セミナー情報(2018年度)

日時 : 2019年3月19日(火) 16:30〜
場所 : F214(理学部F棟 第6講義室)
題目 : ブラックホール周辺の有質量スカラー場の挙動と重力波放射について
講演者 :吉野裕高氏(大阪市大)

概要 : 超弦理論は通常のQCDアクシオン以外に、多くの軽い質量を持つアクシオ ン的なスカラー場の存在を予言する。これが事実であれば、超放射不安定と 呼ばれるメカニズムによりスカラー場が回転ブラックホールのエネルギーを 引き抜いて増幅し、アクシオンの雲を形成する。このようなアクシオン雲は 重力波を放出し、それを重力波干渉計によって観測できるかもしれない。わ れわれはアクシオン場の非線形自己相互作用が引き起こす現象をシミュレー ションによって調べている。課題は多く残されている状態であるが、本研究 の概要と現状を紹介したい。
(参考文献)
[1] H. Yoshino and H. Kodama, PTP128 (2012) 153 ;
[2] H. Yoshino and H. Kodama, PTEP (2014) 043E02;
[3] H. Yoshino and H. Kodama, PTEP (2015) 084042;
[4] H. Yoshino and H. Kodama, CQG32 (2015) 214001.


日時 : 2019年3月5日(火) 16:30〜
場所 : F203(理学部F棟 第2講義室)
題目 : What is the evidence of a black hole?
講演者 :中尾憲一氏(大阪市大)

概要 : ブラックホールは重力崩壊の最終生成物と考えられているが、よく知られているように、重力崩壊する物体がブラックホールを形成する時刻は、 遠方の観測者にとって無限の未来であり、ブラックホール形成の瞬間を目の当たりにすることはできない。 したがって、重力崩壊している物体の半径がその重力半径にどれだけ近づこうとも、予想外の出来事でブラックホールの形成が妨げられる可能性を排除できない。 このセミナーでは、重力崩壊の最終生成物として提案された擬似ブラックホール天体の一つである gravastar に注目し、 その形成過程の toy model を題材に、この問題を考察する。


日時 : 2019年1月15日(火) 16:30〜
場所 : F202(理学部F棟 第1講義室)
題目 : Black resonators and geons in AdS_5
講演者 :石井貴昭氏(京都大学)

概要 : 高速回転するブラックホールは超放射現象によりエネルギーや角運動量を放出することが可能なことが知られているが、 それは漸近AdS時空では超放射波がAdS境界で反射されるために超放射がなだれ式に増幅する超放射不安定性につながる。 この不安定性から非線形的帰結として現れる変形ブラックホールとして、時間周期的に振動するblack resonator(共鳴ブラックホール)が 得られることが知られているが、その構成および理解は限定的である。 本講演では、対称性を考察することで、5次元漸近AdS時空においてある種のblack resonator解を広いパラメータ領域において明快に構成できることを紹介する。 始めに回転ブラックホールのテンソル型線形摂動を考察して超放射不安定性の出現を示す。 そこから次にアインシュタイン方程式を解くことでblack resonatorおよびgeon解を構成する。 これらを見ると、black resonatorがgeonへ連続的につながることが直接的に調べられる。 また、熱力学量を評価すると共鳴ブラックホールが超放射不安定な回転ブラックホールよりも高いエントロピーを持つことが示される。 本講演はarXiv:1810.11089 [hep-th](村田佳樹氏との共同研究)に基づく。


日時 : 2018年12月19日(水) 15:00〜
場所 : F202(理学部F棟 第1講義室)
題目 : Open superstring field theory based on the supermoduli space
講演者 : 大川 祐司氏(東京大学)

概要 : Complete actions for open superstring field theory including both the Neveu-Schwarz and Ramond sectors were recently constructed. In any of the formulations, however, the large Hilbert space of the superconformal ghost sector is used in an essential way, which obscures the relation between gauge invariance and the supermoduli space of super-Riemann surfaces. In this talk we present a new approach to formulating open superstring field theory without using the large Hilbert space at all. Our approach is based on the covering of the supermoduli space of super-Riemann surfaces and we explicitly construct a gauge-invariant action in the Neveu-Schwarz sector up to quartic interactions. The talk is based on arXiv:1703.08214 in collaboration with Ohmori.


日時 : 2018年11月27日(火) 16:30〜
場所 : F203(理学部F棟 第2講義室)
題目 : Integrability and TBA in non-equilibrium emergent hydrodynamics
講演者 : Francesco Ravanini氏(ボローニャ大学)

概要 : The paradigm of investigating non-equilibrium phenomena by considering stationary states of emergent hydrodynamics has attracted a lot of attention in the last years. Recent proposals of an exact approach in integrable cases, making use of TBA techniques, are presented and discussed.


