大阪市大・大阪府大合同
「南大阪応用数学セミナー」(2019年度)


大阪市立大学数学研究所(OCAMI)での事業の一環として、大阪市立大学数学研究所および大阪府立大学工学部有志を運営委員として広く解析・応用解析をテーマにしたセミナーを行います。

連絡先 :高橋 太
〒558-8585
大阪府大阪市住吉区杉本3丁目3番138号
大阪市立大学大学院理学研究科数物系専攻・数学研究所
電話:06-6605-2508
E-mail :futoshi@sci.osaka-cu.ac.jp(高橋)
運営委員 :高橋 太、阿部 健、村井 実、 関行宏氏(阪市大数学研究所)、
 壁谷 喜継(大阪府立大・理)、菅 徹(大阪府立大・理)

数学教室は理学部に移転しました。 移転マップ
理学部「12」の建物です(F棟は学術情報総合センターに近い方です)

第54回「南大阪応用数学セミナー」
日時 1月25日(土) 14:00 ~ 17:30
場所 大阪市立大学(杉本キャンパス)理学部E棟数学講究室(E408号室)
講演者(所属) 14:00~15:00
長谷川翔一氏(大阪大学大学院基礎工学研究科)
タイトル 双曲空間上の Lane-Emden 方程式の動径対称解の族がなす層構造について
アブストラクト 本講演では、双曲空間上の Lane-Emden 方程式の動径対称解の族がなす層構造について議論する。動径対称解の族が層構造をなすとは、任意の二つの動径対称解が互いに交わらないことを表す。ユークリッド空間上の Lane-Emden 方程式については既に、非線形項の指数が Joseph-Lundgren 指数以上の場合に、動径対称解の族が層構造をなすことが知られている。一方で、双曲空間上の Lane-Emden 方程式については、動径対称解の原点での値が十分小さいという仮定の下で、動径対称解の族が層構造をなすことが示されている。本講演においては、双曲空間上の Lane-Emden 方程式に関して、動径対称解の原点での値についての仮定を課さずに、動径対称解の族が層構造をなすかを調べる。さらに、層構造の成立に関する臨界指数の存在についても議論を行う。
講演者(所属) 15:15~16:15
相木雅次氏(東京理科大学理工学部)
タイトル On the Interaction of Two Coaxial Vortex Rings
アブストラクト 本講演では,非圧縮非粘性流体内を運動する同軸上に並んだ2つの渦輪について考察する. 特に,2つの渦輪が交互に互いの中を通って繰り返し追い越しあう「Leapfrogging」と呼ばれる現象に 焦点をあてる.  Helmholtz による1858年の研究から始まり,2つの渦輪の相互作用に関する研究は今日まで 様々なアプローチによって行われてきた.現在,同軸上に並んだ渦輪の運動を記述するモデル方程式として 盛んに研究されているのが1893年に Dyson によって提唱された渦輪の半径 R と軸に沿った位置 z に対する 常微分方程式系(以後 Dyson モデルと呼ぶ)である.Dyson モデルに対しては, leapfrogging を含む様々な運動パターンに対応する解の存在が Borisov, Kilin, and Mamaev によって示されている.Dyson モデルはその導出の過程で渦輪の形が円であることを仮定している. そのため,leapfrogging 現象の安定性の議論などをする際には対称性のある摂動(円形を変えない摂動) しか扱えないなど,leapfrogging 現象の数学解析においては限定的であるという側面を持つ.  そこで本講演では,渦輪を含むより一般的な形をした渦糸の運動を記述するモデル方程式として講演者が導出した 偏微分方程式系(以後,新モデルと呼ぶ)を紹介する.渦糸とは,流体の渦度が空間曲線上に集中して分布したもので, その運動は曲線の運動として記述される.特に渦輪の運動は空間内の円の運動として表すことができる. 新モデルは,円以外の一般的な形の渦糸も扱えるので,leapfrogging 現象の非対称な摂動下での安定性など, Dyson モデルでは扱えないような問題も扱える.  今回は最初の一歩として,新モデルに対する初期値問題の解で leapfrogging に対応するものの存在, および解が leapfrogging に対応するための初期値やパラメータに対する必要十分条件について得られた結果を紹介する.時間が許せば,新モデルの解で leapfrogging 以外の特徴的な挙動を示すものについても紹介したい.
