集中講義(2020年度)

科目名 幾何構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 10月19日(月)~10月23日(金)
講演者(所属) 宮澤 康行(山口大学)
タイトル 多項式不変量に焦点を当てたknotoid理論
場所 Zoom
講義内容

Turaevにより導入された結び目に密接に関係する knotoidについて分類問題へのアプローチを中心に講義する。 特に,問題解決に有用な多項式不変量の基本的事項について 最近の研究結果も交えて解説する。

科目名 解析学特別講義 III・IV
日程 10月26日(月)~10月30日(金)
談話会:10月28日(水) 17:00~18:00)
講演者(所属) 太田 雅人(東京理科大学)
タイトル 非線形シュレディンガー方程式の基底状態の安定性
場所 数学大講究室 (E408)
講義内容

非線形シュレディンガー方程式の特殊解である定在波の安定性について講義する。 特に、基底状態の変分的特徴付けと線形化作用素の性質を用いた Weinstein 及び Grillakis-Shatah-Strauss による古典的な方法について、 必要となる解析学の基礎知識についても説明しながら、 なるべく丁寧に解説したい。

  • 1日目:非線形シュレディンガー方程式の概説:対称性と保存則
  • 2日目:エネルギー汎関数の微分と線形化作用素
  • 3日目:基底状態の存在と変分的特徴付け
  • 4日目:制約条件付き最小化問題と線形化作用素の正値性
  • 5日目:Grillakis-Shatah-Strauss の方法による安定性の証明
科目名 代数構造論特別講義 III・IV
日程 11月4日(水)~11月10日(火)(土日を除く、毎日12:50~15:10)
講演者(所属) 藏野 和彦(明治大学)
タイトル シンボリックリース環と多重切断環の可換環論
場所 Zoom
講義内容

イデアルのシンボリック冪は、ヒルベルトの第14問題との関係、クロネッカーの問題や Eisenbud-Mazur 予想との関係、組み合わせ論に関連したイデアルの研究など、可換環論の多方面から研究されている。シンボリック冪のリース環(シンボリックリース環)はネーター環になるとは限らないが、そのことがシンボリック冪の研究を困難にしている。シンボリックリース環は代数多様体の Cox 環あるいは多重切断環と一致することが多く(それは Demazure 構成によって説明できる)、したがってその有限生成性は双有理幾何にとっても非常に重要な問題になる。この講義では、主としてスペースモノミアル曲線の定義イデアルのシンボリックリース環の有限生成性を扱う。Z^n-次数付き環の"環の形の全容"を見るために、Z^n-次数付き環の GKZ-分解から始める。シンボリックリース環と多重切断環の関係を説明し、Huneke の判定法を一般化して述べ、その幾何学的意味を与える。それを用いながら、スペースモノミアル曲線の定義イデアルのシンボリックリース環の有限生成性に関して議論する。negative curve の存在性と永田予想の関係に関して述べ、r-nct(トーリック曲面の一点ブローアップの negative curve になりうるローラン多項式)を定義して、その性質を調べる。

5日間それぞれの内容:

  • 一日目:イントロ、Gelfand-Kapranov-Zelevinsky 分解、一変数の Demazure 構成
  • 二日目:シンボリックリース環と多重切断環の関係、Huneke の判定法
  • 三日目:スペースモノミアル曲線のシンボリックリース環
  • 四日目:r-nct(トーリック曲面の一点ブローアップの negative curve になりうるローラン多項式)の定義と基本性質
  • 五日目:GKZ分解と双有理幾何との関係、多変数 Demazure 構成

(講義の進行状況によっては、5日目の内容は割愛する可能性があります。)

連絡先:橋本光靖

集中講義(2019年度)

科目名 解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 9月24日(火)~9月27日(金)
談話会:9月25日(水) 17:00~18:00)
講演者(所属) 上田 哲生(京都大学)
タイトル 多変数複素力学系入門
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容

多変数正則写像の力学系について基本的な事柄を講義する.特に次の話題について概説する.

  • (1) 正則写像の不動点.特に吸引不動点,放物型不動点の構造
  • (2) Fatou-Bieberbach 領域の構成
  • (3) 複素 H\'enon 写像の構造
  • (4) (時間があれば)複素射影空間の正則写像の力学系
科目名 幾何構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 11月6日(水)~11月8日(金)(3日とも10:00~12:00)
なお,この集中講義は, Hessenberg 集会 2019 in Osakaという研究集会 と合同で行われます.
講演者(所属) 原田 芽ぐみ(McMaster University)
タイトル The cohomology of Hessenberg varieties and the Stanley-Stembridge conjecture
場所 中講究室(理学部棟F415)
講義内容

Hessenberg varieties are subvarieties of the flag variety with rich connections to algebraic geometry, combinatorics, and representation theory. They are important examples in combinatorial algebraic geometry, in the sense that much of their geometry and topology can be described in Lie-theoretic and combinatorial terms. Special cases of Hessenberg varieties include famous classes of varieties studied in other contexts, such as Springer fibers, Peterson varieties, and the permutohedral variety.

This lecture series will focus on one area within the study of Hessenberg varieties, namely, the symmetric group representation on the cohomology rings of regular semisimple Hessenberg varieties, as defined by Tymoczko, and the ensuing connection between Hessenberg varieties and the long-standing Stanley-Stembridge conjecture in combinatorics. Some related questions regarding the construction of explicit permutation bases will also be briefly discussed. The lectures will consist of three parts:

  • (a) An introduction to Hessenberg varieties.
  • (b) The Stanley-Stembridge conjecture.
  • (c) Recent developments.
科目名 代数構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 11月18日(月)〜11月22日(金)
談話会:11月20日(水) 17:00~18:00)
講演者(所属) 荒川 知幸(京都大学数理解析研究所)
タイトル 4D/2D対応と表現論
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容

場の理論と関係する無限次元代数の表現論について講義する。 特に最近の素粒子論におけるホットなトピックの一つである4D/2D対応に関係した表現論を解説する。

集中講義(2018年度)

 
科目名 幾何構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 9月11日(火)~9月14日(金)、9月18日(火)、(初日は10:40開始)
談話会:9月12日(水) 16:00~17:00)
講演者(所属) 中村 拓司(大阪電気通信大学)
タイトル 結び目・仮想結び目理論入門
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容

3次元球面内の結び目の分類や幾何的・代数的性質の探求が結び目理論の中心課題である. 結び目は2次元球面に横断的な2重点を持つように射影され,その射影図に交差の上下の情報を加えた結び目ダイアグラムとその同値変形であるライデマイスター移動を用いて議論されることが多い. 1996年にKauffmanが,結び目ダイアグラムの通常の交点に加え,仮想的な交点も許した仮想結び目ダイアグラムを考え,一般化されたライデマイスター移動による同値類を仮想結び目として定義した. その後,仮想結び目については多くの研究がなされている. 本講義では通常の結び目と仮想結び目の,特に組み合わせ的な議論に関しての,性質について入門的な話をする.

キーワード:FOX彩色,Jones多項式,局所変形

科目名 数理科学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 7月2日(月)〜7月6日(金)
談話会:7月4日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 跡部 発(東京大学・日本学術振興会特別研究員(PD))
タイトル 池田リフト・宮脇リフトの表現論的再構成
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容

モジュラー形式や保型表現は、現代の整数論の研究において最も重要な道具の一つである。 一変数の正則モジュラー形式の理論で最も重要な結果は、Deligneによって証明された Ramanujan予想である。これは、モジュラー形式のFourier係数の評価であり、保型表現 の言葉ではGL(2)の正則カスプ保型表現の不分岐な局所因子の佐武パラメーターが全て絶対値 が1であるという主張になる。ところが、多変数の正則モジュラー形式では同じ主張は成り立たない。 これには、斎藤・黒川リフトやDuke-Imamoglu-Ibukiyama-Ikedaリフトといった反例が 具体的に構成されている。

 Ramanujan予想にどれぐらいの反例があるかという問題については、今日ではArthurの 重複度公式という答えが得られているが、これは保型形式の存在性を主張する結果である。 一方で様々なリフトは構成法からFourier係数などの多くの情報が得られる。

 この集中講義では、正則保型形式について説明した後、近年に池田・山名によって表現論を 用いて再構成されたDuke-Imamoglu-Ibukiyama-Ikedaリフトについて解説する。 また、それの応用として得られる宮脇リフトについても紹介したい。

科目名 解析学特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 6月4日(月)~6月8日(金)
談話会:6月6日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 菱田 俊明(名古屋大学)
タイトル 外部 Navier-Stokes流の安定性の数学解析
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容 3次元外部領域(剛体の障害物の外部)での非圧縮粘性流体の運動を 記述する Navier-Stokes 方程式の初期値問題の時間大域解の漸近挙動を、 定常解の漸近安定性との関連の中で考察する。定常解の周りでの線型化 方程式の初期値問題の解の $L^q$-$L^r$ 減衰評価の導出が最も重要 で難しいステップとなるので、その解説が本講の中心部分となる。 前半では、まず Stokes半群の場合に、Stokes resolvent のスペクトル 解析を通して時間減衰評価を示す。後半では、障害物の並進速度と 回転角速度が時間により変動する場合に、 non-autonomous な線型化 作用素が生成する発展作用素の時間減衰評価を求める技法について 述べる。

