大阪市立大学 宇宙物理・重力 研究室 Research Group for Theoretical Astrophysics, Osaka City University



過去のコロキウム情報[2021年度]


日時:4月9日(金)
講師:石原 秀樹氏(大阪市立大学)
題目:接触構造を用いたアインシュタイン方程式の解
概要:時空の接触構造を利用して,Einstein‐ダスト流体系の厳密解を構成する. ある仮定の下,この系を記述する方程式がSchrodinger型の線型方程式に帰着することを示す.
また,Einstein-Proca系と,Einstein-Maxwell-Higgs系の系についても議論する.


日時:4月16日(金)
講師:佐合 紀親氏(大阪市立大学)
題目:リングダウン重力波の倍音モードの影響について
概要:2015年に米国の重力波望遠鏡LIGOが人類史上初の重力波観測に成功して以降、 これまでに50個近い連星ブラックホール合体が観測されており、ブラックホー ルに関する新たな知見がもたらされている。連星ブラックホールからの重力波 は、その軌道進化に対応してインスパイラル、マージャー、リングダウンの3つ のフェーズからなる特徴的な波形となる。本発表では、リングダウン重力波に 注目する。
リングダウン重力波は連星合体直後の減衰振動に対応しており、その波形は形 成されるブラックホールの準固有振動(Quasi-Normal-Mode, QNM)により良く記 述できると考えられている。QNMには、最も減衰が遅い基音モードに加えて、 それよりも減衰率が大きな倍音モードが存在する。現在、データ解析で使用さ れている理論波形の多くは基音モードのみを考慮しているが、Giesler et al. (2020)において倍音モードの重要性が指摘されている。
本発表では、ブラックホール摂動法を用いて、倍音モードが及ぼす影響、QNM の基音、倍音モードによるリングダウン重力波波形の構築について議論する。


日時:4月23日(金)
講師:加藤 亮氏(大阪市立大学)
題目:パルサータイミングアレイを用いた背景重力波の円偏光の検出
概要:パルサーから放出されるパルスを観測することで,地球とパルサーの間の重力 波を検出することができる.この検出方法のことをパルサータイミングアレイと 呼ぶ.パルサータイミングアレイの検出対象の一つは,大量のブラックホール連 星から放出される重力波の重ね合わせである.この種類の重力波は,背景重力波 と呼ばれ,統計的に扱われる.
 本発表では,背景重力波の円偏光を検出するための方法について述べる.そし て,円偏光を検出するためには,いくつのパルサーが必要なのかについて議論す る.また,パルサーの観測データを用いた,円偏光解析の結果について述べる.


日時:4月30日(金)
講師:小川 達也氏(大阪市立大学)
題目:A Variety of Soliton Solutions In a Spontaneous Broken U(1) Gauge Theory
概要: 大域的U(1)対称性を有する古典スカラー場の理論では、ノントポロジカルソリトンと呼ばれる解が存在することが知られている。
我々はFriedberg, Lee, and Sirlinによって提案されたモデルを一般化させ、複素スカラー場、複素ヒッグス場、U(1)ゲージ場の結合系においてノントポロジカルソリトンを構成した。
一方でこのモデルではU(1)対称性が自発的に破れるために、トポロジカルソリトンの一種である宇宙紐解が構成出来る。
さらには偏微分方程式の解として、Q-ringと呼ばれるリング状のノントポロジカルソリトン解も構成出来る。
このように、本研究のモデルでは多様なソリトン解を考えることが出来る。
特に、Q-ringを宇宙紐が貫くようなBeads Stringは本研究特有の解であると言える。
本公演では、この多様なソリトン解について議論を行う。


日時:5月10日(月)
講師:南部 保貞氏(名古屋大学)
題目:流体ブラックホールにおけるHawking輻射の量子もつれ構造
概要:遷音速流における音速点からは,Hawking輻射と同じメカニズムにより熱分布を持つ輻射が放射されることが指摘されている(analog Hawking radiation).よってBEC等の物性系を用いることで実験室でHawking輻射を検証することが可能である.本講演ではまずHawking輻射についての基本事項の復習を行い,そののち分散性を持つ流体系におけるHawking輻射とそのパートナー間の量子もつれ構造について解説する.そして分散性のあるモデルでの数値シミュレーション結果を紹介し,Hawking輻射の3体間量子もつれがどのように現れるかを解説する.


