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<2006年 春季>
数学や理科の好きな高校生や予備校生の皆さんに、数学や理科にさらに興味を持ってもらえるように企画した「高校生のための市大授業」です。大学の授業や大学の教室・実験室がどんなものなのか、進学を希望する大学の中を知っていただきたく、本学杉本キャンパスで行います。2004年、2005年の春、秋に引き続き5回目の市大授業です。日程は4月30日(日)です。高校や予備校からのFAXでの一括申込ばかりでなく、個人的申込方法(葉書や電子メール)も採用します。前半(高橋、大船、塩野)と後半(神田、伊東、平澤)の2つの授業を受けることもできます。詳細は大阪市立大学理学部ホームページ(http://www.sci.osaka- cu.ac.jp/)に平成18年3月から掲載します。定員を超えた場合には教室を変更してできるかぎり受講可能とします。受講不可能のときのみ、4月26日(水)に連絡します。

2006年4月30日(日) <終了しました>
◇前半:午後1時00分〜午後2時30分
「存在定理」のモト〜中間値の定理から不動点定理へ〜
数学科助教授 高橋 太(定員100名、講義)

 皆さんは「中間値の定理」を知っていますか?中間値の定理とは、区間 [a,b] で定義された連続関数 y=f(x) は f(a) と f(b) の間の任意の値を取る、
という数学的主張のことで、ときたま大学入試問題にも顔を出します。
時刻 a で位置 f(a) にいたアリが数直線上を行ったりきたりして時刻 b で位置 f(b) にいるとき、f(a) と f(b) の間の任意の地点をアリが通過する時刻が a と b の間に必ずあるわけで、いかにも「あたりまえ」です。
 ではなぜこの「あたりまえ」のことが成り立つのでしょうか?中間値の定理が成立する背景には、考えている関数のグラフがつながっている(連続関数である)ことのほかに、関数がその上で定義されている土台にあたる実数直線の深い性質が潜んでいます。中間値の定理は、「関数の連続性」という位相的性質と「実数の連続性」という解析学の基本事実が激しく切り結んだ結果なのです。
 中間値の定理の簡単な応用として「1次元の不動点定理」:区間 [a,b] からそれ自身の中への連続関数 f(x) は不動点、つまり f(x) = x となる点 x を持つ、が示され、この主張は N 次元でのブラウアーの不動点定理に、
さらに無限次元での不動点定理にまで拡張されます。そしてこれら一連の定理は「かくかくしかじかの性質を持った数学的対象が存在する!」ということを主張する「存在定理」を生み出す母体となる定理たちなのです。

わたしみずからのなかでもいい
わたしの外のせかいでもいい
どこにか「ほんとうに美しいもの」はないのか
それが敵であってもかまわない
及びがたくてもよい
ただ『在る』ということが分かりさえすれば
(一部略)(八木重吉「うつくしいもの」より)
 授業では『存在』を追い求める数学の営みの一面を紹介できれば、と思っています。

<プロフィール>
職歴: キヤノン(株)情報システム研究所勤務、東北大学COEフェローを経て大阪市立大学大学院理学研究科助教授
学歴: 東京大学基礎科学科卒業、東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了
同博士課程単位取得退学(理学博士)
専門分野: 変分法および偏微分方程式論

神経機能を探る化合物
物質科学科教授 大船泰史(定員100名、講義)

皆さんが見たり感じたりあるいは体を動かしたりするとき、小さな分子が体の中で大活躍しているのをご存じですか?私たちの神経系には瞬時にこれらの情報を処理するシステムが備わっています。ここでは、シナプスといわれる神経細胞の間隙でアミノ酸、アミン、ペプチドと呼ばれる小さな分子が化学伝達という仕組みを通じて情報の橋渡しをしています。神経系にかかわる情報は多様なので、作動分子あるいは遮断分子と呼ばれる物質を見つけだすことが必要です。実際に、このような研究を通じていろいろな神経疾患の治療薬が開発されています。
この授業では、神経機能を探るための化合物の科学について解説します。

<プロフィール>
職歴: ピッツバーグ大学化学科・博士研究員、財・サントリー生物有機科学研究所・研究員を経て大阪市立大学大学院理学研究科・教授
学歴: 北海道大学理学部化学科卒業、同大学院理学研究科博士課程修了、理学博士
専門分野: 天然物有機化学 (神経機能制御分子の化学合成)

コンピュータで地質図を描いてみよう
地球学科教授 塩野清治(定員30名、実習)

