日時・場所 |
講演者 |
題目(概要:題目をクリック) |
4月12日(金) 16:00〜 E211 |
中尾 憲一
(大阪公立大学)
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ブラックホールの帯電とその影響
宇宙物理的な文脈でブラックホールを議論するときは、ブラックホールが電気的に中性であると仮定することが多い。しかし宇宙に存在するガスはほぼ100%電離しており、そのような環境に置かれたブラックホールが電気的に中性でいられるのかどうかは非自明な問題である。この講演では、Schwarzschild 時空のテスト粒子の運動から、非回転ブラックホールがどの程度帯電するのかを評価し、ブラックホールが帯電することにより周りの荷電粒子の運動がどのような影響を受けるのかを解説する。
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4月19日(金) 16:00〜 E211 |
高橋 真聡
(愛知教育大学)
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ブラックホール磁気圏での荷電粒子の運動:磁気的ペンローズ過程の可能性について
天体ブラックホールは、活動銀河中心核・コンパクトX線天体・γ線バースト天体などに存在し、激しい天体現象を引き起こしていると考えられる。ブラックホールを取り巻くガスは降着円盤を形成し、その周囲にコロナと磁気圏(ブラックホール磁気圏)を形成する。磁気圏の磁場の一部はブラックホールを貫くが、時空の引きずりにより生じる磁気トルクにより、ブラックホールの回転エネルキーを磁気的エネルギーとして磁気圏に輸送することができる。輸送されたエネルギーは、高エネルギー放射や宇宙ジェットのエネルギー源として観測されている可能性がある。近年では、観測的にもブラックホール周辺での磁気的現象の重要性が指摘されている。
ブラックホール磁気圏における磁気的現象の解明のためには、ブラックホール時空における電磁気現象の理解が不可欠になる。天体現象に関連づけるためには、磁気圏磁場構造の理解が重要である。今回の講演では、Endo et al (2024) のブラックホール真空磁気圏解における高エネルギー天体現象(粒子加速、宇宙ジェット形成)について考察する。特に、磁化したプラズマについてのペンローズ過程の可能性について考察する。
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4月26日(金) 16:00〜 E211 |
加藤 亮
(大阪公立大学)
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パルサータイミングアレイによるブラックホール連星の位置推定
パルス状の電磁波を放出する天体のことをパルサーと呼ぶ。パルサーのパルス周期の正確さを用いて、地球とパルサーの間の重力波が検出可能である。2023年6月に、パルサータイミングアレイによって、無視できない重力波の信号の証拠が得られた。重力波の初検出が間近に迫っていると考えられている。重力波を用いて宇宙の構造を解明するためには、重力波源の位置を正確に知る必要がある。本講演では、パルサーの距離が正確に測定された場合、重力波源の位置決定精度がどれだけ向上するのかについて述べる。
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5月10日(金) 16:00〜 E211 |
Palomino Ylla Ariadna Uxue
(名古屋大学)
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Test particle motion abound a black hole dressed with stationary and spherically symmetric fluid distribution
Recent theoretical research has been conducted to examine how the accumulation of matter affects the metrics of black hole solutions. One notable approach is to use perturbation methods to model and derive particle trajectories in the vicinity of these cosmic entities. This method provides a detailed understanding of how accretion affects the surrounding geometry.
This study focuses on scrutinizing the metric resulting from perfect fluid accretion onto a Schwarzschild black hole. By visualizing timelike geodesics and orbits around black holes, we deepen our understanding of the effects of accretion. Furthermore, we use the osculating element method to further analyze the impact of matter in the geodesic equation, enhancing our understanding of its implications. In addition, by examining the redshift of test particles orbiting a black hole, we investigate its observable effects.
Together, these multidimensional analyses enrich our understanding of the complex dynamics surrounding black holes and the influence of surrounding matter.
