*研究内容

”光”は我々の生活とも密接に関連しますが、研究領域においては、興味深い電子物性の発現に利用されることに加え、電子物性を探る道具としても広く活用されます。そのため、多様な分野において物性研究の中枢となっています。中でも本研究室では、有機半導体を主な対象として、光と電子素子機能を結びつける"オプトエレクトロニクス"に注目して研究を進めています。  
 有機半導体は、高度に発達した化学合成技術を半導体に活用することで、半導体を多彩に機能化したり、物性を自在に制御、さらには新規物性の発現が期待されるなど、非常に魅力的な研究対象となっています。中でも、最近では、有機ELや有機トランジスタ、さらには有機太陽電池など、研究分野の発展が著しいです。本研究室では、固体物理的手法に光・スピン活用技術を重畳させた、独自のアプローチによる物性研究を展開しています。以下にプロジェクトの例を記します。

1.半導体の素子動作を光で観る
 半導体素子にバイアス電圧を印加し、動作させた際には、通常電流が発生し、有機EL素子(LED)では発光も観測されます。そのような素子の評価は、電流や発光量の電圧特性を基になされることが多いです。しかし、例えば電流は、キャリヤの注入、輸送、再結合など様々なミクロ素過程が重畳し、その”最終結果として”計測される物理量に過ぎません。そのため、キャリヤの電子状態に関するミクロな情報は、本来電流の解析からは引き出せません。我々のねらいは、素子動作と分光計測技術を融合することで、素子動作に伴われたキャリヤ生成などの電子状態変化を光信号から直接観測し(右図)、半導体動作をミクロな観点から明らかにすることにあります。また、それにより、素子動作内部に隠された素過程を明らかにし、新規物性の開拓にもつなげようとしています。以下に具体例を記します。
 
i)有機ELでは、注入キャリヤのみならず、生成励起子の直接分光観測も実現しています。
ii
) 太陽電池では、実用条件に即した定常光励起のレーザー分光と組み合わせることで、光キャリヤの素過程を追跡しています。
iii
) 有機FET(トランジスタ)では、Gateバイアス印加に伴われて発生する界面キャリヤの直接分光計測を行っています。

 .電子スピン操作による物性探索
 
有機半導体のみならず、通常導電キャリアは電子スピンを有します。物性研究の上で光利用技術は非常に強力ですが万能ではありません。1の分光計測では、電子波動関数の軌道部分からの情報を評価することに相当しますが、電子スピン共鳴(ESR)を用いることで電子のスピン波動関数からの情報が引き出すことができ、分光情報と相補的になります。特に、本研究室では右図に示したキャリヤペア(電子正孔対またはpolaron pair)に注目しています。これはEL過程において、キャリヤと発光を担う励起子の中間状態として位置づけられ、これまで効果的な計測技術が確立されてきませんでした。
 
我々は、ESR遷移した際の発光量と電流の微小変化を、発光検出ESRおよび電流検出ESR技術により高感度計測することで、そのキャリヤペアの情報を引き出すことを試みてきました。それにより、半導体の物性発現機構にスピンからの新しい知見を提供できます。さらには、SingletとTripletのキャリヤペア間では量子混合状態が形成されていると考えられており、その間をESRにより強励起することで、量子効果の検証実験に利用できると期待しています。

3.各種技術の融合
 一般に、物性の正しい評価を試みようとする場合、一つの測定技術で事足りるとは限りません。そのため、分光技術、デバイス作成技術、電子スピン共鳴の実験手法を融合させた、新しい物性評価技術の構築に取り組んでいます。それにより、物性や機能の発現機構に関する新しい知見を引き出すのみならず、新規物性の開拓に繋げていくことを目的としています。


これらの研究は、実際の研究内容の簡単な紹介に過ぎません。内容に興味を持って頂いた方及び具体的な内容を知りたい方は、ご遠慮無く直接お問い合わせください。


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Updated: Apr 2, 2022

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