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数値シミュレーションギャラリー


Gross-Pitaevskii 方程式の数値解析

  • スピン乱流
  • 我々は、二次元トラップ系のスピン1スピノールBose-Einstein凝縮体のスピン乱流をGross-Pitaevskii方程式の数値計算を用いて研究した。 今回、我々は初期状態として、スピン密度ベクトルが螺旋構造となる状態を採用し、その不安定性を利用してスピン乱流を生成した。 動画1は、初期段階における螺旋構造の不安定性ダイナミクスを示している。 動画2は、不安定性の発生から十分時間が経過した後のダイナミクス である。 このとき、スピンに依存した相互作用エネルギーのスペクトルが-7/3乗則を示している。 動画2より、スピン乱流状態では、それぞれの場所のスピン密度ベクトルが位置に依存したある方向を向きながら、そのまわりに素早く細かい運動をしていることが見てとれる。

    K. Fujimoto and M. Tsubota, Phys. Rev. A 85, 053641 (2012).


    動画1 動画2

  • 対向超流動不安定性による量子渦生成と乱流遷移のダイナミクス
  • 我々は相対速度を持った混合系2成分ボースアインシュタイン凝縮体について調べている。この系は相互作用係数が混合状態を安定とするパラメータであるにもかかわらず、その相対速度がある臨界値を超えると不安定になることが知られている。今回はその不安定性によってどのようなダイナミクスが引き起こされるかを調べた。以下の動画がその結果である。青色と赤色はそれぞれ成分1と成分2の低密度等値面を表している。不安定性はある波数の励起を増幅し、非常に密度が小さい領域(ソリトン)を作り、その後量子渦へと変形する。生成された量子渦は他の渦と相互作用や再結合を繰り返し、最終的には乱流へと遷移する。

    Shungo Ishino, Makoto Tsubota, and Hiromitsu Takeuchi, Phys. Rev. A 83, 063602 (2011).


  • 原子気体BEC中で振動ポテンシャルにより誘起される量子渦とソリトンのダイナミクス
  • 我々は原子気体BECにおいて、量子乱流を実現するための新たな手法としてトラップされたBEC中でガウシアン ポテンシャルを振動させることを考えている。これに関連した研究の第一歩として、、我々は二次元Gross- Pitaevskii 方程式を数値的に解くことによりガウシアンポテンシャルによって誘起される量子渦とソリトン のダイナミクスを研究を行った。数値計算結果から量子渦とソリトンの絡み合ったダイナミクスが得られた。 下に示した動画は、我々の数値計算結果である。

    Kazuya Fujimoto, Makoto Tsubota, Phys. Rev. A 83, 053609 (2011).

    密度

    位相

  • スピノールBECにおけるスピンエコー
  • 我々はスピン内部自由度を持つ原子気体Bose-Einstein凝縮体(スピノールBEC)に着目しスピンエコーという磁気共鳴によって起こる現象を2次元Gross-Pitaevskii方程式を解く事により求めました。調和振動子型のトラップにスピンがz軸方向に遍極したBECが閉じ込められた状態を初期状態とし、x軸方向に微小な磁場勾配を持つ静磁場をz軸方向にかけます。それによって起こるスピンのLarmor歳差運動に共鳴するような回転磁場を静磁場とは垂直な方向にパルスとして与え、スピンをx軸方向に90度倒します。その後、スピンは磁場勾配のため空間的に非一様な歳差運動を行い、コヒーレンスを少しずつ失います。そこに、スピンをx軸回りに180度反転させるようなパルスを与えます。するとスピンはコヒーレンスを少しずつ取り戻し、90度パルスをかけた直後に近い状態まで戻ります。これがスピンエコーという現象です。下はスピンべクトルをx-y平面に射影した、上述を表す動画です。

    M. Yasunaga and M. Tsubota, Phys. Rev. Lett. 101, 220401 (2008).

  • BECにおける渦糸格子形成の3次元シミュレーション
  • ENSグループでなされた渦格子形成の直接観測の実験状況を完全に再現し、完全な3次元Gross-Pitaevskii方程式を解く事によって、渦格子形成のダイナミクスを議論した。全体的なダイナミクスの側面は前回の2次元解析で得られた結果と変わらないが、葉巻型のトラップの時には渦が凝縮体に侵入する前に、凝縮体密度の非一様性によって自発的にKelvin波の励起が起こることが明らかになった。このため、凝縮体侵入直後の渦は激しく歪曲し、 TOFで測定されるcolumn密度の渦コアの可視度を著しく下げることが明らかとなった。以下のムービーは左が凝縮体密度の等位表面の時間発展、右が超流動速度の等位表面(渦糸)の時間発展を表す。