講演者(所属) 16:30~17:30
冨田直人氏(大阪大学大学院理学研究科)
タイトル 双線形擬微分作用素の有界性について
アブストラクト 線形の擬微分作用素論において基本定理として知られている Calderon-Vaillancourtの定理が主張することは, シンボルとその偏導関数が有界であれば, 対応する擬微分作用素がL^2-有界になるということである. しかしながら,双線形擬微分作用素に対しては,このCalderon-Vaillancourtの定理に相当する有界性は 成り立たないことが知られており,線形と双線形での違いが現れる. 本講演では,双線形擬微分作用素の有界性を保証する条件を明らかにしたい. 本研究は宮地晶彦氏(東京女子大学)と加藤睦也氏(群馬大学)との共同研究に基づく.
第53回「南大阪応用数学セミナー」
日時 12月7日(土) 14:00 ~ 17:30
場所 大阪府立大学(中百舌鳥キャンパス)A12棟サイエンスホール
交通アクセス:http://www.osakafu-u.ac.jp/info/campus/access/
キャンパスマップ:https://www.osakafu-u.ac.jp/info/campus/nakamozu/
講演者(所属) 14:00~15:00
可香谷 隆氏(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)
タイトル 接触角条件付き表面拡散に対する進行波解の非一意性と非凸性について
アブストラクト 本講演では,x軸上に2つの端点を持ち,その端点において異なる接触角を生成する曲線に対する表面拡散を考察する. 上記の自由境界値問題は,曲線に対するある汎関数の形式的なH^{-1}勾配流として導出できる.この変分構造は,同様の接触角条件を課した面積保存型曲率流でも現れるため,解の漸近挙動も類似した構造を持つことが期待される. 面積保存型曲率流においては,進行波解が安定性を持つことが知られているため,本講演では,表面拡散に対する進行波解の存在性,及びその形状を解析する. 特に,面積保存型曲率流においては現れない構造である,角度条件に依存した進行波解の非一意性と非凸性に焦点を当てる.尚,本講演の内容は神戸大学の高坂良史氏との共同研究に基づく.
講演者(所属) 15:15~16:15
田中 視英子氏(東京理科大学理学部)
タイトル Some remarks on positive solutions for $(p,q)$-Laplace equations with two parameters
アブストラクト 本講演では,Vladimir Bobkov (University of West Bohemia,Czech Republic) との共同研究で扱っている $(p,q)$-Laplace 方程式の正値解について,今までに得られている結果や最近の結果について紹介する. 扱う方程式は二つの $p$-Laplacian と $q$-Laplacian の固有値問題から構成された方程式であるので,二つのパラメータを含んでいることが特徴である. 最初に,方程式が正値解を持つパラメータの範囲や最小エネルギー解を持つようなパラメータの範囲は完全に解析出来ており,これらの範囲を仕切る曲線がそれぞれ表れることを紹介する. これらの曲線が完全に一致するのか,または,どこかで一致するかどうかは過去の結果では分かっていなかったが,最近の研究ではこの問に対する回答が得られた. また,この最近の研究結果から新たに得られた正値解の多重性などについても紹介する予定である.
講演者(所属) 16:30~17:30
中島 主恵氏(東京海洋大学海洋資源環境学部)
タイトル ある遺伝子頻度のモデルの非定数定常解の一意性と多重度について
アブストラクト この講演では Nagylaki(1976) による2つの対立遺伝子の遺伝子頻度を記述するモデルを考える.このモデルは空間的に非一様な反応拡散方程式で表され,その非線形項は環境変数 g(x) とともに符号を変える. この方程式に関し, Nagylaki と Lou (1992)は「環境変数 g(x) がある条件を満たすとき,拡散係数が微小ならば,非定数定常解は一意である.」という予想をした. 講演者はN(2016,2018)でこの予想を部分的に証明したが,最近,g(x) が極端に非対称な形状であるときには必ずしも解は一意でないことがわかった. 本講演では一意性の成り立たない例について報告する.
第52回「南大阪応用数学セミナー」
日時 11月16日(土)14時〜17時30分
場所 大阪市立大学(杉本キャンパス)理学部E棟数学講究室(E408号室)
講演者(所属) 11:00~12:00
Jann-Long Chern氏(台湾国立中央大学)
タイトル Singular Points Effects in Parabolic Evolutions Equations
アブストラクト In this talk, we are interested in the following topic : How about the time singularities affect the existence, nonexistence and behaviour of solutions for Parabolic Evolutions Equations. This talk is based on the joint work with Huwang, Takahashi and Yanagida.
