日本学術振興会 二国間交流事業 韓国(NRF)とのセミナー


対称空間の部分多様体の微分幾何と関連する問題

ミニワークショップ ~準備会として~


開催日:2019年7月12日 (金) -- 15日 (月)

場所:東京理科大学 神楽坂キャンバス  地図
森戸記念館第2会議室 (森戸記念館(新宿区神楽坂4-2-2)2階)
PORTA神楽坂第3会議室 (PORTA神楽坂(新宿区神楽坂2-6-1)7階)

組織者
大仁田 義裕 (大阪市立大学)
田中 真紀子 (東京理科大学)

援助
日本学術振興会 二国間交流事業 韓国(NRF)とのセミナー(2019年度)
代表: 大仁田 義裕
   
後援
大阪市立大学数学研究所 (文科省共同利用・共同研究拠点「数学・理論物理の協働・共創による新たな国際的研究・教育拠点」)

講演予定者
井川 治(京都工芸繊維大学)
大野 晋司(日本大学)
梶ヶ谷 徹(東京電機大学)
木村 太郎(鶴岡高専)
小池 直之(東京理科大学)
杉本 恭司(東京理科大学)
坊向 伸隆(大分大学)

スケジュール,講演タイトルおよびプログラム
7月12日(金)会場:PORTA神楽坂 第3会議室
13:50~15:20:大野
タイトル:一般化された$s$多様体の対蹠集合
概要:対称空間はCartan によって1920年代に導入された多様体のクラスである. 対称空間には, いくつかの同値な定義が知られている. Naganoは対称空間の圏を定め, 各点での点対称と点対称同士の関係式によって対称空間を定義した. ChenとNaganoは1978年の論文以降の一連の論文で, 対称空間の構造から定まる極地と子午空間, 対蹠集合, $2$-number などについて研究を行なっている これらの研究の結果がChen-Nagano理論と呼ばれている. 特筆すべき結果として, 極地と子午空間の対による対称空間の決定, $2$-numberによるコンパクト対称空間のオイラー数の評価, などが挙げられる. 本講演では, 対称空間の拡張として一般化された$s$多様体の定義を与える. さらに, 一般化された$s$多様体に対して極地と対蹠集合の概念を導入し, 対蹠集合の濃度の上限として対蹠数を定義する. また, ベクトル空間の部分空間の系列のなす旗多様体に対して 一般化された$s$構造を与え, その極大対蹠集合の合同類と対蹠数を決定したことを報告する.
15:40~17:10:木村
タイトル:Classification of Cartan embeddings which are austere submanifolds
概要:リーマン多様体における弱鏡映部分多様体の概念は, 井川--田崎--酒井によって 定義され, いくつかの分類結果が知られている. また弱鏡映部分多様体は, austere 部分多様体であることが定義からわかる. コンパクト連結リー群 $G$ 上の有限位数 $k$ の自己同型写像 $\sigma$ に対して, $K$ を $\sigma$ の固定部分群とすると, 写像 $G/K \to G$ は埋め込みとなる. この埋め込みをカルタン埋め込みという. 一般にカルタン埋め込みの像は極小部分多様体とは限らない. 本講演では, 位数 $3$ 以上のカルタン埋め込みの austere 部分多様体の分類結果と, さらに弱鏡映部分多様体の分類結果についても紹介する. これらの結果は, 間下克哉氏(法政大学)との共同研究に基づいている.
7月13日(土)会場:森戸記念館2階 第2会議室
09:50~11:20:小池①
タイトル:正則化された平均曲率流に対する崩壊定理とそのゲージ理論への応用
概要: 本講演において,最初に, 極小ファイバーをもつ概自由かつ等長なヒルベルトリー群$\mathcal G$の作用を備えたヒルベルト空間内の$\mathcal G$不変な ある種の正則化可能な固有フレッドホルム超曲面を発する正則化された平均曲率流に対する崩壊定理を紹介する. 次に,上述の崩壊定理を用いたゲージ理論への応用結果について紹介する. その応用結果とは,次のようなものである. $P$をコンパクトリーマン多様体$M$上のコンパクト半単純リー群$G$を構造群 にもつ主バンドルとし,$\mathcal A_P^{H^0}$を$P$の$H^0$接続全体のなす(アフィン)ヒルベルト空間とする. このとき,$M$内の1点に停留しない$C^{\infty}$ループ$c$に沿うホロノミー写像${\rm hol}_c:\mathcal A_P^{H^0}\to G$は, 極小ファイバーをもつリーマン沈め込み写像になることが示され, さらに,この事実と上述の崩壊定理を用いて,$\mathcal A_P^{H^0}$内のある種のゲージ不変な超曲面に属する接続の ${\rm hol}_c$の像達が,正則化された平均曲率流に沿って$G$のある1点に集中することが示されることを述べる. 最後に,$M$がコンパクト単連結な4次元リーマン多様体で交叉形式が正定値であるようなものであり, $P$が$SU(2)$バンドルでインスタントン数が1以上であるようなものである場合に, $P$の$H^l$($l\geq 2$)自己随伴接続のモジュライ空間$\mathcal{SD}_P^{H^l}$の特異点(これは錐的特異点)の曲率流を用いた解析 を行うための方策について述べる.
11:40~13:10:小池②
タイトル:同上
概要:同上
14:50~16:20:梶ヶ谷①
タイトル:重み付きハミルトン安定性と変形ラグランジュ平均曲率流(1)