集中講義(2017年度)

 
科目名 数理科学B
日程
講演者(所属) 原田 芽ぐみ(McMaster大学,大阪市大数学研究所)
タイトル
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容

都合により集中講義は取り止めになりました。

科目名 代数構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 10月16日(月)〜10月20日(金)
講演者(所属) 阿部 紀行(北海道大学)
タイトル Koszul環
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容 環に対して,その加群のなす複体をもととして導来圏と呼ばれる圏が定義される. 同型な環はもちろん同値な導来圏を与えるが,同型でない環が同値な導来圏をも たらすこともあり,しばしば神秘的な現象を与える.Koszul環はそのようなミス テリアスな圏同値を生み出す枠組みの一つであり,簡約Lie環や代数群の表現論 にしばしば現れる重要な対象である.この講義では,導来圏に関する基本事項か ら初めて,Koszul環の基本理論について解説する.余裕があれば表現論との関わ りについても話したい.

講義録
科目名 幾何構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 7月10日(月)~7月14日(金)
談話会:7月12日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 中川 泰宏(佐賀大学・理工)
タイトル Monge-Ampère 方程式と Einstein-Kähler 計量
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容 Yau により、Calabi 予想が 1978 年に解決された。特に、第一 Chern 類が負 または零の Kähler 多様体に対して、Einstein-Kähler 計量の存在 と一意性が示された。その証明は複素 Monge-Ampère 方程式を連続法 (continuity method)を用いて解くことによりなされている。この講義では、 その証明の解説を与える。また、時間があれば Kähler-Ricci ソリトン のような Einstein-Kähler 計量の変種についても考察したい。
科目名 解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 5月22日(月)~5月26日(金)
談話会:5月24日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 野口 潤次郎(東京大学/東京工業大学 名誉教授)
タイトル 多変数関数論入門
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容 複素関数論は19世紀末Picardの定理などにより,関数の解析性に注目し 解析性に基づく解析関数論として独自の分野をなすようになった. 多変数関数論もそのような一般関数論(解析関数論)からの研究が始まった. その中で,20世紀初頭にこの分野で想定外の現象が種々発見され, それ等は 1) Cousin I問題,2) Cousin II問題, 3) Levi問題 に集約された.人によっては,これに 4) 近似の問題 を加える場合もある.
 岡潔(1901--1978)は,これ等3大問題を殆ど独力で解決し, 多変数解析関数論の基礎を創った.のみならず,更に重要なのは, その解決の道程において数学上の新概念である 「不定域イデアル・連接性」を見出し「岡の3連接定理」を証明したことである. 連接性は,H. Cartan, J.-P. Serre, H. Grauert等の研究により 大きく発展し,現在では数学の諸分野で使われる基礎概念となっている.
 連接性の扱いでは,Weierstrassの予備定理が不可欠なものと 永く認識されてきた.この講義では,それを用いず巾級数展開の 簡単な性質のみを用いて証明される「弱連接定理」を定式化し, それによって岡が解決した上述の問題の初等的証明を与えることを目標とする. これによって,非特異領域での3大問題の解決までの基礎部分は ぐっと易しくなったと想う.

参考書(直接的なもの):
  • ・多変数解析関数論--学部生へおくる岡の連接定理,野口潤次郎著,朝倉書店,2013.
  • ・Analytic Function Theory of Several Variables--Elements of Oka's Coherence, Junjiro Noguchi, Springer, 2016.

集中講義(2016年度)

 
科目名 代数構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 1月23日(月)~1月27日(金)
談話会:1月25日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 加藤 周(京都大学)
タイトル レベル$0$アフィン旗多様体の幾何学と表現論
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容 有限次元アフィン代数群の旗多様体は等質空間として定義するのが普通である。この設定で Borel-Weilの定理はPlucker埋め込みを誘導し、結果的として旗多様体の射影正規性が導かれる。 この講義では対応する構成をレベル$0$表現に対して行うことによりレベル$0$アフィン旗多様体 (半無限旗多様体、有限次元旗多様体の形式的有理準写像空間、などとも呼ばれる)を構成し、 その性質を解説する。
  • 1. アフィン・リー代数のレベル$0$表現とカレント代数の表現論
  • 2. レベル$0$アフィン旗多様体の定義と基本的性質
  • 3. コホモロジー消滅定理と正規性、およびBorel-Weilの定理
  • 4. Macdonald多項式の特殊化と半無限Demazure指標公式
科目名 幾何構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 12月12日(月)~12月16日(金)
談話会:12月14日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 横田 佳之(首都大学東京)
タイトル 結び目の体積予想について
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容 結び目の量子不変量と、結び目補空間の幾何構造の関係について解説します。 結び目のカシャエフの計算、結び目補空間の四面体分割、ポテンシャル関数の導出など、 具体的な計算を中心に講義する予定です。
科目名 解析学特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 11月14日(月)~11月18日(金)
談話会:11月16日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 桒田 和正(東京工業大学)
タイトル 最適輸送理論と熱分布
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容 最適輸送理論とは,ある(確率)測度に従って分布するものを別の分布へと輸送する最適な方法に関する理論である. 最適化問題の一種として変分法や凸解析が関係するほか,現在は偏微分方程式,確率論,Riemann幾何学等の様々な話題が 交錯する分野へと成長している.本講義では,まず最適輸送費用とそれを実現する輸送手段に関する基本的な結果を紹介する. 応用として,熱分布の振る舞いを最適輸送の観点から捉える近年の研究に焦点を絞り,解析学・幾何学の関連する話題から 適宜選んで解説する.特に,最適輸送が定める分布間距離構造の下で熱分布がエントロピー汎関数の勾配流とみなせることや, エントロピー汎関数と最適輸送による空間の曲がり具合の記述(曲率次元条件)が,熱分布による空間の曲がり具合の記述 (Bakry-Emery理論)と同値になることを紹介したい.

集中講義(2015年度)

 
科目名 代数構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 9月28日(月)~10月2日(金)
談話会:9月30日(水) 16:30~17:30)  
講演者(所属) 内藤 聡(東京工業大学)
タイトル 有限次元既約最高ウエイト表現の結晶基底のLakshmibai-Seshadri パスによる実現
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容 有限次元複素半単純リー環に付随する量子群上の有限次元既約最高ウエイト加群の結晶基底の 具体的な実現のうちで、非常に普遍性のあるものの一つとして、Lakshmibai-Seshadriパスによる ものがある。この Lakshmibai-Seshadri パスとは、 半単純リー環の Weyl 群の元の Bruhat順序に 関する減少列であって、ある種の整数性条件を満たすものの事である。 この Lakshmibai-Seshadri パスの概念の様々な variationを考える事によって、アフィン・リー環に付随する量子群上のextremal ウエイト加群の結晶基底や、量子アフィン展開環上の最も基本的な有限次元加群であるレベル・ゼロ 基本表現やそれらの テンソル積加群の結晶基底の具体的な実現が得られる事が分かっている。 この講義では、最も基本的な場合として、オリジナルの Lakshmibai-Seshadriパスの理論における基本的 な結果を解説する。 特に、有限次元既約最高ウエイト表現やその Demazure 部分加群の指標の Lakshmibai-Seshadri パスによる表示等を紹介する予定である。 参考文献としては、 M. Kashiwara, Bases cristallines des groupes quantiques, SMF, 2002 の、Chapitre 8 を挙げておく。
科目名 幾何構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 12月14日(月)~12月18日(金)
談話会:12月16日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 田中 真紀子(東京理科大学)
タイトル コンパクト対称空間の幾何学-点対称が導く幾何-
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容 対称空間は各点で点対称が定義できる空間であり、点対称は対称空間の変換のうちで最も基本的なものと言える。 この集中講義では、対称空間の定義や例などの基本事項から始め、コンパクト対称空間は点対称を用いて定義される 全測地的部分多様体“極地”と“子午空間”の一対によってその対称空間としての構造が決まる、という長野正先生の 定理を紹介することを目標とする。
科目名 数理解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 10月26日(月)~10月30日(金)
談話会:10月28日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 仲田 均(慶應義塾大学)
タイトル シリンダーフロー:一様分布列の誤差から作られる力学系
場所 大講究室(理学部棟E408)
講義内容 一様分布論において誤差の評価は 重要な問題として古くから議論されている。 その中で、誤差の大きさの力学系としての 表現は cylinder flow とよばれ、 それ自体が力学系の研究テーマとして興味深い問題を提供している。 この cylinder flow は、 最近では translation surface 上の flow の cross section としても 再び注目されている。 この講義では、cylinder flow について定義から始め、 その後、円周上の(微分)同相写像の共役問題と からめながら基本的概念、性質を紹介する。 さらに、エルゴード理論の中で cylinder flow の問題が なぜ重要な意味を持つのかについて考える。

