集中講義(2005年度)

科目名 代数構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 6月27日(月)~7月1日(金) 
談話会:6月29日(水) 15:00~16:00)  
講演者(所属) 中島 啓 (京都大学)
タイトル 箙多様体入門
場所 数学講究室(3040)
講義内容 合成積によって(非可換)環を構成して、その表現を調べ る、という研究が近年 盛んに行われている。そのような構成の例として、 箙多様体を用いたア ファイ ン・リー代数の展開環の構成を紹介する。ここで、箙多様体とは、 (通常の定 義とは異なり) SU(2)の 有限部分群で不変な二変数多項式環 C [x,y] のイデア ルのなすモジュライ空間として定義されるものである。 予備知識としては、多様体とコホモロジー群に関する基本的 な性質を仮定する。 表現論に関する予備知識は仮定しないが、最高ウェイト 表現について知ってい た方が望ましい。 参考 : Quiver varieties and McKay correspondence, 研究集会`開Calabi-Yau多様体への代数幾何と弦理論から のアプローチ' 報告集, 2001年12月 http://www.math.kyoto-u.ac.jp/~nakajima/TeX/hokkaido.pdf から入手可能

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科目名 幾何構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 7月12日(火)~7月15日(金)
談話会:7月13日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 神島 芳宣 (首都大学東京)
タイトル 幾何学的コボルディ ズム理論
場所 数学講究室(3040)
講義内容 いつ閉多様体が境界となるかという古典的(トポロジー) の問題はコボルディズム群の構造と特性数により完全に 決定されている。 ここでは、幾何的多様体はいつどのような幾何構造をもつ多様体の境界となり得るかという 極めて漠然とした問題を考える。この問題を サポートする典型的例はThurstonの結果-多くの結び目の補空間には体積有限の完備双曲構造が入る、そのカスプの切り口は2次元平坦 トーラスであるので、 2次元平坦トーラスは完備双曲多様体の境界である。この種の3次元以上の場合の一般化は代数的に実行され、 肯定的にLong-Reidでにより解かれている (2002)。さらにMcReynoldsは、ハイゼンバーグ冪零多様体がいつ体積有限の複素双曲多様の 境界となりうるか代数的に 必要十分条件を与えた。これらを踏まえ、この講義では、

ノンコンパクト体積有限の完備双曲多様体のカスプの構造 (リーマン平坦多様体、ハイゼンバーグ冪零多様体が出てくることの説明)。

2次の群コホモロジ-を使ったInfranil多様 体の構成。

(Injective) Seifert fibrationのアイデアを使って、上記の結果の別証明。

この講義の結びとして、3次元に限って次の実現定理を証明する。

Σ(p,q,r) を (p,q,r)= (2,3,6), (2,4,4) または (3,3,3)となるSchwarz 3角群とし、2次の群コホモロジ-H2(Σ(p,q,r):Z)を考える。 各元cに対し3次元可縮空間に固有不連続に作用する群πが 一対一に対応する。 さらに、cが有限位数のときはリーマン平坦オービフォルト R3?πが対応し、4次元ノンコンパクト体積有限の完備実双曲オービフォルトのひとつのカスプ(の切り口) として実現される。一方cが無限位数 のとき、3次元ハンゼンバーグ冪零オービフォルトΝ?πは 2次元ノンコンパクト体積有限の完備複素双曲オービフォルトのひとつのカスプ(の切り口) として実現される。

Keywords:実、複素双曲空間, カスプ (Cusp), 離散群作用、群拡大、群コホモロジ-、 (Injective) Seifert fibration, Heisenberg infranilmanifold. (53C55, 57S25, 51M10).

科目名 数理解析学特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 11月14日(月)~18日(金)
談話会:11月16日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 作間 誠(大阪大学)
タイトル McShaneの等式
- 双曲曲面上の単純閉曲線とタイヒミュラー空間上の定数値無限級数 -
場所 数学講究室(3040)
講義内容 Greg McShaneは1991年の学位論文のなかで,一点穴あきトーラス上の単純閉曲線の長さに関する不思議な等式(McShane's dentity)を発見した. その後,この等式はMcShane自身,B. Bowditch,Maryam Mirzakhani,Ser Pew Tan - Yan Loi Wong - Ying Zhang,秋吉宏尚-宮地秀樹ー作間誠等により 様々な形に一般化され,またMirzakhaniによりタイヒミュラー空間への見事な応用が与えられた.この講演ではこれらの発展を説明する.
科目名 応用解析学特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 6月13日(月)~6月16日(木)
談話会:6月15日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 三上 敏夫(北海道大学)
タイトル 確率最適制御理論に よる最適輸送問題入門
場所 数学講究室(3040)
講義内容 最適輸送問題は、1781年に、フランスのMongeに より提唱された「砂山をある場所からある場所に移す最適な方法を求めよ」と言うものです。 これは、PDEでは、Monge-Ampere方程式の研究に発展して行き ました。ところで、この問題は、実は、確率測度に関する最適化問題であることも 知られており、統計数学の研究者によってもさかんに研究されてきました。 この講義では、確率最適制御理論の立場からこの問題を考えることより、 部分的に証明を簡単にし、また、Hamilton-Jacobi方程式との関係を論じます。 この問題の数理科学的な面白さとその数学的豊かさが伝わればと 思っています。