    K. Kasamatsu, M. Machida, N. Sasa and M. Tsubota, Phys. Rev. A 71, 043611 (2005).

  • 量子乱流におけるKolmogorov則のGP方程式を用いた解析:減衰量子乱流
  • 発展した乱流における最も重要な統計則であるエネルギースペクトルに対するKolmogorovの-5/3則が超流動乱流で観測され、「乱流における量子古典対応」が議論されるようになった。我々はGross-Pitaevskii方程式を数値的に解く事により、超流動乱流のエネルギースペクトルを議論した。系の発展(左:密度、中:位相、右:渦度の時間発展のシミュレーション結果を以下に示す。上段が散逸なし、下段が散逸ありの結果)で生じる短波長励起をかき消す現象論的散逸項を回復長よりも小さいスケールに導入する事により、得られたエネルギースペクトルはKolmogorov則に一致する事が明らかとなった。

    M. Kobayashi and M. Tsubota, Phys. Rev. Lett. 94, 065302 (2005).

  • 量子乱流におけるKolmogorov則のGP方程式を用いた解析:定常量子乱流
  • 我々は上記の減衰量子乱流の研究に引き続き、量子乱流の統計をさらに詳しく調べるために高波数領域の散逸だけでなく低波数領域にエネルギー注入を導入することで発展した定常量子乱流のシミュレーションを行った。エネルギー散逸率、エネルギー流束、そしてエネルギースペクトルといった波数空間における乱流の重要な統計量がKolmogorov則を示し、さらに渦糸長密度が自己相似的なRichardsonカスケードを示すことを見出した。この結果は実空間と波数空間における乱流の統計則に重要な関係があることを示唆している(ムービー:発達した定常量子乱流における量子渦の振る舞い)。

    M. Kobayashi and M. Tsubota, J. Phys. Soc. Jpn. 74, 3248 (2005).

  • 2成分BECにおけるマルチドメイン形成のダイナミクス
  • 近年、Feshbach共鳴を用いて原子気体BECの相互作用の大きさを特徴付けるs波散乱長を制御する事により、引力相互作用するBECの崩壊のダイナミクスやブライトソリトン形成の観測が行われた。理論的にも変調不安定性に関連するBECのパターン形成の非線形ダイナミクスは現在活発に議論されている。我々は2成分BEC系において異成分の原子間相互作用が引き起こす相互位相変調の不安定性によるパターン形成のダイナミクスを2成分Gross-Pitaevskii方程式の数値シミュレーションにより議論した。異成分凝縮体の反発力が強い時は、密度は相分離を起こす。初期状態としてそのような条件を持つ2成分が混ざった状態を用意して時間発展させると、微小な摂動で励起される反位相の密度波は不安定となり、複数のドメインに発展する 。これは1999年にMITのグループで行われたスピンドメイン形成の実験結果を再現する。

    K. Kasamatsu and M. Tsubota, Phys. Rev. Lett. 93, 100402 (2004).

  • ランダムポテンシャル中のBECにおける流れ場の応答
  • ランダムポテンシャル中に閉じ込められた2次元のボーズ凝縮系における超流動現象をGross-Pitaevskiiの数値解析により議論した。基底状態に流れ場を与えることにより系の非線形の応答を求めた。ある臨界速度を越えると渦対の励起が起こり、それにより超流動の破壊が起こる事が示される(左図は用いたランダムポテンシャル、シミュレーションの左は凝縮体密度$|\Phi|^2$、中央は凝縮体の位相Im(log$\Phi$)、右は規格化された速度場の回転rot$\vec{v}$)。

    M. Kobayashi, M. Tsubota, and T. Iida Physica B 329-333, 210 (2002).

     

  • 高速回転下のBECにおけるGiant Vortex 形成
  • 調和閉じ込めポテンシャルにさらに4次べきをもつポテンシャルを加えた2次-4次結合ポテンシャル中のBECの高速回転に対する挙動を調べ、多重量子数を有し回転超流動を伴う Giant Vortex が形成されることを見い出した。その回転流は擬一次元的振る舞いを示し、位相スリップ、ランダウの臨界速度などの超流動の本質となる現象を制御性よく検証できる事を示した。(左が凝縮対密度、右が位相を示したもの)

    K. Kasamatsu, M. Tsubota, and M. Ueda, Phys. Rev. A 66, 053606 (2002)

    回転振動数Omega=2.5 \omega (trap frequency)
    回転振動数Omega=3.2 \omega (trap frequency)

  • 回転下のアルカリ原子気体BECにおける量子渦格子形成のダイナミクス
  • 近年、いくつかの実験グループがアルカリ原子気体のBECを回転させる事により量子渦を生成し、その直接観測に成功している。これに関して、凝縮体の巨視的波動関数が従うGross-Pitaevskii方程式の2次元解析を行い、量子渦形成の動的メカニズムを調べた。凝縮体の四重極振動、表面波励起を経て、量子渦が凝縮体内に侵入し、渦格子を形成する劇的なダイナミクスを明らかにし、実験とコンシステントな結果を得た。(左が凝縮対密度、右が位相を示したもの)

    M. Tsubota, K. Kasamatsu, and M. Ueda, Phys. Rev. A 65, 023603 (2002)
    K. Kasamatsu, M. Tsubota, and M. Ueda, Phys. Rev. A 67, 033610 (2003)