集中講義(2014年度)

 
科目名 代数構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 9月29日(月)~10月3日(金)
談話会:10月1日(水) 16:30~17:30)  
講演者(所属) 黒川 信重(東京工業大学)
タイトル ゼータ関数と多重三角関数から見た数論
場所 数学講究室(共通研究棟 3階 301)
講義内容 数論の中心的なテーマにゼータ関数の研究がある。素数定理の証明に見られるように、 ゼータ関数の基本的性質を確立することによって、 数論の深い結果が導き出される。 これは、フェルマー予想の証明(1995)や佐藤・テイト予想の証明(2011)でも同様である。 21世紀に入って、 ゼータ関数論は、これまでのゼータ関数とは全く違った様相の絶対ゼータ関数 の発見に到達して、多重三角関数や多重ガンマ関数と結びつくように なってきている。本講義では、 オイラーやリーマンの頃のゼータ関数論のやさしい話からはじめ、ゼータ関数の基本的性質の解説を経て、 多重ガンマ関数、 多重三角関数、絶対ゼータ関数へと概説したい。今回のテーマに関する参考書としては「黒川信重『現代三角関数論』岩波書店、2013年」 がわかりやすくまとまっているテキストである。
科目名 幾何構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 7月14日(月)~7月18日(金)
談話会:7月16日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 成瀬 弘(岡山大学)
タイトル シューベルト・カルキュラスの幾何と代数・組合せ論
場所 数学講究室(共通研究棟 3階 301)
講義内容 シューベルト・カルキュラスでは、グラスマン多様体などの 等質空間に関する幾何学的不変量を、 代数的手法により記述する ことが目的であるが、そこには種々の組合せ論的な対象が潜在 している。この講義では、 トーラス同変コホモロジーを考察 する際に自然に登場するExcited Young diagramという組合せ論 的な対象を中心に、 その幾何学的・代数的なつながりについて、 どのような思考過程を経ることで新しい視点や関連性を見出すことが できるかを具体的な計算例を通して丁寧に解説してゆく予定である。 キーワードとしては、シューア関数、特異点の重複度、 Yang-Baxter 関係式など。基本文献としてはBilley-Lakshmibaiの教科書を使うが、 そこには書かれていない事柄やK-理論への 一般化についても言及する。
科目名 応用解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 7月28日(月~8月1日(金)
談話会:7月30日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 石川 保志(愛媛大学)
タイトル ジャンプ型確率過程とその応用
場所 数学講究室(共通研究棟 3階 301)
講義内容 人間活動の活発化が背景にあるとみられる気候変動により、極端な現象(Black swan)が目につく様になりました。 このような飛躍のある偶然現象に対して、数学的興味のみでなく、ファイナンスや制御理論においても関心がよせられる ようになっています。 この講義では、ポアソン分布とポアソン過程から始めて、Levy過程とそれを用いた確率積分、マルチンゲール理論、 ジャンプ型確率微分方程式、確率解析(マリアバン解析)とその応用、について口述します。 ルベーグ積分の知識は既知とします。 講義ノートは講師のHP (http://www.math.sci.ehime-u.ac.jp/~ishikawa/) から1213-osa-03.pdfをダウンロードしてください。

集中講義(2013年度)

 
科目名 代数構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 1月14日(火)~1月17日(金) 
談話会:1月15日(水) 16:30~17:30)  
講演者(所属) 斉藤 義久(東京大学)
タイトル Perverse sheaves入門(Perverse sheaves昔ばなし)
場所 数学講究室(共通研究棟 3階 301)
講義内容 大雑把に言ってperverse sheaves(偏屈層)とは,ある種の条件を満たす層の複体のことであり, 1982年のBeilinson-Berenstein-Deligneによる 有名な論文``Faisceaux pervers''によって確立された概念であると言って良い. Peverse shavesが導入された元々の背景には数論幾何的な問題意識があったように思われる (この辺は担当者は門外漢なので,詳しくは知らない)が, その導入直後から本来の目的であった 数論幾何への応用以外にも,数々の数学の分野に多大な影響を与えた.中でも表現論への応用においては, いくつもの著しい成果が挙げられており,この傾向は現在進行形で続いる.特に,近年では 『幾何学的表現論』と呼ばれる一分野が確立された感があり, perverse sheavesは表現論を 研究する上で欠かせない道具の一つとなっている.  しかしながら,『perverse sheavesは定義が抽象的でわかりにくい』という話を良く耳にする. これは,perverse sheavesが『層のなす導来圏の対象 として定義される』という事実からして 致し方ないことではあるのだが,(担当者自身の経験も含めて)初学者がこれを学ぼうとする場合の高い障壁に なってしまっているのも,また事実であると思う. このような事情を踏まえ,今回の講義では, perverse sheavesの一般論を展開した後,

(a) Weyl群のSpringer表現の構成

(b) Kazhdan-Lusztig多項式の幾何学的構成

等の具体例を通じて『perverse sheavesの理論が,表現論の研究の中でどのように 使われるのか?』について,解説したい.これらは,ともに1980年代前半 (今から30年以上前!) に確立された,いわば``昔ばなし''であるが,perverse shaevesの理論が表現論に応用される 様子を概観するのには,格好の題材であると思う. 講義を通じ,perverse shaevesの理論を 少しでも身近に感じて頂くことが出来れば幸いである.さらに付け加えるならば,これらは 『30年前に終わってしまった話』 ではなく,最近の話題にも関連する``古くて新しい話''でもある. 時間が許せば,その辺の事情についてもお話ししたい.
科目名 幾何構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 12月2日(月)~12月6日(金)
談話会:12月4日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 北野 晃朗(創価大学)
タイトル 結び目のtwisted Alexander多項式入門
場所 数学講究室(共通研究棟 3階 301)
講義内容  1990年代にLin, 和田らによってtwisted Alexander多項式が導入され、その後Alexander多項式に 関する結果を精密化する形で 様々研究されてきている。一般的にはtwisted Alexander多項式はある 性質を満たす有限表示群に対して定義されるが、この集中講義 では考察の対象を3次元球面内の結び目 に制限する。そして結び目の古典的なAlexander多項式と対比しながら、どのように結び目の twisted Alexander多項式が定義され、どのような性質が成り立つかを解説したい。後半では結び目のfiber性の 判定に焦点を当て、 この方向での研究の大きな結果の一つであるFriedl-Vidusiの理論について紹介をしたい。 特になぜtwisted Alexander多項式がfiber性 と関係するのか、その雰囲気を伝える事を目標にしたい。
科目名 数理解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 6月10日(月)~6月14日(金)
談話会:6月12日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 相川 弘明(北海道大学)
タイトル 熱核の評価と境界ハルナック原理
場所 数学講究室(共通研究棟 3階 301)
講義内容 熱方程式の解は熱核の積分で与えられる. したがって熱核をよく理解することが大切である. 具体的な熱核の表示はきわめて限られた 領域に 対してのみわかっている.一般の領域に対しては 熱核の詳しい評価(境界近くでの)が重要である. 調和関数に対しても状況は同じで, 調和関数は Green関数で表示されるが,Green関数の具体的な 形は限られた領域のみにしかわかっておらず, その評価が大切である.これは境界 ハルナック原理 で記述される. この講義では熱核の評価と境界ハルナック原理が 容量的幅と箱議論によって統一的に導かれることを 示す.必要となるのは比較原理と調和測度 に対する 簡単な性質だけであり,対数ソボレフ不等式や確率解析 を用いる従来の方法よりはるかに初等的である.

集中講義(2012年度)

 
科目名 応用解析学特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 7月30日(月)~8月3日(金) 
談話会:8月1日(水) 16:30~17:30)  
講演者(所属) 小薗 英雄(早稲田大学)
タイトル New function space in general unbounded domains and its applications to the Navier-Stokes equations
場所 数学講究室(3040)
講義内容 We consider problems on the mathematical fluid mechanics in general unbounded domains $\Omega$ with non-compact boundaries. In such domains $\Omega$, it is known that the usual Helmholtz decompositions in $L^r(\Omega)$, $1 < r < \infty$ does not hold except $r = 2$, and hence we need to introduce another function space $\tilde L^r(\Omega)$ defined by $\tilde L^r(\Omega) = L^r(\Omega) + L^2(\Omega)$ for $1< r\le 2$ and $\tilde L^r(\Omega) = L^r(\Omega) \cap L^2(\Omega)$ for $2\le r < \infty$, respectively. This new function space $\tilde L^r(\Omega)$ plays a substitutionary role for $L^r(\Omega)$ so that the Helmholtz decomposition holds. Defining the Stokes operator $A$ in $\tilde L^r(\Omega)$, we can develop well-known techniques like analyticity of the semi-group $\{e^{-tA}\}_{t > 0}$ and the maximal regularity theorem on $\partial_t + A$ as well as the characterization of the domains of the fractional powers $A^{\alpha}$, $0 < \alpha < 1 $. As applications of the theory on $\tilde L^r(\Omega)$, we are able to treat fundamental problems on uniqueness, regularity and decay properties of weak solutions of the Navier-Stokes equations in $\Omega$.

