル: 湿地の生態学研究−湿生植物の生理生態、植生、物質動態と湿地の保全

要旨: 湿地は、地球環境や地域環境と密接な関係をもつ生態系の一つである。陸域と水圏の境界に位置する湿地生態系は、両者の環境特性を併せ持つと同時に湿地特有な環境がつくられているため、環境が複雑で、多様性の高い生物群集が成立している。このような湿地の生物多様性と湿地生態系保全に関して、これまで、「湿生植物の生理生態特性」、「植生構造と遷移機構」、「植生・土壌・水圏相互作用と物質動態」、「湿地の保全と管理」に関する研究を進めてきた。本セミナーでは、これまでの研究の中から、「湿生植物の生理生態特性」としてミズゴケ類の光合成特性の解析、「植生構造と遷移機構」として火山性湿原の植生と遷移の解析、「植生・土壌・水圏相互作用と物質動態」として熱帯泥炭湿地林と水圏の相互連環の解析について、その概要を解説する。ミズゴケの光合成に関する研究では、光合成活性のpHおよび温度環境に対する応答をミズゴケの生育環境との関連から考察した。火山性湿原の植生に関する研究では、火山活動に伴う変動しやすい環境の中で植生が短期間で大きく変動し、時空間的に多様な植生構造が形成されていることが明らかとなった。また、熱帯泥炭湿地林の物質動態の研究では、湿地の農地開発や森林火災によって湿地土壌から陸水圏へと硫酸が拡散している実態を広域的に把握し、これが人間生活に及ぼす影響を評価した。
世話人: 宮田真人


2009年11月7日、11:00〜、於:全学教育棟 831教室

飯野 盛利 博士 (大阪市立大学大学院 理学研究科)

タイトル: 植物の環境適応戦略 ― 光環境への適応を中心に ―

要旨: 定着生活を送る植物は、動物とは異なる成長様式によってその生活環を全うします。同じ種の植物でも、置かれた環境によって異なる形態を示しますが、これは、環境に応答して成長を調節し、形態を変化させるという性質(成長様式)を環境適応戦略の重要な一部として進化させ、多様化させてきたことを反映しています。30年近く、環境と植物成長の関係を、光環境との関係を中心に生理学的手法を用いて研究し、自然界におけるその役割について考察してきました。この10年ほどは、イネの全ゲノム配列が解読されたことを受けて、イネを材料にした分子遺伝学的研究を進めました。私たちが分離した突然変異体の原因遺伝子を同定し、新たなシグナルタンパク質を明らかにするなど、研究成果がようやく実ってきました。本セミナーでは、これまで得られた研究成果を中心に、環境と植物成長の関係を環境適応戦略の視点から紹介します。
世話人: 宮田真人


2009年11月6日、17:00〜、於:理学研究科会議室

副島 顕子 博士 (大阪府立大学)

タイトル: キク科の多様性と種分化

要旨: 被子植物最大のキク科は被子植物の1割近くを占め、南極以外の全ての場所に生育するといわれている。最古の化石は約4000万年前の南米のもので、2000万年前にはアジア、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリアなど地球全域に分布を拡大していたらしい。現在、属や種の数が最も多いのは中南米で、この地域の乾燥した暖かい気候によく適応して種数が増えたものと考えられる。今回は新大陸に固有のキク科2属について、その進化の歴史を分子系統と生物地理学的手法で解析した研究を紹介する。メキシコおよび南米に約250種が知られるステビア属は、約1000万年前に起源し、急速に種数が増えたのは100-200万年前以降と推測された。一方、アンデスの高山帯に7種が知られるパラネフェリウス属は約130万年前に起源したと推測された。この種多様性の相違は、大陸的な大規模適応放散と、海洋島的な地理条件にある高山帯での適応放散の違いではないかと考えられる。

世話人: 宮田真人


2009年10月30日、16:30〜、於:AVホール (学術情報センター5階)

Detlev Arendt 教授 (European Molecular Biology Laboratory (Germany))

タイトル: Evolution of eyes and photoreceptor cells in animals (動物の眼や光受容細胞の進化)

要旨: Arendt教授は、発生・分化に関わる遺伝子の発現解析から、脊椎動物と無脊椎動物との進化的ギャップを埋めるような研究をされてきました。例えば、分子レベルの根拠に基づいた脊椎動物と無脊椎動物との間の背腹軸逆転仮説は非常に有名です。最近、Arendt教授は、環形動物のゴカイを脊椎動物と無脊椎動物の祖先生物を考える上でのモデル生物と位置づけCellやNature誌などに多数の優れた論文を発表されています。本講演では、ゴカイ幼生の眼点の構造および走光性を生むメカニズムの研究にもとづいて、Arendt教授が動物の眼の進化について最近提唱されている多機能細胞からの“分業モデル”を中心にお話しされると思います。(生物分子、生体、自然誌機能学ゼミナール)

世話人: 寺北明久


2009年10月29日、15:00〜、於:理学部会議室
4.jpg

Dmitry A. Dubovikoff 博士 (St-Petersburg State University)

タイトル: Introduction to the modern system of insects, with special discussion of ants taxonomy.

要旨: Dmitry A. Dubovikoff博士は昆虫分類学、動物地理学、形態学を専門とされ、ハチ目アリ科のカタアリ亜科を中心に研究されています。カタアリ亜科は現在世界中で分布を広げている侵入種のアルゼンチンアリを含むグループです。これまでに、コーカサス地方を中心に新種を記載されてきました。昆虫分類学のイントロダクションを交えてご専門の研究についてお話いただく予定です。(自然誌機能学ゼミナール)

世話人: 志賀向子


2009年10月8日、16:30〜、於:813号室 (全学共通教育棟8号館)
3.jpg

神取 秀樹 教授 (名古屋工業大学、日本生物物理学会副会長)

タイトル: ロドプシンを究める、ロドプシンをつくる、ロドプシンでつくる

要旨: ロドプシンは、我々の視覚センサーとして光情報変換を担う膜蛋白質である。ある種のバクテリアにも含まれるがこの場合は、光情報変換だけでなく、プロトンポンプやクロライドポンプとして光エネルギー変換にも利用される。私たちは「ロドプシンを究める」を合言葉に、私たちにしかできない分光計測を用いてロドプシンの基礎研究を行っている。本セミナーでは、蛋白質を使わないロドプシンの波長制御再現(ロドプシンをつくる)やロドプシンを使った材料設計のアイデア(ロドプシンでつくる)をあわせた話題提供を行い、この魅力的な蛋白質のはたらきについて議論したい。(生物分子、生体機能学ゼミナール)

世話人: 寺北明久


2009年9月10日、17:00〜、於:814号室 (全学共通教育棟8号館)
1.jpg

沼田 英治 教授 (理学部・生物)

タイトル: 多様な昆虫時計の普遍性を探る

要旨: 生物の体の中にはさまざまな時計が存在する。これまでの多くの研究は概日時計を対象としてきたが、わたしは、昆虫においてそれ以外の時計、概年時計、概潮汐時計なども含めて研究を行ってきた。その結果は、「生物時計は、その周期にかかわらず、時刻合わせに共通の論理をもつ」ことを示している。この妄想(?)を抱くに至った経緯を解説したい。(自然誌、生体、生物分子機能学ゼミナール)
世話人: 宮田真人