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<2005年 秋季>
2004年におこなった「高校生のための市大授業(春季)・高校生のための市大授業(秋季)」と同様、2005年も市大授業を企画しました。今回の日程は、11月5日(土)です。また市大授業のある11月5日(土)には大阪市立大学の大学祭も行われています。今回も、高校や予備校からのFAXでの一括申込ばかりでなく、個人的申込方法(葉書や電子メール)も採用いたします。詳細は大阪市立大学理学部ホームページ(http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/)に平成17年9月から掲載致します。定員を超えた場合には教室を変更してできるかぎり受講可能と致します。高校生や予備校生の皆さんの参加をお待ちしています。

2005年11月 5日(土) <終了しました>
物理学科:午後1時30分〜午後3時(定員100名、講義)
物理学科教授 櫻木弘之
元素のふるさとは宇宙
「元素がわかれば宇宙もわかる!」
 私たちの世界は100種類余りの元素でできています。その元素の種類を決めているのは、実は、原子の中心にある小さな原子核です。私たちの住む地球や私たち体を作っているいろいろな元素。そのもとである原子核の性質や起源を探っていくと、やがて、広大な宇宙へとたどり着きます。
 そこでは、宇宙開闢のビッグバンから始まり、星の形成と超新星爆発、それを何度も繰り返して今日に至るまでの、私たちの想像を絶する壮大なドラマがあったことが最近までの研究で次第に明らかになってきました。そして、このドラマはまだ終わっていません。今も、これからも続いていくでしょう。
 この講義では、元素や原子核とは何か、ということから始めて、これまでに明らかになってきた「宇宙における元素合成」の壮大なシナリオを紹介します。なかでも、宇宙の進化のある時期に生まれ、そして姿を消していった多くの「幻の原子核」、それらを人工的に作り出して性質を調べ、宇宙の歴史をひも解いていこうという試みについて、最先端の研究成果を交えながらお話します。

<プロフィール>
職歴:東京大学原子核研究所研究員、大阪市立大学理学部助手、同大学講師、助教授を経て、大阪市立大学大学院理学研究科教授
学歴:九州大学理学部物理学科卒業、九州大学大学院理学研究科物理学専攻修了(理学博士)
専門分野:原子核物理学(理論)

化学科:午後1時30分〜午後3時(定員100名、講義)
化学科教授 神谷信夫
生命のナノマシーン−タンパク質の形と働き−
30年前のSF映画「ミクロの決死圏」では,人間が運転する潜航艇をナノメートルの大きさに縮小し,患者の血管に注射して病巣まで到達させ,それを人間が取り除くことになっていました.ヒトや潜航艇をかたち造っている原子を10億分の1まで縮小することは不可能ですが,この映画で描かれた人体内の様子,すなわち多くのタンパク質分子が精巧なナノマシーンとして働いて生命活動を営んでいるという描写は,現在でも通用する斬新なものでした.タンパク質は小さなものでも数千個,巨大な複合体になると数十万個から数千万個にも及ぶ原子からなり,我々ヒトをはじめ,あらゆる生命が営む生命活動の主役です.
 生命を考える際には,(1)外から栄養源を摂取する,あるいは自分で造り出すことで自身を「維持」する,(2)「遺伝」により子孫を増やして種の繁栄をはかる,という2点が重要です.
 まず(1)について.動物が摂取する栄養の源は「光合成」にあります.植物や藻類が太陽光のエネルギーを利用して二酸化炭素から炭水化物を作り出し,同時に我々にとって不可欠な酸素を生み出す過程には,多数のタンパク質およびその複合体がナノマシーンとして働いています.一方,取り込まれた栄養源をさらに加工して,生命に活力を与えたり身体づくりの材料を提供するのは,多種多様な生命化学反応を効率よく進めるタンパク質,すなわち「酵素」の働きです.酵素の引き起こす化学反応は試験管内でも再現できますが,酵素分子がその形を変化させるにつれて化合物が変化する過程を目の当たりにすると,そこには生命の神秘が垣間見えるかもしれません.
 最後に(2)について.我々の遺伝子はタンパク質を作り出す情報を記録しており,その数はたかだか3万個ということが最近明らかになりました.一方,現在の地球人工は60億人を越えると言われていますが,その中には一人としてまったく同じヒトはありません.「遺伝」現象には,有限の情報からほとんど無限の多様性を生み出す仕組みがあることになりますが,そういった多様性を生み出しているのもナノマシーンとして働くある種のタンパク質であることが知られています.
 本講義ではいくつかのタンパク質を取り上げ,それぞれがどういった形を持ち,その形と働きの関係や,多数のタンパク質がくっついて複雑な生命反応を担う例を紹介して,現在の生命科学の興奮を伝えたいと思います.

