研究紹介:NASSCA光ピンセット

NASSCA光ピンセットってなあに? 3. 基板の違い

myicon 博士はどうしてブラックシリコンを使うことを、
思いついたんですか?

 

tartgeticon 最初は、プラズモン光ピンセットという光ピンセットを研究していたんだ。
弱いレーザーでも水中のDNAを捕まえられる、とても優秀な光ピンセットなんだよ。

tartgeticon だけど基板に使われている金は高価で、作るのも難しいんだよ。
レーザーを当てた時に起こる熱泳動(ねつえいどう)も問題なんだ。

myicon 熱泳動って、なんですか?

tartgeticon 金に限らず、金属の基板は、レーザーを当てた箇所に熱が出るんだ。
その熱で温まった水と、そうでない水との温度差で、熱泳動という水の流れができるんだよ。
熱泳動が大きくなると、上手く物を捕まえることができなくなるんだよ。

tartgeticon

tartgeticon もちろん、熱泳動を利用する研究もあるんだけどね。
熱泳動が起きないようにしたいと思って、熱の出ないブラックシリコンを使ったんだ。

myicon ブラックシリコンは黒いから、熱が出そうですけど。

tartgeticon 確かに黒い物は、光を吸収して熱が出るね。
ブラックシリコンは光を吸収せず、横に逃しているから熱が出ないんだよ。

myicon 表面のギザギザが効いているんですね!

トラッピ博士のメモ帳

tartgeticon レーザーの当たる範囲は、基板上のマイクロメートル(μm)単位の範囲です。
たとえ5℃ほどの温度上昇でも、マイクロメートルの世界では、
通常では考えられないほど大きな温度差なのです。
この大きな温度差によって、水に力が加わり、熱泳動が起こります。
ブラックシリコン基板では熱泳動が起こらないので、様々な実験が可能となるでしょう。

(C) 2018 M. Yoshioka
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