Research(English)

研究内容

有機化学は,有機化合物(炭素を含む化合物)の合成,性質についての研究を目的とする化学の分野であり,現代社会を支える根幹に関わる基礎的な学問です.これまで先達が切り開いてきた基礎的な研究成果をもとに大きく進歩してきましたが,一見単純な有機変換反応でも未だに解決できない問題を含んでおり,万能な方法はありません.近年,科学技術は急速に進歩していますが,私たち有機化学者には挑戦的で魅力的な課題がまだまだ溢れており,純粋に学問としての面白さの探求とその成果を社会へと還元する使命が研究の動機となっています.私たちは,他分野との融合により広がりを見せる有機化学の中で,遷移金属触媒を使った新しい反応の開発と不斉合成反応への展開を柱として,これまで独自性にこだわりながら革新的な有機化学反応の開発をめざして研究しています.

高原子効率型反応開発と触媒的不斉合成

原料に含まれる原子ができるだけ多く生成物に取り込まれるような高原子効率型の反応は,有機合成プロセスににおける理想的な反応です.私達は,有機化合物のC–H結合を活性化して,アルケン類へ触媒的に付加させる反応の開発を行っています.特に,光学活性化合物の合成を指向した反応開発を目的としています.

最近の研究成果

2回のC-H結合の切断を経るジエンの環化反応:この反応では,N-メチル基のC-H結合(α位)がイリジウム触媒で切断され,アルケン末端に付加が起こります.続いて,窒素のβ位でC-H結合活性化が起こり,分子内環化を経て炭素環式化合物が生成します.不斉配位子を用いるとエナンチオ選択的な環化反応(片方の鏡像異性体を優先的に合成)も可能です.これまで報告例のない新しいタイプの反応です.

N-メチルC-H結合の不斉付加反応:この反応では,N-メチル基C-H結合がイリジウム触媒で切断され,トリフルオロメチル基をもつ1,1-二置換アルケンにエナンチオ選択的に付加します.不斉点は,トリフルオロメチル基がついた炭素に生じます.これまで報告例のない新しい不斉付加反応です.

C-H結合の分子内不斉付加反応:この反応では,芳香族C-H結合がイリジウム触媒で切断され,分子内のアルケンにエナンチオ選択的に付加します.入手容易な原料からパラジウム触媒による原料合成とイリジウム触媒による分子内環化を、ワンポット合成という中間体を単離することなく同一フラスコで反応を行う手法で目的生成物を得る方法も開発しました.

不斉配位子の開発:キラルジエン

私達は,テトラフルオロベンゾバレレン骨格を持つ新しいキラルジエン配位子を開発し,それを用いたロジウムやイリジウム触媒による様々な不斉反応を見つけています.未だキラルジエン配位子は発展途上であり,新しい触媒的不斉合成反応における新たな機能が期待できます.

キラルジエンで達成された反応例

ロジウム触媒を使ってアリールボロン酸とクロメンを反応させると、アリール基がエナンチオ選択的に付加した生成物が得られます。キラルジエン配位子が高い反応性と立体選択性に寄与しています。

ケイ素の特性を利用した合成反応の開発と合成

不安定な反応活性種であるα-シリルカチオンを利用した合成反応を開発し,それを活用した生物活性天然物合成を行っています.

大阪公立大学 理学研究科・理学部
化学専攻・化学科
精密有機化学研究室

Fine Organic Chemistry Laboratory
Department of Chemistry,
Graduate School of Science,
Osaka Metropolitan University
3-3-138 Sugimoto Sumiyoshi-ku,
Osaka 558-8585, Japan

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