大阪市立大学

原子核理論研究室

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<原子核の反応と構造> (櫻木 弘之)

以下の文章は、卒業研究や大学院での研究室を選ぶのに、学生の皆さんからよく尋ねられる「先生はどんな研究をしているのですか」という質問に答える内容を簡単にまとめたものです。   ⇒ 詳しい研究内容については、こちらへ

<原子核とは>
 原子核は陽子(proton)と中性子(neutron)が集まってできた多体系です。 陽子と中性子は、その電磁的性質を除いては、瓜二つの双子のような粒子で、「原子核を構成する粒子」という意味で、 「核子」 (nucleon) と総称されます(※)。 原子核は、これら「核子」が数個〜数百個集まってできた「有限量子多体系」です。 原子核の大きさは実験的に測定されており、原子核内の核子の数(=質量数)をAとすると、その原子核の半径は、 およそ、R=1.2×A1/3 10 fm ( 1 fm 1000兆分の1bという長さの単位)であることがわかっています。 つまり、物質を構成する原子の大きさ(100億分の1b = 0.1 ナノb)と比べても、 更に原子の1万分の1以下の大きさしかない、超極微の物理系なのです。
(※ 少し難しい言葉で言えば、核子にはアイソスピン(荷電スピン)という量子数をもち、 そのz成分の固有値は±1/2のいずれかの値を持ちます。 この固有値が+1/2の方を中性子、-1/2の方を陽子と呼びます。つまり、陽子と中性子は同じ「核子」で、 アイソスピンの異なる固有状態である、といえます。)

<原子核で働く力は?>
 陽子の間には距離の2乗に反比例するクーロン斥力が働くので、陽子同士をこのような小さな領域に閉じ込めようとすると、 とてつもない大きな電気的反発力のために、原子核はバラバラに飛び散ってしまいそうです。 しかしそうならないのは、電気的な斥力よりはるかに強い 「核力」と呼ばれる引力的な力が、核子間に働いているからです。 核力は「強い相互作用」とも呼ばれます。 この「核力」の正体を、世界で初めて理論的に予言したのが 湯川秀樹 博士(19071981)です。 湯川博士が予言した核力を伝える粒子の一つである「パイ中間子」は、 その後、宇宙線の観測で実際に発見されました。 この業績により、1949(昭和24)、湯川博士は日本人初の「ノーベル賞(物理学賞)」を受賞しました。

 原子核を理解するためには、この「強い相互作用(核力)」、「電磁相互作用」以外に、 もう一つ重要な「力」が必要です。それは「弱い相互作用」と呼ばれるもので、 中性子が陽子に変わったり、逆に陽子が中性子に変わったりする現象(β崩壊) を引き起こす力です。これらの3種類の力(相互作用)の微妙なつり合いの結果、100兆分の1b以下の小さな領域に 閉じ込められた「核子の集団」である「原子核」が存在するのです。

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