市大数学教室

大阪市立大学大学院理学研究科数物系専攻 21世紀COEプログラム

結び目を焦点とする広角度の数学拠点の形成
(Constitution of wide-angle mathematical basis focused on knots)
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数学研究所の外部評価の実施

 今回の大阪市立大学数学研究所の外部評価は,以下のように実施された.

・ 2007年2月6日(火) 13:00~15:00
 場所:学術情報センター10階会議室10A
 外部評価委員:Wang, Shicheng 教授 (中国北京大学),、Ko, Ki Hyoung 教授 (韓国科学技術院KAIST)
 学内からの出席者:河内,桝田,大仁田,兼田,今吉,谷崎,糸山,金信

・ 2007年2月19日(月) 15:00~17:00
 場所:学術情報センター10階会議室
 外部評価委員:佐々木武 教授(神戸大学)
 学内からの出席者:河内,大仁田,今吉,谷崎,古澤,金信

・ 2007年2月23日(金) 15:00~17:00
 場所:学術情報センター10階会議室
 外部評価委員:伊達悦朗 教授(大阪大学)
 学内からの出席者:河内,今吉,谷崎,桝田,小松,大仁田,古澤,金信

・ 2007年3月5日(月) 15:00~17:00
 場所:学術情報センター10階会議室
 外部評価委員:河野明 教授(京都大学理学部)
 学内からの出席者:河内,兼田,今吉,桝田,小松,大仁田,谷崎,古澤,金信
 この他の出席者:高橋陽一郎 教授(京都大学数理解析研究所所長)
            岡本久 教授(京都大学数理解析研究所副所長)


 Wang教授,Ko教授に評価を依頼した理由として,両氏がそれぞれ中国,韓国における数学会で指導的立場にあるということだけでなく,2月5日から8日にかけて,学術情報センターで開催された『結び目・絡み目に関する第3回東アジアスクール』(Third East Asian School of Knots and Related Topics)に参加のために来日していたことがあげられる.
 また,2月19日,2月23日,3月5日の評価においては,それぞれの評価会議に先立って,各評価委員が数学教室談話会において講演をお願いした.

 3月5日の外部評価の際には,京都大学数理解析研究所とOCAMIとの間の協定を締結するにあたり,京都大学数理解析研究所所長高橋陽一郎教授,および,同副所長岡本久教授にOCAMIの概要を説明する必要から同席された.



外部評価の方法
 
 外部評価資料をもとに河内が中心となり学内の出席者がOCAMIについて説明し,その後,外部評価委員と学内の出席者による質疑応答が行なわれた.後日,評価委員が評価用紙にある質問事項について記述した.

評価結果
各質問事項に対して評価委員の記述した文章を列挙する.
 
