私が理学部数学科に入って感じた,
高校までとの違いについて述べようと思います。
予め断っておくと,数学という学問に高校数学・大学数学なる別が
本質的に存在するわけではありません。
しかし高校までと大学以降とで何に主眼を置いて
数学と向き合うかが異なるのは事実です
(大学では学部学科によってもスタンスが異なります)。
高校では学習指導要領にもある通り,
数学教育を通じて数学の知識のみならず論理力や
それを基にした思慮深い市民性の獲得を目指しているようです。
一方理学部数学科では,勿論これらの目的を軽んじるわけではありませんが,
数学そのものの探究に主軸が置かれます。
数学科に入ると最初に集合論を学ぶことになります。
私見ですがこれは数学科の醍醐味の一つだと思います。
集合自体は数学Tにも登場しますが,
高校で集合を明確に意識することは少ないでしょう。
一方現代の数学では,集合が全ての土台を成していると言っても過言ではありません。
今はまだ想像しがたいかもしれませんが,
数学は様々な概念を抽象化するごとに冴え渡り,壮観な光景が広がり行くのです。
とは言え私が見て来た数学の世界など高が知れているでしょう。
是非あなた自身の目で観ていただきたいと思います。
平坦な道程ではありませんが,励まし刺激し合える学友が居て,
指南してくださる先生が居て,先人の知恵が蓄積された図書館があります。
数学や人生について悩み,考え抜くのもまた輝かしい青春のその一つだと思います。
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数学科で学ぶ数学についてとこの大学の数学科の特徴、
それから数学科の大学生活の3点について述べていきます。
少しでも読んでいる方の役に立てればと思います。
まずは数学について。中高で扱ってきた数学はあくまでも“一例”にすぎません。
例えば、「関数」と聞けばxとyの実数同士の対応だと認識するでしょうが、
それが実数である必要はどこにあるのでしょうか。
“なにか”から“別のなにか”への対応もまた関数となりうります(写像ともいいます)。
高校まで学んだことを踏まえてさらに大きく拡張するのが大学数学です。
次に本学の数学科の特徴について。
理学部数学科は少人数制となっており学生間の関係性が密となり常に協力関係にあります
(少なくとも私の同期はそうです)。
わからないことがあればお互いに聞きあい、
また少人数ゆえに先生に質問しやすいです。
先生たちはみんな優しく、いつでも丁寧に解説してくださります。
授業中やその前後、メールで質問することもあるでしょう。
数学を学ぶ環境としてはこの上ないと断言します。
最後に大学生活について。3回生までは数学知識を蓄える期間で、
4回生になったらゼミに配属し興味のある分野や得意ジャンルを突き詰めていきます。
それゆえ3回生までの間は自分の興味がどこにあるのかを見極める期間ともいえるでしょう。
だからこそどの授業も手が抜けなくて辛く、でも同時に楽しいです。
数学が好きであればきっと乗り越えられるでしょう。
数学が好きであるならば、ぜひ数学科に入りましょう。
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私は塾の専任講師に一時在籍した後、大阪市立大学には博士後期課程で入学しました。
そして数学の研究を通して様々なことを学びました。
その中でも「自分のイメージを数式に書き起こす力」と
「結果を簡潔にまとめる力」については、
高校生に向けた授業や教材づくりとは異なる点が多々あり新鮮に感じられました。
研究は常に手探りのところから始まるため、研究によって得られる結果や手法は、
異なる分野では類似の結果や手法はあれども基本的には全く新しいものになります。
そのため、研究においては自分が思いついたもの・イメージしたものを
数式で表現することはとても重要になります。
それも数式に書き起こす際には、
他者にとって分かりやすく感じられるよう簡潔にまとめる必要があります。
特に論文作成の段階で簡潔にこれらの重要性を強く感じました。
こうして学位論文の作成までたどりつくことができたのは、
支えて下さった方々と指導教員の熱心な指導あってのものだと考えています。
気づけばあっという間でしたが、
同時に、多くの学びを得ることができたとても充実した期間でもありました。
博士後期課程への進学は私にとって大きな決断ではありましたが、
現在ではそれに見合う以上の学びを大阪市立大学で得ることができたと感じております。
◆学位論文公聴会
後期博士課程(主として3年次)の大学院生などによる学位論文公聴会が不定期に行われます。
2021年度は2022年2月3日(木)に行われました。
上の写真はそのときのものです。
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