大阪市立大学 宇宙物理・重力 研究室 Research Group for Theoretical Astrophysics, Osaka City University



過去のコロキウム情報[2020年度]


日時:6月5日
講師:石原秀樹氏(大阪市立大学)
題目:3次元佐々木空間をもつEinstein-Maxwell-Current系の解
概要:電流とMaxwell場と重力場の混成系は互いに影響を及ぼしあうため厳密に解くことは多くの場合難しい問題である。 佐々木多様体の幾何学的性質を有効に利用することで関数自由度を持つEinstein-Maxwell-Current系の解を構成した。
日時:6月12日
講師:加藤亮氏(大阪市立大学)
題目:パルサータイミングアレイによるダークマターと重力波の探索
概要:パルサータイミングアレイとは、多数のパルサーが放出するパルスを長期的に観測することで、ダークマターと重力波の検出を目指す試みのことである。 ダークマター候補の一つであるアクシオンと、超大質量ブラックホール連星が放出する重力波は、光の到着時間を長期的に振動させるため、パルサータイミングアレイによって検出可能だと考えられている。 現在、多数のパルサータイミングアレイプロジェクトが、ダークマターと重力波の検出を目指しているが、いまだに検出はされていない。 本発表の前半では、パルサーの観測データを用いてアクシオンを探索した結果ついて発表する。 本発表の後半では、背景重力波の円偏光モードを探索した結果について発表する。
日時:6月19日
講師:吉野裕高氏(大阪市立大学)
題目:トーション入りの重力理論:部分的なレビュー
概要:一般相対論ではベクトルの平行移動を定義するさいに、クリストッフェル記号が下付き添字に関して対称であることを仮定する。 この対称の仮定をはずした場合には、トーションとよばれるテンソル量があらわれる。 このトーションを取り入れた重力理論はスピノール場との関連などから考えられてきた。 重力波や電磁波で強重力場領域の観測ができるようになってきた現在、これらの理論を考える新しい面白さがありうるのか? という動機で、トーション入りの重力理論のいくつかをレビューする。 本講演は完成された研究報告や完全なオーバービューではなく、新しい議論が始まるきっかけになればと思っている。
日時:6月26日
講師:佐合紀親氏(大阪市立大学)
題目:ブラックホールの重力波反響
概要:LIGO-Virgoの重力波観測により発見されたコンパクト天体連星は、合体後にブラックホールに形成していると考えられている。一方で、 ブラックホールの疑似天体が形成される可能性や事象地平面近傍に量子重力的効果による構造が生じる可能性などが議論されており、 現在の観測ではこれらをすべて棄却するには至っていない。実際に、最近、連星ブラックホール合体後に重力波の反響(エコー)が起きて いる可能性が指摘され[Abedi et al. (2017)]、話題となった。Abedi氏らの研究では、一定の減衰率で同じ波形が繰り返される簡単なテンプレートが解析に用いられていた。そこで、我々は、 カー時空における重力場摂動方程式をホライズン近傍に完全反射境界条件を課して解くことで、より現実的な理論波形を構築した。 また、その理論波形を用いて、LIGO-Virgoの観測データの再解析を行った。本発表では、これらの研究成果について紹介する。
日時:7月3日
講師:松野皐氏(大阪市立大学)
題目:3次元接触計量多様体によるEinstein-Maxwell-Current系の厳密解の構成
概要:3D接触計量多様体には、幾何学的構造から接触磁場と接触電流が定義され、 それらはMaxwell-Current系を成す。私と石原氏はさらにこれらを重力源とするEinstein-Maxwell-Current系の解を構成することを考えた。 電流を作る物質に対するいくらかの仮定と物理的にリーズナブルな条件(エネルギーや質量が正)を課した結果、 静的な場合は3次元のspherical typeの佐々木多様体を空間部分に持つ時空しかないという結論を得た。 本発表ではこの研究を外観しながら、何が解の豊富さを妨げているのかを考え、今後の改善案を議論したい。
日時:7月10日
講師:山中真人氏(大阪市立大学)
題目:支持される粒子暗黒物質像の変遷
概要:暗黒物質の候補として素粒子標準理論を超える模型で 予言される新粒子が有力視される。有力視される理由やこれまで の検証について紹介し、現在期待される粒子暗黒物質像を概観 する。その中の1つであるsecluded dark matterという枠組み における暗黒物質残存量について解説し、残存量を"近似評価" ではなく"数値計算"することの意義・重要性を述べる。
日時:7月17日
講師:松野研氏(大阪市立大学)
題目:2成分プラズマにおけるプラズマ振動
概要:イオンと電子または電子と陽電子からなる2成分プラズマでは、 プラズマを構成する粒子の質量及び電荷の違いやプラズマ温度の違いにより、 プラズマ振動や電子プラズマ波等が発生する。そこで2成分プラズマ間に発生する電場に注目して、 Newton重力を受ける球対称な定常流におけるプラズマ振動や遷音速流を議論した。

