研究内容 (Research)
研究課題 (Research project)
光合成を行う生物は、光エネルギーをアンテナで吸収し、反応中心で電気化学エネルギーに変換するまでの過程を非常に効率よく行っています。我々は、特に紅色光合成細菌由来のアンテナ系におけるエネルギー伝達過程に興味を持っています。紅色光合成細菌の多くは、周辺アンテナと呼ばれるLH2とコアアンテナと呼ばれるLH1-RC(反応中心)を持ち、LH2で吸収した光エネルギーをLH2→LH1→RCと段階的に伝達しています。アンテナ系は下図に示すように、カロテノイドとバクテリオクロロフィルという二つの色素分子とタンパク質がリング状の色素タンパク複合体を形成しています。
高分解能X線構造解析により得られた、紅色光合成細菌Rps. acidophila由来周辺アンテナLH2の3次元構造
カロテノイドは、炭素原子が一重結合と2重結合を交互に繰り返す、ポリエン構造を骨格に持っています。バクテリオクロロフィルは、テトラピロール環の中心に金属が配位した金属錯体の一つです。これらの分子は、擬一次元的なポリエン構造を持つことから、その光物性は骨格に非局在化したπ電子に支配されます。紅色光合成細菌の初期過程では、これら2つの分子間で、超高速かつ高効率にエネルギーの伝達が行われています。我々は、このようなエネルギー伝達機構に着目し、超高速時間分解分光を用いて紅色光合成細菌アンテナ系におけるダイナミクスを解明すると同時に、個々の色素分子の励起状態ダイナミクスに関する研究を行っています。
こういったダイナミクスは、フェムト秒という非常に早い時間スケールで起こります。そのため、このような現象を観測・解明するためには、高い時間分解能を持つ装置が必要となるため、種々の測定手法の開発及び最先端光源の開発も行っています。
実験装置 (Apparatus)
理学部棟
フェムト秒レーザーシステム
Spectra Physics: Hurricane-X
70fs, 1kHz, 1mJ
フェムト秒チタンサファイア再生増幅器 (Hurricane-X)と光パラメトリック増幅器 (OPA800CF)
サブ100フェムト秒ポンプ・プローブ分光測定装置
サブナノ秒〜サブミリ秒ポンプ・プローブ分光測定装置 (EOS-Vis/NIR, Ultrafast Systems)
光合成反応では、光合成色素が光を吸収した後、フェムト (10-15)秒〜ミリ (10-3)秒の時間スケールでエネルギー移動・電子移動・電荷分離が行われます。そのため、光合成過程全容の解明には、このような時間スケールを網羅できる測定システムが必要になります。我々は、フェムト秒〜サブナノ秒で測定可能な分光システム (時間分解能<100fs)とサブナノ秒〜サブミリ秒 (時間分解能<1ns)で測定可能なシステムを組み合わせることにより、広範囲な時間領域で光合成過程を解明することを目指しています。
2号館(複合先端研究機構)
フェムト秒レーザーシステム
Coherent: Legend Elite USP-HE
30fs, 5kHz, 0.9mJ
フェムト秒チタンサファイア再生増幅器 (Legend-Elite USP-HE)と光パラメトリック増幅器 (OPERA-Solo)
非同軸光パラメトリック増幅器 (Non-collinear Optical Parametric Amplifier: NOPA)
NOPAは、超短光パルス発生方法として広く用いられています。我々は、2つの独立したNOPAを構築し、可視から近赤外領域における極超短光パルスの発生を目指しています。2つのNOPAからの出力光は、帯域幅>200nmが得られ、フーリエ変換限界で<5fsのパルス幅が得られることが期待されます。
中空糸ファイバー光パルス圧縮器 (Hollow Fiber Compressor, Kaliedoscope, FemtoLasers)
中空糸ファイバーに希ガスを充填させ、その中を高強度光パルスが伝搬することにより、入力光パルスに対してスペクトル広がりを持った光パルスが得られます。この出力パルスを最適に計算されたチャープミラー群を用いることで、群速度分散を補償し、極超短光パルスを得ることができます。我々の研究グループでは、フーリエ変換限界パルス幅4.8fsに対して、5.0fsの光パルスを発生させることに成功しています。
グループセミナー (Group seminars)
2012.4〜
輪読 "Ultrashort Laser Pulse Phenomena" Jean-Claude Diels
雑誌会 各人、自分の興味ある論文を紹介
研究報告 それぞれの研究進捗度を報告
参加者 長岡裕也、三野耕平、福田悠
2011.4〜2012.3
輪読 "量子光学", 松岡正浩
雑誌会 各人、自分の興味ある論文を紹介
研究報告 それぞれの研究進捗度を報告
参加者 丸田聡、長岡裕也