日時:5月14日(金)
講師:吉野裕高 氏(大阪市立大学)
題目:電磁波・重力波変換と高周波の重力波観測について(仮)
概要:2015年に aLIGO によってブラックホール連星系からのものと思われる重力波がはじめて直接検出され、それ以来重力波観測は宇宙物理において重要な観測手段のひとつとなった。現在のところ観測された重力波は10?1000Hz あたりに限られており、MHz や GHz オーダーの周波数の重力波観測は未開拓領域として残されている。今回は高周波重力波の観測の現状と期待される生成源に関する議論をざっと概観し、私が共同研究者と考え 始めた電磁波・重力波変換による生成の可能性についてアイデアを述べる。


日時:5月21日(金)
講師:石橋 明浩氏(近畿大学)
題目:重力波とエントロピー
概要:このセミナーでは重力波と重力のエントロピーについて考察します。自由場の相対エントロピーがローレンツ変換の生成子として与えられる事から始めて、漸近平坦で定常なブラックホールの重力波摂動に対する地平面の面積(Bekenstein-Hawking)エントロピーとブラックホール外部の重力波の(相対)エントロピー、および光的無限遠での重力波エネルギー流の関係を導きます。また光的無限遠の対称性の生成子とエントロピーについても議論します。


日時:5月28日(金)
講師:大宮 英俊氏(京都大学)
題目:くりこみ群による自己相互作用するアクシオン雲の解析
概要:近年,回転するブラックホール周りの軽いスカラー粒子(典型的には超弦理論由来のアクシオン)の凝縮体とそこからの重力波放射が,重力波による粒子検出の文脈で興味を集めている.このような凝縮体はアクシオン雲と呼ばれ,超放射不安定性によりブラックホールのエネルギーと角運動量を引き抜きながら成長していく.成長の際,アクシオンの自己相互作用や他の粒子との結合を考えることで様々な現象を引き起こす.その中でもアクシオンの自己相互作用による爆発的な重力波放射現象(ボーズノヴァ)は特に興味深いが,その詳細は依然として不明なままである.
この話では,くりこみ群の手法を援用して,自己相互作用の効果を取り入れた雲の進化について議論する.


日時:6月4日(金)
講師:椎野 克氏(東京工業大学)
題目:ぐるぐる光測地線とブラックホール影
概要:ぐるぐる光測地線=wandering null geodesicとblack hole shadowとの 関係について議論する。
0, Intro. (photon sphere)
1, definition of wandering null geodesic
2, existence of wandering null geodesic
○conformally flatness
○commonplaceness thm.
3, black hole shadow and wandering null geodesic
○accumulation and wandering
○black room
and so on.


日時:6月11日(金)
講師:柳 哲文氏(名古屋大学)
題目:Axion Cloud Decay due to the Axion-photon Conversion with Background Magnetic Fields
概要: 近年アクシオン(Axion-like particlesを含む)はダークマターとしてや加速膨張を引き起こす場として注目されている.
一方で,アクシオンのような質量項を持つスカラー場が存在すると,超放射不安定性により,回転ブラックホール周りにアクシオン雲を形成することが古くから知られている.
本講演では電磁場との結合を持つアクシオン場を考え,磁場を伴うブラックホールにおいてはアクシオン雲が電磁波の放射に伴って減衰することを示し,超放射不安定性による増幅率との比較を行う.
前半ではまず,後の比較のために回転ブラックホール時空における有質量スカラー場の超放射不安定性を簡単にレビューする. 後半では背景時空をSchwarzschildブラックホールとし,さらに背景磁場としてモノポール,一様磁場導入し,それぞれの場合についてアクシオン−電磁場系の摂動方程式を導出する.
解析的な評価を行うために,適当な条件の下,方程式を量子力学における水素原子についての方程式と類似の物で近似する.
さらにアクシオンと電磁場の結合項が小さいという近似の下,電磁場の放射に伴うアクシオン雲の減衰率を計算する.
最後に超放射不安定性における主要モードについて,超放射不安定性による増幅率と電磁場の放射に伴う減衰率を比較する.


日時:6月18日(金)
修論中間報告
講師:小久保 裕貴氏(大阪市立大学)
題目:Solitosynthesis of Q-ball

講師:奥家 健太氏(大阪市立大学)
題目:自己相互するダークマター


日時:6月25日(金)
修論中間報告
講師:丸尾 洋平氏(大阪市立大学)
題目:閉じた宇宙の中で重力崩壊する星

講師:佐田 彩夏氏(大阪市立大学)
題目:Analogue Black Hole

日時:7月9日(金)
講師:森澤 理之氏(大阪市立大学)
題目:宇宙を模倣する宇宙と計算論
概要:この宇宙がチューリングマシンであるとして何が言えるのか、metaphysicalな議論を行う。


