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<2004年 秋季>
今年の春におこなった「高校校生のための市大授業(春季)」にさらに興味をもってもらえるように秋にも市大授業を企画しました。今回の日程は、11月6日(土)と11月13日(土)で、大学での授業以外に野外実習も新たに加えました。また市大授業のある11月6日(土)には大阪市立大学の大学祭(銀杏祭)も行われています。また秋季では、高校や予備校からのFAXでの一括申込ばかりでなく、個人的申込方法(葉書や電子メール)も採用いたします(10 月25 日より受付開始)。詳細は大阪市立大学理学部ホームページ(http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/)に平成16年9月から掲載致します。また11月13日〔土〕の実習・野外実習では、定員を超えた場合には抽選いたしますが、11月6日(土)の講義では、定員を超えた場合には教室を変更してできるかぎり受講可能と致します。高校生や予備校生の皆さんの参加をお待ちしています。

2004年11月6日(土)<終了しました>
数学科:午後1時30分〜午後3時(定員100名)
数学科教授 釜江哲朗
確率の考え方と計算
確率の問題を解くには,確率の計算の出発点となるる確率空間,すなわち基本となる事象の全体とその上の確率を題意から正しくとらえることからはじめねばなりません.たとえば,さいころを2つ投げるといったときには,2つのさいころの目の組36個のおのおのが確率1/36の基本事象となります.したがって,目の和が6となる確率は36個の基本事象のうちこれを満たす5個の組(1,5)(2,4)(3,3)(4,2)(5,1)の確率の和として5/36と求まります.問題によっては基本事象の取り方がいろいろあり,基本事象をうまく取ることによって問題が簡単に解ける場合があります.たとえば,コインを3個投げ,表を向いたものはそのままにして裏を向いたものはもう1度投げ,再び表を向いたものはそのままにして裏を向いたものはもう1度投げる.これを3回繰り返したのち,裏を向いたコインが1個ある確率を求めよという問題を考えましょう.このとき,3個のコインそれぞれについて3回の試行の結果(表裏)を記述したもののを基本事象と考えます.実際には1度表を向けばそのコインはもう投げられませんが,あえてその後の試行を考慮したものを基本事象とするのです.基本事象の総数は29でそのおのおのがの確率を持ちます.1つのコインについて最終的に,裏を向いている確率はこの記述が裏裏裏となるであり,表を向いている確率はとなるので,最終的に裏を向いたコインが1個ある確率と求まります.このように,何を基本事象と考え確率をどう計算すればよいかを実例をもとに話します.

<プロフィール>
釜江哲朗(かまえ・てつろう)
1941 年大阪府に生まれる
1965 年東京大学理学部化学科卒
1967 年東京大学大学院修士課程数学専攻修了
統計数理研究所研究員,大阪大学基礎工学部助手,大阪市立大学理学部講師,同助教を経て
1985 年大阪市立大学理学部教授(現職)
1999 年放送大学客員教授(現職)
専攻:エルゴード理論

化学科:午後1時30分〜午後3時(定員100名)
化学科教授 岡田恵次
化学のエッセンス:構造式を見て考える
化学を理解するために、構造式を正しく書くことは大変重要である。
このことは、最外殻の電子数(価電子数)を知っていれば難しいことではない。いくつかの例をとり化学式を正しく書く練習を行う。次いで電気陰性度について解説し、結合の共有結合性とイオン性について考える。電子対の性質や役割について考える。さらに、簡単な無機化合物や有機化合物の形や反応について学習する。これらの例はいずれも高校の教科書の範囲内であり、講義においてもそれらを基本とするが、より普遍的な内容のもの(「構造式の書き方」では電子欠損系の化学種やベタイン構造、電子対の非局在化、共鳴構造を取り上げる、「電気陰性度」では、共有結合性とイオン結合性を化学結合論から考える、「化合物の形」では、電子対の、構造に及ぼす影響、について考える、「有機化合物の性質と反応」では、いくつかの反応を例にとり、そのドライビングフォースをミクロスコピックに考える)も取り上げ、高校の基本事項との関係について理解を深める。

<プロフィール>
職歴:大阪大学助手、助教授を経て、大阪市立大学大学院理学研究科教授
学歴:群馬大学工学部合成化学科卒業、東北大学大学院理学研究科化学専攻修了(理学博士)
専門:物性有機化学