日時 : 2018年11月13日(火) 16:30〜
場所 : F204(理学部F棟 第3講義室)
題目 : 超対称南部・Jona-Lasinio模型における隠れた局所対称性と量子異常
講演者 : 近藤綾氏(奈良女)

概要 : 近年、Cheng, Dai, Faisel, Kong (CDFK) によって、ある種の超対称 NJL 模型が提唱され、超対称性の動的破れを実現する模型だと主張された。しかし、九後によって行われた補助場の方法を用いた再解析の結果では、超対称性が破れる真空においては、負計量をもつ粒子が出現してしまうために健全な理論とはならないこと (負の確率の問題) が明らかにされている。さらに、補助超場として導入したカイラル超場とベクトル超場に対して隠れた局所対称性が作用しており、このゲージ対称性を Wess-Zemino ゲージに固定することでこの解析手法を再検討した結果、補助場の方法によって導入された隠れたゲージ対称性に量子異常が存在していることが考慮されていないことがわかった。 本講演では、この量子異常の効果を、有効ポテンシャルに Wess-Zumino 項を加えることで取り入れることでこれらの真空がどのような影響を受けるのかについて議論する。


日時 : 2018年7月3日(火) 16:30〜
場所 : F204(理学部F棟 第3講義室)
題目 : 任意の模型におけるQCDワインバーグ演算子の係数
講演者 : 阿部智広氏(名古屋大)

概要 : 中性子の電気双極子能率(EDM)を理論計算するためには、ワインバーグ演算子のウィルソン係数を求める必要がある。ワインバーグ演算子はグルーオン場のみからなる次元6の演算子であり、一般にループダイアグラムによって生成される。このウィルソン係数を求めるには最低でも2ループレベルの計算が必要となるため、特定の模型でしかこれまで計算されていなかった。本講演では任意の模型でワインバーグ演算子のウィルソン係数を計算できる公式を紹介する。特に公式の使い方について議論する。

参考文献: arXiv:1712.09503


日時 : 2018年5月29日(火) 16:30〜
場所 : F204(理学部F棟 第3講義室)
題目 : 物性理論と位相的弦理論の対応
講演者 : 杉本裕司氏(阪市大)

概要 : 超弦理論は摂動論的にのみ定義されている。非摂動的に定義すべく、様々なアプローチがなされてきた。その中でも近年、超弦理論の簡易模型として知られている位相的弦理論において、幾何を量子化することによって非摂動的定式を定義する手法が提案された。この手法により、位相的弦理論は様々な物理及び数学と対応していることが判明した。本講演はその中でも、ホフスタッター模型と呼ばれる物性理論との対応について議論する。この対応は、物性理論を通じて位相的弦理論の非摂動効果を探れることを意味する。


日時 : 2018年5月22日(火) 16:30〜
場所 : F204(理学部F棟 第3講義室)
題目 : Distance between configurations in MCMC simulations and the emergence of AdS geometry in the simulated tempering algorithm
講演者 : 福間将文氏(京大)

概要 : 与えられた分布関数に対する期待値を数値的に評価する際、 Markov-chain Monte Carlo法では、 目的の分布関数に緩和するように確率過程を設定する。 ところが配位間に高いポテンシャル障壁が存在する場合には、 異なるモード間の遷移確率はほとんど0となり、 平衡分布へ到達するまでに長い時間がかかってしまう。 本講演では、配位間の遷移の難しさを定量的に表す距離を定義し、 いくつかの系とアルゴリズムについて距離を具体的に計算する。 とくに、配位空間を拡大することで緩和を速める simulated tempering法について、配位間の距離が最小となるように アルゴリズム内のパラメーターを最適化したときに、 拡大された配位空間が反ド・ジッター空間の幾何を持つことを示す。 本研究は「randomnessから幾何が創発する機構」を与えているが、 時間があれば、量子重力理論に対して与える知見についても議論したい。


日時 : 2018年5月15日(火) 16:30〜
場所 : F204(理学部F棟 第3講義室)
題目 : 混合大域アノマリーと境界状態
講演者 : 山口哲氏(阪大)

概要 : 't Hooft アノマリーは繰り込み群で不変な量であり、トポロジカル相を含む相構造の解析に有用な 道具である。特に最近では、離散対称性や大きなゲージ変換に対するアノマリー(大域アノマリー) を用いた解析が注目されている。我々は、このような例として2次元Wess-Zumino-Witten模型に おいて中心対称性とモジュラー変換の混合アノマリーについて調べた。特に対称性で不変な境界状態の 存在する条件とアノマリーがない条件が同じであるという予想について調べた。この発表は沼澤宙朗氏 との共同研究arXiv:1712.09361 に基づく。


日時 : 2018年4月24日(火) 16:30〜
場所 : F204(理学部F棟 第3講義室)
題目 : 原子・分子過程によるニュートリノ物理
講演者 : 田中実氏(阪大)

概要 : 原子・分子の状態遷移のエネルギースケールはO(eV)以下であり, ニュートリノ振動等から知られているニュートリノの質量スケールに 近い.本セミナーでは、原子・分子過程を用いてニュートリノの 未知の性質に迫る新たな方法について説明するとともに, その実現に向けた実験的取り組みについて紹介する. また,同じ方法を用いた宇宙背景ニュートリノの検出とその性質の 解明の可能性について議論する.





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