集中講義(2010年度)

科目名 幾何構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 12月6日(月)~12月10日(金)
講演者(所属) 望月 拓郎(京都大学)
タイトル 調和バンドルの漸近挙動について
場所 数学講究室(3040)
講義内容 この講義では, 主に調和バンドルの漸近挙動について 概説します. 調和バンドルとは, もともと射影多様体上 の平坦束やヒッグス束の研究において導入されたものでした. その後, 特異性を持つような調和バンドルの研究が進み, 代数幾何学・大域解析学・代数解析学・ トポロジーなどが 交錯する地点で, 興味深い展開を見せています. その際, 重要な基礎となるのが, 調和バンドルの漸近挙動の研究です. これは大雑把にいうと次の二つの主張からなります.

(1) 正規交叉因子の補空間上の調和バンドルが, 全体の複素多様体上の有理型な対象に延長される.

(2) 簡約化により, わかりやすい調和バンドルが得られる. これらをより精確に述べること

が, 講義の一つの目標に なります. さらに余裕があれば, 関連するいくつかの 話題について触れる予定です.
科目名 応用解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 7月20日(火)~7月24日(土)
談話会:7月21日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 森 真(日本大学)
タイトル エルゴード理論事始め
場所 数学講究室(3040)
講義内容 力学系とよばれる数学はNewton力学から始まりました. 自然現象を抽象化し,その本質を探ることで 物理現象を解き明かすだけでなく, 新たな数学への道も開きました. エルゴード理論はその中でも統計力学 をその礎とするものです. 統計力学はほぼ無限個の粒子からなる物理系を考察するものです. 力学系はそれを 構成する粒子の数が増えれば,その複雑性は増し, その詳細な記述は困難になっていきます.ところが,多数の 粒子の運動は ランダム性をキーワードにするとその運動の説明がつくことが多いのです. もともとのNewton力学 で考えれば,その運動は決定論的であるはずです. 統計力学ではエルゴード仮説という仮説をベースにその理論 を組立てています. この仮説に基づき,ランダム性と決定論的性質とを平衡状態をキーワードに 融合させるのです. このことを1次元の力学系という単純なモデルによって探っていこうと思います.
科目名 数理科学D
日程 6月28日(月)~7月2日(金)
談話会:6月30日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 森山 知則(大阪大学)
タイトル 離散系列型の保型形式について
場所 数学講究室(3040)
講義内容 Siegel上半空間をはじめとするHermite対称空間$X$上の 正則保型形式は, 自然なやり方で$X$の等長変換群で ある半単純Lie群 上の(反)正則離散系列表現を生成する関数とみなすことができる。 これらの正則保型形式および、 ある意味でそれらと「親戚」関係にある ものが、標題の離散系列型の保型形式である。この講義では, 半単純Lie群の 離散系列表現に関する一般的なことから始めて, 離散系列型の保型形式 の幾何学的な意味づけ, 次数2の離散系列型 Siegel保型形式のFourier 展開の一般論とその応用に関して解説する。