日時:7月9日(金)
講師:石渡 弘治氏(金沢大学)
題目:Wino dark matter searches with dwarf spheroidal galaxies
概要:矮小楕円銀河はガンマ線源がが少ないため、ダークマター由来のガンマ線観測に適した有望なターゲット天体である。しかし本来天文学的に観測の難しい天体であるため、矮小楕円銀河内ダークマターからのガンマ線フラックスを計算するために必要な物理量「Jファクター」の決定には不定性が伴う。近年、その不定性を定量的に評価・減少させる手法が考案された。本日の講演では、その手法をダークマター最有力候補粒子の一つであるウィーノ(Wボソンの超対称パートナー粒子)に適用し、CTA実験におけるウィーノダークマター発見可能性の是非を議論する。


日時:7月16日(金)
講師:末藤 健介氏
題目:大域的磁場を持つ動的宇宙モデルと佐々木多様体

講師:村上 由三氏
題目:ボソン星の動的発展

講師:田村 悠陽氏
題目:静的な二体ブラックホール時空中の円軌道の解析


日時:10月1日(金)
場所:第10講義室(E211)
講師:中尾 憲一氏(大阪市立大学)
題目:Quantum radiation in gravastar formation
概要:重力崩壊によるブラックホール形成の過程で量子効果によって生成される放射は、最終的に熱平衡のスペクトルとなる。これは発見者に因んで Hawking 放射と呼ばれる。この熱平衡スペクトルはその理論的導出方法から、事象の地平面の存在と深く関係していると考えられていたが、 Barcelo et al らによって、事象の地平線の形成とは関係無いことが示された。しかし、このことによって Hawking 放射によるブラックホールの蒸発が否定されたわけではなく、今もなお論争は続いている。一方、ブラックホール形成直前に重力崩壊が止まって、black hole mimicker (BHM) と呼ばれる極めてコンパクトで定常な星が形成される場合には、Hawking 放射が止むときに爆発的な放射が発生しうることが指摘されている。これまで、最終生成物の BHM が中空の球殻や p=-ρ/3 の dark energy で満たされた星である場合が調べられているが、今回は gravastar が最終生成物となる場合について解析した結果を報告する。


日時:10月8日(金)
講師:木村 匡志氏 (立教大学)
題目:Blandford-Znajekプロセスのバックリアクション
概要:Blandford-Znajek(BZ)プロセスは磁場を用いたブラックホールの回転エネルギーの引き抜き機構であり、ジェットやガンマ線バーストのセントラルエンジンとしても有力視されている。本講演ではBZプロセスの計量へのバックリアクションを議論する。まずSchwarzschildブラックホール周りの質量および角運動量降着に対する線形重力摂動の一般論をEinstein方程式を解くことで構成し、そのフォーマリズムをBZプロセスへ適用するという方法を用いる。BZプロセスのバックリアクションを考慮すると計量は時間依存することになるが、その時間依存性はKerrブラックホールの質量および角運動量パラメータに時間依存性を持たせたものとして理解できることを示す。また、そのような動的なブラックホール時空における熱力学についても議論する。
参考文献:arXiv:2105.05581


日時:10月15日(金)
夏学報告会
講師:末藤 健介氏
題目:超伝導体から見るブラックホール像

講師:村上 由三氏
題目:連星ブラックホール合体過程で放出される重力波を用いたHawkingの面積定理の検証

講師:田村 悠陽氏
題目:回転ブラックホール周辺のアクシオン電磁気学


日時:10月22日(金)
講師:野村 皇太氏 (神戸大学)
題目:膨張宇宙における初期特異点について
概要:インフレーション宇宙を含む膨張宇宙モデルは,過去向きの測地線に沿って一般に完備でなく,境界を持つことが知られています.ただし,その境界が真の初期特異点であるか,拡張可能な見かけの座標特異点であるかは,モデルの詳細(特にスケール因子の時間的振る舞い)に敏感に依存します.本講演では,一様等方宇宙および単純な一様非等方宇宙において,境界が真の初期特異点であるかどうかを判別する方法を紹介します.なお,本講演は JCAP07(2021)047,arXiv:2105.05642 に基づきます.