<プロフィール>
職歴:理化学研究所の研究員,副主任研究員,室長を経て,大阪市立大学大学院理学研究科教授
学歴:名古屋大学大学院理学研究科化学専攻博士課程(理学博士)

生物学科:午後1時30分〜午後3時(定員100名、講義)
生物学科教授 保尊隆享
植物は生きている
植物は自由に動き回ることはありません。進化の過程で自分で栄養を作り出す能力を獲得したため、植物はエサを求めて移動する機構を持ちませんでした。このように移動できないと困る点が一つあります。それは、周囲の環境が悪化した時に逃げられないことです。そこで植物は、環境のシグナルを敏感にキャッチし、それに効率よく反応するしくみを発達させました。さて、いっけん動きのない植物をよく観察すると、植物が柔軟に大きさや形を変え、またダイナミックに運動していることに気づきます。これらの変化や運動は、環境に対する植物の反応として理解できます。
 植物のまわりには、光や重力、温度、水分、物理的な力や物質群、そして他の生物など、その一生や活動に大きな影響を与える様々な環境シグナルが存在します。植物はどのようにしてこれらのシグナルを捉え、またそれに反応するのでしょうか。私は、特に重力シグナルに対する植物の反応に興味を持ち、そのしくみを調べてきました。その過程で、無重力環境である宇宙での実験を行いました(スペースシャトルSTS-95)。この講義では、宇宙実験の体験や成果も交えて、植物の生き様のおもしろさ、そしてそれを研究することの楽しさをお伝えします。

<プロフィール>
職歴:大阪教育大学助手、大阪市立大学理学部助手、助教授を経て、大阪市立大学大学院理学研究科教授
学歴:東北大学理学部生物学科卒業、東北大学大学院理学研究科博士後期課程退学(理学博士)
専門分野:植物生理学

数学科:午後3時15分〜午後4時45分(定員100名、講義)
数学科助教授 橋本義武
非ユークリッド幾何
神秘から図形へ
 天文学と幾何学とは世界最古の科学であり,古来他の諸学の模範となる永劫不変の真理とされてきた.(なぜか?)
 近代に入ると未曾有の革命が天文学を襲う.地動説である.しかしその結果もたらされたのは混沌(カオス)ではなく,ニュートンの力学という,より強固な秩序(コスモス)であった.彼およびその先駆者たちは,天文学という上からの光を失っても,内なる幾何学の精神をもって暗闇を一歩一歩手探りで進むことができたのだった.
 ニュートンは,たとえば惑星の楕円軌道の法則が,微分方程式という,より高次の法則性にさらなる根拠をもつことを明らかにした.この高次の法則性のもとでは,天体もリンゴも対等な存在である.
「あの月を取ってくれろと泣く子かな」(一茶).
天体は,手のとどかぬ神秘から,子どもが気ままに地面に絵を描くように(お絵描きの好きな子どもが好きなのは絵なのではない,描くときに彼または彼女が手にしている自由だ),その過去・現在・未来を手中におさめることのできる「図形」へと姿を変えた.こうして天文学と幾何学は統一されたのである.
図形から神秘へ
 一方,幾何学はどうだったか.ユークリッド「原論」(紀元前3世紀ころ)は,5つの公準から厳密な演繹により幾何のもろもろの定理を証明していく,というスタイルで書かれている.そこにおいて証明された命題は,世のいかなる真実よりも真実なものであった.
 ところが,その完璧と考えられていたユークリッド幾何にも,古来より2つの問題点が指摘されていた.1つは「第5公準(平行線の公理)」,もう1つは「三大作図問題」である.
 19世紀に入って,前者は「非ユークリッド幾何」,後者は「ガロワ理論」という,言わば予想外の結末をむかえる.このうち「非ユークリッド幾何」が今回の授業の主題である.その後両者は「群」の概念を通して複雑に絡みあい,問いが問いを生んで21世紀初頭の現在にいたるのであるが,それについては別の語り部にゆだねることとしよう.
今回の話について
 非ユークリッド幾何とは,3角形の内角の和が180度ではない幾何,曲がった空間の幾何である.
 今回はまず,球面上の図形の幾何を紹介する.その場合に,直線とは?3角形とは?長さ・角とは?合同とは?三平方の定理・余弦定理・正弦定理などはどう変わるか?などを見ていこうと思う.(なお,これは本来の非ユークリッド幾何ではない.平行線の公理以外にもユークリッド幾何と異なる点があるからだ.)
 その後で,本来の非ユークリッド幾何である双曲幾何についても触れたい.