物理学科:午後3時10分〜午後4時40分(定員100名)
物理学科教授 坪田 誠
大学の物理学科では何を学ぶのか
高校で学ぶ物理学のほとんどは,19世紀以前の物理学である.物理学は20世紀になって,相対性理論および量子力学という,人類の知の大転換ともいうべき二大理論を生み,爆発的な発展を遂げるにいたった.相対性理論は我々の時間および空間に対する認識を根本から変えた.量子力学は,原子,原子核などのミクロな世界が高校で習うニュートン力学とは異なる物理法則で支配されていることを明らかにするとともに,金属,半導体,超伝導,レーザ,ナノテクノロジーなどの,最先端技術を支える物理現象の理解を可能にする.ここでは,このような現代物理学を紹介して大学での物理の学習がどのように進められるかを述べるとともに,超伝導の模擬実験を示し極低温の世界を体験していただく.

<プロフィール>
職歴: 高知大学農学部助手,東北大学流体科学研究所助教授,大阪市立大学理学部助教授を経て,同大学大学院理学研究科教授
学歴: 京都大学大学院理学研究科(物理学第一専攻)修了,理学博士
専門分野: 低温物性理論
生物学科:午後3時10分〜午後4時40分(定員100名)
生物学科助教授 宮田真人
肺炎病原菌のマイコプラズマは、未知の分子メカニズムで気管上皮を滑走する
マイコプラズマは、ヒト肺炎などを起こす病原性の細菌(=バクテリア、ばい菌)です。単一の細胞からなる体の片方の端に突起を形成し、その突起でヒトや動物の組織にはりついて、はりついたまま動く“滑走運動”を行います。これまで生物学では様々なタイプの生体運動が研究され、それらが分子レベルではたった数個のメカニズムに帰着することが知られて来ました。ところが私たちの最近の研究で、マイコプラズマ滑走運動の分子メカニズムが、これまで人類が調べてきたどんなタイプの生体運動とも本質的に異なることが明らかになってきました。本講義ではこの現象をひとつの例に用いて、現代の生物学がどの様にして未知の現象を解明していくのか解説します。

<プロフィール>
職歴:1988 年、大阪市大理学部生物助手、講師を経て1999 年より助教授。
2003 年より科学技術振興機構さきがけ研究者を兼職。
1997 年ウィーン獣医大学・訪問科学者。
2000-2001 年、ハーバード大学・訪問学者。
学歴:1983 年、大阪大学理学部卒。1988 年、同大学院修了、理博。
専門分野:生物物理学、細菌細胞生物学。