地下の地質情報は,環境保護や自然災害防止など私たちの生活と密接に関わる諸分野で重要な役割を担っています.地球学科では教室で学んだことを実地に応用する能力を養うために,毎年1〜3年生合同で「地球学野外実習」を行っています.年ごとに実習場所を変えていますが,いずれの場合でも,山や谷を歩いて地層を観察した結果をもとに,地層が形成されてから現在にいたる歴史を考え,結果を地質図にまとめるという実習を行います.野外で観察される地層は,削られたり,変形したり,断層で切断されたりしています.そのため,地層がもつ基本的性質(初生的水平性の原理:地層は水平に堆積する,側方連続性の原理:地層は側方に連続する,地層累重の法則:下側の地層は上側の地層よりも古い)をふまえて,地層が形成された当時の状況やその後の地殻変動を想像しながら調査を進めていきます.最終的には地層の3次元的分布や相互の関係を地質図にまとめます.
 このような地質調査にもとづいて推定された地層の3次元分布をコンピュータで描いてみようというのが,この講義のテーマです.コンピュータに入力するのは,(1)地表面や境界面の格子データと(2)地層と境界面の論理的関係の2つです.この2つの情報が与えられれば,任意の点がどの地層に含まれるかを“計算”で決定できることを説明します.地表面上の点でこの計算を行えば,地層ごとに色分けした地質平面図を描くことができます.また,側線にそう鉛直断面上でこの計算を行えば,地下の状態を示す地質断面図を描くことができます.高等学校の「地学」で学ぶ程度の地質図であれば簡単に描けることを,実際にパソコンを動かして確認します.

<プロフィール>
職歴: 大阪市立大学理学部助手,同大学講師・助教授を経て,大阪市立大学大学院理学研究科教授
学歴: 京都大学理学部地球物理学科卒業、 京都大学大学院理学研究科修士課程地球物理学専攻修了(理学博士)
専門分野: 地球情報学


◇後半:午後3時00分〜午後4時30分
星の声、宇宙のさざなみ〜重力波をさがす〜
物理学科教授 神田展行(定員100名、講義)

宇宙にはいろんな天体があります。なかでも超新星、中性子星やブラックホールの連星といった天体は、爆発や合体といった劇的な最後をむかえます。このとき、星の周りの時間と空間が歪み、さざなみのように宇宙に伝わってゆきます。これがアインシュタインの一般相対性理論で予言された“重力波”です。
 この重力波はいわば星の最後の声なのですが、耳を澄ませてこの声を聞くと、いろいろなことがわかります。星の重さ、大きさ、固さ、方向といったことがわかりますし、アインシュタインが正しかったどうかの証拠にもなります。
 しかし地球に届くと予想されている重力波は、とてもとても小さなものです。そのために、現在最新鋭の観測装置が建設されて動き出しつつあります。
 ・重力波とは何なのでしょうか?
 ・どうやって、それを調べる(測る)のでしょうか?
 ・どうやって、星のことがわかるのでしょうか?
 授業ではこれらをなるべくわかりやすく解説し、私たちの宇宙の様子を知るための最新の物理学の一端をお話しします。
できれば重力波を測る装置のミニチュアも見てもらいます。
 最新の宇宙の認識は、たぶん高校生諸君の日常感覚とちょっと違うとおもわれます。大学生や大学教授にとっても、いまだ宇宙は謎に満ちており、日々私たちの好奇心を刺激し続けています。

<プロフィール>
職歴: 東京大学宇宙線研究所助手、宮城教育大学教育学部助教授を経て、大阪市立大学理学研究科教授。
そのほか客員で国立天文台客員教授など
学歴: 大阪大学理学部物理学科卒業
大阪大学大学院理学研究科物理学専攻終了(理学博士)
専門分野: 重力波物理学(実験)

有機化学反応のメカニズム
化学科教授 伊東 忍(定員100名、講義)

高校の有機化学では、化合物の構造や化学反応式をただ覚えることが多いと思います。例えば「カルボン酸とアルコールの混合物に少量の硫酸を加えて加熱すると、縮合反応が起こりエステルを生じる」ことは習って知っています。しかし、「なぜ、また、どのようにしてカルボン酸のカルボキシル基とアルコールのヒドロキシル基が反応して炭素と酸素の間に結合が生じ、水が外れていくのか」という詳しいメカニズムについては殆ど触れられていません。また、「少量の硫酸の役割」や「熱を加える理由」などについても詳しい解説はなされていません。
 この授業では、高校の化学の教科書に出てくる有機化合物の性質や有機化学反応のメカニズムを少し詳しく眺めてみます。そうすれば一見複雑そうにみえる有機化学反応も、きちんとしたルールに基づいて進行していることがわかってきます。さらに、そのルールを理解すれば他の有機化学反応も比較的簡単に理解できるようになるはずです。有機化学は決して暗記の学問ではないのです!