Contents:

1. Introduction; Leray's structure theorem

2. Helmholtz decomposition in $\tilde L^r(\Omega)$

3. Stokes operator in $\tilde L^r_{\sigma}(\Omega)$

4. Applications to the Navier-Stokes equations; strong energy inequality, uniqueness criterion

科目名 数理解析学特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 11月12日(月)~11月16日(金)
談話会:11月14日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 小森 洋平(早稲田大学)
タイトル 入門複素解析幾何
場所 数学講究室(共通研究棟 3階 301)
講義内容 複素解析に関する集中講義ということで、今回は複素関数を使って幾何をする、複素解析幾何という分野の入門的な話をします。 前半は三角関数など周期関数の一般化である、2重周期関数(楕円関数)の話から始めます。 楕円関数が住む自然な場所として複素 トーラスが登場します。 複素トーラスを空間のなかで実現しようとすると、代数曲線としての表示が得られます(楕円曲線)。 逆に 代数曲線としての表示から複素トーラスの姿も再構成できます(楕円積分)。 後半は楕円曲線を個別でなく族で考えて、族の中での個々の楕円曲線の変化の様子について調べます(モジュライ問題)。 特に今回は 複素数パラメータについて正則に変化する族(正則族)について考え、族の「端」で楕円曲線が壊れる様子を調べます(退化とコンパクト化の問題)。
科目名 数理科学D
日程 7月9日(月)~7月13日(金)
談話会:7月11日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 原田 芽ぐみ(McMaster大学)
タイトル An introduction to integrable systems, toric degenerations, and Okounkov bodies
場所 数学講究室(3040)
講義内容 The theory of Okounkov bodies is a vast generalization of the theory of toric varieties, recently (roughly 2008/2009) developed independently by Kaveh-Khovanskii and Lazarsfeld-Mustata. Okounkov bodies are an exciting new tool which connects convex geometry, in particular the combinatorics of polytopes, to many other areas of geometry and topology. In an interesting development, Dave Anderson observed in his 2010 research preprint that the construction of Okounkov bodies also allows one to construct a toric degeneration from a wide class of projective varieties $X$ to a (possibly non-normal) toric variety $X_0$. Anderson's construction vastly generalizes many toric degenerations already in the literature (e.g. Alexeev-Brion, Kogan-Miller) and suggests exciting new applications of toric-geometric techniques to many other areas of mathematics, including geometric representation theory, algebraic geometry, Schubert calculus, and symplectic topology, as well as many others. Further developing this point of view and using Dave Anderson's toric degeneration as a key ingredient, in joint work with Kaveh, I have recently constructed integrable systems --- in the sense of symplectic geometry -- on a wide class of complex projective algebraic varieties. Our construction recovers, for example, the famous Gel'fand-Cetlin integrable system on the complete flag variety $GL(n,C)/B$ observed by Guillemin and Sternberg, but our methods are much more general. Moreover, the `moment map image' of the our integrable system is precisely the Okounkov body associated to $X$ (and a choice of valuation on its homogeneous coordinate ring), so there is an intimate relation between the geometry of this system and the combinatorics of the Okounkov body. Our construction significantly contributes to the set of known examples of integrable systems in the literature, and represents a corresponding significant expansion of the possible applications of these systems, and their associated combinatorics, to other research areas. In this series of lectures, which I hope will involve a lot of audience participation and active discussion, I plan to give a gentle introduction to every word in the title. In paritcular I plan to give plenty of motivation and concrete examples to illustrate the general philosophy of this new and rapidly developing theory. By the end of the lecture series I hope to have given a reasonable sketch of all of the main ingredients in the construction of the integrable system mentioned above.

集中講義(2011年度)

 
科目名 代数構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 1月23日(月)~1月27日(金) 
談話会:1月25日(水) 16:30~17:30)  
講演者(所属) 落合 啓之(九州大学)
タイトル 旗多様体の軌道分解
場所 数学講究室(3040)
講義内容 旗多様体は等質空間であるが、部分群の作用によっても軌道が有限個になることがある。 古典的なボレル部分群によるブリューア分解、対称部分群による松木大島の分解や、 比較的 新しい3重旗多様体のMagyar-Weyman-Zelevinsky による軌道の記述などを、 一般線形群など を例にとって説明する。 群論の初歩や線形代数は仮定するが、リー環とルート系、ヤング図形 の組み合わせ論 などの知識はあらかじめ仮定しない。
科目名 数理解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 6月6日(月)~6月10日(金)
談話会:6月8日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 加須栄 篤(金沢大学)
タイトル 双曲空間へのグラフの埋め込み
場所 数学講究室(3040)
講義内容 ユークリッド空間あるいはノルム空間への有限距離空間の埋め込みに関する研究が近年盛んに行われている。 本講義では双曲空間をターゲットに選び、グラフの埋め込みについて論じる。

1) グラフの拡大定数、スペクトルギャップおよび有効抵抗

2) ユークリッド空間への有限グラフの埋め込み 

3) 双曲空間と双曲グラフ

4) 有限グラフの双曲空間への埋め込み

5) 無限グラフの双曲空間への埋め込み

科目名 数理科学E
日程 11月28日(月)~12月2日(金)
談話会:11月30日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 小池 茂昭(埼玉大学)
タイトル 完全非線形楕円型方程式の$L^p$-粘性解理論入門
場所 数学講究室(3040)
講義内容 1980年代初頭に、M. G. CrandallとP.-L. Lionsが導入した粘性解の概念は、 非発散2階楕円型偏微分方程式の適切な弱解であることが知られている。 一方、 L. A. Caffarelliは、1989年に完全非線形2階一様楕円型偏微分方程式の粘性解の Schauder評価と$L^p$-評価を証明した。これは発散型方程式に対応する正則性理論であるが、 その方法は極めて独創的である。 その後、Caffarelli-Crandall-M. Kocan-A. Swiechは1996年に、 $L^p$-粘性解という概念を導入することで、Caffarelliの理論を整備した。 また、Caffarelli-X. Cabre による、Cafffarelliの理論の解説本も1994年に登場した。 本講義では、これらの文献をもとに、更に 理解しやすいように$L^p$-粘性解理論を解説する。 具体的には次のような内容を講義する。

1.粘性解$L^p$-粘性解の導入された動機とその定義

2.Aleksandrov-Bakelman-Pucciの最大値原理

3.強解の存在定理

4.弱Harnack不等式

5.弱Harnack不等式の応用・・・Holder連続性と局所最大値原理

6.強解ならば$L^p$-粘性解 ~Bonyの最大値原理の応用

7.ABP最大値原理の応用・・・$L^p$-粘性解が$W_{2,p}$に属せば、強解

8.$L^p$-正則性

集中講義(2010年度)

 
科目名 幾何構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 12月6日(月)~12月10日(金)
講演者(所属) 望月 拓郎(京都大学)
タイトル 調和バンドルの漸近挙動について
場所 数学講究室(3040)
講義内容 この講義では, 主に調和バンドルの漸近挙動について 概説します. 調和バンドルとは, もともと射影多様体上 の平坦束やヒッグス束の研究において導入されたものでした. その後, 特異性を持つような調和バンドルの研究が進み, 代数幾何学・大域解析学・代数解析学・ トポロジーなどが 交錯する地点で, 興味深い展開を見せています. その際, 重要な基礎となるのが, 調和バンドルの漸近挙動の研究です. これは大雑把にいうと次の二つの主張からなります.

(1) 正規交叉因子の補空間上の調和バンドルが, 全体の複素多様体上の有理型な対象に延長される.

