第8回目の講義です.今回と次回は,前2回の応用例とは別の意味での応用例(拡張例)として,インターネットを用いてWebブラウザからGISを使うOnlineGISの話です.今回は,OnlineGISとはどのようなものかを説明し,実習で利用してみます.次回はOnlineGISをどのように構築するかを述べる予定です.
これまでGRASSを例として,GISに関する説明をしてきましたが,実際にGISを利用する場合には多くの壁があるように見えます.その多くは,かつての「キーボードアレルギー」という言葉と同様に,最初の導入部分の問題であると考えられます.例えば,初期設定の煩雑さや機能操作の複雑さなどです.
これらの問題に答えるために,GISのユーザーインターフェースとして,ホームページを見るためのWebブラウザを導入することが最近行なわれつつあります.Webブラウザはコンピュータ利用の中で最も利用者の抵抗の少ない,いわば誰でも使えるものです.このWebブラウザを入出力のインタフェースに用いることにより,ホームページを見る感覚でGISの利用が実現されつつあります.
我々が構築しているOnline GISもその1つで,GRASSをWebから利用するものです(Raghavan, V.・升本眞二・柴山 守(1997) GRASSLinksを利用したパブリックアクセス地理情報システム.第8回日本情報地質学会講演予稿集,pp.13-14).ここでは,このシステムを紹介します.
我々の構築しているOnline GISは,基本的にGRASSのもつ本来の機能をWebブラウザから利用可能にするものです.また,GRASSのデータベースの弱い部分をRDBMS(リレーショナルデータベース)を追加することにより,補強しています.このシステムは空間情報の複数の利用者間での共有から教育分野まで幅広く種々の立場での利用が考えられます.
Online GISの構造と情報の流れの概略を図−28に示します.

図−28 Online GISの構造と情報の流れ
このシステムでは空間情報を管理するサーバーと,利用者が用いるクライアントの2つに分け,その2つをインターネットで結んでいます.現在のサーバーはIntel Pentium CPUを使った普通のPCであり,LinuxをOSとし,Web,GIS,DB(データベース)の3つのサーバーから構成されています.WebサーバーにはApach,GISサーバーにはGRASS,DBサーバーには,JustLogic社のRDBMS(Just Logic Technologies, (1995) Just Logic/ SQL Data Base Manager, Just Logic Technologies Inc., pp. 167.)を用いています.また,それらを相互に接続するインターフェースとしてCommon Gateway Interface(CGI)を中心におき,GISにはGRASSLinks(Huse, S. M.(1995) GRASSLinks: A New Model for Spatial Information Access in Environmental Planning, Ph.D Thesis, University of California, Berkeley )を拡張したもの,DBにはSQLWeb(Applied Information Technology(1995) SQLWeb Reference, Applied Information Technology, pp. 20.)を用いています.これらOSをはじめとするソフトのほとんどは無償のPDSです.なお,インターネットを介さずにクライアントとサーバーを1台のPCで行うことも可能です.
クライアントはホームページを見ることができるシステムであればほとんどが対応し,従来のWebブラウザ(NetScape,Internet Explore等)が稼動するものであればよく,特別なハードやソフトは必要としません.
このシステムは,機能面から以下の4つのモジュールに分けられます.
・
データ収集モジュール:位置情報とその属性情報をマウス等を用いて入力する機能を持つ.・
データ管理モジュール:GISデータベースやリレーショナルデータベースの機能を持つ.インターラクティブな情報の検索や管理を行なう.・
データ解析モジュール:GISの各種解析を行なう機能を持つ.・
データ表示モジュール:画像や図形を表示する機能を持つ.2次元や3次元表示,VRAM(バーチャルリアリティモデル)の作成などを行なう.これらの機能は,すべてクライアントのホームページから操作できます.現システムはGRASSの機能の一部を利用できるようにしただけですが,機能追加によりGRASSのほとんどの機能をクライアント側で利用することが可能となります.
本システムを実際に利用した例を図−29から図−38に示します.ここで示した図は全てクライアントの画面に表示されたものです.
GISに設定した地域は前回の地すべりの応用例で示した新潟県小千谷地域です.基本情報として,DEM(国土地理院の50mメッシュ標高),人工衛星画像(LANDSAT,TM画像),地すべり分布図および地質図(地質調査所発行,1/5万地質図幅「小千谷」(柳沢ほか,1986))を用いました.
図−29は最初に表示される画面です.種々の機能が表示され,マウスでクリックし選択します.
図−29 最初に表示される画面(157KB)
データ収集モジュール:
データ収集モジュールの例を図−30に示します.図−30は点情報の位置入力とその属性情報を入力する画面です.地図上に測定したデータ点の位置とその属性を入力している画面です.位置入力は表示した地図上でマウスを用いて行ないます.また,座標がわかっている場合はキーボードから数値で入力することもできます.
図−30 点情報の位置・属性の入力(72KB)
データ管理モジュール:
データ管理モジュールの例を図−31,図−32に示します.図−31はリレーショナルデータベースの検索画面です.位置を選択してリレーショナルデータベースから入力したデータを検索・表示したものです.
図−31 RDBMSの検索例(46KB)
図−32はGISデータベースの検索例です.地質図上で位置を指定し,そこでのカテゴリー(地質名と岩層)を表示したものです.
図−32 GISデータベースの検索例(74KB)
データ解析モジュール:
データ解析モジュールの例を図−33〜図−37に示します.図−33は曲面推定を行った例です.入力した測定点と測定値をもとに面的に補間し,コンター表示したものです.
図−33 曲面推定結果の等高線表示(73KB)
図−34は属性の相互の関係を数値で表した例です.ここでは傾斜角度と地すべり地の有無を面積で表示しています.
図−34 属性の相互関係(10KB)
図−35はレイヤーの重ね合わせの条件を選択している例で,図−36はその結果を表示したものです.
図−35 レイヤーの重ね合せの条件設定(18KB)
図−36 重ねあわせの結果(18KB)
図−37はバッファリング機能を用いて地質図の褶曲軸からの距離でバッファリングした例です.
図−37 バッファリング機能(21KB)
データ表示モジュール:
これまでに示した各図は全てデータ表示モジュールによるものです.さらに,図−38に示したようにVRMLの作成も可能です.この図は地形モデルの表面に地質図を重ねてています.モデルはWebブラウザのプラグインソフトにより,自由に回転・拡大等が行なえます.なお,VRMLに関しては同インターネット講座の生活科学部の永村先生のホームページ(今月号)
http://www.life.osaka-cu.ac.jp/~emura/lec99/vspace/vrml.htmlのところで,VRMLの基礎的な話があり,下の方の
「VRMLによる仮想電脳空間の
はじまり、はじまりぃ〜... 」 (<−はじまりをクリックする)で,VRMLの構築手順がわかりやすく詳細に解説されています.そちらを是非参照して下さい.
図−38 VRMLの表示例(137KB)
VRMLの例(698KB)(ブラウザによりVRMLを操作することができます)
以上のようにOnline GISは,Webブラウザを用いてGISを意識せずにGISを利用できます.
拡張例
Online GIS(WebからのGRASSの利用).
データ収集モジュール:位置情報と属性情報をマウス等を用いて入力.
データ管理モジュール:GIS DBやリレーショナルDBの機能.
データ解析モジュール:GISの各種解析を行なう機能.
データ表示モジュール:画像や図形を表示する機能.
GRASSLinks:WebからGRASSを利用するためのインターフェース.
(以上,第8回講義)