大阪市立大学 宇宙物理・重力 研究室 Research Group for Theoretical Astrophysics, Osaka City University



過去のコロキウム情報[2018年度]


日時:4月13日(金) 16:00〜
講師:石原秀樹氏 (大阪市立大学)
題目:Kerrブラックホールの周りの剛体回転するストリングの運動
概要:南部‐後藤ストリングの運動方程式は2次元世界面上の波動方程式で 表されるが,曲がった時空上でこれを解くことは簡単ではない. ストリングの世界面に幾何学的対称性を課せば,方程式は 常微分方程式に帰着され容易に解析できるようになる. この手法を用いて,Kerrブラックホールの周りで剛体回転するストリング を考察する.特に,このストリングがホライズンに刺さることができるか について論ずる.

日時:4月20日(金) 16:00〜
講師:乾 聡介氏(大阪市立大学)
題目:グラフェンナノフレーク上での電子と古典温度
概要:古典熱力学の理解、発展が始まってから100年余りが経とうとしている。また科学技術の進歩によりミクロの量子効果が我々の生活を支えるような時代になってきている。しかし未だにミクロとマクロの世界を繋ぐ非平衡熱輸送の理論は完成していない。我々は原子サイズ以下の解像度を持つ局所的な温度測定方法を提案し、非平衡状態のグラフェンナノフレーク上での電子温度のシミュレーションを行った。その結果、温度分布は電子の量子効果に強く影響を受けることがわかった。その系から古典温度の情報を抽出するためには、温度分布の粗視化だけでは不十分で、系の電子にたくさんの量子状態を持たせて、特定の共振状態の電子分布に依存しないようにしないといけない。つまり、サンプルの状態密度が滑らかで一定に近づくようにサンプルと浴とのカップリングを強くしたとき古典温度の特徴が現れる。

日時:4月27日(金) 16:00〜
講師:友田 健太郎氏(大阪市立大学)
題目:等長変換群の存在を妨げる幾何学量について
概要:ハミルトン形式の解析力学や一般相対論をあつかうとき, 過剰決定系の偏微分方程式に遭遇することがある. 例えば,リーマン多様体を特徴付けている対称性は何かという問から, キリング方程式と呼ばれる偏微分方程式が現れるが, これは過剰決定系の典型である.こうした過剰決定系のなかでも,有限型に分類される系は, 解空間の有限次元性が保証されるなど, 偏微分方程式でありながら常微分方程式に近い性質をもつ. 本講演では,過剰決定系の偏微分方程式を考える動機について概説した後,キリング方程式の諸性質を議論する.特に,キリング方程式の解の存在を妨げる幾何学量を紹介する.また,こうした幾何学量を用いて,キリング方程式の解空間の次元を代数的に決定する「試験法」を紹介する.本講演の内容は,Boris Kruglikov(トロムソ大学)とVladimir Matveev(イェーナ大学)との共同研究に基づく.

日時:5月11日(金) 16:00〜
講師:井岡 邦仁(京都大学)
題目:コンパクト連星合体による電磁波現象とGW170817
概要: 重力波事象 GW170817 は、二つの中性子星の合体の初観測になっただけでなく、様々な電磁波対応天体も同時に観測され、本格的なマルチメッセンジャー時代の到来を告げる歴史的イベントとなった。本セミナーでは、コンパクト連星合体においてどのような電磁波現象が期待できるのかを概観し、今回のイベントで分かったこと、分かっていないことを解説する。特に、同時観測されたショートガンマ線バースト sGRB 170817A は相対論的ジェットが起源なのかどうか?マクロノバ(キロノバ)のエネルギー源は本当にr過程元素の崩壊なのかどうか?などについて議論する。
日時:5月18日
場所:E-211 理学部第10講義室
講師:前田 秀基 氏 (北海学園大学)
題目:特異点のないブラックホールの時空構造
概要:一般相対論では特異点定理により物理的に妥当で一般的な状況において時空に特異点が存在する。ブラックホール内部にある特異点はその顕著な例であるが、その周辺では曲率が非常に大きくなるため重力の量子論的な効果が優勢になり、最終的に量子重力理論の枠組みでは特異点は取り除かれると信じられている。現在のところまだ完全な量子重力理論は知られていないが、特異点を持たないブラックホール(非特異ブラックホール)解は古典的な枠組みにおいてこれまで様々に構成されてきた。このセミナーでは最も単純な球対称の場合に、どのような時空構造が非特異ブラックホールとして実現されるのかを聴衆と一緒に考察したい。