日時:10月29日(金)
講師:鈴木 良拓氏 (豊田工業大学)
題目:Large D effective theory of AdS black strings
概要:大きな時空次元を仮定する高次元極限を用いると、ブラックホールの解析が、解くべき次元が一つ低い有効方程式の解析に帰着するため、対称性の低い解の解析が容易になる。
 本講演では、まず高次元有効理論解析についての解説を行い、高次元有効理論を用いたAdSブラックストリングの解析について発表する。Kaluza-Klein時空におけるブラックストリングとは異なり、得られた有効理論はAdS境界につながったブラックホール断面の存在を反映して、境界からエネルギーやエントロピーが一定温度で流入する非断熱系となる。この系について自由エネルギーを定義し、解の熱力学的および動的安定性を議論する。

日時:11月5日(金)
講師:平松 尚志氏 (立教大学)
題目:Cosmic string in Abelian-Higgs model with enhanced symmetry
概要: 本講演では、宇宙紐のモデルとして最も簡単なものとして知られる Abelian-Higgs モデルにもう一つのスカラー場を導入したモデルを考えます。
この2スカラーモデルに対してスカラー場の相互作用項に少しの制限を加えることで、 偶発的な対称性が生まれ、宇宙紐にこれまでにないような性質が生まれます。 このことを、解析的な計算と場の理論的シミューレションによる計算によって示します。 また、この種の対称性はゲージ化したQCDアクシオンモデルでも現れるため、本講演では アクシオンモデルに対するドメインウォール問題に関する考察も合わせて行います。


日時:11月12日(金)
講師:松野 研氏 (大阪市立大学)
題目:量子重力効果を伴う5次元ブラックホールからのトンネル効果としてのHawking放射
概要:Hawking放射は、一般相対論と量子論の両方が役割を果たす興味深い現象の1つである。そこで、スカラー粒子の量子トンネル効果に基づく5次元Kaluza-Kleinブラックホール等からのHawking放射を、測定可能な最小の長さを表す一般化された不確定性関係によって予測される量子重力効果を含めて議論する。さらに、ブラックホール地平線近傍での次元縮約された有効計量を用いて、Hawking放射による逆反応の効果を議論する。


日時:11月19日(金)
修論直前発表

講師:丸尾 洋平氏(大阪市立大学)
題目:閉じた宇宙でブラックホールシャドウは見えるか?

講師:小久保 裕貴氏(大阪市立大学)
題目:Q-ball形成を実現する位相の同期現象について


日時:11月26日(金)
修論直前発表

講師:奥家 健太氏(大阪市立大学)
題目:Qボールの衝突と数値計算

講師:佐田 彩夏氏(大阪市立大学)
題目:Analogue Black Hole and Superfluid suction vortex


日時:12月3日(金)
講師:大下 翔誉氏 (理化学研究所)
題目:ブラックホールの揺らぎやすさについて
概要:本講演では「ブラックホールの準固有振動はそれぞれどの程度励起されやすいのか?」という問いに関する最近の研究を紹介する。この問いは、ブラックホール連星合体後の緩和過程で放射されるリングダウン重力波の理解・波形モデリングにおいて重要であることを概説する。本講演の前半では、初等的な例から始めるために、弦の振動波形をグリーン関数の解析手法で計算し、弦の各振動モードの「励起のしやすさ」が励起因子と呼ばれる量で定量化できることを解説する。この前半の内容では、[E. Berti and V. Cardoso, gr-qc/0605118 (2006)]のSec. IIを踏襲する予定である。後半では、ブラックホールの準固有振動に対して、励起因子の計算を行う有用性について、これまでの研究の背景から説明する。実際にその励起因子を計算した結果に基づき、ブラックホールの準固有振動の中でも、5、6、7番目に減衰率の低いモードが励起されやすいことを示す。講演終盤では、この結果から新たに推察されるブラックホールの揺らぎの性質や、生じる疑問について議論する。


日時:12月17日(金)  講師:宮田 晃宏氏 (東京大学)
題目:Evaporation of black holes in flat space entangled with an auxiliary universe
概要:ブラックホールから放射されたホーキング放射のエントロピーを半古典的に素朴に計算すると、ブラックホールのBekenstein-Hawking エントロピーを超えてしまうとい状況が起こり得る。その状況は、ブラックホールを含む系の量子論的性質に矛盾しており、Hawkingのブラックホール情報パラドックスとして知られる。最近の進展により、アイランド公式というものを用いることで、情報パラドックスを意味しないホーキング放射のエントロピーの振る舞い(Page曲線)が得られることが発見され、近年、そのアイランド公式が注目を集めている。
本公演では、ブラックホールがホーキング放射している様子をモデル化する一つのセットアップを用いて、漸近平坦な時空のブラックホールに注目する。そのセットアップでは、時空を2つ用意、一方の時空にのみブラックホールが存在しているとし、さらに、その2つの時空間がエンタングルしているとする。その状況のもと、アイランド公式を用いることでPage曲線が実際に得られることを議論する。また、その時空間のエンタングルメントとPage曲線の振る舞いの関係をさらに理解するために、ブラックホールが存在している時空に局所的なエネルギー励起を作る局所クエンチと呼ばれる操作を施した際のPage曲線についても議論する。本公演は、宇賀神氏との共同研究(arXiv:2104.00183[hep-th])に基づく。

