
第10回目の講義です.今回はGIS機能の拡張例として,インターネットを用いてWebブラウザからGISを使うOnline GISについて解説します.講義ではOnline GISの構造と機能や,応用例について説明します.
実習では,本講座のためにテストとして構築されたOnline GISにアクセスして利用する方法を説明し,実際に利用して頂きます.
これまでGRASSを例として,GISに関する説明をしてきましたが,実際にGISを利用する場合には多くの壁があるようです.その多くは,かつての「キーボードアレルギー」という言葉と同様に,最初の導入部分の問題であると考えられます.例えば,初期設定の煩雑さや機能操作の複雑さなどです.これらの問題を解決するために,GISのユーザーインターフェースとして,ホームページを見るためのWebブラウザを導入することが最近行なわれています.Webブラウザはコンピュータ利用の中で最も利用者の抵抗の少ない,いわば誰でも使えることを前提としたものです.このWebブラウザを入出力のインタフェースに用いることにより,ホームページを見る感覚でGISの利用が実現されます.
講師らが構築しているOnline GISもその1つで,GRASSをWebから利用するものです(Raghavan, V.・升本眞二・柴山 守(1997) GRASSLinksを利用したパブリックアクセス地理情報システム.第8回日本情報地質学会講演予稿集,pp.13-14).ここでは,GISの機能の拡張例として,そのシステムを紹介します.
ここで示すOnline GISは,基本的にGRASSのもつ本来の機能をWebブラウザから利用可能にするものです.また,GRASSのデータベースの弱い部分をRDBMS(リレーショナルデータベース)を追加することにより,補強しています.このシステムは空間情報の複数の利用者間での共有から教育分野まで幅広い立場での利用が考えられます.
Online GISの構造と情報の流れの概略図を下に示します.

システムは空間情報を管理するサーバーと,利用者が用いるクライアントの2つに大きく分かれており,その2つをインターネットで結んでいます.現在のサーバーはIntel Pentium CPUを使った普通のPCであり,LinuxをOSとし,Webサーバー,GISサーバー,DB(データベース)サーバーの3つのサーバーから構成されています.各サーバーにはそれぞれ,無償のソフトを利用しています.また,それらを相互に接続するインターフェースとしてCommon Gateway Interface(CGI)を中心におき,GISにはGRASSLinks(Huse, S. M.(1995) GRASSLinks: A New Model for Spatial Information Access in Environmental Planning, Ph.D Thesis, University of California, Berkeley )を拡張したものを用いています.なお,インターネットを介さずにクライアントとサーバーを1台のPCで行うことも可能です.
クライアントはホームページを見ることができるシステムであればほとんどが対応し,従来のWebブラウザ(NetScape,Internet Explore等)が稼動するものであればよく,特別なハードやソフトは必要としません.
本システムは,機能面から以下の4つのモジュールに分けられます.
・データ収集モジュール
:位置情報とその属性情報をマウス等を用いて入力する機能.・データ管理モジュール
:GISデータベースやリレーショナルデータベースの機能.インターラクティブな情報の検索や管理を行なう.・データ解析モジュール
:GISの各種解析を行なう機能.・データ表示モジュール
:画像や図形を表示する機能.2次元や3次元表示,VRAM(バーチャルリアリティモデル)の作成などを行なう.これらの機能は,すべてクライアントのホームページから操作できます.現システムはGRASSの機能の一部を利用できるようにしただけですが,機能追加によりGRASSのほとんどの機能をクライアント側で利用することが可能となります.
本システムを実際に利用した例を以下に示します.ここで示した図は全てクライアントのWebブラウザの画面に表示されたものです.
GISに設定した地域は新潟県小千谷地域です.基本情報として,DEM(国土地理院の50mメッシュ標高),人工衛星画像(LANDSAT,TM画像),地すべり分布図および地質図(地質調査所発行,1/5万地質図幅「小千谷」(柳沢ほか,1986))を用いました(我々の専門は情報地質学であるため,少し専門的な例になっていますが,機能の説明を目的としていますので,内容の詳細は省略します).
下の図はOnline GISに接続した際に,最初に表示される画面です.種々の機能が表示され,マウスでクリックして選択します.
起動後,最初に表示される画面の例(クリックすると拡大します;157KB)
データ収集モジュール:
データ収集モジュールの例を示します.下の図は点情報の位置入力とその属性情報を入力する画面です.

地図上に測定したデータ点の位置とその属性を入力しています.位置入力は表示した地図上でマウスを用いて行ないます.また,座標がわかっている場合はキーボードから数値で入力することもできます.
データ管理モジュール:
データ管理モジュールの例を示します.下の図はリレーショナルデータベースの検索画面です.位置を選択してリレーショナルデータベースから入力したデータを検索・表示したものです.
リレーショナルデータベースの検索例(クリックすると拡大します;46KB)
下の図はGISデータベースの検索例です.地質図上で位置を指定し,そこでのカテゴリー(地質名と岩層)を表示したものです.
GISのデータベースの検索例(クリックすると拡大します;74KB)
データ解析モジュール:
データ解析モジュールの例を示します.下の図は曲面推定を行った例です.入力した測定点と測定値をもとに面的に補間し,コンター表示したものです.
曲面推定結果のカラー等高線表示例(クリックすると拡大します;73KB)
下の図は属性の相互の関係を数値で表した例です.ここでは傾斜角度と地すべり地の有無を面積で表示しています.
属性の相互関係の出力例(クリックすると拡大します;10KB)
下の図はレイヤーの重ね合わせの条件を選択している例とその結果を表示したものです.
レイヤーの重ね合わせの条件設定画面の例(クリックすると拡大します;18KB)
重ね合わせの結果図の表示例(クリックすると拡大します;18KB)
下の図はバッファリング機能を用いて地質図の褶曲軸からの距離でバッファリングした例です.
バッファリング機能の例(クリックすると拡大します;21KB)
データ表示モジュール:
これまでに示した各図は全てデータ表示モジュールによるものです.さらに,下に示したようにVRML(バーチャルリアリティモデリング言語)の作成も可能です.この図は地形モデルの表面に地質図を重ねてています.モデルはWebブラウザのプラグインソフト(vrml2cやCosmo Player 2.xなど)により,自由に回転・拡大等が行なえます.なお,VRMLに関しては本学昨年度のインターネット講座の生活科学部の永村先生のホームページ;
http://www.life.osaka-cu.ac.jp/~emura/lec99/vspace/vrml.htmlのところで,VRMLの基礎的な話があり,下の方の
「VRMLによる仮想電脳空間の
はじまり、はじまりぃ〜... 」 (<−はじまりをクリックする)で,VRMLの構築手順がわかりやすく詳細に解説されています.そちらを是非参照して下さい.
VRMLの表示例(クリックすると拡大します;137KB)
VRMLの例(698KB)(ブラウザによりVRMLを操作することができます)
以上のようにOnline GISは,Webブラウザを用いてGISを意識せずにGISを利用できます.
GIS機能の拡張
Online GIS インターネット(Web)からのGRASSの利用
(以上,第10回講義)
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