日時:5月25日
場所:E-211 理学部第10講義室
講師:伊藤 洋介 氏 (大阪市立大学)
題目:Gravitational wave data analysis and status of KAGRA
概要: The gravitational wave astronomy has just begun. Through the discoveries made by the network of the LIGO and Virgo gravitational wave detectors, we are enjoying the power of the new way of studying the universe. The power is obtained by sophisticated gravitational wave data analysis techniques, which enable us to look deep into the noisy detector data streams. Here in this talk, I would like to summarize the current findings out of the discoveries, and then review data analysis techniques utilized in the field. I also report on the status of the KAGRA gravitational wave detector built in Gifu prefecture, Japan and its future plan, as well as the data analysis activities for the KAGRA project.
日時:6月1日
場所:E-211 理学部第10講義室
講師:井田大輔氏 (学習院大)
題目:World sheetの軌道空間について
概要:Nambu-Goto膜は,world sheetとよばれるLorentz多様体Nへの等長埋入のうち,調和写像となるもので,要するに極小曲面のようなものである。 定常的な時空の中で定常Killingベクトルがdim N=2のNambu-Goto膜(弦)に接している場合に,弦の運動方程式が時空より1次元低い, あるRiemann多様体上の測地線方程式となることはB. Carterにより知られていた。 今回このメカニズムの一般化として,以下の命題P(N,M,g,G)を考える。

P(N,M,g,G)=(Nにm次元時空(M,g)の等長変換群のn次元Lie部分群Gが自由に作用するとき,軌道空間N/GはM/G上のある標準的なRiemann計量に関するNambu-Goto膜となる)

その結果,一般のGではP(N,M,g,G)は成立しないこと,少なくともGがアーベル群であるか半単純コンパクトLie群の場合には成立することがわかる。 また,同様のことはNの上に中性スカラー場,Yang-Mills場と結合したスカラー場,あるいはKalb-Ramond場のようなp形式場がのっている場合にもいえる。