(2) 簡約化により, わかりやすい調和バンドルが得られる. これらをより精確に述べること

が, 講義の一つの目標に なります. さらに余裕があれば, 関連するいくつかの 話題について触れる予定です.
科目名 応用解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 7月20日(火)~7月24日(土)
談話会:7月21日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 森 真(日本大学)
タイトル エルゴード理論事始め
場所 数学講究室(3040)
講義内容 力学系とよばれる数学はNewton力学から始まりました. 自然現象を抽象化し,その本質を探ることで 物理現象を解き明かすだけでなく, 新たな数学への道も開きました. エルゴード理論はその中でも統計力学 をその礎とするものです. 統計力学はほぼ無限個の粒子からなる物理系を考察するものです. 力学系はそれを 構成する粒子の数が増えれば,その複雑性は増し, その詳細な記述は困難になっていきます.ところが,多数の 粒子の運動は ランダム性をキーワードにするとその運動の説明がつくことが多いのです. もともとのNewton力学 で考えれば,その運動は決定論的であるはずです. 統計力学ではエルゴード仮説という仮説をベースにその理論 を組立てています. この仮説に基づき,ランダム性と決定論的性質とを平衡状態をキーワードに 融合させるのです. このことを1次元の力学系という単純なモデルによって探っていこうと思います.
科目名 数理科学D
日程 6月28日(月)~7月2日(金)
談話会:6月30日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 森山 知則(大阪大学)
タイトル 離散系列型の保型形式について
場所 数学講究室(3040)
講義内容 Siegel上半空間をはじめとするHermite対称空間$X$上の 正則保型形式は, 自然なやり方で$X$の等長変換群で ある半単純Lie群 上の(反)正則離散系列表現を生成する関数とみなすことができる。 これらの正則保型形式および、 ある意味でそれらと「親戚」関係にある ものが、標題の離散系列型の保型形式である。この講義では, 半単純Lie群の 離散系列表現に関する一般的なことから始めて, 離散系列型の保型形式 の幾何学的な意味づけ, 次数2の離散系列型 Siegel保型形式のFourier 展開の一般論とその応用に関して解説する。

集中講義(2009年度)

 
科目名 代数構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 6月29日(月)~ 7月3日(金) 
談話会:7月1日(水) 16:30~17:30)  
講演者(所属) 松本 久義(東京大学)
タイトル 半単純リー代数の最大ウエイト加群の理論
場所 数学講究室(3040)
講義内容 半単純リー代数の最大ウエイト加群で生成されるいわゆる「カテゴリーO」 の理論は1970年前後に Gelfand-Gelfand-Bernstein によって創始され、以降 Jantzen, Duflo, Joseph, Kazdhan-Lusztig, Soergel らによって大きな理論となり 表現論におけるさまざまな対象についての理論を作り上げる時の手本にもなってきた。 この講義では、あまり予備知識を必要としないでも聴けるように半単純リー代数 の基礎の簡単な解説からはじめ、 カテゴリーOについて解説したい。最終的には 複素半純リー群の無限次元表現のカテゴリーとカテゴリーOとの密接な関係を解説する。
科目名 幾何構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 7月27日(月)~ 7月31日(金)
談話会:7月29日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 小野 薫(北海道大学)
タイトル Lagrange 部分多様体の幾何学
場所 数学講究室(3040)
講義内容 symplectic 幾何学において重要な対象である Lagrange 部分多様体に ついて論じる。 具体例の構成法や基本的結果について述べた後、 正則曲線の理論や Floer 理論を用いた研究の 紹介をする。後半では、 深谷氏、Oh 氏、太田氏との共同研究による、Lagrange 部分多様体の Floer 理論の 一般的枠組みと、toric 多様体の運動量写像の Lagrangian torus fiber の Floer 理論 について述べたい。

レポート問題補足(締切日:2009年8月10日(月))

科目名 数理解析学特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 11月30日(月)~ 12月4日(金)
談話会:12月2日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 藤川 英華(千葉大学)
タイトル 無限次元タイヒミュラー空間とタイヒミュラーモジュラー群
場所 数学講究室(3040)
講義内容 タイヒミュラー空間とその周辺の基本的な結果の準備の後,まずはじめに,無限次元タイヒミュラー空間上に 作用するタイヒミュラーモジュラー群の力学系理論を解説する.そしてタイヒミュラーモジュラー群の様々な部分群 の離散性とそれらによるタイヒミュラー空間の商空間を考えることにより,無限型リーマン面のモジュライ空間の 構成可能性を論じる.特に,タイヒミュラーモジュラー群の漸近的タイヒミュラー空間上への作用の考察を通して, モジュライ空間の複素解析学的構造を見る.

集中講義(2008年度)

 
科目名 代数構造論特別講義Ⅰ
日程 12月1日(月)~12月3日(水) 
談話会:12月3日(水) 16:30~17:30)  
講演者(所属) 荒川 知幸(奈良女子大学)
タイトル 臨界レベルにおけるKac-Moody Lie環の表現
場所 数学講究室(3040)
講義内容 アフィンKac-Moody Lie環の表現はレベルと呼ばれるパラメーターを持つが、レベルが正の場合と負の場合の 間にはある種の双対性が存在する。その中間値は0 ではなく、臨界レベルと呼ばれる値になる。臨界レベルでは アフィンKac-Moody Lie 環の表現論は劇的に変わることが知られ ており、現在でも指標公式など未解決な部分が多い。 講義ではこのような臨界レベルのアフィンKac-Moody Lie環の表現論についてお話しする。具体的な内容としては、 Feigin-Frenkel center、 restricted Verma加群と restricted脇本加群、カイラルWeyl指標公式、Feigin-Frenkel 重複度予想などを 予定している。時間が許せば、カイラル微分作用素を用いたBorel-Weil構成法についてもお話ししたい。
科目名 幾何構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 2月2日(月)~2月5日(木)
談話会:2月4日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) Martin Guest(首都大学東京, 兼 大阪市立大学客員教授)
タイトル Introduction to pluriharmonic maps, Frobenius manifolds,and tt*-geometry
(多重調和写像,フロベニウス多様体とtt*-幾何学への入門)
場所 数学講究室(3040)
講義内容 Harmonic maps provide many interesting examples in differential geometry related to surface theory. Pluriharmonic maps are a natural generalization related to submanifold theory. Frobenius manifolds (such as quantum cohomology) give new examples of pluriharmonic maps. The study of these pluriharmonic maps was started around 1990 by Cecotti-Vafa and Dubrovin, and is called tt*-geometry. The lectures will be an introduction to this area.
調和写像は,曲面論に関わる微分幾何学における多くの興味ある例を提供する。 多重調和写像は,部分多様体論に関連 した一つの自然な一般化である。 (量子コホモロジーのような)フロベニウス多様体は,多重調和写像の新たな例を与える。 このような多重調和写像の研究は,Cecotti-Vafaや Dubrovin によって1990年ごろ研究が が始められて,tt*-幾何学と 呼ばれている。この講義は,この研究領域への入門である。
科目名 応用解析学特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 9月16日(火)~9月19日(金)
談話会:9月17日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 赤堀次郎(立命館大学)
タイトル 数理ファイナンスの基礎と応用
場所 数学講究室(3040)
講義内容 前半は数理ファイナンスの基本概念を説明するため, 基本定理をいろいろな設定で証明する.特に状態価格を用いた証明を 紹介する.後半は数理ファイナンスがどのように用いられるかを 説明するために,いくつかのモデルを紹介する.特に金利の 期間構造のモデルを詳しく解説したい.
科目名 数理解析学特別講義Ⅰ
日程 6月9日(月)~6月11日(水)
談話会:6月11日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 山田 雅博 (岐阜大学)
タイトル 単位円板上の正則関数から作られる関数空間
場所 数学講究室(3040)
講義内容

集中講義(2007年度)

 
科目名 代数構造論特別講義 Ⅲ・Ⅳ
日程 12月11日(火)~12月14日(金) 
談話会:12月12日(水) 16:30~17:30)  
講演者(所属) 都築 暢夫 (広島大学)
タイトル 局所体の階数2のp進表現
場所 数学講究室(3040)
講義内容 この講義では、p進体$Q_p$や1変数形式べき級数環の商体$F_p((t))$ の絶対ガロア群の p 進表現について考察する。幾何学的起源を 持つ p 進体の p 進ガロア表現については、辻らによる Fontaine 予想の解決により、その性質はよく解るようになってきた。ま た、Crew-都築らにより、$F_p((t))$のモノドロミー有限なp進ガロ ア表現もその性質が理解できるようになってきた。一方、近年 の p進表現の変形理論や p 進局所 Langlands 理論では、幾何的 な起源を持たない表現も扱う。この講義では、階数 2 の表限を 考察しながら、Fontaine のp進 Hodge 理論やCrew-都築の理論 を解説し、最近の展開を紹介したい。講義の内容は、