1.OCAMIの組織についてどう思われますか.
  • 伝統のある分野を出発点として,特徴あるテーマを開拓し,若手研究者を育てること,また,国際的な研究交流拠点となることを目指している点が評価される.
  • 大規模な大学の数学教室と比して必ずしも十分とは言えない従来の数学教室における教室へのサポート体制も今回のCOE経費により充実しつつあり,研究面での組織を支える部分は充実してきていると思える.また,教室の規模の面からも全体として研究所の活動を支えているという雰囲気が伝わってくる.
  • 大阪市立大学の学長以下の方々のサポートもあり目的もはっきりしている点がよいように思われる.また数学教室との連携も良好のようでうまく動いていると考えます.
  • OCAMIは多くの地域的な会議のみならず国際的な会議の開催を支援してきた.また,長年にわたって有名なKOOKセミナーの支援もおこなっている.
  • OCAMIは,近隣の研究グループや国際的な研究グループとともに,数学教室に対して,効果的に,また,十分に,最大限の協力支援をおこなうように組織されている.研究領域におけるOCAMIの活動は良好といえるが,厳密にみると改良すべき余地も多少ある.
2.OCAMIの施設についてどう思われますか.
  • 専用の施設を有していることは組織としての自立に大変有効であるが,理学研究科数学教室の大学院生及び研究者との交流を容易に進めるためには,隣接した位置に置かれることがより望ましいと考える.
  • 全学からの支援を受け学術情報総合センターの一角に場所を得られていることは評価できる.
  • 近くに宿泊施設があり外国人の滞在などでは便利に出来ている.セミナー などをするスペースは快適そうであるが研究者の居室部分が手狭のように思われる.また数学教室と別棟なのは少し不便ではないでしょうか.
  • 会議設備はすばらしい.訪問研究者のための研究室が今以上にあればさらによい.
  • 学術情報センターは大学キャンパスにおいて新しい近代的な建物であり,OCAMIの大部分の施設は学術情報センターにある.学術情報センターには数学の研究者や訪問研究者にとってもっとも重要である文献がそろっている.しかしながら,学術情報センターにおける数学研究所のスペースは十分でなく,実際,一部屋を二人の研究者が分け合う状況もある.
3.OCAMIの研究支援体制(支援事務スタッフ)についてどう思われますか.
  • 研究所の多岐に亙る諸活動を窺うにつけ,支援スタッフの優秀さを推察できる.現在の体制は理論科学においての交流を進める上で必須であり,維持し強化されることを望む.
  • 研究面での支援体制は充実して来ているが更なるサポート体制への支援があればより好ましい.
  • 研究支援スタッフが一人だけであるが現時点では全てうまく動いていると 思われる.しかし現在のスタッフが別の人になったとき現在のレベルが維持できるか少し不安である.
  • 常勤の秘書がいればなおよい.
  • OCAMIには研究支援のためのスタッフは一人しかいない.彼女は国内だけでなく国際会議の支援にも対応することができる.彼女は常勤のスタッフではないので,彼女がいなくなったときの場合の危険性を認識する必要がある.
4.OCAMIの研究員の選抜についてどう思われますか.
  • 応募状況からもうかがえるように,大阪市立大学の大学院生への刺激となり,また,全国の博士号取得者に研究場所を提供することになっている.
  • 大阪市立大学独自の取組である研究費のみのサポート対象である専任研究員,あるいは他機関に籍をおく兼任研究員の制度などもあり応募者が多いことは制度がうまく運用されていることの証左であろう.一方で一年ごとの応募ということはその時の流行に左右される面もあるのではないかと思われる.一定規模の恒常的なサポートと組み合わされるべきものであろう.
  • 研究員の選抜は全て公募によっており,多数の応募者があるようでうまくいっていると思われるが,任期が一年というのは少し考える余地がないであろうか.
  • 若い研究者のための選抜方式は非常に競争的である.
  • OCAMIには上級研究所員と専任研究所員を採用している.このポストの選抜は非常にきびしい.実際これらの研究員のポストは魅力的であり,採用方法も問題ないように見受けられる.
5.OCAMIの研究集会開催,研究者招聘等の研究活動事業についてどう思われますか.
  • これまで数年間の実績を資料により判断すると,集中的かつ多面的に事業が推進されており,激賞に値する.大学院生の国際的連携を図る集会の開催や継続的なセミナーの開催,他分野にまたがる集会の開催と出版物の発行は評価される.よりユニークで国際的な注目を集めるような事業を地道に継続して頂きたい.
  • 大変活発であると考える.大学のものではないにせよ隣接する宿泊施設が比較的容易に利用できという利点も大きいと思われる.
    この研究所が主催して開催される研究集会はインパクトが強いものが多く 常に興味を持ってきた.また研究者の招聘についても比較的重点を置く分野を決めて選んでおられるようで,うまく機能している.
  • これまでの数年間にわたり,数百人にのぼる数学者がOCAMIを訪れている.私自身が出席した研究集会の規模は大きく,また,国際水準の内容であった.