<プロフィール>
職歴:大阪市立大学理学部助手,講師を経て,現在大阪市立大学大学院理学研究科助教授
学歴:東京大学理学部数学科卒業,東京大学大学院理学研究科修士課程,博士課程修了(理学博士)
専門分野:ゲージ理論

物質科学科:午後3時15分〜午後4時45分(定員100名、講義)
物質科学科教授 小栗 章
音の波から物質波まで:答えは"波"にゆられて
水面に広がる波紋。音。光。X線。電子。ミクロな世界の物質波。超伝導の凝縮体・・・。自然界のさまざまな現象は“波”として捉えられます。
 異なる現象にあらわれる波の性質の多くは、実は波動方程式といわれるひとつの方程式に基づいて理解されることが分かっています。アインシュタインが予言した重力波でさえ、さざ波のような場合には、この方程式にしたがいます。この授業では、コンピュータのもつ計算、グラフィック、アニメーション、オーディオの機能を用いて、方程式から導かれる波を"実演"します。また、みじかな音楽を例として、さまざまな音の合成(シンセサイズ)とその科学について解説します。

<プロフィール>
職歴:名古屋大学工学部助手、大阪市立大学理学部講師、助教授を経て、同大学院理学研究科教授
学歴:北海道大学工学部電子工学科卒業、名古屋大学大学院理学研究科物理学専攻修了、理学博士
専門分野:物性理論 (凝縮系の磁性,超伝導などに関する理論)

地球学科:午後3時15分〜午後4時45分(定員100名、講義)
地球学科助教授 益田晴恵
生命のゆりかご・大地のゆりかご−海洋底から見た地球と生命−
地球表面の地形高度の分布には2つのピークがあります。一つは陸地部分で、平均高度は約840mです。また,もう一つは深海底で海洋の平均深度は約3800mです。固体地球の表層部を地殻と言いますが、それら二つは大陸地殻と海洋地殻と名付けられています。それぞれに異なった特徴的な岩石からできています。
 マリアナ諸島は、世界最深のマリアナ海溝で沈み込む太平洋プレートの影響を受けて起こる火成作用で形成された島弧(弧状列島)です。また、西側にあるマリアナトラフ周辺では、海洋地殻を形成する火成作用も同時に起こっています。この海洋地殻の部分は背弧海盆と呼ばれています。日本海も今は活動が止まっていますが,同じメカニズムで作られた背弧海盆です。私は大勢の仲間たちとグアム島西側(フィリピン海の東端)のマリアナトラフ海域の地殻の分化に関わる物質循環の研究を行ってきました。ここでは狭い海域に陸地と海洋を形成する代表的な海底火山活動が確認されており、地殻の分化過程を現在進行形で観察できる貴重なフィールドです。
 陸上の火山地帯の周辺には温泉が湧いていますが、海底火山の周辺でもたくさんの温泉が見られます。海底熱水系と言います。地球に海ができた頃には海底熱水系は海底のいたるところにあったと考えられており、生命が発生したのはこのような場所ではないかと考える研究者もいます。古いタイプの微生物の存在も知られており、進化のゆりかごである可能性は高いと考えられています。現在の海底熱水系には深海底にあっては特別に豊かな生態系が広がっています。私たちの調査海域では熱水系のもたらす大量の化学物質を栄養源とする、古いタイプに分類される微生物も多種類発見されています。
 この講演では、船上作業や潜水艇で撮影された深海底のビデオ映像とともに研究成果を紹介します。地球と生命にとっての海の重要性を一緒に考えましょう。フィールド科学の面白さも知って欲しいと思います。

<プロフィール>
職歴:日本学術振興会特別研究員、大阪市立大学理学部助手を経て現職
学歴:大阪市立大学理学部卒業、大阪市立大学大学院理学研究科後期博士課程修了、理学博士
専門分野:無機地球化学(主として水−岩石相互作用)