日時:6月15日
場所:E-211 理学部第10講義室
講師:宝利剛 氏 (国立舞鶴工専)
題目:Kerr時空を背景時空とするMaxwell方程式の変数分離性について
概要:Kerr時空を背景時空とするMaxwell方程式はTeukolsky方程式と呼ばれる、複素スカラー場に対する偏微分方程式に帰着されることが知られている。さらに、Teukolsky方程式は変数分離を起こし、常微分方程式にまで落ちることも知られている。このような可積分構造の背景には、Kerr時空の持つゲージ化された共形キリング-矢野対称性が重要な役割を果たしている。本講演では、まず、Maxwell方程式がTeukolsky方程式に帰着される際、ゲージ化された共形キリング-矢野対称性がどのように機能しているのかについて説明する。そのあと、Teukolsky方程式の変数分離性が、ゲージ化された共形キリング-矢野対称性の組により実現されることを概説する。また、ごく最近、 Kerr時空を背景時空とするMaxwell方程式を、Teukolskyの方法とは異なるやり方で、複素スカラー場に対する方程式(以下、LKFK方程式と呼ぶ。)に帰着させる方法が提案された。そして、このLKFK方程式も変数分離を起こすことが示されている。しかし、LKFK方程式の変数分離性についてはまだ未解明の部分があり、完全な理解には至っていない。本講演の後半では、このLKFK方程式の変数分離性に対する最近の進展について紹介する。
日時:6月22日
場所:E-211 理学部第10講義室
講師:吉野裕高 氏 (大阪市立大学)
題目:ブラックホール・アクシオン系の最終状態について
概要:超弦理論によると非常に小さい質量を持つスカラー場が 複数存在する可能性がある(超弦的アクシオン)。そのような スカラー場が存在すれば、回転ブラックホールまわりで超放射 不安定と呼ばれるメカニズムにより増幅し、アクシオンの雲を 形成する。ブラックホール・アクシオン系から放射される重力 波は観測できる可能性があるため興味深いが、重力波の波形を 予言するためにはアクシオン場の自己相互作用が引き起こす現 象を数値シミュレーションにより明らかにしなければならない。 以前、われわれはボーズノバと呼ばれる激しい現象が起こると 報告したが、今回はより改善された長期シミュレーションをお こない、以前とはかなり異なる結果が得られた。これに関して 報告する。
日時:6月29日
場所:E-211 理学部第10講義室
講師:松岡千博 氏 (大阪市立大学)
題目:非線形resurgent analysisと非可積分系における厳密解
概要:Ecalleによって導入された`resurgent analysis’は発散する漸近級数を収束させる手段としてWKB法に かわるものとして注目を集めており、最近ではストリング理論に現れるインスタントン解の構成といった物理分野にも応用されるようになってきた。 本講演では、このresurgent analysisを非線形方程式、特にカオスを記述する代表的な方程式であるエノン写像に適用して、エノンアトラクターのようなストレンジアトラクターを厳密に関数で描く手法を紹介する。 得られた関数はソリトンのような可積分系の解とは全く異なった性質を持っている。講演ではこの関数についても詳述する。
日時:7月13日
場所:E-211 理学部第10講義室
講師:鈴木良拓 氏 (大阪市立大学)
題目:Kaluza-Klein Black String/Holeの高次元極限を用いた解析
4次元時空中のアインシュタイン方程式は、唯一性定理により真空かつ漸近平坦時空において球対称回転ブラックホールであるカー族のみを定常解として持つが、D>4である高次元時空においては、ブラックリング解に代表される非球対称定常解が多数存在している。 ところが、このような非球対称解は一般に解析が難しいため、近似的手法または数値解の構成による解析に頼らざるをえない。 近年、高次元ブラックホールの近似的解析手法として、「高次元極限(Large D limit)」を用いた手法が発展してきた。 高次元極限においては様々なホライズン時空が単純な共通構造を持ち、ダイナミクスの解析が非常に見通しのよいものとなる。 特に、ブラックホールのダイナミクスがホライズン面上の「有効理論」に帰着することがわかった。 本講演では、重力の高次元極限について解説すると共に、高次元有効理論を用いた非一様ブラックストリングの解析、およびストリング相とホール相が転移する付近の解(2重錘解)の解析に高次元極限を応用する試みを紹介する。
日時:7月20日
場所:E-211 理学部第10講義室
講師:菅野優美 氏 (大阪大学)
題目:バブル宇宙の間の量子エンタングルメント
概要:ストリング理論の予言の1つとして、たくさんの宇宙(マルチバース)が量子トンネリングを通してバブルとして生まれるという描像があります。 これは古くはインレーション宇宙理論からも予言されていました。 最近マルダセナとピメンテルが、加速膨張時空の中で因果的に離れた領域の間のスカラー場に量子エンタングルメントが存在することを示しました。 この結果は、私たちの宇宙と因果的に離れた他の宇宙が、それぞれ生まれて間もない頃に量子論的にエンタングルしていた、ということを示唆しています。 今回は彼らの計算を拡張して、バブルのウォール効果を取り入れて、バブル宇宙の間のエンタングルメントについて考えます。

日時:10月5日
講師:中尾憲一 氏 (大阪市立大学)
題目:On gravastar formation
概要:巨大質量の物体が重力崩壊を起こすと最終的にはブラックホールが形成されると考えられているが、ブラックホールの情報喪失問題を解消するために、ブラックホール以外の最終形態も提案されている。その一つが、gravastar である。このコロキウムでは、ブラックホール形成と gravastar 形成が観測的に区別可能かどうかを、一般相対論に基づいて、具体的に gravastar formation のモデルを構成し議論する。