  • OCAMIが設立されて以来,活発に国内および世界中から多くの研究者が参加する会議が組織されている.これらのOCAMIの活動は,研究と国際友好に大いに貢献するように思われる.
6.OCAMIの数学の普及を目指す高等学校等との連携事業についてどう思われますか.
  • 理数教育の強化が求められ,全国的にも様々な試みが行なわれている.生徒の興味を内から引き出すような特徴的事業を進めて頂きたい.高校の教師にアドバイスを行ない,自発的な事業の推進を狙う連携の進め方も評価される.
  • 高校生を対象とするのではなく高校教員を対象とするという視点は興味深い.ただ高校教員の年齢構成の歪さなども視野にいれた取組も考える必要があろうし,次世代に向けてという面からも大学院教育の位置付けも併せて考えることも必要かと思う.
  • 数学に関連する他のCOEプログラムなどには観られない特色のある取り組みで非常に重要と考えます.すでに大きな成果を上げておられるようで今後に大きな期待を持っております.
  • OCAMIの研究者たちは,高等学校の先生方に対して多くの講義をし,議論をおこなってきた.これは数学の普及活動として非常に効果的な方法である.
  • OCAMI,大阪の教育委員会,および連数協に参加した数学の先生方は,数学教育における高校レベルと大学レベルのギャップを埋めるための努力をされている.この活動はうまくいっているようだ.実際,全国規模の高校生の科学研究発表会において賞を獲得したというような目にみえるかたちで成果があらわれている.
7.OCAMIが世界最高水準の数学の研究・教育拠点として将来にわたり発展する可能性についてどう思われますか.
  • 優れた拠点は規模の大小よりも,どこに焦点をあて,どのように研究者の交流を進め,新しい研究の潮流を生み出すかかにある.一定の財政的基盤と一定の恒常的スタッフの確保を行ない,短期及び長期の滞在者を迎えて,数学教室の研究・教育を共に発展させて行くことが成功する拠点の確立に繋がると思われる.
  • 研究所という名称と教育という言葉の係わりに戸惑いをおぼえる面もあるが,大学院での教育ともからめて自ずからなる雰囲気が醸成されて活発になって行くことを期待する.
  • 現在でも結び目理論については世界的な拠点ですがやはり規模が小さいと言うことでいろいろな分野をカバーしにくい点が心配ですが,近くに京都大学や大阪大学など有力な大学もありそれらとの共同研究をうまく遂行すれば大きな成果があると思います.
  • 結び目理論の分野に絞って考えると,OCAMIが世界最高水準の数学の研究・教育拠点として将来にわたり発展する可能性はかなり大であるといえる.8のコメントも参照のこと.
  • 結び目理論と関連した話題の領域において,OCAMIは,研究成果の発表だけでなく研究の流れをも創出するという形で,国際的に指導的な役割を果たしている.
8.その他,お気づきの点があればご記入ください.
  • やはり,長期の視野で事業を推進することが重要と思う.そのための財政的基盤と組織的確かさをどうやって確保するかを考えて欲しい.特に,COEの活動を通じて培った経験と実績を活かして,継続的な発展を目指す整備を行なって欲しい.それが,「世界中から人が訪れたくなる」研究所の鍵になると思われる.現在進められている国内・国外の諸研究拠点との連携の開始は大変重要であるので,集中して努力され,実りある連携となることを希望する.そのことによって,国内の数学研究の新しい目となり,国際的な研究の発展に貢献されることを期待している.
  • 目に見える成果,評価という言葉が飛び交う今,大阪市立大学にあるという独自の事情を活かして,数学研究所という概念の新たなモデルケースとして育って行って欲しいと思う.そのためにも学内での「数学」の位置付け,「研究所」が学内組織として十分に認知されることが大切ではないかと考える.次世代につながる側面も期待したい.
  • 大阪市立大学数学研究所の研究員を経た数学の研究者のその後の経過をフォローすることが研究者育成の上でどのようにすることが重要かを知る上で不可欠と思われます.その上で必要なら研究員の採用方法なども検討されてはいかがでしょうか.
  • 大阪近辺の結び目理論の研究グループは,世界的にみても最も大きく,また,活発なもののひとつであるといえる.このグループは世界的に知られた研究者を多く擁している.実際に,ある面においては,世界をリードしている.河内教授はこのグループにおいてもっとも重要な人物のひとりである.かれの独創的な研究や著書,あるいは,かれのアドバイスや組織力はこのグループの成長に大きな役割を果たしている.
  • OCAMIは,研究と教育における様々なレベルの多くのグループに影響を及ぼしている.幾何学的トポロジーの研究者のひとりとして,OCAMIのこの役割ができるだけ長い間続くことを願っている.
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最終更新日: 2007年4月25日
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