集中講義(2001年度)

科目名
日程 6月26日(火)~6月29日(金)・7月3日(火)
談話会:4月24日(水) 15:30~16:30)
講演者(所属) 小松 玄 (大阪大学)
タイトル 双正則不変式論への招待
場所 数学講究室(3040)
講義内容 一変数函数論のリーマンの写像定理によれば, 単連結な有界領域は単位円板に双正則同値である. 多変数函数論ではリーマンの写像定理が成立しないので, ふたつの領域が双正則同値でないことを どうやって判定するかが問題となる. 領域の境界が滑らかと仮定して, 境界の局所幾何に関する 不変式を考えるというのが, ポアンカレとエリー・カルタン以来のアイディアである. つまり, リーマン幾何をモデルとする局所微分幾何の手法を 多変数函数論に持ち込もうというわけである. もちろん,局所幾何から大域幾何への移行も射程にいれている. このアイディアについては1970年代 の中頃に大きな進展があったが, その後1980年代後半に再び大きな進展があり, 今日にいたるまで 活発に研究されている. とはいえ,モデルのリーマン幾何の場合と比べて理論の完成度はまだまだで, 基本的な未解決問題がたくさんある. この集中講義では上記理論への招待すなわち初等的な入門を試みる. 厳密な証明や正確な記述より, アイディアを粗く伝えることを優先したい. だから特に予備知識がなくてもわかるとは思うが, 基礎知識(線形代数と微積分 (三年生までに習ったこと)、一変数函数論の基礎 (一次分数変換, ベキ級数展開など))があればもっとよくわかる. 参考文献も予習する必要はないが (この集中講義 より内容が多いしむつかしい!), 講義後にはすらすら読めるようになっているかもしれない (それを 講義の目標としたい).

参考文献:

M. Beals, C. Fefferman and R. Grossman Strictly pseudoconvex domains in C^n, Bull. Amer. Math. Soc. (N.S.) 8 (1983), 125--322; (Princeton 大学での Fefferman による講義を整理したもの), 次の本にも再録されている ``The Mathematical Heritage of Henri Poincare'' ed. by F. E. Browder, Proc. Sympos. Pure Math. 39.1, pp. 189--386, Amer. Math. Soc., 1983.

K. Hirachi and G. Komatsu, (総合報告) Invariant theory of the Bergman kernel, Adv. Stud. Pure Math. 25, pp. 167--220, Math. Soc. Japan, 1997.

科目名
日程 7月9日(月)~7月13日(金)
講演者(所属) 中西 康剛 (神戸大学)
タイトル 局所変形からみる結び目の不変量と幾何
場所 数学講究室(3040)
講義内容 結び目は、文化人類学の対象になるほどに古くから, また、身近なものとして扱われてきました. 例えば、「あやとり」などもそのひとつで, 世界各地での多様な「あやとり」文化の発展があります. 結び目という素朴な対象には、驚く程に豊かな構造が隠されており, 現代のトポロジーをもってしても, その豊かな構造のすべてを描き出すまでには残念ながら至っておりません. 局所的な変形の積み重ねにより、どのような構造が保たれ, あるいは、破壊されるのかについて論じたいと 考えています.

結び目の変形の基本であるライデマイスター移動に関する問題から, 3 彩色可能性まで, 結び目理論の入門と講義の概要.

結び目や絡み目の図で交差の上下をいくつか入れ換えると 自明なものになることから,この局所変形は、 いくつの成分からなるのかという (単純ではあるけれども 構造と対応していると考えれます. 結び目解消操作に関する話題を扱う.

絡み目でそのうちのふたつの結び目に注目すると, 絡み数というどの様に絡んでいるのかの度合を示すものが定義できます. ここで △型結び目解消操作という局所変形を考えると, この絡み数という構造と対応しています。 その他, 色々な構造と対応する局所変形に関する話題を扱う.

近年開発された Vassiliev 不変量は, 葉広氏による Clasper Theory により解釈できます. 谷山・安原両氏によるより視覚的な議論により, この話題を扱う.

渋谷氏により提唱された link homotopy の特殊化になる局所変形である, △ link homotopy の話題を扱う.

この集中講義では上記の研究方法から得られた成果の解説を試みる. 厳密な証明や正確な記述より, アイディアを伝えることを優先したい. だから特に予備知識がなくてもわかるとは思うが, 基礎知識(結び目理論の基礎 (位相空間の基礎知識,結び目の多項式不変量など))が あればもっとよくわかるし, この観点からの研究もすぐに始められる可能性がある. 参考文献も予習する必要はないが, 講義後にはすらすら 読めるようになっているかもしれない (それを講義の目標としたい).

参考文献:

K. Habiro: Claspers and finite type invariants of links, Geom. Top. 4, 1 - 83, 2000.

Y. Nakanishi: On generalized unknotting operations, J. Knot Theory Ramif. 3, 197 - 209.

Y. Nakanishi and Y. Ohyama: Delta link homotopy for two component links, III preprint.

科目名
日程 9月17日(月)~9月21日(金)
講演者(所属) 国田 寛 (南山大学)
タイトル 数理ファイナンス(離散モデルを中心として)
場所 数学講究室(3040)
講義内容

一期間モデル(証券市場モデル、裁定機会、リスク中立確率、完備市場など)

多期間モデル(情報構造、マルチンゲール、オプションの価格付など)

極限移行と連続モデル、Black-Sholes の公式(Cox-Ross-Rubinstein の方法)

科目名
日程 11月19日(月)~11月22日(木)・11月24日(土)
談話会:11月21日(水) 16:30~17:30)
講演者(所属) 伊藤 雄二 (東海大学)
タイトル エルゴード変換と種々の整数列
場所 数学講究室(3040)
講義内容 前半に有限不変測度を持つエルゴード変換の再帰性とそれに関係する ポアンカレ数列の話をして、後半に、 有限不変測度を持たないエルゴード変換の 特有な性質とそれに関連する色々な数列のことについて話すつもりです。
科目名
日程 12月17日(月)~12月21日(金)
談話会:12月19日(水) 16:00~17:00)
講演者(所属) 谷崎 俊之 (広島大学)
タイトル 非可換スキームとしての量子旗多様体
場所 数学講究室(3040)
講義内容 この講義では,A. Rosenberg の最近の結果に基づき, 複素半単純リー群の旗多様体 X=G/B の,量子群類似について考察する. X を代数多様体と思うには

・射影座標環 R を持つ射影多様体 Proj(R)

・R(w)をアフィン座標環とするアフィン代数多様体 Spec(R(w)) を貼り合わせたもの

の二つの見方がある.量子群を用いることにより,R および R(w) の q 類似,Rq および Rq(w)を構成する ことができる. ただし,これらは非可換な環になる.このとき,「Proj(Rq) が Spec(Rq(w)) の貼り合わせである」ということの幾何学的解釈 について,説明することを目標とする. また時間が許せば,その表現論への応用についても述べる.