講演者(所属) 14:00~15:00
柳青氏(福岡大学理学部)
タイトル Parabolic Minkowski convolutions and concavity properties of viscosity solutions to fully nonlinear equations
アブストラクト In this talk we discuss parabolic power concavity of viscosity solutions to a general class of fully nonlinear parabolic equations. Our approach can be generalized to study the so-called parabolic Minkowski convolution, which enables us to compare viscosity solutions of initial-boundary value problems in different domains. Our results are applicable to the Pucci operator, the normalized p-Laplacians, the Finsler Laplacian, and more general quasilinear operators. This talk is based on joint work with Prof. Kazuhiro Ishige (University of Tokyo) and Prof. Paolo Salani (University of Florence).
講演者(所属) 15:15~16:15
村川秀樹氏(龍谷大学理工学部)
タイトル Fast reaction limit of reaction-diffusion systems and approximations of nonlinear diffusion problems
アブストラクト We consider a type of singular limit problem of reaction-diffusion systems that is called the fast reaction limit. The problem of the fast reaction limit involves studying the behaviour of solutions of reaction-diffusion systems when the reaction speeds are very fast compared with the other dynamics. This type of problems appear in literature in various fields such as chemistry, ecology, biology, geology and approximation theory. In this talk, we deal with the singular limit of a general reaction-diffusion system including many problems in the literature. We formulate the problem, derive the limit equation and establish a rigorous mathematical theory. Furthermore, we introduce a semilinear approximation and a linear approximation to nonlinear diffusion problems as an application of the fast reaction limit problem.
講演者(所属) 16:30~17:30
宮西吉久氏(大阪大学数理・データ科学教育研究センター)
タイトル Spectral theory of Neumann--Poincar\'e operators
アブストラクト The Neumann--Poincar\’e operator (abbreviated by NP) is a boundary integral operator naturally arising when solving classical boundary value problems using layer potentials. If the boundary of the domain, on which the NP operator is defined, is $C^{1, \alpha}$ smooth, then the NP operator is compact. Thus, the Fredholm integral equation, which appears when solving Dirichlet or Neumann problems, can be solved using the Fredholm index theory. Regarding spectral properties of the NP operator, the spectrum consists of eigenvalues converging to $0$ for $C^{1, \alpha}$ smooth boundaries. Our main purpose here is to deduce eigenvalue asymptotics of the NP operators in three dimensions. This formula is the so-called Weyl's law for eigenvalue problems of NP operators. Then we discuss relationships among the Weyl's law, the Euler characteristic and the Willmore energy on the boundary surface. Finally, some conjectures in spectral geometry of NP operators and applications in electromagnetism will be given as well.
第52回「南大阪応用数学セミナー」
日時 10月12日(土)14時〜17時30分
台風接近のため中止
第51回「南大阪応用数学セミナー」
日時 7月20日(土)14時〜17時30分
場所 大阪市立大学(杉本キャンパス)理学部E棟数学講究室(E408号室)
講演者(所属) 14:00~15:00
後藤田剛氏(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
タイトル Scaling limit of measure-valued vortex solutions for the filtered Euler system
アブストラクト 高レイノルズ数状態の流体運動は非粘性流体方程式の解によって記述できると期待される. 本研究では点渦や渦層などの数学的な理想渦の解析を通した非粘性流体に現れる渦運動の理解に取り組んでいる. 一方で非粘性流体の運動を記述するEuler方程式のそのような理想渦力学の解析には可解性も含めて困難が多い. そこで, Euler方程式に空間的フィルタリングを行うことで導かれる正則化Euler方程式(filtered-Euler方程式)を考え, その理想渦力学の解析やEuler方程式の弱解への収束性を議論することで非粘性流体の渦力学が理解できる可能性がある. 本講演では二次元filtered-Euler方程式について, Radon測度値の渦度に対する時間大域解の一意存在, 特に渦層解のフィルタリングスケール極限における二次元Euler方程式の弱解への収束性を示し, 点渦の自己相似衝突を利用した同極限においてある種の特異性を持つような解の構成について説明する.
講演者(所属) 15:15~16:15
藤原和将氏(東北大学大学院理学研究科)
タイトル 摂動された分数階Laplacianに対する交換関係の評価に就いて
アブストラクト rough metricやポテンシャルによって摂動された1/2階Laplacianに対する、交換関係が二乗可積分空間に於ける有界作用素となた為の条件を考察する. 摂動がない場合、Laplacianの交換関係の評価は分数階Leibniz評価として研究をされてきたが、その解析方法はFourier変換に依存しており、摂動を許容しない. 本講演では、一般のスペクトル解析とフーリエ変換を併用し、摂動された交換関係の有界性を検討する. 猶本講演は、Luigi Forcella氏(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)、Vladimir Georgiev教授(ピサ大学)、 小澤徹教授(早稲田大学)との共同研究に基づく.
