派遣計画

平成23年度開始の計画

中国,南開大学,陳省身数学研究所,Zhi-Qiang Wang教授
Z.-Q. Wang 教授と協力して,中国南開大学偏微分方程式研究グループと日本の大阪市立大学数学研究所を中心とする非線型偏微分方程式および変分法の研究のための国際的ネットワークの構築,ワークショップの開催などを推進する.若手研究者1名を派遣し,連立非線形シュレディンガー方程式の特異摂動問題の研究に取り組み,非線型偏微分方程式・変分法の研究分野における世界をリードする成果を目指す.
イギリス,ケンブリッジ大学,応用数学理論物理教室DAMTP,Gary Gibbons教授
コンパクトなEinstein多様体および特殊ホロノミー群を持つRiemann多様体の構造をブラックホール幾何学の視点から研究する. このような幾何学は高次元ゲージ理論のインスタントンおよび重力インスタントンと解釈されるものであり, 超弦理論やM理論の発展から予想される幾何学の新しい方向を探ろうとする問題意識と深くかかわっている. 本研究では, 高次元ブラックホール時空をコンパクト化する手法を用いてEinstein多様体の組織的な構成を行い,ブラックホール時空とRiemann幾何学の新たな融合を目指すものである. 数学研究所の微分幾何学研究グループやキングスカレッジの幾何学グループとの連携を進め,高次元ブラックホールの研究推進に活用する.

平成24年度開始の計画

カナダ,トロント大学,数学教室,Yael Karshon教授
Y. Karshon教授と連携して,カナダ・トロント大学数学教室と日本の大阪市立大学数学研究所が主導するトポロジーおよびシンプレクティック幾何学の国際共同研究の一層の強化と推進を進める.とくに,トーリックトポロジーの研究において世界レベルの研究成果を目指して,トーラス多様体のトポロジー・幾何学に関する若手研究者1名を派遣する.
イギリス,ロンドン大学キングス カレッジ,数学教室,Jurgen Berndt教授
対称空間の部分多様体,対称空間と調和写像,有限次元および無限次元等径部分多様体,多様体上のリー群作用で不変なアインシュタイン計量,リッチソリトンやリッチフローなどを主研究テーマとし,若手ポスドク研究者(数学研究所員)1名を派遣し,有限次元および無限次元リー理論的方法,可積分系理論や幾何学的変分問題の観点から,研究に取り組む.インペリアル・カレッジやケンブリッジ大学等の他の研究機関のグループとの連携も活用して微分幾何学および関連分野の国際的に一流の成果を目指す.
韓国,韓国科学技術院,数理科学教室,Ki Hyoung Ko教授
結び目理論,特にブレイド理論の観点からの共同研究を推進する.Ki Hyoung Ko教授はブレイド理論の専門家であり,同僚の結び目理論専門家のGyo Taek Jin教授とともに結び目理論を研究している.Ko教授はブレイド理論を利用したパスワードの研究で成功を収めており,この機会に若手研究者を派遣することにより,その手法の習得と結び目理論の新たな応用研究領域の開拓を目指す.
フランス,パリ第7大学,宇宙素粒子および宇宙論研究所,David Langlois教授
高次元時空において,ブラックホールの形成過程および,ブラックホールの周りの物理現象を解析し,余剰次元の効果を定量的に評価することによって,余剰次元の存在を検証するための理論的予言を行うことを目的とする.また,宇宙における高エネルギー現象とブラックホールの関係を研究するため,ブラックホールの周りの電磁流体系について研究し,ブラックホールがエネルギーの供給源となる機構を明らかにする.ここでは,ブラックホール時空の性質に由来する基礎方程式の特異性が現れる.この問題を非線形偏微分方程式の問題として理想化し,本質の解明に取り組む.
フランス,パリ第7大学,宇宙素粒子および宇宙論研究所,David Langlois教授
宇宙論のダークエネルギー問題に対するアプローチは,大きく分けて3つ考えられる.一つは,ダークエネルギーが存在することを認め,その正体を明らかにすることを目標とするもの.二つ目は,宇宙論的なスケールの重力は一般相対論では記述できないと考え,新しい重力理論の構築を目標とするもの.三つ目は,宇宙は我々から見て等方ではあるが,一様ではないと考え,様々な観測事実を説明できる非一様宇宙モデルを構築することを目標とするものである.ここでは,三つ目のアプローチで,観測データと無矛盾な非一様宇宙モデルの構築を目指すとともに,宇宙の一様性の観測的検証可能性に関する理論的な国際共同研究を進める.
ロシア,ロシア科学アカデミー,理論実験物理学研究所,所長Alexei Morozov教授
理論物理学,特に場の量子論,弦理論の研究において世界をリードする成果を目指す.Alexei Morozov教授と協力して,可積分系の場の量子論に関する最先端に位置する研究を推進する.派遣若手研究者には,特に行列模型を使用する,2次元量子可積分系,無限次元代数とinstanton和による定義から始まる4次元ゲージ理論の一連の測定量との関連の研究に取り組んでもらう.上記の研究テーマの追究により新しい物理現象の定性的・定量的予言を,主として素粒子物理学で行う.
ドイツ,ボン大学,応用数学研究所,J. J. L.Velázquez教授
非線形偏微分方程式の数理解析の国際共同研究を展開する.特に,数理生物モデルに現れるKeller-Segel系と呼ばれる準線形退化型方程式系の適切性と解の漸近挙動, 自己相似構造, 爆発現象についての関数解析及び力学系の観点からの考察を行う.若手研究者1名を,この分野の卓越した数学者であるVelázquez教授が指導する研究グループを派遣し,この分野に研究に取り組んでもらい,世界をリードする研究成果の達成を目指す.

平成25年度開始の計画

Last updated on July 30, 2012