集中講義(2013年度)

科目名 代数構造論特別講義Ⅲ・Ⅳ
日程 1月14日(火)~1月17日(金) 
談話会:1月15日(水) 16:30~17:30)  
講演者(所属) 斉藤 義久(東京大学)
タイトル Perverse sheaves入門(Perverse sheaves昔ばなし)
場所 数学講究室(共通研究棟 3階 301)
講義内容 大雑把に言ってperverse sheaves(偏屈層)とは,ある種の条件を満たす層の複体のことであり, 1982年のBeilinson-Berenstein-Deligneによる 有名な論文``Faisceaux pervers''によって確立された概念であると言って良い. Peverse shavesが導入された元々の背景には数論幾何的な問題意識があったように思われる (この辺は担当者は門外漢なので,詳しくは知らない)が, その導入直後から本来の目的であった 数論幾何への応用以外にも,数々の数学の分野に多大な影響を与えた.中でも表現論への応用においては, いくつもの著しい成果が挙げられており,この傾向は現在進行形で続いる.特に,近年では 『幾何学的表現論』と呼ばれる一分野が確立された感があり, perverse sheavesは表現論を 研究する上で欠かせない道具の一つとなっている.  しかしながら,『perverse sheavesは定義が抽象的でわかりにくい』という話を良く耳にする. これは,perverse sheavesが『層のなす導来圏の対象 として定義される』という事実からして 致し方ないことではあるのだが,(担当者自身の経験も含めて)初学者がこれを学ぼうとする場合の高い障壁に なってしまっているのも,また事実であると思う. このような事情を踏まえ,今回の講義では, perverse sheavesの一般論を展開した後,

(a) Weyl群のSpringer表現の構成

(b) Kazhdan-Lusztig多項式の幾何学的構成

等の具体例を通じて『perverse sheavesの理論が,表現論の研究の中でどのように 使われるのか?』について,解説したい.これらは,ともに1980年代前半 (今から30年以上前!) に確立された,いわば``昔ばなし''であるが,perverse shaevesの理論が表現論に応用される 様子を概観するのには,格好の題材であると思う. 講義を通じ,perverse shaevesの理論を 少しでも身近に感じて頂くことが出来れば幸いである.さらに付け加えるならば,これらは 『30年前に終わってしまった話』 ではなく,最近の話題にも関連する``古くて新しい話''でもある. 時間が許せば,その辺の事情についてもお話ししたい.
科目名 幾何構造論特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 12月2日(月)~12月6日(金)
談話会:12月4日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 北野 晃朗(創価大学)
タイトル 結び目のtwisted Alexander多項式入門
場所 数学講究室(共通研究棟 3階 301)
講義内容  1990年代にLin, 和田らによってtwisted Alexander多項式が導入され、その後Alexander多項式に 関する結果を精密化する形で 様々研究されてきている。一般的にはtwisted Alexander多項式はある 性質を満たす有限表示群に対して定義されるが、この集中講義 では考察の対象を3次元球面内の結び目 に制限する。そして結び目の古典的なAlexander多項式と対比しながら、どのように結び目の twisted Alexander多項式が定義され、どのような性質が成り立つかを解説したい。後半では結び目のfiber性の 判定に焦点を当て、 この方向での研究の大きな結果の一つであるFriedl-Vidusiの理論について紹介をしたい。 特になぜtwisted Alexander多項式がfiber性 と関係するのか、その雰囲気を伝える事を目標にしたい。
科目名 数理解析学特別講義Ⅰ・Ⅱ
日程 6月10日(月)~6月14日(金)
談話会:6月12日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 相川 弘明(北海道大学)
タイトル 熱核の評価と境界ハルナック原理
場所 数学講究室(共通研究棟 3階 301)
講義内容 熱方程式の解は熱核の積分で与えられる. したがって熱核をよく理解することが大切である. 具体的な熱核の表示はきわめて限られた 領域に 対してのみわかっている.一般の領域に対しては 熱核の詳しい評価(境界近くでの)が重要である. 調和関数に対しても状況は同じで, 調和関数は Green関数で表示されるが,Green関数の具体的な 形は限られた領域のみにしかわかっておらず, その評価が大切である.これは境界 ハルナック原理 で記述される. この講義では熱核の評価と境界ハルナック原理が 容量的幅と箱議論によって統一的に導かれることを 示す.必要となるのは比較原理と調和測度 に対する 簡単な性質だけであり,対数ソボレフ不等式や確率解析 を用いる従来の方法よりはるかに初等的である.