日時:10月12日
講師:遠藤陽大氏 (大阪市立大学)
題目:スカラー場による裸の特異点とブラックホール時空
概要:一般相対論におけるブラックホールの性質の1つは時空特異点が存在する事である。 特異点を回避するために多くの研究がなされてきたが、未だ解決には至っていない。 その原因はホライズンの内部を直接観測できないことにある。 今回はその解決策の1つであるmasslessのスカラー場が入った時空について考える。 スカラー場のがある時空として良く知られているのが裸の特異点を持つJNWW解である。 Cadoniらはこの時空がブラックホールになるために必要なpotentialを求めた。 つまり、potentiaに応じて、ブラックホールのホライズンの有無が変わることがわかった。 このことを一般のD次元に拡張し、実際にBTZブラックホール(2+1次元の宇宙項が負の時空)の場合に適用して得られた結果を示す。
日時:10月19日(金) 16:00〜
講師:芦田 尊氏 (大阪市立大学)
題目:共鳴型検出器(調和振動子)による重力波の吸収 概要:B4時に行った卒業研究ではGW20150914の観測データをもとに、調和振動子にこの重力波が入射し、共鳴状態となった場合の振動子のふるまいを考察した。 修士研究では、重力波のsourceとして無限に長い細長いshellを考える。このshellから生じる重力波は円筒対称時空中をr方向に伝搬し、C-energy(cylindrical energy)を運ぶ。 しかし初期条件によっては、このshell が平衡状態に落ち着くには無限大のエネルギーをC-energyとして放出するという場合がある。C-energyが物理的に意味あるものかを知るため、この重力波が調和振動子に入射した場合の振動子の吸収率とC−energyの関係を調べる。 本コロキウムでは、B4の卒研発表をもとに現在の進捗状況を報告する予定。
Thorne, Kip S. (1965) Energy of infinitely long, cylindrically symmetric systems in general relativity. Physical Review, 138 (1B)
日時:10月26日(金)
講師:安積伸幸 氏 (大阪市立大学)
題目:連星ブラックホールが作る時空中の円軌道
概要:単体のブラックホールには厳密解が存在し、その解を用いてブラックホール周りの測地線を解析することにより、その周辺で起こる特徴的な粒子や光の動きを予測することが出来る。 またその予測からブラックホールが作り出す像などを観測しようとする試みも行われている。 近年、重力波の観測により連星ブラックホールの存在が示唆されたことから、連星ブラックホールの周りでの測地線も同様に解析することで、重力波以外での連星ブラックホールの観測などに活用できると考えられる。 しかし重力波の観測により存在が予想されているような連星ブラックホールが作る時空の厳密解は見つかっておらず、単体ブラックホールと同様の解析が困難である。 そこで静的な多体ブラックホール解であるMajumdar-Papapetorou解に対して、ブラックホールの位置がゆっくり動くような摂動を与え、アインシュタイン方程式の近似解としての妥当性を検討する。 さらに得られた近似解を用いて測地線を解析しその特徴を考察する。 今回はMajumdar-Papapetorou時空での測地線の解析結果と、妥当だと思われる近似解を用いた測地線の解析の経過を報告する。

日時:11月2日(金)
講師:Jose M M Senovilla 氏 (University of the Basque Country)
題目:What is the surface of a black hole?
概要:Black holes are fundamental objects in equilibrium predicted by General Relativity. However, in reality, black holes form, evolve and eventually evaporate, thus they are dynamical. Do they have a boundary? If so, where it is? For dynamical balck holes, the usual Event Horizon is global and teleological, thus not well defined. One can then resort to using the local concept of closed trapped surface to try and define the surface of black holes, leading to the concepts of dynamical and trapping horizons. We will show the fundamental problems inherent to dynamical or trapping horizons. The trapped region and its boundary will then be introduced, and the difficulties in finding them highlighted. Finally, the concept of core of a black hole will be briefly discussed.