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5月17日(金) 16:00〜 E211 |
吉田 大介
(名古屋大学)
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弱い宇宙検閲官仮説に対する思考実験について
弱い宇宙検閲官仮説は、重力崩壊で生じる時空特異点は事象の地平面に隠されるとする主張である。これに関する思考実験として、ブラックホールにエネルギー・角運動量・電荷を落とすことにより事象の地平面を壊せるか、といったことが議論されてきた。
本講演では、複数種類のゲージ場が存在する場合に、極大荷電ブラックホールがテスト荷電粒子で破壊可能かどうか、という問題について議論する。特に、ゲージ場間の高階微分相互作用の影響を調べる。また、時間が許せば、テスト粒子近似を用いない手法であるSorce-Waldの方法の紹介や、そのドジッターブラックホールへの応用という現在研究中の内容も議論したい。
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5月24日(金) 16:00〜 E211 |
岡村 隆
(関西学院大学)
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古典仲介系による量子縺れ生成
近年提案された重力の量子性を検証する卓上実験は,「2つの量子系を仲介する自由度(重力場)が古典的ならば,2量子系間に量子縺れは生成されない」という量子情報科学の知見を利用する.ただし,この結果は古典性の定義に強く依存する.
本講演では,量子/古典−混成系の定式化の代表例を紹介し,その一つである Koopman形式を用いて古典仲介系を扱った場合,直接相互作用しない 2量子系間に量子縺れが生成されることを示す.また,量子仲介系の場合との定量的違いについて議論する.
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5月31日(金) 16:00〜 E211 |
木村 匡志
(第一工科大学)
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Parametrized Black Hole Quasinormal Ringdown Formalism
ブラックホール連星の合体直後に発生する重力波は減衰振動となり、quasinormal mode(QNM, 準固有振動)の重ね合わせでよく近似される。本講演では、QNMについて簡単な紹介をした後に、修正重力理論におけるQNMの計算、特にParametrized Black Hole Quasinormal Ringdown Formalismについて紹介する。このフォーマリズムを用いると一般相対性理論の場合の振動数に対する補正項を効率的に計算することができる。また、higher overtoneについての最近の進展も紹介する。
参考文献:
arXiv:1901.01265
arXiv:2001.09613
arXiv:2404.09672 |
6月7日(金) 16:00〜 E211 |
伊形 尚久
(学習院大学)
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拡張質量効果による近点シフトに対する非球対称密度分布の影響
ケプラー問題における楕円軌道の近点シフトは, 静的球対称な重力場における一般相対論的効果によるものがよく知られている. こうした近点シフト現象は, 軌道上の物質場の局所的な密度分布によっても生じ, これは拡張質量効果として知られている. 本講演では, 球対称質量分布を1パラメータで変形して得られる楕円体分布を仮定し, その中を運動する粒子の離心率の小さな近円軌道に注目する. このモデルにおけるエピサイクリック振動数と近点シフト角に基づき, 拡張質量効果が分布の非球対称性によってどのように影響されるかを考察する. また, 非球対称分布の影響による最内・最外安定円軌道の発現についても議論する.
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6月14日(金) 16:00〜 E211 |
上田 航大
(大阪公立大学)
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Dyonic-black hole時空におけるPenrose過程
ブラックホールからエネルギーを抽出するペンローズ過程は、Blandford–Znajek機構と同様、活動銀河核のエネルギー源の候補として考えられている。しかし、Kerrブラックホールの場合、ペンローズ過程が起こるための条件として、宇宙物理学的に実現が難しい分裂粒子の速度制限が存在する。一方で電磁場を考慮したペンローズ過程ではこのような制限が存在しないため、現実的なエネルギー抽出モデルの構築が期待できる。本講演では、まずKerr時空のペンローズ過程を扱った [J. M. Bardeen et al. (1972)] のレビューを行い、そのステップアップとしてdyonic Kerr-Newman時空のペンローズ過程を扱った [C. Dyson and D. Pereñiguez (2023)] のレビューを行う。最後にdyonic Kerr-Newman時空上で現実的な分裂モデルを仮定したペンローズ過程を紹介する。
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6月21日(金) 16:00〜 オンライン |
向山 信治
(京大基研)
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Emergence of Time
In quantum gravity the concept of time is not fundamental but is emergent in the sense that it is encoded in correlations among observables. In order to understand the origin of time in the system with gravity, I will introduce a novel mechanism by which a Lorentzian theory emerges from a Riemannian, i.e. locally Euclidean, theory without the concept of time. I will also discuss application to the geometry in the vicinity of a quasiregular singularity towards our understanding of the endpoint of black hole evaporation.