<プロフィール>
職歴: 大阪大学工学部・助手、助教授を経て、1999年より大阪市立大大学院理学研究科・教授
学歴: 大阪大学工学部石油化学科卒業、大阪大学大学院工学研究科応用精密化学専攻後期博士課程修了、工学博士
専門分野: 有機化学、生体機能関連化学

生物時計〜あなたのからだの中にある〜
生物学科教授 平澤栄次(定員100名、講義)

みなさんは、自分のからだの中に時計をもっているのを知っていますか。この時計は生物時計(体内時計)といい、私たちの生活になくてはならないものです。
 動物にかぎらず植物でもほぼ24時間のリズムで活動します。たとえばネムノキなどのマメ科植物の葉は、日中に開き、夜は閉じるという運動をしています。これらの植物は何日も連続して暗い所においても、葉を開いたり閉じたりします。その開閉運動は約1日のリズムですが、正確に24時間ではありません。
 外の光の手がかりのない条件におくと、生物活動の周期は次第に外界の24時間の周期からずれていきます。これは体内にリズムを発する生物時計をもっているためで、この時計のリズムは約1日(概日リズム)であるが、正確に24時間でないため外界の24時間の周期からずれていくのです。自然の条件では外の昼と夜の周期に同調して補正されるため、正確な24時間の活動リズムが維持されるのです。ヒトなどの哺乳動物では、生物時計は脳の視床下部にあるといわれています。
 もうすこし、話をすすめてヒトの生物時計について説明します。私たちの身のまわりの時計と同じく、生物時計の重要な性質は時刻を合わせ直すこと(同調)ができることです。生物時計では時刻合わせの信号として、まず光があげられます。この信号を同調因子といい、ヒトでは食事や社会的活動も同調因子と考えられています。 同調因子のない状態では、生物時計の固有のリズム(概日リズム)となり、毎日すこしづつ外とずれていきます。このような状態を自由継続(フリーラン)といい、この概日リズムを自由継続リズム(フリーランニングリズム)ともいいます。
それでは、人間を同調因子のない状態、フリーランさせるとどうなるでしょうか。多くの人達に協力してもらい、光の量を一定にして、外界との接触を絶ち、ボタンを押せばいつでも食事が出てくるようにした結果、ヒトの概日リズムは平均25.0時間で、少しづつ遅く起きて遅く寝るようになることがわかりました。
 ところでヒトには睡眠リズムのほかにさまざまな活動リズムがあることが知られています。 身体機能の他に生理機能のピーク(もっとも高くなる位置)もあり、生命活動はほとんどはそれぞれに山と谷があり、それぞれそのピークの位置が異なっています。これらのリズムは全て生物時計から発信される「なにか」に支配されていると考えられており、たとえば記憶力は11時〜14時に、活動力(筋力)は13時〜16時にそれぞれピークがあります。
 つぎにヒトの体内時計で、同調因子である光を与えるタイミングについて考えましょう。腕時計を合わせる場合をかんがえてみても、1時間進んでいるなら、時計の針は逆に1時間もどすでしょうし、1時間おくれているなら針を1時間進めるでしょう。それと同じで、ヒトの体内時計は1日に25時間で回ろうとします。しかし、現実の昼夜は24時間サイクルのため、ヒトの生物時計は光を感じて毎日1時間だけ、時計の針をもどしているのです。しかし、この場合、どの時期に光をあたえてもOKというわけでもありません。 朝の起床時期に光を浴びると体内時計をもどすことになり、夜寝る前に光をあびると時計を進めることになります。
 それでは講義の中で以下の問題を解いてみましょう。
問1 2週間後にいよいよ学校を卒業して会社勤務となる。今までは夜型の生活ですごしてきた。 この1週間でスムーズに朝型に切り換えるにはどうしたらよいか。
問2 2日後にマラソンの試合をひかえているが、正午にスタートである。いままでは朝8時ごろおきていたが、どうしたらよい記録が出せるだろうか。
問3 看護婦として、勤務2ヶ月が過ぎたところである。いよいよ明後日の午後10時から午前6時までの夜勤にはいる。いつもはこの時間帯が睡眠時間であった。夜勤前はお休みなので、夜勤前日の午後2時に寝て午後9時に起き明日の夜勤時間に早く合わせた就寝時間とするか、夜勤日当日の午前7時まで寝ずに午前7時から午後2時まで寝て10時から夜勤に入るほうがいいか。
問4 朝おきるのがつらく、また夜はねむくないのでついおそくまでおきてネットで遊んでしまう。このため、学校に行っても、朝の授業はボーっとして聞いている。こんなときどうしたらいいだろうか。
問5 記憶力を必要とする漢字テストが明日の朝1限目にひかえている。いつもは11時に寝るが、とにかく今日は夜中の3時ごろまでがんばろうと思うけどこれでいいか。
問6 時差が日本より8時間遅れているコペンハーゲンと、8時間早い(16時間遅れている)サンフランシスコでは、関空から飛行機で現地に飛んで時差ぼけになったとき、どちらが早く時差ぼけから立ち直れるか。

<プロフィール>
職歴: 大阪市立大学理学部助手、講師、助教授を経て、1996年より大阪市立大学院理学研究科・教授
学歴: 富山大学文理学部卒業
京都大学大学院農学研究科博士課程中途退学
専門分野: 専門は高等植物の窒素代謝
(趣味は酒)