日時:11月16日(金)
講師:川口 俊宏氏(尾道市立大学)
題目:巨大ブラックホールが宇宙の歴史に果たした影響のすばる望遠鏡を用いた計測
概要:各銀河の中心巨大ブラックホールの進化史に関する多くの理論的・観測的研究が、ブラックホールへ落ち込むガスが放つ輻射によるガス噴出流と母銀河での星形成活動抑制現象(フィードバック現象)の存在を示唆しています。 例えば、酸素イオンの輝線をはじめ、一酸化炭素分子や炭素 イオンの輝線、可視光-X線の吸収線など、ブラックホールへのガス降着 が起源と考えられるガス噴出現象が多く観測されています。 しかし、十分な空間分解能で銀河中心部からのガス噴出量を計測した観 測例はありませんでした。 また、我々は銀河中心核からの高速(約1000km/s) ガス噴出は、ガス降着率が極めて大きい時に発生することを明らかにしてきました。 そこで、急速な巨大ブラックホールの成長に伴って、母銀河 へどのように、どれぐらい影響を与えるのかを明らかにする目的で、こ れらガス降着率の大きい銀河核について研究を進めています。 具体的には、日本のすばる望遠鏡が世界の大型望遠鏡の中で初めて搭載した補償光学+ 可視光面分光機能を活用して、``母銀河星形成抑制''仮説の検証を目指 しています。 高速ガス噴出が起きている活動銀河核の中で最も近傍に居 る天体について、高密度ガス噴出流の発見、および噴出流の諸量の計測 の試みを報告します(Kawaguchi et al. 2018)。
日時:11月30日(金)
講師:森澤理之 氏(大阪市立大学)
題目:準最大対称時空のcohomogeneity-one-string integrabilityについて
概要:時空そのものの対称性としては現れないが、時空内の点粒子の運動を可積分たらしめる「隠れた対称性」の存在が知られている。 同様に、ストリングの運動を介して現れる「隠れた対称性」を探求する。 余等質1 の南部後藤ストリング(世界面の1方向にのみキリングベクトル場が沿うようなストリング)に着目し、 すべての余等質1ストリングが可積分となる時空をcohomogeneity-one(C1)-string integrableであると呼ぶ。 最大対称時空はC1-string integrableであるが、準最大対称時空ではそうでないものが存在する。
日時:12月7日(金)
講師:松野皐氏(大阪市立大学)
題目:誘電体中での時空の幾何学の応用
概要:1923年にGoldonは時空中のMaxwell系とMinkowski時空を運動する誘電体中のMaxwell系とが数学的に等価であると報告をした[1]。 その後の研究者らの努力により、現在では誘電体中の幾何光学を時空の幾何学によって記述する方法はよく知られたものとなっている(例えば教科書[2])。 本講演では、誘電体中でSchwarzschild時空中の光や質点の運動を模倣する方法を提案する。 現在の誘電体の製造技術(屈折率の制限)などと照らし合わせて実現できそうな方法を考えたい。 また他のおもしろそうな応用の可能性についても検討したい。

[1]W. Gordon, Ann. Phys. (Leipzig) 72, 421(1923).
[2]M.Born, E.Wolf "Principles of Optics: Electromagnetic Theory of Propagation, Interfer- ence and Diffraction of Light" Cambridge University Press (2013)
日時:12月14日(金)
講師:赤嶺新太郎氏 (名古屋大学)
題目:2+1次元ミンコフスキー空間内の時間的極小曲面の特異点について
概要:時空において弦が掃き出すことでできる曲面は世界面(worldsheet)と呼ばれ,南部・後藤作用と呼ばれるローレンツ計量を持った曲面に対する面積汎関数を(弦の張力と光速のみに依存したある定数を用いて)定数倍した汎関数の臨界点となる. 一方で,曲面の微分幾何学においては,ローレンツ計量を持った曲面に対する面積汎関数の臨界点となるような曲面は時間的極小曲面と呼ばれ,これまでに様々な研究がなされてきた.  本講演では,2+1次元のミンコフスキー空間内における時間的極小曲面について,曲面上に特異点が現れたときに,特異点が曲面の性質・形状にどのような影響を与えるのか,という問題を考え,時間的極小曲面のガウス曲率と曲面上に現れうる特異点の間に成り立つ関係を考察する. 本講演の一部は,プレプリントarXiv:1701.00238に基づく.