1. 局所体の絶対ガロア群

2. $Q_p$ の$F_p$既約ガロア表現

3. Crew-都築の理論

4. p進Hodge理論

5. 最近の展開

である。
科目名 応用解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 11月5日(月)~11月8日(木)
談話会:11月7日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 山田 澄生 (東北大学)
タイトル 変分法における特異点集合の幾何解析
-幾何学的測度論と偏微分方程式の橋渡しの試み-
場所 数学講究室(3040)
講義内容 幾何学的測度論的観点から動機付けされる変分原理の極小解には、局所ユークリッド構造を 持たないものが自然に現れる。それらの極小構造を、写像の原理、具体 的にはDouglas-Radoによる プラトー問題の調和写像を使った方法によって、パラメタライズするこ とは、従来の多様体上で定義 されてきた調和写像の数々の結果を単体的複体上へ応用するに不可欠な ステップである。幾何学的測度論と 偏微分方程式の二つの分野にまたがった極小曲面の話題に関して近年得 られた、いくつかの結果を紹介したい。
科目名 数理解析学特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 11月12日(月)~11月16日(金)
談話会:11月14日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 松本 幸夫 (学習院大学)
タイトル 4次元多様体とリーマン面
場所 数学講究室(3040)
講義内容 ゲージ理論経由で不変量を研究する4次元多様体論が発展していますが、それを「補完」する意味で、 切ったり貼ったりの感覚に近い4次元多様体論を展開したいと思っています。そのため、4次元多様体を、 リーマン面を底空間とするファ イバー空間(ファイバーもリーマン面)と見なす立場から研究を続けて来ました。 いくつかの結果と問題がありますので、その概要を講義します。
科目名 COE21特別講義 Ⅰ
日程 7月17日(火)~7月20日(金)・7月23日(月~7月27日(金)
講演者(所属) 原田 芽ぐみ (McMaster University)
タイトル An introduction to symplectic geometry
場所 数学講究室(3040)
講義内容 詳細はこちら

集中講義(2006年度)

 
科目名 代数構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 2月19日(月)~2月23日(金) 
談話会:2月22日(木) 15:00~16:00)  
講演者(所属) 庄司 俊明(名古屋大学)
タイトル 複素鏡映群に付随したHecke環と q-Schur代数の表現論
場所 数学講究室(3040)
講義内容 複素鏡映群に付随した Hecke環の典型例である Ariki-Koike 代数とそれから構成される cyclotomic q-Schur 代数の modular 表現論を解説する。 Ariki-Koike 代数については、LLT予想に関する Ariki の深い定理、また cyclotomic q-Schur 代数についても rational Cherednik 代数との関連を 追求する Rouquierの 取組みなど興味深いことは多い。 しかしこの講義では、Dipper, James, Mathas 達が対称群に付随する Hecke環 や q-Schur代数の modular表現を調べたようにCellular 代数の視点から、 Ariki-Koike代数や cyclotomic q- Schur代数を調べる。 それは素朴な組合せ論的な手法であるが、 それでも色々面白い結果が得られることを紹介したい。内容は、Schur-Weylの相互律、 modified Ariki- Koike 代数、 cyclotomic q-Schur 代数のBorel型 部分代数とその商代数など。
科目名 幾何構造論特別講義 Ⅰ・Ⅱ
日程 1月9日(火)~1月12日(金)
談話会:1月10日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) Martin Guest (首都大学東京)
タイトル 可積分系の解法:理論と可視化
場所 数学講究室(3040)
講義内容 この集中講義は、可積分系への実践的な入門です。我々 は、幾何学的な側面を強調しながら、KdV方程式のような有名な可積分系の 一般的な理論を簡潔に概観します。特に、ユークリッド空間内の曲面の古典的理論 において生じる幾つかの「ソリトン方程式」について 議論します。しかし、この講義の主眼は、そのような方程式の解の「explicitness」にありま す。我々は、いくつかの解を手で計算し, また他の解についてコンピュータを使った計算の実演を行います。
科目名 数理解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 11月6日(月)~11月10日(金)
談話会:11月8日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 北野 晃朗(創価大学)
タイトル リーマン面のモジュ ライ空間に関する位相幾何学入門
場所 数学講究室(3040)
講義内容 リーマン面のモジュライ空間に関する位相幾何学的な研究 が近年盛んに行われている。 この講義では位相幾何学の知識を なるべく仮定せずに、これらで使われている位相幾何学的な道具立て、 枠組みとそれらに関する結果についての入門的な講義を、 Morita-Mumford類とJohnson準同型の定義を目標に行う。 講義計画は以下の通り。

1回目. 全体の概観:リーマン面のモジュライ空間と曲面束の分類空間,写像類群,Morita-Mumford類

2回目. 群のコホモロジー:単体的複体のホモロジーとコホモロジー,群のコホモロジー

3回目. 群の分類空間とその実現:普遍的な構成,微分同相群の場合の構成,モジュライ空間との関係

4回目. Johnson準同型:Abel-Jacobiの埋め込みとJohnson準同型,代数的な定義

5回目.Morita-Mumford類について

予備知識:初等的群論、複素関数論は仮定するが、位相幾何のホモロジー論、コホモロジー論は仮定しない。
科目名 COE21特別講義Ⅳ
日程 5月30日 (火) ~ 6月2日 (金)
談話会:5月31日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 濱地 敏弘 (九州大学)
タイトル Topological and finitary orbit equivalence
場所 数学講究室(3040)
講義内容 詳細はこちら

集中講義(2005年度)

 
科目名 代数構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 6月27日(月)~7月1日(金) 
談話会:6月29日(水) 15:00~16:00)  
講演者(所属) 中島 啓 (京都大学)
タイトル 箙多様体入門
場所 数学講究室(3040)
講義内容 合成積によって(非可換)環を構成して、その表現を調べ る、という研究が近年 盛んに行われている。そのような構成の例として、 箙多様体を用いたア ファイ ン・リー代数の展開環の構成を紹介する。ここで、箙多様体とは、 (通常の定 義とは異なり) SU(2)の 有限部分群で不変な二変数多項式環 C [x,y] のイデア ルのなすモジュライ空間として定義されるものである。 予備知識としては、多様体とコホモロジー群に関する基本的 な性質を仮定する。 表現論に関する予備知識は仮定しないが、最高ウェイト 表現について知ってい た方が望ましい。 参考 : Quiver varieties and McKay correspondence, 研究集会`開Calabi-Yau多様体への代数幾何と弦理論から のアプローチ' 報告集, 2001年12月 http://www.math.kyoto-u.ac.jp/~nakajima/TeX/hokkaido.pdf から入手可能

講義ノートはこちら

科目名 幾何構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 7月12日(火)~7月15日(金)
談話会:7月13日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 神島 芳宣 (首都大学東京)
タイトル 幾何学的コボルディ ズム理論
場所 数学講究室(3040)
講義内容 いつ閉多様体が境界となるかという古典的(トポロジー) の問題はコボルディズム群の構造と特性数により完全に 決定されている。 ここでは、幾何的多様体はいつどのような幾何構造をもつ多様体の境界となり得るかという 極めて漠然とした問題を考える。この問題を サポートする典型的例はThurstonの結果-多くの結び目の補空間には体積有限の完備双曲構造が入る、そのカスプの切り口は2次元平坦 トーラスであるので、 2次元平坦トーラスは完備双曲多様体の境界である。この種の3次元以上の場合の一般化は代数的に実行され、 肯定的にLong-Reidでにより解かれている (2002)。さらにMcReynoldsは、ハイゼンバーグ冪零多様体がいつ体積有限の複素双曲多様の 境界となりうるか代数的に 必要十分条件を与えた。これらを踏まえ、この講義では、

ノンコンパクト体積有限の完備双曲多様体のカスプの構造 (リーマン平坦多様体、ハイゼンバーグ冪零多様体が出てくることの説明)。

2次の群コホモロジ-を使ったInfranil多様 体の構成。

(Injective) Seifert fibrationのアイデアを使って、上記の結果の別証明。

この講義の結びとして、3次元に限って次の実現定理を証明する。

Σ(p,q,r) を (p,q,r)= (2,3,6), (2,4,4) または (3,3,3)となるSchwarz 3角群とし、2次の群コホモロジ-H2(Σ(p,q,r):Z)を考える。 各元cに対し3次元可縮空間に固有不連続に作用する群πが 一対一に対応する。 さらに、cが有限位数のときはリーマン平坦オービフォルト R3?πが対応し、4次元ノンコンパクト体積有限の完備実双曲オービフォルトのひとつのカスプ(の切り口) として実現される。一方cが無限位数 のとき、3次元ハンゼンバーグ冪零オービフォルトΝ?πは 2次元ノンコンパクト体積有限の完備複素双曲オービフォルトのひとつのカスプ(の切り口) として実現される。

Keywords:実、複素双曲空間, カスプ (Cusp), 離散群作用、群拡大、群コホモロジ-、 (Injective) Seifert fibration, Heisenberg infranilmanifold. (53C55, 57S25, 51M10).