講演者(所属) 16:30~17:30
宮本安人氏(東京大学大学院数理科学研究科)
タイトル Stable standing waves of nonlinear Schrodinger equations with potentials and general nonlinearities
アブストラクト L^2拘束条件下における,ある汎関数の最小化問題の達成可能性を考える.汎関数は,遠方で0に漸近する負のポテンシャル項と,純粋冪とは限らない一般の非線形項を持つとする. このとき,ある非負の定数が存在し,L^2ノルムがその定数より大きいとき,最小化問題は達成され,その値より小さいとき,達成されないことを示す.また,1,2次元の場合は,常に達成されることを示す. 証明はLionsのConcentration-compactness原理,最小エネルギーの劣加法性条件,相互作用の精密な評価を用いる.本研究は,生駒典久氏(慶応大学)との共同研究に基づく.
第50回「南大阪応用数学セミナー」
日時 6月8日(土) 14:00 ~ 17:30
場所 大阪府立大学(中百舌鳥キャンパス)A12棟サイエンスホール
交通アクセス:http://www.osakafu-u.ac.jp/info/campus/access/
キャンパスマップ:https://www.osakafu-u.ac.jp/info/campus/nakamozu/
講演者(所属) 14:00~15:00
小野寺 有紹氏(東京工業大学理学院)
タイトル Bernoulli の自由境界問題の双曲型解の葉層構造
アブストラクト Bernoulli の自由境界問題とは円環状領域上の調和函数に関する過剰決定問題であり,一方の境界を固定した上で, 与えられた Dirichlet および Neumann 境界条件の双方をみたす調和函数が存在するためのもう一方の境界の形状を問うものである. 本問題の解(すなわち自由境界)には楕円型および双曲型という異なる二つの解の型が現れ,前者は安定であり後者は不安定である. すなわち,本問題は変分問題として特徴付けることが可能であり,前者は極小点,後者は鞍点として現れる. 先行研究では最大値原理を基礎とする優解劣解法が多く用いられているが,この方法では安定解である楕円型解しか得られない. また,原理的に双曲型解に対しても適用可能である陰函数定理は,その微分喪失構造から Nash-Moser 型定理を用いる必要が生じ複雑な評価が要求されるため, 現在に至るまで陰函数定理による双曲型解の構成は成功していなかった.本講演では微分喪失構造を有する問題へ適用可能な新しい陰函数型定理を証明する. 証明は従来の逐次近似法ではなく,付随する発展方程式を導出し,最大正則性の理論によってそれを解くことを基礎とする. 特に,この方法によって得られる解の族は元の解と同じ正則性をもつ.定理の応用として Bernoulli の自由境界問題の葉層構造をもつ双曲型解の構成を行う. 時間が許せば,Flucher-Rumpf 予想の解決に向けた講演者の試みについても紹介する.
講演者(所属) 15:15~16:15
藤江 健太郎氏(東北大学数理科学連携研究センター)
タイトル 感応性関数をもつ Keller-Segel 系の臨界条件について
アブストラクト ユークリッド空間内の有界領域における感応性関数をもつ Keller-Segel 系の初期値境界値問題について考察する. 対数型の感応性関数をもつ場合の定常問題については,Lin-Ni-Takagi (1988)をはじめとする多くの研究が知られている. 一方で,もとの Keller-Segel 系については,感応性関数の減衰度合いによって爆発解の存在・非存在を分類できると予想されているが, どのような条件が臨界なのかについては未解決である.本講演では,放物型方程式の連立系である Keller-Segel 系を単独の非局所熱方程式の摂動として扱うことにより, 時間大域存在の十分条件を導出する.また,Hu-Yin (1995)の非局所熱方程式についての結果を基に,臨界条件について議論を行う.本講演は仙葉隆先生 (福岡大学)との共同研究に基づく.
講演者(所属) 16:30~17:30
北 直泰氏(熊本大学大学院先端科学研究部)
タイトル 非線形散逸項を含むシュレディンガー方程式の解の最適減衰オーダー
〜 光ファイバー通信の増幅器設置問題に寄せて〜
アブストラクト 非線形 Schrodinger 方程式(NLS)は,光ファイバーを伝わる信号の形状変化を記述している. 本講演では,非線形散逸項を含むNLSの解の減衰オーダーについて考察する.この問題について,10年ほど前に下村氏(東京大学)によって,L^∞ノルムによる解の減衰評価が得られているが, この減衰オーダーが最適なものであること,つまり,それよりも早い減衰を示す解は自明解(u=0)しか無いことを証明する.解の最適な減衰オーダーを特定できると, 光ファイバーの途中に信号増幅器をいくつ設置すれば十分なのか見積もることができる.本講演では数学による結果を光ファイバー工学の応用へと繋げたい.