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6月28日(金) 16:00〜 E211 |
大西 翔太
(大阪公立大学)
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一様磁場中のSchwarzschild BHにおける帯電有質量スカラー場のQuasi-normal mode不安定性
アインシュタインの一般相対性理論から予言されるブラックホールや、そのリングダウン重力波の候補とされるQuasi-normal modeの研究は、ブラックホールの形質や性質をはじめ宇宙の成り立ちや様々な天体現象の解明にも寄与すると考えられている。今回レビューを行う先行研究[1]では、簡単のため静的・球対称であるシュバルツシルトブラックホールを一様磁場中においた際の帯電有質量スカラー場について研究している。これをWKBやLeaverの方法を用いて近似的に解析しており、その結果として、ある多重極数lに対して2l+1のゼーマン効果によるモードが存在することや、Quasi-normal modeがある有効質量の閾値を超えると消滅、または磁場の強度とそれに対応する方位数mとの大小関係によって不安定性が発生することがあるとしている。私の研究では上記の結果についてのレビューと、近似を用いたこのような事象の妥当性について疑問が存在するため、これを二次元シミュレーションを用いて解析した結果と比較し検討していく。
[1] Bobur Turimov 他, Phys. Rev. D 100, 084038 (2019) Quasinormal modes of magnetized black hole
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7月5日(金) 16:00〜 B105 |
山崎 幹太
(大阪公立大学)
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Reissner-Nordstrom時空におけるshellの運動
ブラックホール(BH)の帯電に関する議論は、BH jetのエネルギー源に関する問題などで重要であり、近年様々な論文で行われている。帯電の可能性を解析的に探る方法の一つとして、ここではshellを導入することを考える。帯電したshellを複数枚置くことで、それぞれのshellがどのように運動し、BHに落下するかを調べることで、BHが帯電する可能性を議論することができると期待される。
本講演では、複数枚のshellでの解析を行うために必要なshellの性質や運動について議論する。また、shellがダストの場合と圧力有りの場合の違いについても議論する。
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7月12日(金) 16:00〜 E211 |
林 知哉
(大阪公立大学)
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複素スカラー場を用いたワームホール解と安定性解析
一般相対性理論が予想する時空構造の一つとしてワームホールがある。通過可能なワームホールが安定的に存在するためにはNullエネルギー条件を破るようなエキゾチック物質が必要だと考えられている。エキゾチック物質を導入する方法はさまざまであるが、その一つにラグランジアン密度の運動項の符号が負であるゴーストスカラー場を用いる方法がある。今まで、実ゴーストスカラー場を用いたワームホール解の解析は頻繁に行われてきたが、複素ゴーストスカラー場を用いることは少なかった。複素ゴーストスカラー場を用いることで、ボゾンスターの構築に用いられる複素カノニカルスカラー場の場合と同様に、調和的な時間依存性を導入することができる。
そこで本論文では、4次自己相互作用を持つ複素ゴーストスカラー場を導入することで非自明な均衡方程式を導き、球対称で漸近的に平坦な平衡解を得た。そして、その解の線形動径摂動に対する不安定性を示す。
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7月19日(金) 16:00〜 E211 |
田中 孝輔
(大阪公立大学)
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RN 解に NUT 荷を加え考えられる通過可能ワームホール
一様宇宙の真空解の一つに Taub-NUT 解がある。Taub-NUT 解は2つの地平面を持つブラックホール時空である。Taub-NUT 解は質量と NUT-荷 と呼ばれる2つのパラメー ターで特徴付けられる。Brill は Taub-NUT 解に対応するような電荷と磁荷を持つ非真空解を導いた。このブラッ クホール時空を一般に Reissner-Nordstrom-(Taub-)NUT(以下、RN-NUT)解と呼ぶ。RN-NUT 解は RN 解と同様にパラメーターの値により、地平面の数が 2個、1 個、0個の 3 つの場合が考えられる。地平面が0個の場合、RN 解では裸の特異点が現れてしまうが、RN-NUT 解では NUT-charge の寄与により特異点は現れず、ワームホール時空となる。 通過可能なワームホールは Null エネルギー条件を破るような物質を要求することが知ら れている。しかし、RN-NUT ワームホールは極軸上に宇宙ひもが存在する代わりに、通過可能なワームホールでありながらそのような物質を必要としない。RN-NUT ワームホールはワームホール の存在を認めるモデルの裏付けとなり得るかもしれない。