11月13日(土)<終了しました>
物質科学科:午後1時30分〜午後3時(定員50名)
物質科学科教授 飯尾英夫
植物の多様性―分子からみた生命現象―
さまざまな生命現象とそれに関与している鍵物質(分子)を次の視点から紹介します。
・生命現象を担う物質の「かたち」をきめる:ごく微量しか含まれていない鍵物質をいかにして純粋に抽出し、その化学構造を決定するかについて、その基礎的なことがらをいくつかの実例を交えながら解説します。
・生命現象を担う物質の「はたらき」とは:ごく微量の鍵物質が関与している生物現象の仕組みについて、ホタルやホタルイカなどの生物発光を例に取り上げ解説します。
また、簡単な実験を行います。「ホタルの光を再現してみよう」と題して、生物発光にみられるルシフェリン-ルシフェラーゼ反応に類比したルミノール発光を試験管内で再現します。市販のケミカルライト(ペンライト)に応用されている過シュウ酸エステルの化学発光の実験を皆さんに体験していただこうと思っています。
(さらに詳しい内容)私たちが対象としている物質を物理、化学、そして時には、生物といった、いわゆる縦割りの学問体系でとらえ理解して行くには限界が生じる場合があります。それゆえ、既存の枠を超えた物質科学という新しい切り口が必要となってきています。物質科学とは、文字通りにいうならば、物質、すなわち、「もの」を科学的に研究する学問であり、1)物質の性質を明らかにし、2)それをもとに新しい性質や機能を有する物質を創り出すためには何が必要かを考え、そして、3)新しい性質や機能を有する物質づくりへと展開していくことの3項目が主要な要素としてあげられるでしょう。
ところで、人類は古くから動植物、微生物や海洋生物がそれらの生体内で生産する有機化合物(おもに炭素原子からできた骨組みを持つ物質)を飲・食物のみならず、薬、毒、香料や染料などとして利用してきました。これらの有機化合物には、いずれの生物にも共通して見いだされる化合物もあれば、生物の種や属の違いによって異なる化合物もあります。進化のプロセスの中で、ある生物が外部環境に適応するために、その生物固有の化合物を作り出すことを身につけたからだと考えられます。このような生物固有の化合物は、生体内にわずかしか含まれないことが多く、その生物が生長していくある特定の時期だけに生産されて生体反応を制御する物質として、他の生物を 攻撃する時、あるいは、他の生物から自己を守る時に毒物質として、生物間で情報を相互に伝達するための物質として、働いていることが分かってきました。
それぞれの生物が固有に作りだし、生体内や生物間である機能を担っている物質は、一般には試料の入手が困難なうえ、その含量も微量で不安定であるため、いろいろな生物現象の仕組みについてこれまでよく分かっていないものが多くありました。しかし、単離精製技術の向上や、NMR、質量分析などの構造解析法の進歩により、ごく微量で作用している鍵物質の実体を明らかにし、それらの物質が関与している生物現象の仕組みについていくつかの知見が得られるようになってきました。たとえば、わが国が誇る発光生物としてのホタルイカを見てみましょう。ホタルイカには腕先にある3 対の大型の腕発光器や、胴部などに千個前後の小さな皮膚発光器があります。
発光することによって、体の影を隠したり、外敵を威嚇・眩惑したり、オスメスを識したり、エサをひき寄せたりしていると考えられています。ホタルイカの発光を有機化学的に説明すると、発光物質ホタルイカルシフェリンが発光酵素ホタルイカルシフェラーゼによって酸化される化学反応で生じる光で、熱を伴わない冷光です。夏の夜を彩るホタルのルシフェリン―ルシフェラーゼ反応では、生体の高エネルギー物質ATP(アデノシン三リン酸)やマグネシウムイオンも必要です。
この授業では、生命現象を担う物質の「かたち」をきめる:ごく微量しか含まれていない鍵物質をいかにして純粋に抽出し、その化学構造を決定するかについて、その基礎的なことがらをいくつかの実例を交えながら解説します。生命現象を担う物質の「はたらき」とは:ごく微量の鍵物質が関与している生物現象の仕組みについて、ホタルやホタルイカなどの生物発光を例に取り上げ解説します。
さまざまな生命現象とそれに関与している鍵物質を紹介しながら、その機能についてお話ししていきたいと思っています。また、簡単な実験を行います。「ホタルの光を再現してみよう」と題して、生物発光にみられるルシフェリン-ルシフェラーゼ反応に類比したルミノール発光を試験管内で再現してみたり、市販のケミカルライト(ペンライト)に応用されている過シュウ酸エステルの化学発光(シュウ酸誘導体に過酸化水素水を加えると酸化反応により過酸化物ができます。この酸化反応によって生じた活性中間体から、蛍光物質にエネルギーが移り、その蛍光物質が発光します。使用する蛍光物質の種類により青、赤、緑、黄などいろいろな色になります。)の実験を皆さんに体験していただこうと思っています。

<プロフィール>
職歴:大阪市立大学理学部助手、助教授を経て、同大学大学院理学研究科教授
学歴:名古屋大学大学院理学研究科農学博士
専門分野:天然物有機化学、有機合成化学

地球学科:午後1時30分〜午後4時40分(定員20名)
地球学科助教授  三田村 宗樹(地球学科助教授)
六甲山地と大阪盆地の生い立ちをさぐる
兵庫県南部地震からすでに10 年が経過しようとしています.この地震は六甲山の麓の断層が動いて発生しました.私たちはこの地震をつうじて地殻変動の一端を経験したわけです.同じようなことは,過去にも幾度と繰り返され,現在の大阪盆地や六甲山が形成されてきました.この講義では,六甲山麓に赴き,現地で見られる地層や岩石を通じて,そのおいたちを考えてみようと思います. 現地を散策しながら,道ばたに露出する六甲山地や甲山をつくる岩石,それを覆う第四紀層やそこに含まれる植物化石などを観察するほか,地震時に発生した地すべり災害の跡地も見学します.普段見慣れている風景,目線をかえて見つめるといろいろと興味深いものが見えてきます.

<プロフィール>
職歴:川崎地質株式会社,大阪市立大学理学部助手,講師を経て同理学研究科助教授
学歴:大阪市立大学大学院理学研究科地質学専攻修了
専門分野:第四紀地質学,都市地質学