概要:本講演の内容は, 國川慶太氏(東北大AIMR)との共同研究に基づく. ケーラー多様体内のラグランジュ部分多様体の平均曲率流を考える.「平均曲率流がいつ時間大域的に存在し, 極小ラグランジュ部分多様体に収束するか?」と言う問題は基本的な問いであるが, 本講演ではこの問題に対する一つの幾何学的設定を説明し, この設定のもとでの収束定理を紹介する.  前半では, ラグランジュ部分多様体の重み付きハミルトン安定性の概念を導入し, 安定性の判定法とその具体例について解説する. 特に外側のケーラー多様体がケーラー・アインシュタインではないがリッチ形式があるポテンシャル関数を持つ場合(例えば, ファノ多様体の場合)には, ポテンシャルから決まる「重み」を考えることが, KE計量の場合の自然な拡張を与えることについて言及する.
16:40~18:10:梶ヶ谷②
タイトル:重み付きハミルトン安定性と変形ラグランジュ平均曲率流(2)
概要:後半では, 変形ラグランジュ平均曲率流を導入し, この平均曲率流が重み付き極小ラグランジュ部分多様体に収束するための初期条件について考察を加え, 幾何学的に妥当な初期条件のもと収束定理を証明する.具体的には, KE計量の場合のHaozhao Liの結果を拡張し, 初期ラグランジュ部分多様体が「完全な変形平均曲率形式」を持ちかつそれがある意味で「重み付きハミルトン安定なラグランジュ部分多様体」に近いときに, 平均曲率流の時間大域解の存在と重み付きハミルトン安定ラグランジュ部分多様体への収束を示す.
7月14日(日)会場:PORTA神楽坂 第3会議室
13:50~14:20:杉本
タイトル:パラエルミート対称空間内のパラ実形の導入及び分類方法について
概要:本講演ではある特殊な条件の下でパラエルミート対称空間内$G/H$に, パラ実形を導入し, その分類方法を紹介する. ここで, パラ実形とは, (擬)エルミート対称空間内の実形のようなもので, それは$G/H$の回帰的反パラ正則等長変換の固定点集合の連結成分のことである.なお、本講演の内容は下川拓哉氏との共同研究に基づく.
14:20~15:20:坊向②
タイトル:双曲型随伴軌道のパラ正則的コホモロジー群
概要:本講演では,パラ複素多様体Mに対して一つのコホモロジー群$H^*(M)$を定式化する.その上で,双曲型随伴軌道$G/L$のコホモロジー群$H^*(G/L)$と,$G/L$に付随する実旗多様体$G/Q$のドラムのコホモロジー群$H^*(G/Q)$とを紐付し,パラ正則不変量と位相不変量とを関係付ける.これにより,例えば,円柱$M$はパラ正則同型でも反パラ正則同型でもない2種類のパラ複素構造を許容することが判る.本講演内容は明治薬科大学 野田知宣氏との共同研究に基づく.
15:40~17:10:坊向③
タイトル:楕円軌道上の等質正則ベクトル束の正則断面全体がなす複素線形空間が有限次元になるための十分条件
概要:本講演では,楕円軌道$G/L$上の等質正則ベクトル束の正則断面全体がなす複素線形空間$V$について,$V$が有限次元になるための十分条件を与える.この条件が成り立つような$G/L$の場合には,その上の正則関数が定数関数のみとなることや,正則自己同型群$\text{Hol}(G/L)$が有限次元リー群になることなどを主張できる.
7月15日(月)PORTA神楽坂 第3会議室
13:50~15:20:井川①
タイトル:対称空間における標準形理論 (1)
概要:線形代数学においては種々の標準形理論が知られている. 最も印象的なものは任意の実対称行列は直交行列で対角化できるという事実 である. 少し見方を変えると実対称行列の全体に直交群が自然に作用し, 直交群による各軌道が対角行列全体のなすEuclid空間と 必ず交わると言い換えられる. さらに,軌道と対称行列全体のなすEuclid空間とは直交している. 本講演では,上の現象をRiemann多様体とそこに働く等長変換群に自然に拡張した 超極作用について概観した後,特に対称空間への超極作用について扱う. その典型例はcompact対称空間へのHermann作用である(A). これはcompact対称空間へのイソトロピー群の作用を含むクラスである. Hermann作用が可換化可能かどうかを二重佐武図形で判定する方法を説明し, 可換化可能な場合には,重複度付き対称三対を用いて,Hermann作用の 軌道空間や個々の軌道の性質が詳しく調べらることを説明する. 一方,擬Riemann対称空間への等長作用に対してもこのような性質の良い 作用がF.-JensenやRossmannによって研究された(B). E. CartanはRiemann対称空間の分類を完成させたとき,その分類リストを眺め, compact型と非compact型には,一対一の対応があることを直ちに見抜いた. この対応は双対性と呼ばれている. この講演では双対性を拡張した一般化された双対性を通じて上記(A)と (B)が対応することを示す. さらに,一般化された双対/重複度付き対称三対/二重佐武図形が 三位一体の関係になることを説明する. 三位一体の視点からBergerの定理(半単純Lie環とその上の対合の組の分類)を 見直す. またこれらの視点からWirtinger不等式/逆向きWirtinger不等式などの キャリブレーションの不等式を見直す. 本講演の一部は笹木集夢(東海大学)と馬場蔵人(東京理科大学)との 共同研究に基づく.
15:40~17:10:井川②
タイトル:対称空間における標準形理論 (2)
概要:同上

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大仁田 義裕: ohnita (at) sci.osaka-cu.ac.jp
Last updated on 5/July/2019