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7月23日(火) 13:30〜 F205 |
A. Gopakumar
(Tata Institute of Fundamental Research, Mumbai, India)
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OJ 287: Potential Rosetta stone for the nascent multi-messenger nano-Hz GW astronomy
Recent observational campaigns and theoretical investigations strongly indicate the presence of a spinning supermassive black hole binary that spirals in due to the emission of nano-Hertz gravitational waves in bright blazar OJ 287. I will briefly describe these efforts while focusing on our August 2019 observations and their implications. Additionally, I will list our ongoing efforts, relevant to
i) the Event Horizon Telescope Consortium, and
ii) the International Pulsar Timing Array consortium which aims to detect GWs from such massive BH systems soon.
These efforts should be helpful in pursuing persistent multi-messenger nano-Hz
GW astronomy, especially in the Square-Kilometer Array era.
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8月9日(金) 14:00〜 E101 |
Vivien Raymond
(Cardiff University, UK)
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Gravitational Waves Observations by LIGO-Virgo-KAGRA: neutron stars, black holes and dark matter
Gravitational-wave detectors have now led to several discoveries and shown themselves to be a powerful new tool for probing some of the most extreme astrophysical events in the universe. As more observations are made, new frontiers in our understanding of physics become accessible. Among those many promising avenues of gravitational-wave astronomy, this talk will discuss three observational aspects.
First some the latest results from the LIGO-Virgo-KAGRA collaboration, focusing on the analysis of the GW230529 event, and possible interpretations towards understanding its formation scenario. Then looking at how machine learning techniques can help address the gravitational-wave inference problem in general, and in particular handle real detector noise. Finally, presenting results from a direct search for scalar field dark matter using data from LIGO's third observing run.
