Development of Organic Synthesis Methods

環境に優しいクロスカップリング開発

芳香族ハロゲン化物とアリール金属試薬あるいはアルケン等のクロスカップリングは、医農薬の中間体やπ共役分子合成に広く利用されている極めて重要な合成反応ですが、 金属塩等の廃棄物が大量に出るため、その軽減化が世界中で研究されています。 私たちが新しく開発した触媒を用いると、芳香族炭化水素の炭素―水素結合切断を伴う直接カップリング反応が起こることを発見しました。 この反応の廃棄物は水のみであり、環境に優しい次世代型クロスカップリング反応です。

fig1

炭素―水素結合を位置選択的に切断するために、酸素や窒素等のヘテロ元素を含む配向基が利用されます。この配向基が触媒の金属中心に配位するため、その近傍で効率よくカップリングを行うことができます。特にアルキンとの脱水素カップリングでは、様々な縮合ヘテロ環化合物が簡便に一段階で合成できます。

入手容易なビルディングブロックを用いた有機合成

現代社会での化学品製造プロセスは、化石資源由来の原料をもとに成り立っていますが、今後バイオマスを始めとする多様な有機資源を利用したプロセスへと転換する必要があります。原料が変わると、ここから有用分子を合成するために必要な反応も変わります。われわれのグループでは、バイオマス等から容易に入手できるカルボン酸類が、有機合成における重要なビルディングブロックになると考え、その変換法開発を行っています。すでにカルボキシル基の近傍での直接カップリング法を開発し、生物活性や発光特性を有する様々な有用分子を合成することに成功しています。


Bioactive Molecules:Synthesis and Properties

放線菌が産生する特異な生物活性を有する化合物の合成と構造活性相関

UK-2Aは大阪市立大学の杉本キャンパスで採取された放線菌が産生する抗生物質です。最近、マウス脾細胞を用いたTh2 サイトカイン産生阻害活性を指標にして、海洋放線菌の代謝産物から単離・構造決定されたスプレノシン Bの構造は、UK-2Aと呼吸阻害剤Antimycin A3の部分構造を併せ持つものです(UK-2A のβ,γ-ジヒドロキシカルボン酸とアシル側鎖、およびAAのL-トレオニン残基とN-ホルミルアミノサリチル酸)。Th2 サイトカイン阻害薬はアレルギー性炎症を抑制し、喘息症状などのアレルギー症状の軽減に有用なことから、これらの化合物の免疫抑制作用に関する構造活性相関研究を行っています。

プルヌスタチン A(固形癌細胞に特有な分子シャペロンGRP78の発現抑制)とネオアンチマイシン(KRASカーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログの細胞膜への局在化を阻害)は4つのユニットがエステル結合で連結した15員環テトララクトン構造に3-(formylamino)-2-hydroxybenzoic acidがアミド結合した、いわばAAが環拡大した抗生物質です。これらの化合物が示す生物活性は抗がん剤のリードとして有望なものなので、私たちのグループでは合成研究を開始し、すでに全合成を達成しています。今後、構造活性相関研究やドッキングシミュレーションから創薬につながる化合物へと展開していきます。

生物活性物質の含フッ素アナログ合成

フルオロオレフィン構造を持つ化合物にはアミド結合のイソスター(等価体)としての可能性があり、本来の活性を維持したまま、加水分解酵素への抵抗性を示す化合物が知られています。また、有用な含フッ素合成ブロックでもあります。そこで、私たちのグループではフルオロオレフィン構造の合成法開発を行っています。これまでに、グルタミンやアスパラギンのアミド側鎖をフルオロビニル基で置換した含フッ素アミノ酸擬似体の合成をパラジウム触媒によるギ酸還元反応を鍵段階とする合成経路で達成しています。

中国横断山脈地域産植物の多様性に関する研究(化学成分分析)

同一種の植物であっても、生育環境が異なると、全く別の化学成分の組成(異なるケモタイプ)となりえます。環境的な要因で、生合成関連の遺伝子発現が変化したものと考えられます。このような成分の多様化と適応・種分化との関連性を明らかにすべく研究を進めています。
研究グループのページ

繊毛虫の生命現象における化学コミュニケーションの解明

単細胞性原生動物である繊毛虫において、捕食と性現象はその生命現象の根幹を担うものです。捕食者−被食者相互作用では、毒を使った攻撃あるいは毒を使った自己防御の行動を起こす前に、まず相手に由来する情報を認識していますが、これはまさに化学物質による情報伝達です。繊毛虫が産生する自己防御物質や接合誘導物質を探索・単離し、それらの化学構造と機能の解析から、繊毛虫の生命現象における化学コミュニケーションを明らかにすべく研究を行っています。
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