集中講義(2021年度)

科目名 幾何構造論特別講義 I・II
日程 10月25日(月)~10月29日(金)
談話会:10月27日(水) 17:00~18:00)
講演者(所属) 入江 博(茨城大学)
タイトル symplectic多様体のHofer-Zehnder容量とその周辺
場所 数学大講究室 (E408)
講義内容

symplectic構造について、トピックを選んで入門的な解説を行う。 多様体のsymplectic構造は、局所的にはDarbouxの定理によって標準的なものと同じである。 一方で、その大域的な構造が明らかになってきたのは比較的最近のことである。 1985年のGromovの仕事以降、非線形解析の進歩や理論物理学からの影響も相俟って、 symplectic多様体の不変量は様々なものが構成されている。 本講義では、symplectic幾何の基礎事項とともに大域symplectic不変量の一つであるsymplectic容量、 特に、Hamilton系の周期解を用いて定義されるHofer-Zehnder容量(1990年)について解説する。 時間の関係で深い解析学の知識を使う部分は概説にとどめるが、 全体としてsymplectic構造に関する予備知識なしで理解できるようにお話ししたい。 最終日には、Hofer-Zehnder容量に関する(逆向きの)等周不等式であるViterbo予想と 凸幾何の古典的未解決問題であるMahler予想との関連など最近の話題についても紹介する。

  • 1日目:symplecticベクトル空間
  • 2日目:Darbouxの定理とMoserの定理
  • 3日目:symplectic容量(Hofer-Zehnder容量)とGromovのnon-squeezing定理
  • 4日目:Hamilton系の周期解の存在とHofer-Zehnder容量の非自明性
  • 5日目:symplectic容量に関するViterbo予想と凸体のMahler予想
科目名 代数構造論特別講義 I・II
日程 11月29日(月)~12月3日(金)
談話会:12月1日(水) 17:00~18:00)
講演者(所属) 落合 理(大阪大学)
タイトル モチーフの円分p進L関数について
場所 数学大講究室 (E408)
講義内容

 代数体上のさまざまなモチーフやガロワ表現に対するL関数は整数論における興味の中心である。 本講義ではそのようなL関数のp進類似であるp進L関数について論じたい。
 Dirichlet L関数のp進類似である久保田-Leopoldt p進L関数の発見の後に、 楕円曲線や楕円モジュラー形式をはじめとして幾らかの場合にもp進L関数が構成されているが、 高次元のモチーフでの構成例は未だ多くない。 また、高次元においてはモチーフがpでordinaryであるかそうでないかによって、 そのp進L関数に関係する状況は少し異なっていることにも注意したい。
 本講義では、non-ordinaryな場合も込めて、 p進L関数が定義されるべきp進測度の空間の基本事項について なるべく多くの時間を割いて説明したい。 その上でp進L関数を構成するには具体的にどのような手続きやステップが必要なのか?  p進L関数の存在予想はどのように定式化されているか? についてなるべく丁寧に説明したい。 また、講義の後半ではその一般論を理解するために、 特に楕円モジュラー形式のp進L関数の場合にAmice--VeluやVishikらによって構成された p進L関数のkey pointをしっかり確認したい。 より一般の場合の高次元のモチーフに対するp進L関数の構成の現状などについては、 講義の折々に講演者に理解する範囲で関連する問題点について触れていきたい。

  • 1日目:モチーフのHasse--Weil L関数とその特殊値について
  • 2日目:p進的な空間上の関数や測度
  • 3日目:p進的な空間上の関数や測度(続き)
  • 4日目:モチーフのp進L関数の存在予想
  • 5日目:楕円モジュラー形式の円分p進L関数と先の展望
科目名 解析学特別講義 I・II
日程 12月6日(月)~12月10日(金)
談話会:12月8日(水) 17:00~18:00)
講演者(所属) 若杉 勇太(広島大学)
タイトル 非線形消散型波動方程式の初期値問題の時間大域解
場所 数学大講究室 (E408)
講義内容

非線形消散型波動方程式の初期値問題の時間大域解について講義する。 一般に非線形発展方程式の時間大域解の存在を示すとき、 解が有限時間で爆発しないことを保証するアプリオリ評価を得ることが重要となる。 本講義では、非線形消散型波動方程式に対してアプリオリ評価を示す手法として、 Fourier変換により線形問題の解の減衰評価を求め、 それを非線形問題に応用する Matsumura (1976) による減衰評価法と、 適当な重み関数を付けたエネルギーを考え、部分積分により エネルギーの有界性を示す Todorova--Yordanov (2001) によるエネルギー法 の2種類の方法を解説する。 時間が許せば、これらの手法の精密化や最近の進展についても紹介したい。

  • 1日目:準備、Fourier変換による線形消散型波動方程式の解法
  • 2日目:(減衰評価法I) Fourier変換による線形問題の解の減衰評価
  • 3日目:(減衰評価法II) 非線形問題の時間大域解の存在
  • 4日目:(エネルギー法I) 重み付きエネルギー法による非線形問題の時間大域解の存在
  • 5日目:(エネルギー法II) 重み関数の改良と最近の進展