大阪市立大学 原子核理論研究室

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<原子核の反応と構造> (櫻木:続き)

 

<ラザフォードによる原子核の発見 (1911)

「原子核」の存在を世界で初めて発見したのは、当時、イギリス・マンチェスター大学にいたアーネスト・ラザフォード(写真)です。ラザフォードは、助手のハンス・ガイガーやアーネスト・マースデンとともに、金などの金属箔に、放射線の一種であるα線(4He原子核)を照射する散乱実験を行い、その実験結果が、『原子の中心に、原子内のすべての質量とすべての電荷が集中した“点状の物体”がある』と仮定しなければ説明できないことを示しました(1911)。この点状の物体こそが『原子核』(Atomic Nucleus)だったのです。(ちなみに、ハンス・ガイガーは、現在でもよく使われるガンマ線測定器『ガイガー・カウンター(ガイガー・ミュラー計数管)』でも有名です。)

 

<原子核の大きさや性質はどうやって調べるのか?>

原子核はあまりにも小さく、人間の目には見えません。この極微の原子核の世界を調べるためには、原子核を発見したラザフォードが行ったように、α線などの粒子を原子核にぶつけて散乱の様子を調べる実験を行う必要があります。現代では、自然放射線であるα線ではなく、電子や陽子、α粒子を含む種々の原子核等の探索粒子を加速器で高エネルギーに加速し、 それらを調べたい原子核に衝突させ、散乱や反応の結果放出されてくる様々な粒子の種類やエネルギー、 速度などを精密に測定することによって、 眼には直接見えないミクロの世界を調べることができます。 その為には、加速器や測定器などの実験装置に加え、そこでどんな散乱現象や核反応が起こっているのかを予測する 「知恵の眼」が必要です。この「知恵の眼」が 「原子核反応理論」です。このような方法で調べられてきた原子核は、実に様々な形状や運動様式を示すことが分かってきました。原子核の内部構造や形状、運動様式等の原子核の多様な性質などを研究するのが 「原子核構造研究」です。

<原子核を理解するのに必要な物理は?>

 原子の1万分の1以下の極微の世界ですから、もはや、ニュートン力学は適用できません。 そこは「量子力学」の世界です。 同時に、不確定性原理により、原子核内の核子は非常に高速で運動するため、 アインシュタインの「相対性理論」も使う必要があります。 このように、原子核の理解には、量子力学と相対性理論が不可欠です。 また、原子核は核子の「同種粒子多体系」ですので、「量子統計力学」の手法も有効です。 従って、原子核の構造や反応を理解するためには、古典力学、電磁気学に加え、量子力学、統計力学、相対性理論などの 現代物理学の知識を総動員することが必要なのです。

 

<実験と理論が協働する原子核物理学>

先にも述べたように、極微の原子核の世界を肉眼で直接見ることは出来ませんが、我々は「現代物理学」という 「科学の眼」で極微の世界の原子核の姿を、ありありと「見る」ことができます。 そのためには、実験と理論が強力にタイアップし、肉眼では見えない極微の量子世界の ベールを一枚一枚めくっていくことが不可欠です。 原子核物理学では、理論で予想される現象を実験で検証したり、逆に、 実験による新たな発見を説明できるモデルや理論を作り上げる、 という具合に、理論的研究と実験的研究が相互に刺激し合い、協力し合って発展を続けています。 我々の「原子核理論」研究室も、国内外の理論や実験のグループと共同で、 最先端の原子核物理学の研究を推進しています。

 

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