科目名 数理解析学特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 11月14日(月)~18日(金)
談話会:11月16日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 作間 誠(大阪大学)
タイトル McShaneの等式
- 双曲曲面上の単純閉曲線とタイヒミュラー空間上の定数値無限級数 -
場所 数学講究室(3040)
講義内容 Greg McShaneは1991年の学位論文のなかで,一点穴あきトーラス上の単純閉曲線の長さに関する不思議な等式(McShane's dentity)を発見した. その後,この等式はMcShane自身,B. Bowditch,Maryam Mirzakhani,Ser Pew Tan - Yan Loi Wong - Ying Zhang,秋吉宏尚-宮地秀樹ー作間誠等により 様々な形に一般化され,またMirzakhaniによりタイヒミュラー空間への見事な応用が与えられた.この講演ではこれらの発展を説明する.
科目名 応用解析学特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 6月13日(月)~6月16日(木)
談話会:6月15日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 三上 敏夫(北海道大学)
タイトル 確率最適制御理論に よる最適輸送問題入門
場所 数学講究室(3040)
講義内容 最適輸送問題は、1781年に、フランスのMongeに より提唱された「砂山をある場所からある場所に移す最適な方法を求めよ」と言うものです。 これは、PDEでは、Monge-Ampere方程式の研究に発展して行き ました。ところで、この問題は、実は、確率測度に関する最適化問題であることも 知られており、統計数学の研究者によってもさかんに研究されてきました。 この講義では、確率最適制御理論の立場からこの問題を考えることより、 部分的に証明を簡単にし、また、Hamilton-Jacobi方程式との関係を論じます。 この問題の数理科学的な面白さとその数学的豊かさが伝わればと 思っています。

集中講義(2004年度)

 
科目名 代数構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 1/31(月),2/1(火),2/3(木),2/4(金) 
談話会:2月2日(水) 15:00~16:00)  
講演者(所属) 小林 俊行 (京都大学数理解析研究所)
タイトル Multiplicity-free representations and visible actions on complex manifolds
場所 数学講究室(3040)
講義内容 この集中講義では、表現が重複度1で分解するための新しい幾 何的な原理を解説する。 複素多様体上に群作用が与えられ、その軌道が無限個あるよう な設定を考える。各軌道がある totally realな部分多様体に 「横断的に」交わっているとき、その作用を「目に見える作用」 (visible action)という。まず、表現の重複度1という性質が、「ファイバー⇒切断の空間」 に伝播するための幾何的な条件を与える。この抽象的な重複 度1定理を、底空間への作用が 可視的な同変正則ベクトル束上で定式化し、 再生核の理論を使って証明する。次に、複素多様体 における可視的な作用のさまざまな初等的な 例を与える。 また、Grassmann多様体における 可視的な作用の分類にも言及する。最後に、具体的なシチュエーションで表現論への応用を述べる。 有限次元表現における古典的な重複度1定理 (例えば、組合せ論で知られているような種々の例)から 連続スペクトラムを含む無限次元表現の重複度1定理が、 ここで述べた一つの新しい幾何的な 原理から説明できることを お話する。時間が許せば、新しい重複度1定理や具体的な分岐則の例も 紹 介したい。
科目名 幾何構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 11月8日(月)~11月12日(金)
談話会:11月10日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 中川 泰宏 (金沢大学)
タイトル 板東・Calabi・二木指標と二次特性類
場所 数学講究室(3040)
講義内容 Einstein・Kaehler 計量の存在に対する障害として導入された、二木指標およ びその一般化であり、定スカラー曲率 Kaehler 計量の存在に対する障害であ る、板東・Calabi・二木指標を二次特性類、あるいは同変特性類として解釈してやる。 時間に余裕があれば、偏極代数多様体の安定性との関連についてもふ れたい。
科目名 数理解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 6月14日(月)~6月18日(金)
談話会:6月16日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 志賀 啓成 (東京工業大学)
タイトル 楕円積分・楕円函数とRiemann面入門
場所 数学講究室(3040)
講義内容 楕円積分・楕円函数および楕円曲線を,複素解析,特にRiemann面論の 立場で入門的な講義を行う.さらに応用についても いくつか解説する 予定である.
科目名 応用解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 6月7日(月)~6月10日(木)
談話会:6月9日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 伊藤 俊次(金沢大学)
タイトル マルコフ分割とフラクタル
場所 数学講究室(3040)
講義内容 トーラス上の hyperbolic group automorphism の Markov 分割の構成を substitution を道具とする フラクタル解析をてこに試みる.

Pisot substitution とは何か

Atomic surface と Markov endomorphism

Pisot substitution から定まる Markov 分割

4次元 hyperbolic non-Pisot group automorphism では何が起こるか

集中講義(2003年度)

 
科目名
日程 6月16日(月)~6月20日(金)
講演者(所属) 太田 啓史 (名古屋大学)
タイトル ラグランジアン部分多様体,変形理論とフレアーコホモロジー
場所 数学講究室(3040)
講義内容
科目名
日程 11月10日(月)~11月14日(金)
談話会:11月12日(水) 16:00~17:00)
講演者(所属) 山口 博史(奈良女子大学)
タイトル 岡の上空移行の原理(多変数関数論の入門の一つとして)
場所 数学講究室(3040)
講義内容 岡潔が1936、37年に発表した論文を基にして、多変数関数論の中の一分野をやさしく紹介する。特に、クザンⅠ、クザンⅡ問題、 Weil 積分等について述べる。朝倉書店「複素関数」(山口博史著、2003年)の第4章を参考にする。
科目名
日程 12月1日(月)~12月5日(金)
談話会:12月3日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 今野 紀雄(横浜国立大学)
タイトル 格子確率モデルの数理
場所 数学講究室(3040)
講義内容 パーコレーション(浸透)、生態系、伝染病の伝播など、格子空間上で各要素が相互作用をしながら確率的に時間発展していく 多要素システムに関する種々の結果と、それを得るために用いられる手法について紹介する。また、それらのモデル関係する量子化 されたモデルに関してもあわせて解説したい。
科目名
日程 10月6日(月)~10月10日(金)
談話会:10月8日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 加藤 和也(京都大学)
タイトル Crystalline コホモロジーとp 進 Hodge 理論の世界
場所 数学講究室(3040)
講義内容
科目名
日程 12月8日(月)~12月12日(金)
談話会:12月10日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 斉藤 義久(東京大学)
タイトル 楕円ワイル群と楕円ヘッケ代数
場所 数学講究室(3040)
講義内容

集中講義(2002年度)

 
科目名
日程 4月22日(月)~4月26日(金)
談話会:4月24日(水) 15:30~16:30)
講演者(所属) 古田 幹雄(東京大学)
タイトル K理論と指数
場所 数学講究室(3040)
講義内容 位相的 K 理論とは,トポロジーのものの見方のひとつで,線形代数のほんの一歩先に位置しています.線形空間として無限次元のもの まで視野にいれると, 自然に「指数」の概念が見えてきます. こんな素朴なものが,たとえば特異コホモロジー理論と比べても,極めて 強力な道具となり得ることを説明したいと考えています.K 群を使うと,一種のコホモロジー理論を構成することができ,この構成の鍵 になるのは Bott の周期性定理(あるいは Thom 同型)です. Bott の周期性定理(あるいは Thom 同型)のひとつの理解の仕方は,一種 の Fourier 変換として捉えるもので,その際の積分にあたる操作が「族の指数」です.この講義は,現在の幾何学研究の最先端へ直接導く ものではありません.しかし,現在の諸研究を各自が理解するための背景を提供することを目指します. 予備知識としては,特異コホモロジー 理論(あるいは de Rham コホモロジー理論)とベクトル束の定義と簡単な性質を仮定します.特性類についての予備知識があると分かりやすいと 思いますが,最初に復習をするので必須ではありません.全般に渡っての参考文献として

Atiyah, "K-theory", Benjamin

Bott, "Lectures on K(X)", Harvard Univ.

荒木捷朗, 位相的$K$理論, 数学 第22巻 第1号, 日本数学会編集, 岩波, (1970) 60--76.

荒木捷朗, 位相的$K$理論 II, 数学 第23巻 第4号, 日本数学会編集, 岩波, (1971) 272--292.

を挙げておきます.実際には次の順序に 従って話をする予定です.

1. K 群 とChern指標: 特性類についてのまとめ. (参考文献 Milnor-Stasheff, " Characteristic classes". )

2. Bottの周期性定理とThom同型:証明は後に回し,定式化と応用を述べる.

3. e 不変量と Hopf不変量:複数の定義の仕方とその同値性を例とともに説明する. (参考文献 Stong, "Notes on cobordism theory" )

4. 族の指数とThom同型: 指数の概念を導入し,保留されていた Thom同型の証明を紹介する. (参考文献 Atiyah, "Bott periodicity and the index of elliptic operators", Quat. J. of Math., (Oxford) (2) 17 (1966), 165--193.)

5. 指数定理 :指数定理の定式化と証明の概略を述べる. (参考文献 Atiyah and Singer,"The index of elliptic operators I",Ann. Math. 87 (1968), 484--530.)