日時:12月21日(金)
講師: 岡林 一賢氏(早稲田大学)
題目:自転粒子の衝突ペンローズ過程
概要:極限ブラックホールの事象の地平面付近で粒子の衝突過程を考えると重心系のエネルギーが発散する現象が2009年に見つけられている。 また、この衝突ペンローズ過程では、放出粒子のエネルギー効率が問題となり、実際に系からエネルギーを取り出すことが可能であることが示されている。 特に、無限遠から投げ込んだ粒子の衝突に関する解析は盛んである。 この解析を自転を考慮して行った結果、エネルギー効率が最大2倍以上大きくなることが分かった。 また、ISCO上の粒子との衝突へと拡張した場合、エネルギー効率に関して自転を考慮すると大きくなるという傾向は変わらないが、無限遠から投げ込んだ時の衝突よりも小さくなることがわかった。
日時:1月18日(金)
講師: 高橋 一麻氏(大阪市立大学)
題目:数値計算による重力崩壊過程にある星の撮像
概要:ブラックホールの外側にいる観測者にとって、ブラックホールそのものの観測はブラックホールの定義から不可能であり、電磁波などを用いて観測者が見る事ができるのは重力崩壊を続ける星の表面である。 本研究では、Oppenheimer-Snyder Collapseを用いて、重力崩壊し続ける星の像を数値計算によって得た。 星の表面は一様等方に光を放射すると仮定し、赤方偏移、及び連続スペクトルについてどのように時間発展するか数値的に計算する。 発表では、アニメーションにして観測者の得る像をお見せし、崩壊の最終段階では像が「赤くなる」のではなく、「暗くなる」ことで観測不能となる事を示す。
日時:1月25日(金)
講師:須佐元 氏 (甲南大学)
題目:初代星の形成理論の現状について
概要:初代星は宇宙開闢から1億年程度たったあと最初に誕生した星々のことである。 これらの星は最初の輝く天体であると共に、その後の宇宙の物質進化や再電離などに寄与したと考えられており、その誕生は現代宇宙論の中心的課題の一つである。 これらは次世代の観測機器を用いても直接観測によって調べることはできないので、理論的研究及び間接的観測に基づいた議論が行われてきた。 このセミナーでは主に理論的にこれらの星の誕生がどのように考えられているかを解説し、先端の研究と合わせて現在の理解について述べる。
日時:2月8日(金)
講師: 関口 雄一郎氏(東邦大学)
題目:連星中性子星合体からの重力波で探る高密度核物質
概要:連星中性子星合体からの史上初めての重力波イベント GW170817 における重力波とそれに付随する電磁波のマルチメッセンジャー観測では、中性子星の構造、翻って中性子星物質の状態方程式に関する制限が得られた。 これまで行われてきた原子核実験および重イオン衝突実験などの地上実験の結果と重力波からの制限を合わせることで、高密度核物質の理解が大きく進む可能性がある。 そこで本講演では GW170817 で得られた状態方程式への制限について、地上実験の結果を交えながらレビューするとともに、今後の展望についても議論する。
日時:2月15日(金)
講師: 根岸 宏行氏(大阪市立大学)
題目:等方非一様な構造が宇宙背景放射の偏光に与える影響
概要:現代宇宙論の標準モデルでは巨視的にみると宇宙は等方一様であることを作業仮説として採用しているが、巨視的に見た宇宙の一様性はまだ観測的に十分には確かめられていない。 これまでの非常に大きなスケールの非一様性を観測データから制限する研究では宇宙背景放射の偏光の観測データは用いられていない。 その理由としては非一様な構造の影響を考慮して宇宙背景放射の偏光を理論予言することが難しいからである。 本発表ではいくつかの近似を用いて非一様な構造の宇宙背景放射の偏光への影響を調べた結果を発表する。
日時:2月22日(金)
講師: 小川 達也氏(大阪市立大学)
題目:Homogeneous Balls in a Spontaneously Broken U(1) Gauge Theory
概要:場の理論ではnon-topological soliton (NTS)という古典解が知られており、様々な応用がなされている。 代表的なNTSであるQ-ballは様々な拡張がなされている一方で、R. Friedberg , T. D. Lee, A. Sirlinにより構成された最初のNTSモデルの拡張はあまりされていなかった。 我々はU(1)ゲージ場を導入することで、FLSモデルを拡張し、NTS解を構成した。 本モデルでは、NTS内部で場が一様な値を取る、homogeneous ball解が3種類存在することが分かった。 本発表では、これら3種類のhomogeneous ball解を紹介し、その性質について論じる。
参考文献
1. R. Friedberg, T.D. Lee and A. Sirlin, Phys. Rev. D 13, 2739 (1976)
2. H. Ishihara and T. Ogawa, arXiv:1811.10894 [hep-th], Prog. Theor. Exp. Phys. in press.
3. H. Ishihara and T. Ogawa, arXiv:1901.08799 [hep-th]


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