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<2005年 春季>
2004年におこなった「高校生のための市大授業(春季)・高校生のための市大授業(秋季)」と同様、2005年も市大授業を企画しました。今回の日程は、4月23日(土)です。また市大授業のある4月23日(土)には大阪市立大学の新入生の歓迎祭も行われています。今回も、高校や予備校からのFAXでの一括申込ばかりでなく、個人的申込方法(葉書や電子メール)も採用いたします。詳細は大阪市立大学理学部ホームページ(http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/)に平成17年3月から掲載致します。また地球学科の実習では、定員を超えた場合には抽選いたしますが、講義では、定員を超えた場合には教室を変更してできるかぎり受講可能と致します。高校生や予備校生の皆さんの参加をお待ちしています。

2005年4月23日(土)<終了しました>
数学科:午後1時30分〜午後3時(定員100名、講義)
数学科教授 住岡 武
確率の考え方と計算
一般的に大方の人は,数学は最も正確な学問であり整然とした対象を研究するので,そこに矛盾など現れることは決してないと思っているのではないでしょうか.一方,数学以外の自然科学に対しては,現実にある色々と複雑なものや生物を扱うので矛盾がでてくるのではないかと考えているように思います.でも,改めてよく考えてみると,これらは実は逆であることに気がつきます.
一般に数学以外の自然科学は,その研究の対象を自然界に存在し有限の範囲にある物とし,それ自身には矛盾を含まないものを研究するから,そこには矛盾が入り込んでくることが少ないのです.しかし数学においては,現実の世界を離れ,天然に存在するものとは直接的には関係が無いものを扱ったりするので矛盾が潜んでいないとは言い切れないのです.例えば,数学の代名詞的な「数」一つを考えてもそのことが分かります.リンゴ3個,紙3枚は具体的な物体を意味しますが,3自身は人間の精神が作り出したものです.更に,自然数や分数そして√2 のような無理数に対しては現実にあるものの量とし認識できますが,− 2, √-1 のような負の数や虚数に至っては,普通にあるものの量と関連づけて認識するのは決して容易ではありません.実際,負の数は1150 年頃2次方程式の解として発見されましたが最初は負の数は数として認められず,数として取り扱われるようになるまで約500 年かかりました.また,虚数に対しても1545 年に3次方程式の解として発見されてから数として認められるまでには約250 年かかりました.「数」と言う概念一つとっても,現実の対象物直接を意味するのではなく,人間の精神によるものであることが理解できたのではないかと思います.数学はその後,極限の思想や無限個の概念をその道具として扱うようになり,その研究対象を大きく発展させましたが,その一方でそれらは人間の精神に大きく依存するようになりました.そして実際,数学自身において重大な矛盾が生じました.しかし,その解決のため多くの人たちにより様々な努力がなされ,その結,数学というものに対する認識とその研究対象の新しい方向性がうまれました.どのような学問でも矛盾が生じては困りますが,数学においてはこのような事情により特に矛盾を避けるために厳密を要するのです.
一方,数学は様々な事実に対して,規則や法則性を見つけそれを定理という形で表現します.そして,さらに数学の研究対象をより詳しく考察したりより一般的に広げていくと,いくつかの定理や公式がお互いに関係があったり,あるいは同じ式から導かれるといったようなことも起こります.これらによって,定理の本質がはっきり見えてきたりあるいは全然無関係に思われたいくつかの事柄に深い関係があることが分かったりします.そこには真理の世界の面白さと不思議さが感じられます.
この講義ではこれらのことについて,いくつかの例をもとに考えていきたいと思います.
<プロフィール>

職歴:大阪市立大学理学部助手,講師を経て同助教授
学歴:大阪市立大学理学部数学科卒,同大学院理学研究科修士課程数学専攻修了,理学博士
専門分野:環論

物質科学科:午後1時30分〜午後3時(定員100名、講義)
物質科学科教授 木下 勇
水も物質?空気も物質?人間も物質?
私たちの身の回りにあるものは分類すればすべて物質です。でも人間を物質というのはかなりはばかられます。しかし、岩石や空気や水や様々な物質と同じ法則で動いているはずです。もちろん精神に対する理解はまだまだ遠いわけですが。では私たちは物質をどの程度知っているのでしょうか?これを探るために私たちにもっとも身近なものです。進化という壮大なドラマの中で出来上がった物質です。そしてその原料は水です。水の分子は水素2 原子と酸素1 原子から出来上がっていますが、水溶液としての水は単純な水分子の集合と考えるにはあまりにも複雑であるとわかってきました。その複雑さは水分子の形と水素結合という性質からくるのですが、水の性質もわれわれの生命環境に大きく影響を与えています。この単純でかつ複雑な物質は最近ようやくそのベールを脱ぎ始めてきたといっても過言ではありません。水は様々な水分子の集合が組み合わされて出来上がったものであるらしいのです。水の性質はそれほどに複雑でそれほどに奥が深いのです。このドラマを探検してみませんか。

<プロフィール>
大阪市立大学助手、講師、助教授を経て教授
学歴:東北大学理学部科学第二学科卒業、東北大学理学部修士課程終了、名古屋大学後期博士課程単位取得退学理学博士
専門分野:錯体化学、グリーンケミストリー