科目名
日程 7月15日(月)~7月19日(金)
談話会:7月17日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 盛田 健彦(広島大学)
タイトル ビリアード型の力学系 -2次元散乱開撞球を中心に-
場所 数学講究室(3040)
講義内容 平面上に日食が起きないように配置された複数の円盤があったとする.これらの円盤の外部領域では単位速度で等速直線運動し, 円盤に衝突した場合は完全弾性衝突して動き続ける質点の運動を考えよう.本講義では,このような運動を記述するビリヤード力学系 について,その双曲的力学系としての構造と,周期軌道の分布に関するゼータ関数の基本的な性質の解説を行う.可能ならば最近の 話題についても話を進めたい.
科目名
日程 11月25日(月)~11月29日(金)
談話会:11月27日(水) 15:30~16:30)
講演者(所属) 足利 正(東北学院大学)
タイトル リーマン面の退化族の諸相
場所 数学講究室(3040)
講義内容 リーマン面の退化族の定義と簡単な例の構成から入り、現在のところ以下のような最近のホットな話題に言及していく予定ですが、 若干の変更を行う可能性もあります。

松本 - Montesinos の定理と退化族の構成

超楕円的分裂族と堀川指数

安定曲線族への高村の群作用と位相モノドロミー

同変指数定理の局所符合数への応用

関連する問題

科目名
日程 12月9日(月)~12月13日(金)
談話会:12月11日(水) 17:00~18:00)
講演者(所属) 筱田 健一 (上智大学)
タイトル 有限群の表現と指標和
場所 数学講究室(3040)
講義内容

誘導表現の自己準同型環

Gelfand-Graev表現

Gelfand-Graev表現とGauss和

応用(Hasse-Davenport型等式)

科目名
日程 1月27日(月)~1月31日(金)
談話会:1月29日(水) 15:30~16:30)
講演者(所属) 納谷 信(名古屋大学)
タイトル 組合せ調和写像とその応用
場所 数学講究室(3040)
講義内容 講義の主題は、単体複体から非正曲率空間へのエネルギー最小写像と、その離散群の超剛性への応用です。エネルギー最小写像の存在と、 それに対するボホナー型公式について述べ、最後に応用例をあげる予定です。導入として、まず、調和コチェインとそれに対するボホナー 型公式について話すつもりでいます。時間の許す範囲で、中心的な例であるビルディングについても話したいと思っています。

集中講義(2001年度)

 
科目名
日程 6月26日(火)~6月29日(金)・7月3日(火)
談話会:4月24日(水) 15:30~16:30)
講演者(所属) 小松 玄 (大阪大学)
タイトル 双正則不変式論への招待
場所 数学講究室(3040)
講義内容 一変数函数論のリーマンの写像定理によれば, 単連結な有界領域は単位円板に双正則同値である. 多変数函数論ではリーマンの写像定理が成立しないので, ふたつの領域が双正則同値でないことを どうやって判定するかが問題となる. 領域の境界が滑らかと仮定して, 境界の局所幾何に関する 不変式を考えるというのが, ポアンカレとエリー・カルタン以来のアイディアである. つまり, リーマン幾何をモデルとする局所微分幾何の手法を 多変数函数論に持ち込もうというわけである. もちろん,局所幾何から大域幾何への移行も射程にいれている. このアイディアについては1970年代 の中頃に大きな進展があったが, その後1980年代後半に再び大きな進展があり, 今日にいたるまで 活発に研究されている. とはいえ,モデルのリーマン幾何の場合と比べて理論の完成度はまだまだで, 基本的な未解決問題がたくさんある. この集中講義では上記理論への招待すなわち初等的な入門を試みる. 厳密な証明や正確な記述より, アイディアを粗く伝えることを優先したい. だから特に予備知識がなくてもわかるとは思うが, 基礎知識(線形代数と微積分 (三年生までに習ったこと)、一変数函数論の基礎 (一次分数変換, ベキ級数展開など))があればもっとよくわかる. 参考文献も予習する必要はないが (この集中講義 より内容が多いしむつかしい!), 講義後にはすらすら読めるようになっているかもしれない (それを 講義の目標としたい).

参考文献:

M. Beals, C. Fefferman and R. Grossman Strictly pseudoconvex domains in C^n, Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 8 (1983), 125--322; (Princeton 大学での Fefferman による講義を整理したもの), 次の本にも再録されている ``The Mathematical Heritage of Henri Poincare'' ed. by F. E. Browder, Proc. Sympos. Pure Math. 39.1, pp. 189--386, Amer. Math. Soc., 1983.

K. Hirachi and G. Komatsu, (総合報告) Invariant theory of the Bergman kernel, Adv. Stud. Pure Math. 25, pp. 167--220, Math. Soc. Japan, 1997.

科目名
日程 7月9日(月)~7月13日(金)
講演者(所属) 中西 康剛 (神戸大学)
タイトル 局所変形からみる結び目の不変量と幾何
場所 数学講究室(3040)
講義内容 結び目は、文化人類学の対象になるほどに古くから, また、身近なものとして扱われてきました. 例えば、「あやとり」などもそのひとつで, 世界各地での多様な「あやとり」文化の発展があります. 結び目という素朴な対象には、驚く程に豊かな構造が隠されており, 現代のトポロジーをもってしても, その豊かな構造のすべてを描き出すまでには残念ながら至っておりません. 局所的な変形の積み重ねにより、どのような構造が保たれ, あるいは、破壊されるのかについて論じたいと 考えています.

結び目の変形の基本であるライデマイスター移動に関する問題から, 3 彩色可能性まで, 結び目理論の入門と講義の概要.

結び目や絡み目の図で交差の上下をいくつか入れ換えると 自明なものになることから,この局所変形は、 いくつの成分からなるのかという (単純ではあるけれども 構造と対応していると考えれます. 結び目解消操作に関する話題を扱う.

絡み目でそのうちのふたつの結び目に注目すると, 絡み数というどの様に絡んでいるのかの度合を示すものが定義できます. ここで △型結び目解消操作という局所変形を考えると, この絡み数という構造と対応しています。 その他, 色々な構造と対応する局所変形に関する話題を扱う.

近年開発された Vassiliev 不変量は, 葉広氏による Clasper Theory により解釈できます. 谷山・安原両氏によるより視覚的な議論により, この話題を扱う.

渋谷氏により提唱された link homotopy の特殊化になる局所変形である, △ link homotopy の話題を扱う.

この集中講義では上記の研究方法から得られた成果の解説を試みる. 厳密な証明や正確な記述より, アイディアを伝えることを優先したい. だから特に予備知識がなくてもわかるとは思うが, 基礎知識(結び目理論の基礎 (位相空間の基礎知識,結び目の多項式不変量など))が あればもっとよくわかるし, この観点からの研究もすぐに始められる可能性がある. 参考文献も予習する必要はないが, 講義後にはすらすら 読めるようになっているかもしれない (それを講義の目標としたい).

参考文献:

K. Habiro: Claspers and finite type invariants of links, Geom. Top. 4, 1 - 83, 2000.

Y. Nakanishi: On generalized unknotting operations, J. Knot Theory Ramif. 3, 197 - 209.

Y. Nakanishi and Y. Ohyama: Delta link homotopy for two component links, III preprint.

科目名
日程 9月17日(月)~9月21日(金)
講演者(所属) 国田 寛 (南山大学)
タイトル 数理ファイナンス(離散モデルを中心として)
場所 数学講究室(3040)
講義内容

一期間モデル(証券市場モデル、裁定機会、リスク中立確率、完備市場など)

多期間モデル(情報構造、マルチンゲール、オプションの価格付など)

極限移行と連続モデル、Black-Sholes の公式(Cox-Ross-Rubinstein の方法)

科目名
日程 11月19日(月)~11月22日(木)・11月24日(土)
談話会:11月21日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 伊藤 雄二 (東海大学)
タイトル エルゴード変換と種々の整数列
場所 数学講究室(3040)
講義内容 前半に有限不変測度を持つエルゴード変換の再帰性とそれに関係する ポアンカレ数列の話をして、後半に、 有限不変測度を持たないエルゴード変換の 特有な性質とそれに関連する色々な数列のことについて話すつもりです。
科目名
日程 12月17日(月)~12月21日(金)
談話会:12月19日(水) 16:00~17:00)
講演者(所属) 谷崎 俊之 (広島大学)
タイトル 非可換スキームとしての量子旗多様体
場所 数学講究室(3040)
講義内容 この講義では,A. Rosenberg の最近の結果に基づき, 複素半単純リー群の旗多様体 X=G/B の,量子群類似について考察する. X を代数多様体と思うには

・射影座標環 R を持つ射影多様体 Proj(R)

・R(w)をアフィン座標環とするアフィン代数多様体 Spec(R(w)) を貼り合わせたもの

の二つの見方がある.量子群を用いることにより,R および R(w) の q 類似,Rq および Rq(w)を構成する ことができる. ただし,これらは非可換な環になる.このとき,「Proj(Rq) が Spec(Rq(w)) の貼り合わせである」ということの幾何学的解釈 について,説明することを目標とする. また時間が許せば,その表現論への応用についても述べる.