日時:7月31日
講師:森澤理之氏(大阪市立大学)
題目:majorizationとヤング図

日時:8月7日
講師:常定芳基氏(大阪市立大学)
題目:「宇宙線起源をめぐる観測的研究の現状」
概要:宇宙線は宇宙を飛び交う高エネルギーの陽子、原子核である。そのエネルギー範囲は GeV 〜 100EeV と10桁以上にわたり、起源も観測手法も多様であって、発見から 100年を経過した現在でもその起源は観測的に確立していない。本講演では、宇宙線起源 解明のための 1) 宇宙線観測 2) ガンマ線観測 3) 電子観測 の現状について紹介したい。

日時:10月9日
講師:中尾 憲一氏(大阪市立大学)
題目:Observation of "Black Hole"
概要:ブラックホール連星の合体によって生成された重力波の直接検出や、大質量ブラックホールの極近傍の撮像の成功は、ブラックホール研究が新しい段階に入ったことを意味する。ブラックホールの極近傍の像は Black Hole Shadow と呼ばれ、ブラックホールのシルエットと説明されることがある。このセミナーでは、Black Hole Shadow はブラックホールのシルエットというより、重力崩壊している大質量物体のシルエットであることを説明し、放射している重力崩壊物体が、遠方で静止している観測者とブラックホールに自由落下する観測者からどのように見えるのかを、光線追跡法で明らかにした研究成果を報告する。

日時:10月30日
講師:鈴木 良拓氏(大阪市立大学)
題目:高次元有効理論におけるブロブ近似を用いたブラックホールの解析
概要:高次元極限では高次元有効理論によってブラックブレーンの非線形ダイナミクスが簡単に解析できるようになる。コンパクトなホライズンを持つブラックオブジェクトについてもブロブというブレーン上のガウス分布的な質量分布に読み替えることで、有効理論による非線形解析を同様に適用することができる。本講演では、このブロブ近似について解説を行い、それを応用した高次元ブラックオブジェクト研究の結果を紹介する。

日時:11月6日
修論中間報告
講師:神原 亮介氏(大阪市立大学)
題目:時空中を定常回転するstringの運動について

日時:11月13日
修論中間報告
講師:大倉 靖央氏(大阪市立大学)
題目:Analogue Gravity

日時:11月19日
講師:小原 顕氏(大阪市立大学 超低温物理学研究室)
題目:超流動入門 〜二流体の力学と音波〜
概要:低温物理学の夜明けは1908年7月10日である.この日,オランダのライデン大学のK. Onnesが「どんなに冷却しても液化しないのではないか?」とさえ言われたヘリウムガスの液化に成功したからであり,3年後に超伝導(水銀)が発見されるきっかけともなったからである.次にヘリウム業界において劇的な変化が訪れたのは1935〜38年で,この奇跡の3年間で減圧ヘリウムにおける非常に重要な発見(比熱の異常,粘性のパラドックス)がなされた.比熱の異常は F. Londonによってボース凝縮であると同定され,粘性の消失も確認された.さらに,粘性のパラドックスもL. Tisza と L. Landau による現象論「2流体力学」によって解決された.
二流体力学力学とは,超流動ヘリウムが[粘性を 持ちエントロピーを運ぶ常流動成分] と,[粘性とエントロピーを持たない超流動成分] の二成分からなり,それぞれが流体力学的な運動方程式に従うというものである.ここでいう超流動成分とはボース凝縮した基底状態に属する成分で,常流動成分は超流動成分から熱励起されたフォノン・ロトンを流体的に取り扱ったものである.したがって,二流体モデルはその成立要件を除けば,量子力学・統計力学的な取り扱いは必要なくなり,2成分系の流体力学的運動方程式で記述されてしまうという特徴がある.
本講演では,二流体力学の成立背景から,二流体力学の重要な起結である第2音波の導出を行う.また,宇宙分野・素粒子分野の学生向けに,第二音波のいくつかの高エネルギー類似実験の紹介を行う.

