地球科学におけるGRASS GIS入門(第12回講義)

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 最終の講義です.これまでGRASSの基本的事項や利用方法等について簡単ですが説明してきました.GRASSを実際に使おうとすると,既存のデータの入力方法や,きれいな出力をする方法などが重要です.ここではそれらについて説明します.

 実習では講座で示した方法の一部について実際の手順を示します.


7.データの入出と出力

 ここでは既存のデータの入力方法とハードコピーを中心とした出力方法について述べます.

7-1.既存データの入力

 現在,国土地理院等により多くのデジタル化された地図情報が作成・提供されています.これにより我々はGISの基本となる地図情報を簡単に入手することが可能になってきました.国土地理院で刊行しているCD-ROMを次に紹介します(それぞれの詳細は国土地理院のホームページを参照して下さい).

 1.数値地図50mメッシュ(標高),数値地図250mメッシュ(標高)
   約50mや250m間隔(1kmも含む)に区切ったDEM

 2.数値地図25000(地図画像),数値地図200000(地図画像)
   地図をtiff形式等の画像として表したもの.
   レイヤー分けにより等高線や道路・鉄道などの情報が区別可能.

 3.数値地図2500(空間データ基盤)
   行政区域・海岸線,道路中心線,鉄道,建物等のベクトルデータ.

 4.数値地図25000(行政界・海岸線)
   行政界・海岸線についてベクトルデータ.

 5.数値地図25000(地名・公共施設)
   地形図中の公共施設等の代表点や属性等をテーブル化した情報

 6.日本国勢地図

 7.細密数値情報(10mメッシュ土地利用)

 このほかに,前回説明したリモートセンシング画像(RESTEC等)や地質調査所から刊行されている100万分の1日本地質図CD-ROM版なども利用できます.これらの既存データはデータの形式から,大きく分けてラスター型(DEMや画像),ベクトル型,サイト型に分けられます.ここでは,これらの中からは特に利用する機会が多いと思われる,ラスター型とベクトル型について説明します.

7-1-1.ラスター型データの入力

 国土地理院の数値地図50mメッシュ(標高)や数値地図25000(地図画像)および人工衛星画像などはラスター型で情報が提供されています.ラスター型のデータは,r.in.asciiの例を説明した.しかし,それぞれが独自の形式で提供されているために,GRASSのアスキー形式に変換しなければならない.また,前にも説明したように土地理院の数値地図50mメッシュ(標高)は,経度・緯度による分割であり,UTM座標系ではそのまま利用することはできません.本講座では,UTM座標系を推奨しているので,ここではUTM座標系への入力を前提とします.

(1)数値地図50mメッシュ(標高)

 国土地理院の50mメッシュのような経・緯度分割によるデータを入力する場合はr.in.asciiではなく,r.in.ll(longitude & latitude;経度・緯度)を用います.r.in.llはバイナリー形式のラスター型データを入力するコマンドであるため,それに対応したバイナリー形式のデータを作成しなければなりません(実習に,このためのフォートランプログラム例を示します).変換されたバイナリー形式のデータは,それぞれの位置(緯度経度)が明確なため,そのまま入力できます.注意しなければならないのは,地形図面の境界はUTMの値ではなく,緯度経度で区切られているためにUTM座標系を用いた場合は,これらの地形図の境界とGISでの領域境界とが一致ないということと,位置合わせを行なうために,標高データが補間されてもとの情報と厳密には一致していないという点です(もともとの標高を正確に(?)利用したいのであれば,GRASSの設定で経・緯度系あるいはxy座標系などを利用してください).

(2)数値地図25000(地図画像)

 一般的にGRASSで画像を取り扱う場合は,まず画像入力用の中間ファイル等を作成するためのxy座標系で設定した別の作業用のLOCATIONとMAPSETを作成し,そこに画像をr.in.tiff(Tiff画像をラスター形式で入力するコマンド)等を用いて入力し,画像の切りだし等の処理を行ないます.この画像をi.targetおよびi.rectifyの2つのコマンドを用いて,実際に利用するUTM座標のLOCATIONに投影します.

 国土地理院の25000分の1地形図の地図画像は,地図がTiff形式の画像として保存されています.画像の1ピクセルは0.1×0.1mm(約2.5m×2.5m)で,ビット毎に切り分けると,等高線や地名などが独立して利用できるようになっています.地形図そのものの画像であるため,余白や外側の線・文字等がはいっています.UTM投影のため,画像は長方形ですが,地形図は台形となっています.地図1枚単位で使用する場合は,気にならなければ無視しても問題ありませんが,複数枚にまたがる領域を使用するときには,実際の地図部分だけを切り出す作業が必要となります.実際には必要な部分のマスクを作成して抽出します.マスクの作成に必要な地図の4隅の情報は,CD-ROMのDATAディレクトリの下のKANRI.CSVファイルの中に記述されています.また,この情報をもとにUTM座標系に投影します.

