大阪市立大学数学研究所ミニスクール
「情報幾何への入門と応用」
OCAMI Min-School on
" Introduction to Information Geometry and Its Applications "



趣旨: 甘利俊一先生,長岡浩司先生により創始された古典的情報幾何の入門その基礎理論と「応用」の解説講義。 今回は量子情報幾何はfocusしない。数学から本格的に情報幾何に目指す大学院生や若手研究者の育成をねらいとする。
組織委員: 大仁田義裕(阪市大)、 小林亮一(名大)、 小谷元子(東北大)、 松添博(名工大)
主催: ・大阪市立大学数学研究所
 21世紀COEプログラム 「結び目を焦点とする広角度の数学拠点の形成」
・名古屋大学大学院多元数理科学研究科
・東北大学大学院理学研究科 
 21世紀COEプログラム「物質階層融合科学の構築」
講師: 長岡 浩司 氏 (電気通信大学 大学院情報システム学研究科)
渡辺 澄夫 氏 (東京工業大学 精密工学研究所)
栗木 哲   氏 (統計数理研究所 数理・推論研究系)
田中 利幸 氏 (京都大学 情報学研究科)


ファイル:
解説講義
長岡 浩司 情報幾何の基礎概念 講義配布資料[1]配布資料その2
渡辺 澄夫 代数幾何と学習理論の関係について その1その2その3
栗木 哲 積分幾何と統計分布理論 PDF ファイル
田中 利幸 確率モデルにもとづく推論の情報幾何 10日分11日分
ショートコミュニケーション
堀江 啓一
(東京大学大学院数理科学研究科 M2)
結び目理論における数値計算 PDF ファイル
杉山 儀
(名古屋工業大学大学院工学研究科 D1)
全臍的な等長はめ込みと全測地的ケーラーはめ込みの位数2の曲線による特徴づけ PDF ファイル
昆 万佑子
(北海道大学大学院理学研究科 D2)
On the second fundamental form of a real hypersurface in a complex space form PDF ファイル
黒須 早苗
(東京理科大学 非常勤講師)
統計多様体の変分とアインシュタイン条件について PDF ファイル
松添 博
(名古屋工業大学工学研究科)
混合分布族の描画ついて PDF ファイル
魚橋 慶子
(大阪府立工業高等専門学校)
対称錐上の主双対内点法と双対構造 PDF ファイル
田中 勝
(埼玉大学工学部)
ゲージ変換とα-接続 PDF ファイル
高野 嘉寿彦
(信州大学全学教育機構)
概複素構造をもつ統計的モデルの例について PDF ファイル
その他 ポスター,  参加者リスト,  プログラム,  アブストラクト,  報告集

アブストラクト:
長岡 浩司 先生 情報幾何の基礎概念

確率分布を点とするような多様体上に何らかの幾何学的構造を導入する場合、 「統計的に同等」な状況ではそこに現れる幾何構造も同型(不変)であってほしい。 幾何構造としてリーマン計量とアフィン接続を考える限り、 このような不変性を満たす構造はフィッシャー計量とα-接続(αは任意の実数) に限られることが知られている。また、 α接続と(-α)-接続の間にはフィッシャー計量を介してある種の双対性が成り立ち、 それによって、ダイバージェンスという距離的な量との結びつきが生じる。 これらの事実は情報幾何の理論的基礎を成すと同時に、 統計学や確率論などへの応用を考える際にも多くの有用な視点を与えてくれる。 本講義では、これらの基礎的部分の解説を中心に、 統計や確率の問題にどのような形で情報幾何が関わってくるのか、 その代表的かつ基本的な例をいくつか紹介する。 なお、リーマン計量やアフィン接続などの微分幾何に関する基礎事項は予備知識として仮定するが、統計学については基礎から解説する。 ただし、以下の事項について多少とも知識があれば大いに理解の助けになるだろう: フィッシャー情報量、クラメル・ラオ不等式、指数型分布族、最尤推定、 十分統計量、カルバック情報量、(シャノン)エントロピー。

渡辺 澄夫 先生 代数幾何と学習理論の関係について

ある確率分布に従うサンプルが与えられたとき、 サンプルから確率分布を推測することを学習という。 近年の学習理論においては、 確率分布全体の集合が特異点を含む解析的集合であるモデルが広く利用されているが、 この講義では、 そのようなモデルを扱うための基礎となる数理的な構造について述べる。 具体的には、代数幾何・超関数・経験過程などが、 情報科学の中でどのように役立つかを紹介する。

栗木 哲 先生 積分幾何と統計分布理論

滑らかなサンプルパスを持つ確率過程, 確率場の最大値の分布を近似する方法として, 積分幾何を用いる方法(オイラー標数法)が知られている. これは,添字集合に確率過程の共分散関数から自然に定義される計量を導入し, その多様体(添字集合)の曲率測度で分布の近似式を記述する方法である. そのアイデアと数学的な取り扱い,ならびに統計学の応用について解説する 予定である.