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10月3日(木) 16:30〜 E211 |
吉野 裕高
(大阪公立大学)
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ブラックストリングと Kaluza-Klein バブルの初期空間
超弦理論などの統一理論では見えない余剰次元の存在を仮定する。もっとも単純なモデルは余剰次元が平坦で丸まった Kaluza-Klein 時空である。Kaluza-Klein 時空の余剰次元の半径がある面でゼロになると、その内側は時空が存在しないバブルになる。このバブルが時間とともに広がっていく解析解が知られている。一方、最近はバブルとブラックホールが定常に共存する解も発見されており、ブラックオブジェクトと Kaluza-Klein バブルの相互作用は面白い問題である。このような系を数値相対論の手法で調べるとき、最初におこなうのは初期空間を拘束条件を満たすように用意することである。本講演ではレビューののちに、余剰次元のサイズが変化するブラックストリング初期空間を用意する方法について議論する。また、ブラックストリングと Kaluza-Klein バブルが離れて置かれている初期空間を数値的に生成するための戦略を議論する。
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10月17日(木 16:30〜 E211 |
田中 孝輔
(大阪公立大学)
【夏の学校報告会】
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Schwarzschild BHのSchrödinger対称性
本発表は夏の学校での早稲田大学佐野大志さんのポスターセッション「静的球対称ブラックホールのシュレディンガー対称性」のレビューである。今日の物理学において重力の量子化は最重要な課題の一つである。ブラックホールでは重力の量子性が強く現れるとされている。また、ブラックホールはブラックホール熱力学の分脈で熱力学第二法則を満たすようなエントロピーを持つとされる。しかし、統計力学的な解釈でのミクロな状態は未解明であり、量子重力理論で説明されると考えられている。ミクロな状態は未解明であるが、マクロな状態としての時空は、ミクロな状態からの平均場近似のような大域的対称性による状態近似によって現れると考えられる。シュヴァルツシルトブラックホールはシュレディンガー対称性をもつ。この対称性は非相対論的古典粒子系が持つものであるが、量子化した場合にも対称性は満たされる。この対称性は、重力の量子化において重要な鍵になるかもしれない。
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10月24日(木) 16:30〜 E211 |
松野 研
(大阪公立大学)
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Kaluza-Kleinブラックホール時空におけるプラズマ媒質中の光の時間遅延
電荷を持ち静的な5次元Kaluza-Kleinブラックホール時空における、一様な非磁化低温プラズマ媒質中の光子の運動を調べた。この場合、光子は4次元球対称時空における質量を持つ試験粒子として振舞う。そこで、弱い重力の極限において、天体の周りを運動する光子の時間の遅れや、コンパクト天体による重力レンズ像の到達時間の違いを、プラズマ等の効果を含めて議論した。それらの時間遅延における一般相対論に対する補正は、余剰次元の大きさ、天体の電荷、プラズマと光子の振動数の比に関係することがわかった。
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10月31日(木) 16:30〜 E211 |
林 知哉
(大阪公立大学)
【夏の学校報告会】
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2次元量子ブラックホールにおける量子収束仮説
本発表は夏の学校での近畿大学田中亜花音さんのポスターセッション「2次元量子ブラックホールにおける量子収束仮説」のレビューである。収束定理は一般相対論における重力の基礎的な性質を理解するための大きな役割を担うが量子効果を含んだ場合には成り立たない。そこで、新たに提案されたのが量子収束仮説(QFC)である。QFCは様々な状況で成り立つことが証明されているが、ブラックホールの蒸発過程を考えた場合には破れる可能性がある。island形成を考慮した4次元動的ブラックホールにおいてはQFCが成り立つことを証明されている。しかし、使用したモデルは近似的なモデルであり、正確に量子効果を取り込めていない。この研究では、半古典Einstein方程式が厳密に解ける2次元ブラックホールについてQFCが成り立つことを証明している。
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11月07日(木) 17:00〜 E211 |
森澤 理之
(大阪公立大学)
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Wahlquist解について
Wahlquist解とその一般化に関して現在行っている試みを紹介する。
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11月21日(木) 16:30〜 E211 |
小松原 涼介
(大阪公立大学)
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これまでの研究と今後の計画(arXiv:2309.14318v1)