(3)人工衛星画像

 基本的な考え方は地図画像と同じですが,人工衛星画像には正確な位置を表す情報が無いという点が異なります.

 人工衛星画像にはデータフォーマットに対応した入力コマンドが準備されています(i.tape.mss,i.tape.tm,i.tape.spotなど).また,このほかに,前回の実習で説明したi.tape.otherコマンドなどもあります.これらのコマンドを用いてxy座標系で入力します.入力した画像は正確な位置情報をもたないので,画像と上記の地図画像など正確な位置を示す点(地上基準点:GCP(Ground Control Point)との対応情報を用いて,座標変換を行なう必要があります.このGCPをGRASSで設定するためのコマンドとして,i.pointsが用意されています.ここでは,人工衛星画像と地図を見比べながら,基準点の位置を指定していきます.この結果の情報をもとに座標変換を行ないます.

 なお,国土地理院の50mDEMにすでに位置合わせを行なった使いやすい人工衛星画像データが整備されつつあります.

7-1-2.ベクトル型データの入力

 国土地理院の数値地図2500(空間データ基盤)はベクトル型情報がCD-ROMで提供されています(以前は10000もありFDで販売されていました).座標系は平面直角座標系が用いられています.原点は左下隅で(0,0)となっています.GRASSに取りこむためには,まずGRASSのアスキー形式のベクトルデータに変換し,v.in.asciiで取りこみます.これをUTM座標に変換するためのテーブルを作成し,v.transformコマンドでUTM座標系へ変換します.

7-1-3.他の情報

 他のGISやCADのファイルも変換して利用することが可能です.例えば,世界的に利用されているGISソフトARC/INFOのベクトルデータ形式のファイルはv.in.arcにより変換でき,GRASSで利用することがでます.また,CADソフトとして有名なAutoCadのDXF形式のファイルはv.in.dxfにより変換し利用できます.

7-2.データの出力

7-2-1.画像としての出力

 画像を出力する方法は多様です.一番簡単な方法は,出力した画面そのものを,xwdコマンドやxvなどのソフトで取りこみ,自分で取り扱える形式の画像ファイルに変更することです.しかし,これでは画面の表現能力(例えば,1280×1024など)以上は,使えません.もっと高分解能で出力したい場合は,x0などのモニターの代わりにCELLを指定して大きな仮想のCELL画面に描く方法や,ラスターを直接tiffのような画像形式に変換する方法(r.out.tiff)などがあります.

 プリンターを設定して,そこに直接出力する方法も便利です.GRASSのコマンドp.mapは,ラスターやベクトルを重ね合せたり,色をパターンに変えたり,ラベルやスケールをつけたりして適当なスケールでプリント出力することができます.ただし,利用できるドライバーが少ないために,どのプリンターでも利用できるわけではありません(ヒューレットパッカードのような,海外のメーカーは比較的簡単に設定できます).

 これとほぼ同等の機能を持つps.mapは,PostScript形式(拡張子.ps)のファイルへ出力します(個人的には,これがおすすめです).この場合,プリンターへの依存度がほとんどないために(デフォルト設定で良い),プリンターが設定できない状態ではこちらの方が便利です.PS形式のファイルは,基本的にテキスト形式ですので直接中身を変更することもできます.ただし,ファイルはかなり大きなサイズになってしまいます.gimp(Ghostscript,Ghostviewなど:linux版,Windows版)等を利用すればPS形式のファイルを表示することや通常のプリンターへ出力することも可能になります.Windowsのドロー系ソフト(例えば,コーレルドロー8など)では,インポートも可能です.

7-2-2.他のシステムへの出力

 GRASSの情報を他のGISやCADのファイルへ変換することが可能です.例えば, GISソフトARC/INFOの形式にはベクトルデータをv.out.arcにより変換でき,AutoCadのDXF形式にはv.out.dxfにより変換できます.これとは別に,p.vrmlコマンドによりバーチャルリアリティモデル言語(vrml)のファイルに変換することも可能です.

 

8.おわりに

 GISをとりまく環境は日々変化しています.パソコンの高速化(本講座が始まった時点からおよそ2倍速度が早くなった)やハードディスクの高密度化(ノートパソコンでも10数GByteが一般的になった),高精度スキャナー・カラープリンターの普及などハードウェア環境はすごい勢いで進んでいます.また,ソフトウェアも進化し,本講座で利用したGRASSもバージョンが4.2から5.0に変わってしまいました.さらに国土地理院などから刊行される基盤データは,徐々に増加しつつあります.これらにより,GISは本当に机の上のシステムになりつつあると思います.本講座がすこしでもその手助けになれればと思っています.


まとめ(12)

 入力 (デジタル化された地図情報 → 国土地理院の数値地図など)

  ファイル形式の変更・座標系の変更・位置合わせ

  (ARC/INFOやAutoCadからの変換も可)

 出力 (プリンターや画像ファイル)

  CELL,PostScript,vrml

  (ARC/INFOやAutoCadへの変換も可)

(以上,第12回講義)


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