第49回「南大阪応用数学セミナー」
日時 4月13日(土) 14:00 ~ 17:30
場所 大阪市立大学(杉本キャンパス)理学部E棟数学講究室(E408号室)
講演者(所属) 14:00~15:00
水野 将司氏(日本大学理工学部)
タイトル 結晶成長の数理と結晶方位差, 三重点の関係
アブストラクト Mullins, Herringらは1950年代に結晶粒界の数理を考察し, 曲線短縮流方程式など 数学的に興味深い非線形問題を導いた. 昨今, 曲線短縮流方程式は幾何解析の重要な問題として, 数多くの研究がなされている. とりわけ, 曲線短縮流方程式のネットワーク解は, 結晶粒界の数理と関係が深い. 他方で, 結晶粒界の数理モデリングの観点からみると, 他の状態変数を加えた, マルチスケール問題が考察されている. 本講演では, 結晶粒界エネルギーの消散性と, 結晶粒界が結晶方位の特異性をもたらすこと, 三重点と結晶粒界エネルギーの関係に着目して, 新しい発展方程式を導出する. 次に, 得られた方程式の緩和問題を考え, 可解性や漸近挙動を議論する. 本研究は Yekaterina Epshteyn氏(Utah大学), Chun Liu氏(Illinois工科大学)との共同研究に基づく.
講演者(所属) 15:15~16:15
関 行宏氏(大阪市立大学数学研究所)
タイトル 藤田方程式における臨界指数と解の爆発構造
アブストラクト 冪乗型の非線形項を持つ半線形熱方程式, いわゆる藤田方程式は これまで非常に多くの研究がなされ, 様々な臨界指数の重要性が指摘されてきた. 特に冪が Sobolev の臨界指数を超えると非線形性の度合いが強まり, 球対称解に限定しても可能な解挙動は複雑であることが知られている. 本講演では Joseph--Lundgren 及び Lepin の臨界指数に焦点を当て, 特徴的な爆発解の挙動について議論する. 特に Lepin 指数に対しては 解の可能な爆発構造が空間次元の大きさに依存し, ある次元を境に遷移する. これは第二の臨界現象を示唆しており, 俣野, 溝口両氏により独立に証明された球対称爆発解の分類定理における仮定を 満たさない場合に生じる特徴的結果である. その中でも最も興味深い"二重臨界的"な爆発解の存在とその局所的評価を強調したい.
講演者(所属) 16:30~17:30
長澤 壯之氏(埼玉大学理工学研究科)
タイトル 一般化されたO'Haraエネルギーに対する余弦公式
アブストラクト O'Haraエネルギーは結び目に対して定義される汎関数である. 与えられた結び目型における標準形を決定したいという動機によりO'Haraによって導入された. その中の一つがM\"{o}biusエネルギーで、これはM\"{o}bius変換によって不変である事が名前の由来になっている. その性質はFreedman-He-Wangによって示された。 興味深いのは線素まで含めたエネルギー密度がM\"{o}bius不変ではないにも関わらず、 積分値はM\"{o}bius不変になる点にある. 後に、M\"{o}bius不変なエネルギー密度で書き直せる事が分かり、 書き直された表現はDoyle-Schrammの余弦公式と呼ばれる. 共形角と呼ばれる角の余弦が使われるためである. M\"{o}biusエネルギー以外のO'HaraエネルギーはM\"{o}bius不変でない。 そのため、余弦公式のような書き替えは考えられていなかった。 本講演では、一般化されたO'Haraエネルギーにも余弦公式に相当するものがある事を紹介する. あるO'HaraエネルギーがM\"{o}ius不変でないことは、適当な結び目でM\"{o}bius変換前後のエネルギーを比較すればよい. しかし、それではエネルギー自身がM\"{o}bius不変性からどの程度外れているかが見えない. 紹介する余弦公式はこれを定量的に表現したものである. M\"{o}biusエネルギーはM\"{o}bius不変な3つの部分に分解出来る事が知られている. 一般化されたO'Haraエネルギーにも同様な分解が成り立つ。 余弦公式はこれらと異なる分解を与える。従来知られる分解より解析的に扱いやすいものである.
本セミナー運営には以下の科研費からの支援を受けています。

基盤 (B) 課題番号19136384(代表・高橋太)
若手研究 (B) 課題番号 17K14217 (代表・阿部健)


最終更新日: 2020年1月14日