生物学科:午後1時30分〜午後3時(定員100名、講義)
生物学科教授 幸田正典
動物行動学:動物の行動の意味と仕組みを探る面白い学問

(詳しい内容)動物は単独で生きていくことはできません。生きていくうえで、他の個体とさまざまな社会関係を持ちます。動物の社会関係を維持するための社会行動の1つに攻撃があります。今回はこの攻撃行動についてお話します。
教科書では、攻撃行動は同じ種の個体の間で起こるとされています。しかし、珊瑚など非常に多くの種類の動物が生息する場所では、他の種に対しても攻撃行動が向けられることがあります。このような他種に対して攻撃がなされることには意味があるのでしょうか?この種間攻撃行動が生じる仕組みとその意義について、私自身がある珊瑚礁魚を材料に行った研究を紹介します。
生物の教科書には、良く知られた事実や解釈、あるいは規則性や法則性が書かれています。しかし、それらがどのように発見されたのか、あるいは検証されていったのか、という研究のプロセスはなかなか知ることができません。研究する上では、面白い仮説を立てその仮説をうまく検証するための実験方法を考えだすことが大切です。
今回はどのように研究を進めたのかを紹介し、研究の面白さや醍醐味もお伝えしたいと考えています。研究とは面白いものです。ご期待ください。

<プロフィール>
職歴:大阪市立大学理学部助手、講師、助教授を経て、大阪市立大学大学院理学研究科教授
学歴:鹿児島大学水産学部増殖学科卒業、京都大学大学院理学研究科動物学専攻修了(理学博士)
専門分野:動物生態学、行動生態学

物理学科:午後3時10分〜午後4時40分(定員100名、講義)
物理学科教授 石原秀樹
「ブラックホールの物理学」
アインシュタインの一般相対性理論では,時間と空間をひとまとめにして「4次元の時空」として考えます.そして,私たちの住む世界の森羅万象の「入れ物」としての時空を,伸び縮みし得るものとして,物理の研究対象にします.
一般相対性理論によると,物質が存在すると時空が曲がります.地球という物があると,まわりの時空が曲がります.そこでは,小石をまっすぐに投げたとしても,軌道が曲がって地面にぶつかってしまいます.つまり,時空の曲がりは重力に他ならないのです.
光すら抜け出すことのできない天体−ブラックホール− の存在は一般相対性理論の最も興味深い予言の一つです.
この講義では,一般相対論の考え方の基本とブラックホールのおもしろい性質についてお話します.

<プロフィール>
職歴:京都大学理学部助手,京都大学総合人間学部助教授,東京工業大学大学院理工学研究科助教授を経て,大阪市立大学大学院理学研究科教授
学歴:静岡大学理学部物理学科卒業,広島大学大学院理学研究科物理学専攻単位取得退学(理学博士)
専門分野:相対性理論,宇宙論

化学科:午後3時10分〜午後4時40分(定員100名、講義)
化学科教授 中沢 浩
想像力を働かせて分子の世界を見る
化学であつかう基本単位は原子と分子です。原子と分子を理解することが化学の基本ですが、どちらも小さすぎて目で見ることができません。そこで想像力を働かせて原子と分子の世界を眺めてみましょう。
原子は原子核と電子からできていますが、原子を特徴づけているのは中心に位置する原子核よりは、外側にある電子です。さらに、例えば炭素原子には6個の電子がありますが、この6個の電子は皆同じではありません。主に内側にいる電子もあれば、外側担当の電子もあります。原子の性質や反応性を考えるときにはこの外側担当の電子が重要になってきます。高校のレベルを少し越えて、原子中の電子について解説します。
原子同士が結びつくと分子になります。原子同士はなぜ結びついていられるのでしょうか。化学結合について考えます。現在、100種類以上の原子が知られていますが、そのどれも球形をしています。しかし分子になると独特の形をもちます。水(H2O)と二酸化炭素(CO2)は共にXY2タイプの分子ですが、水はV字形をしているのに対して、二酸化炭素は直線形をしています。分子の形は何によって決まっているのでしょうか。想像力を働かせて、そこにある法則を考えてみましょう。

<プロフィール>
職歴:広島大学理学部助手、助教授、分子科学研究所助教授を経て、大阪市立大学大学院理学研究科教授
学歴:東京理科大学理学部化学科卒業、広島大学大学院理学研究科化学専攻修了(理学博士)
専門分野:錯体化学、有機金属化学

地球学科:午後1時30分〜午後4時40分(定員20名、実習)
地球学科講師  篠田圭司
地球を構成する鉱物
都市に住んでいる我々は普段、地球を造っている原材料物質とも言うべき鉱物を積極的に見る機会は少ないかもしれませんが、高度に研磨された天然結晶や、天然で結晶化した規則正しい外形を示す結晶には目を引かれることがあります。天然に産した一定の化学組成と結晶構造を持つ物質を鉱物と言います。たとえばダイヤモンドは高温高圧下で炭素が結晶化した鉱物です。炭素の身近な例は鉛筆の芯ですが、あの黒い物質の結晶の名前はグラファイトで化学組成は炭素ですがダイヤモンドではありません。ダイヤモンドとグラファイトは、結晶化する温度圧力条件の違いで、全く違う物性の結晶となる代表例です。地球の深部は高温高圧の状態で地球を構成する物質の様々な反応が起こり鉱物が結晶化しており、形成時の温度・圧力によって多様な鉱物が形成されます。我々が現在手にできる鉱物は、そのような履歴を経た物質と見なすことができますから、鉱物を調べるとにより様々な地球内部の状態を知ることができます。鉱物を研究する手法の一つに高温高圧実験があります。実験室で地球深部の高温高圧状態を実現させて高圧鉱物を合成してみようという試みです。本講義では、ダイヤモンドアンビルセルという高圧発生装置を用いて、簡単な模擬実験を行います。
温度で物質の状態が変化することはよく体験することですが、圧力をかけることにより水が結晶化する様子を観察します。そして、多様な鉱物標本も紹介します。

<プロフィール>
京都大学理学部地質学鉱物学教室卒業、京都大学大学院理学研究科修士課程修了、後期博士課程中途退学、大阪市立大学理学部地球学科助手を経て講師、理学博士。
専門分野:鉱物学