内容を以下の構成で予定しており、指導教員と相談の上、自己紹介的なスライドを用意するつもりです。
・学部の卒論では、Kerr 時空で8次 Runge-Kutta 法などを用い測地線を数値解析しました(タイトル:「Schwarzschild 及び Kerr 時空の赤道測地線の描画への 3 つの異なる Runge–Kutta 法の適用」)。
・修士論文では、de Sitter space における量子場に期待される宇宙論的構造を Quasinormal mode による展開で論じました(タイトル:Quasinormal mode expansion of free scalars in de Sitter space and outlook for quantization of the Dirac field)(arXiv: 2302.00632 [hep-th] のレビュー)。
・arXiv:2309.14318v1 (Distorted static photon surfaces in perturbed Reissner-Nordstro ̈m spacetimes
Hirotaka Yoshino)に基づく研究計画
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12月12日(木) 16:30〜 E211 |
松尾 賢汰
(大阪公立大学)
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ブラックホール磁気圏と帯電の影響について
近年の様々な観測結果は、ほとんどの銀河の中心には太陽質量の数億倍程度の超大質量ブラックホール(BH)が存在することを強く示唆している。また、いくつかの活動的な銀河の中心からは、細く絞られた光速に近いジェットが噴き出していることも分かっている。このようなジェットのエネルギー源の候補の一つとして、BHの回転エネルギーを電磁場を使って引き抜く“Blandford-Znajek(BZ)過程”が有力視されているが、近年BHの帯電がBZ過程を妨げる可能性が指摘され、現在も議論が続いている。本講演では、まずmonopole磁場を伴うSchwarzschild時空中のテスト荷電粒子の運動を紹介したのちに、BZ論文(1977)で用いられたBZ split-monopole解におけるBHの帯電を解析することを目指して、BZ-split-monopole磁場を伴うKerr時空中のテスト荷電粒子の運動の現時点までの解析結果について議論する。
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12月19日(木) 16:30〜 E211 |
末藤 健介
(大阪公立大学)
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正則ブラックホールの時空構造について
ブラックホールの特異点は理論の破綻を意味し,重力理論に変更がかけられることを示唆する.この未知の重力理論を探究する研究が進められている一方で,近年では特異点を持たないブラックホールである正則ブラックホールに関する研究も注目を集めている.
漸近平坦な球対称正則ブラックホールは一般に偶数個のホライズンを持つ.このため,正則ブラックホールがHawking温度を持ちStephan-Boltzmanの法則に従って蒸発すると仮定すると,正則ブラックホールは従来のブラックホールと異なり蒸発しきらないことが示される.
昨年は蒸発しきらないHayward ブラックホールの時空構造について考察したが,蒸発しきらない正則ブラックホールの時空構造をモデルに依存せず導出することができたため,その内容について発表を行う.
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01月09日(金) 16:30〜 E211 |
大西 翔太
【M2修論直前報告】
山崎 幹太
【M2修論直前報告】
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一様磁場中のSchwarzschild BHにおける荷電有質量スカラー場のQuasi-normal mode不安定性
アインシュタインの一般相対性理論から予言された、ブラックホール連星合体のリングダウン重力波にあたるQuasi-normal modeについての研究は、近年観測的宇宙論の発展とも相まってブラックホールの物理や性質をはじめ宇宙の成り立ちや様々な天体現象の解明にも寄与すると考えられている。
今回の発表ではまず、先行研究[1]において、簡単のため静的・球対称ブラックホールを一様磁場中においた際の荷電有質量スカラー場について研究しており、これについてWKB法やLeaverの方法を用いた解析によって理解される現象を説明する。またそこでは、Quasi-normal modeがある有効質量の閾値を超えると消滅、あるいは磁場の強度とそれに対応する方位数mとの大小関係によって不安定性が発生することがあるとしている。
次に私の研究では、上記の解析と結論の事象に対しての妥当性や疑問が存在するため、スカラー場の方程式について二次元シミュレーションを用いて数値解析を行うこととした。ここでは座標系の取替えやエネルギー条件の確認といった解析手法と現時点での進捗・結果についてまとめたものを発表する。その後、先行研究との比較検討を行う。
キーワード [Quasi-normal mode, スカラー場, 数値解析]
[1] Bobur Turimov et al. Phys. Rev. D 100, 084038 (2019) Quasinormal modes of magnetized black hole.