日時:12月4日
講師:安積 伸幸氏(大阪市立大学)
題目:動的な時空で観測されるBlack Hole Shadow
概要:ブラックホール近傍の像であるブラックホールシャドーは、正確にはブラックホールのシルエットではなく、重力崩壊している大質量物体のシルエットであると考えられる。
今回は10月に中尾氏に話して頂いた内容を踏まえて、光が重力崩壊体中を完全に透過する場合に、遠方の観測者がその像をどのように観測するのかを調べるために、Oppenheimer-Snyder collapseモデルとVaidya spacetimeを用いて行った計算結果を報告する。

日時:12月11日
講師:孝森 洋介氏(和歌山高専)
題目:S星の運動から探る銀河系中心領域の暗黒質量分布
概要:銀河系の中心,およそ0.02pc内の領域に注目すると銀河系中心を周回運動してい る星団(S星)を見ることができる。
欧米グループが20年にわたりS星の運動を観測し続けた結果,中心天体の質量は 太陽質量の400万倍であることが 明らかとなった。コンパクトな領域に大質量が集中していることから,銀河系中 心には太陽質量の400万倍の 巨大ブラックホールがあると考えられている。ここまでは,S星の運動は巨大ブ ラックホールとの2体問題であると しており,実際,それで十分説明できている。しかし,今見えているS星の内側 に,同様のS星,あるいは,コンパクト天体, ダークマターなど見えていない質量分布(暗黒質量)が観測の誤差範囲内で存在 してもよい。
本講演では,巨大ブラックホールの周りに質量分布を用意し,それがS星の運動 に与える影響について議論する。 また,最新の研究内容として,S星の一つであるS0-2を用いた暗黒質量の総量へ の制限について紹介する。

日時:12月18日(金)
講師:小川 達也氏(大阪市立大学)
題目:Soliton Stars In a Spontaneous Broken U(1) Gauge Theory
概要:大域的U(1)対称性を有する古典スカラー場の理論では、ノントポロジカルソリトンと呼ばれる解が存在することが知られている。 我々はFriedberg, Lee, and Sirlinによって提案されたモデルを一般化させ、複素スカラー場、複素ヒッグス場、U(1)ゲージ場の結合系において ノントポロジカルソリトンを構成した。
2つの複素スカラー場は共にU(1)ゲージ場と結合しており、誘起される電荷密度は共にゲージ場の源となる。
このモデルにおいて無限遠が真空となるべく境界条件を課すと、2つの場は互いに逆符号の電荷を誘起し、その結果ソリトン内部の電荷は常に遮蔽される。 本公演では、このノントポロジカルソリトンモデルに重力場を加えることによって構成した、ソリトン星について論じる。
重力場を加えることによって、ソリトン星には上限質量が現れるが、 この上限質量と重力結合定数の間に比例関係が存在することを示す。
同様にして、半径やCompactnessといった物理量についても議論を行う。

日時:1月15日(金)
修論直前発表
講師:神原 亮介氏(大阪市立大学)
題目:時空中を定常回転するstringの運動について
概要:ブラックホール近傍で定常回転する南部後藤stringの運動を考える。
stringがはく世界面が従う方程式は一般に2次元の偏微分方程式で難解だが、定常回転のような幾何学的対称性を課すことによってその方程式は測地線方程式(常微分方程式)に帰着することができる。
前回の中間報告ではMinkowski及びSchwarzschild時空中を定常回転するstringのプラナー解(stringがある平面に乗って回転している解)について議論したが、今回は螺旋状に回転するhelical解及びstringの摂動について議論する。