日時:1月14日(金)
講師:安積 伸幸氏 (大阪市立大学)
題目:Vaidya時空のphoton sphere
概要:重力が非常に強い時空中では、光が大きく曲げられ円軌道となるような場合があり、その軌道の集合が作る面を(球対称の場合)photon sphereという。 定常的なブラックホールでは、ブラックホールシャドーとphotonsphereが密接に関係していることが知られている。 しかし一般にブラックホールは質量降着や重力崩壊など動的な過程にある、動的な時空におけるphoton sphereの一意的な定義はなく、そのような構造物とブラックホールシャドーの関係も不明瞭である。 今回の研究では、ヌルダストを降着するVaidyaブラックホールにおいて、ブラックホールシャドーに関係する光の軌道を詳細に解析し、photon sphereに対応する構造との関係について解析を行った。その結果、この時空でのphoton sphereの拡張に対応する軌道を発見することが出来た。また、photon sphereを一般化した概念はこれまでいくつか考えられており、今回発見した軌道がそれらの具体例になっているかどうかを調べることで、それぞれの関係についても議論したい。


日時:1月28日(金)
講師:遠藤 洋太氏 (大阪市立大学)
題目:ノントポロジカルソリトン星の安定性解析
概要:U(1)対称性を持ったスカラー場の理論には保存チャージ固定の下でエネルギーが最小になるような古典解が存在し、これをノントポロジカルソリトンと呼ぶ。このノントポロジカルソリトンと重力の結合系をノントポロジカルソリトン星(NTS星)と呼び、ダークマターや超大質量ブラックホールの候補になると期待している。一方で、NTS星の重力崩壊に対する安定性の解析は宇宙物理において重要な関心事の1つである。本講演では、安定性を解析する手法の1つとして線形摂動を考える。変数をうまく選ぶことで摂動の方程式を部分系として扱うことができ、その部分系が固有値方程式になることを利用して解析を行った。


日時:2月21日(月)
講師:Sebastian Bahamonde 氏(Tokyo Institute of Technology)
題目:Metric-Affine gravity: from theory to Black hole solutions.
概要:In this talk, I will introduce and explain the geometrical role of torsion and nonmetricity tensor by considering post-Riemannian manifolds to construct theories of gravity. Then the trinity of gravity will be presented. After that, I will discuss a gravitational model which allows the independent dynamical behaviour of the torsion and nonmetricity fields to be displayed in the framework of Metric-Affine gauge theory of gravity. It will be shown that it is possible to construct exact black hole solutions within this theory. Particularly, I will show the first known isolated gravitational spherically symmetric system characterized by a metric tensor with independent spin and dilation charges. Then, I will briefly describe how one can use observations such as the perihelion precession of the star S2 and the gravitational redshift of the Sirius B white dwarf to constrain the corrections provided by the torsion and nonmetricity fields. Then, I will show a new axially symmetric solution which describe a rotating Kerr-Newman space-time in the decoupling limit between the orbital and the spin angular momentum. Finally, I will show an extension by considering the full class of the Plebansky-Damiansky metric.


日時:3月2日(水)
講師:岡林 一賢氏 (大阪市立大学)
題目:ホライズンのない天体形成に伴う粒子生成の情報論的理解に向けて
概要:重力崩壊の末にブラックホールが形成されるとき、量子効果による粒子生成は熱的になることが知られており、発見者に因んでHawking輻射と呼ばれている。粒子生成が熱的になるために、事象の地平面は必ずしも必要ではなく、ホランズンのない時空であっても熱的な粒子生成が生じ得ることがある。その事実を踏まえ、ホライズンを持たない天体が重力崩壊で形成されるときにどのような粒子生成が得られるか探究されてきた。その結果、現在では内部構造に応じてどのような粒子生成が得られるか理解が進んだ状況となっている。一方で、Hawking輻射には情報理論的な議論も知られており、それがホライズンのない天体形成の場合にどのように応用されるかはよくわからない状況にある。
そこで本講演では、平坦な時空中のmoving mirrorがあるときの粒子生成とそのエントロピーの議論からはじめ、その議論を拡張し、ホライズンのない天体形成の場合に応用できるか議論する。


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