spherical charged shellによるBHの帯電
ブラックホール(BH)の帯電に関する議論は、BH jetのエネルギー源に関する問題などで重要であり、近年様々な論文で行われている。先行研究(Nakao et al (2024))ではBH周りの物質を陽子電子(test particles)と仮定し、降着率の差を求めることでBHの帯電について調べられている。ただし、ここでは陽子電子間のクーロン力が考慮されていないことが課題として挙げられている。本講演では、陽子電子間のクーロン力を考慮しつつ解析的に考えることを目指すことから、 shellを導入してみることを考える。charged shell一枚の性質や運動について発表した後、陽子shellと電子shellを一枚ずつ置き、これらの運動について発表する。
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01月16日(木) 16:30〜 E211 |
遠藤 洋太
(大阪公立大学)
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Kerr ブラックホール周りの薄いディスク上の電流が作る真空磁気圏
観測技術の発達により、ブラックホール(BH)やその周囲の現象が判明しつつある。特に、宇宙ジェットや降着円盤など磁場とプラズマの相互作用と関連があると予想される現象は多い。理論的な議論では、一般相対論的電磁流体力学(GRMHD)を用いて、宇宙ジェットなどの諸現象の説明を試みている。しかし、GRMHDの基礎方程式が非線形となるため、解くのが難しく、プラズマ、電磁場、時空の影響を個別に理解するのが難しい。
本講演では、プラズマを無視し、曲がった時空での電磁場を考える。昨年一昨年の講演でKerr BH周りの真空のMaxwell方程式がNewman & Penrose の手法を用いることで変数分離可能であることを利用し、方程式の解がある特殊関数の重ね合わせで表せることを示した。また、特解のひとつである、赤道面上に存在する内端を持つ薄いディスク上のある特別な電荷・電流分布によって作られる定常な磁気圏の構造を調べた。本講演では、特にディスク上の電流の向きが反転しないモデルに注目する。
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日時 |
紹介論文 |
論文番号 |
紹介者 |
4/26 |
Robust Evidence for the Breakdown of Standard Gravity at Low Acceleration from Statistically Pure Binaries Free of Hidden Companions |
ApJ 960 (2024) 114 |
中尾 |
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Deci-Hz gravitational waves from the self-interacting axion cloud around the rotating stellar mass black hole |
arXiv:2404.16265 |
吉野 |
|
Quasinormal modes of magnetized black hole |
PRD100 (2019) 084038 |
松尾 |
5/31 |
The Gravitational Hamiltonian, Action, Entropy, and Surface Terms |
gr-qc/9501014 |
末藤 |
|
Black hole entropy and the dimensional continuation of the Gauss-Bonnet theorem |
PRL72 (1994) 957 |
末藤 |
|
Einstein rings modulated by wavelike dark matter from anomalies in gravitationally lensed images |
arXiv:2304.09895 |
吉野 |
6/28 |
Dynamics of redshift/blueshift during free fall under the Schwarzschild horizon |
arXiv:2309.12175 |
吉野 |
|
A Set-Theoretic Analysis of the Black Hole Entropy Puzzle |
Found. Phys. 54 (2024) 10 |
森澤 |
7/19 |
Uniqueness of the static vacuum asymptotically flat spacetimes with massive particle spheres |
arXiv:2406.15127 |
吉野 |
10/31 |
研究会「素粒子・宇宙・重力と量子センシング」報告 |
HP |
吉野 |
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New Extraction of the Cosmic Birefringence from the Planck 2018 Polarization Data |
PRL125 (2020) 221301 |
吉野 |
|
Dynamics of spherical charged dust shells in de Sitter space |
PRD106 (2022) 064005 |
松尾 |
12/19 |
A model with cosmological Bell inequalities |
arXiv:1508.01082 |
吉野 |
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Relativistic wind accretion on to a Schwarzschild black hole |
MNRAS487 (2019) 3607-3617 |
松尾 |
|
A brief introduction to non-regular spacetime geometry |
arXiv:2404.18651 |
中尾 |