日時:1月22日(金)
修論直前発表
講師:大倉 靖央氏(大阪市立大学)
題目:定常回転する流体とブラックホールの類似性
概要:前回はacoustic metricについて構成方法や性質などの概要について議論した。
今回は具体的な背景流としてdraining bathtubモデルと呼ばれる軸対称の定常流を考える。それによって構成されるacoustic metricを用いて表される波動方程式について、波長が十分短いとするアイコナール近似を行うと測地線方程式が得られる。
この測地線に沿って運動する粒子としてphononというものを考えると、今考えているacoustic metricにおいてphononの円軌道の存在やphononの軌道が曲がるなどブラックホールを持つ時空に類似する性質が見られた。

日時:2月5日(金)
講師:高橋 一麻氏(大阪市立大学)
題目:数値計算による重力崩壊過程にある星の撮像
概要:2019年、 Event Horizon Telescope(EHT) によって、ブラックホールが存在すると思われる領域の近傍から放射された光を観測し、史上初めて画像としてその姿を捉えられた事は記憶に新しい。
ブラックホールなどの重くコンパクトな天体の近傍から放射されたような光は、その強い重力により波長が大きく引き伸ばされ る(重力赤方偏移)ため遠方の観測者には観測不能である。そのため観測者の得る像はEHTが観測したように黒抜きの像となる。
一般にブラックホールは年老いた星が自己重力によって崩壊する事で形成されるが、崩壊しつつある星表面から放射された光は時々刻々どのように観測不能となるかは自明ではない。
本発表では、等加速度で崩壊する重力崩壊モデルを用いて、球対称に重力崩壊する星表面から等方に放射し続ける光を、遠方に静止している観測者が観測した場合の赤方偏移やスペクトルの時間変化を数値計算により示す。

日時:2月12日(金)
講師:岡林 一賢氏(大阪市立大学)
題目:コンパクト天体の内部構造と天体形成に伴う粒子生成の関係
概要:Hawkingによって発見されたプランク分布に従う粒子生成を得るためには、事象の地平面(BHの形成)が仮定されていた。近年では、その仮定がなくとも、断熱条件を満たしていればプランク分布に従う粒子生成が起きることが示されている[1]。その事実を踏まえ、BHは形成されず、コンパクト天体が形成される過程でどのような粒子生成が得られるか探究されてきた。その結果、(i)BHのときと異なり流束に特徴的なピークが現れること[2]、(ii)その性質は、ある程度内部の構造に依存しないこと[3]、などがわかってきた。しかし、ピークの現れ方が厳密に内部に依存しないかという点については、未だ議論の決着はついていない現状にある。
 本講演では、内部の構造がより一般的なコンパクト天体の形成過程を考え、その時にどのような粒子生成が得られるか議論し、その内部構造が流束のピークにどのように反映されるか紹介する。
参考文献
[1]. C. Barcelo, S. Liberati, S. Sonego, and M. Visser, JHEP02(2011)003
[2]. T. Harada, V. Cardoso, and D. Miyata, P.R.D 99, 044039(2019)
[3]. KO, T. Harada, and K. Nakao, in preparation.

日時:2月19日(金)
講師:遠藤 洋太氏(大阪市立大学)
題目:ソリトン星の安定性解析
概要:重力崩壊に対する安定性の解析は宇宙物理において重要な関心事の1つである。一方で、ボソン星はダークマターや超大質量ブラックホールの候補になると期待している。このボソン星に対する安定性の解析も広く行われており、その1つとして線形摂動を考える手法がある。この手法はある仮定の下で摂動に対する方程式を変形し固有値方程式になることを利用して解析をしている。
本講演では、12月に講演して頂いた小川氏のソリトン星に対して安定性の解析を行いその結果を報告する。

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