田中 利幸 先生 確率モデルにもとづく推論の情報幾何

確率モデル p(x_1, x_2, ..., x_n) が既知であるとき, 例えば確率変数 x_1 の期待値 E(x_1) を求めるといった推論の問題は, 定義に従って粛々と計算を進めていけば解くことができると考えられる一方で, 必要な計算量が確率変数の個数 n に対して指数オーダーとなりうる, という点で, 情報科学の実用的な側面から解決されるべき重要な問題を提起する. 本講義では,確率モデルにもとづく推論の問題が, 情報幾何の立場からはある種の「正射影」によって記述される, という「推論の情報幾何」の基礎的な部分について解説し, 併せて平均場近似や確率伝搬法などの最近の近似的確率推論の手法に対する幾何学的描像について紹介する.

堀江 啓一 結び目理論における数値計算

結び目理論とは,紐の結び方や絡まり方を研究する学問である。元々は数学や物理学の一分野として発展してきたが,計算機幾何学の一分野としても近年発展が目覚しい。本講演では私が開発した幾何計算ライブラリを使用しながら,結び目理論において計算機や情報理論がどのように用いられているかを紹介する。なお理論的に難しい箇所は避け,入門から解説する予定である。

杉山 儀 全臍的な等長はめ込みと全測地的ケーラーはめ込み の位数2の曲線による特徴づけ

昆 万佑子 On the second fundamental form of a real hypersurface in a complex space form

We prove that if the second fundamental form A of a real hypersurface M in a non-flat complex space form satisfies g(AX,Y)=ag(X,Y), a being a function, for any tangent vector fields X and Y of the holomorphic distribution on M, then M is a totally η-umbilical real hypersurface or locally congruent to a ruled real hypersurface.

黒須 早苗 統計多様体の変分とアインシュタイン条件について

統計多様体に対して,そのリーマン計量,アファイン接続についての変分を考える.リーマン多様体上にリーマン計量,アファイン接続,$3$次形式と呼ばれる対称 $(0,3)$ テンソル場のうち,$2$つの構造を与えると,統計多様体としての構造が決まり残りの$1$つの構造は自然に決まる.統計多様体の構造を保つ,いくつかの条件の下での曲率やスカラー曲率の第$1$変分について考える. リーマン幾何学で良く知られているアインシュタイン条件について,統計多様体版とは,どのようなものか,また,リーマン多様体に関するアインシュタイン条件に見られるリッチテンソルの性質は,統計多様体ではどのようになっているか,について関連を述べる.

松添 博 混合分布族の描画ついて

混合正規分布族やニューラルネットワークの状態空間などは特異点を持つ空間であることが知られている.そこで,そのような空間が具体的にどのような形状をしているのかを描画する手法を検討する. (ミニスクールのホームページに載せている絵の説明です.)

魚橋 慶子 対称錐上の主双対内点法と双対構造

線形制約をもつ対称錐上の最適化問題の解法と,統計多様体の双対幾何構造との関連について述べる.

田中 勝 ゲージ変換とα-接続

ゲージ変換を与えればそれに対応した接続が決まり,接続が与えられればそれに対応したゲージ変換が存在する.この事実は数理物理学の分野では常識であろう.情報幾何学におけるα-接続も例外ではなく,ゲージ変換から導くことができる. ここでは,実際にゲージ変換を与えα-接続を導出し,ゲージ自由度について考察する.

高野 嘉寿彦 概複素構造をもつ統計的モデルの例について

確率分布のなす空間は,リーマン計量としてフィシャー計量, アファイン接続として接続をもつ統計多様体になる。 統計多様体には概複素構造や概接触構造が導入され, フィシャー計量に関して共役なもう一つの概複素構造や概接触構造が定義できる。 今回,統計的モデルとして,特別な形の共分散行列をもつ 多次元正規分布のなす空間を考え,この空間が偶数次元のときケーラー構造を もつことを報告する。


「情報幾何への入門と応用」
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製作 のだLast updated on 13/Jun/2006.