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<2006年 秋季>
数学や理科の好きな高校生や予備校生の皆さんに、数学や理科にさらに興味を持ってもらえるように企画した「高校生のための市大授業」です。大学の授業や大学の教室・実験室がどんなものなのか、大学の中の様子も知っていただきたく、本学杉本キャンパスで行います。2004年、2005年の春、秋と2006年の春に引き続き6回目の市大授業です。日程は11月12日(日)です。高校や予備校からのFAXでの一括申込ばかりでなく、個人的申込方法(葉書や電子メール)も採用します。前半(奥沢、佐藤、志賀)と後半(大仁田、手木、篠田)の2つの授業を受けることもできます。詳細は大阪市立大学理学部ホームページ(http://www.sci.osaka- cu.ac.jp/)に平成18年9月から掲載します。定員を超えた場合には教室を変更してできるかぎり受講可能とします。受講不可能のときのみ、11月8日(水)に連絡します。

2006年11月12日(日) <終了しました>
◇前半:午後1時00分〜午後2時30分
素粒子をみると宇宙の誕生がわかる!?
物理学科教授 奥沢 徹(定員100名、講義)

 私たちの体、私たちが日常生活に使っているいろいろな物、そして私たちが住む地球やはるか遠くにある星々も、全は何かの物質から成り立っています。その物質を、細かく、細かく粉砕して見て行くと分子、原子、原子核の順に小さくなり、ついには、素粒子から出来ているという結論にたどり着きます。これら素粒子を紹介するに当たって、高等学校の物理の教科書に載っているド・ブロイ波長、質量欠損のエネルギー、光(電磁波)のエネルギー等の簡単な復習と補充、量子論の基礎である不確定性原理等を紹介して、なぜ素粒子のような超微細構造をみることができるのかを説明し、現在の素粒子像を紹介します。
 また、今後さらに調べる必要があるもっと小さな世界では、なにが予想されるかを考えてみます。
 一方、超巨大なものの代表である私たちのいる大宇宙について、良く知られている宇宙背景輻射(放射)、遠方の星から届く光がドップラー効果により波長が長く(赤方変位)なって見えることや、その変位量が星までの距離に比例している(ハッブルの法則)等の観測結果の紹介と、背後にある宇宙観の簡単な説明をします。
 最後に、これらからわかったことを繋ぎ合わせて考えて見ると、不思議なことに素粒子を調べることが、私たちを包み込む膨大な空間である宇宙の誕生の瞬間(ビッグバン)にとても近い状態を調べていることになると気が付くでしょう。
 このようなことをできるだけ平易に説明してみる予定です。

<プロフィール>
職歴: 大阪市立大学理学部助手、同講師、助教授を経て大阪市立大学大学院理学研究科教授。この間、フランス国立サクレー原子核研究所研究員。
学歴: 東北大学理学部物理学科卒業、
東北大学大学院理学研究科原子核理学専攻修了(理学博士)
専門分野: 高エネルギー物理学(素粒子物理学実験)

分子がつくるナノの世界
化学科教授 佐藤和信(定員100名、講義)

  1ナノメートル(10億分の1メートル)以下の世界では、原子同士がさまざまな化学結合様式で結びつき、多様な構造と性質をもった分子たちが活躍しています。その中には数多くの美しいかたちをもつ分子が存在しますが、単一の原子だけで構成されるサッカーボール型分子であるフラーレンはその代表例です。フラーレンを構成する炭素は、お互いに隣り合う3個の炭素と化学結合を作ることにより均整のとれた形を作っています。また、フラーレンにカリウムなどのアルカリ金属原子を混ぜたものが低温で超伝導性を示すことが明らかになり、美しい形だけでなく面白い性質も持ち合わせていることがわかっています。このような分子の形と性質は、どのように考えたらよいのでしょうか。それには、化学結合において重要な役割を担う電子の存在を抜きに語ることは出来ません。
 この授業では、原子・分子の世界がどのくらい微小な世界であるかを感覚的に感じてもらうことを皮切りに、原子の電子配置を少し詳しく紹介し、原子・分子の構造と化学結合、性質について考えます。

<プロフィール>
職歴: 大阪市立大学理学部助手、講師、助教授を経て、2006年より大学院理学研究科教授
学歴: 大阪市立大学理学部化学科卒業
大阪市立大学大学院理学研究科後期博士課程修了、博士(理学)
専門分野: 分子物理化学、電子磁気共鳴

季節適応のなぞを探る〜ハエの脳手術と見てみよう〜
生物学科助教授 志賀向子(定員100名、講義)
 地球にふりそそぐ太陽の光は生物に季節を知らせる重要な信号になります。多くの生物は、一日のうちの明るい時間、あるいは暗い時間の長さから季節を知り、適切な時期になると、植物は花を咲かせ、動物は成長して子供を産みます。反対に、厳しい季節がやってくる前に、あらかじめ環境に耐えられるよう、体の状態を変化させます。
 明るい時間と暗い時間の繰り返し(光周期)に反応して、体の状態を変化させる性質を光周性と言い、植物、動物に広く見られます。昆虫の場合、一年に複数の世代を持つものは、光周性によって成長と休眠を調節します。昆虫の休眠とは生理的な調節機構によって成長が止まり、次の発育段階に進まないことです。多くの昆虫は、温度が下がるなど厳しい環境がやってくるよりも前に光周期に反応して休眠に入ります。
 昆虫はどうやって季節を知り、休眠に入るのでしょうか。そのしくみは脳にあります。昆虫の脳を構成する神経細胞の数は私たち哺乳類と比べるとずっと少ないですが、昆虫の脳にもさまざまな領域があり、役割を担っています。この授業では、動物生理学という立場から、昆虫の光周性や休眠についてお話します。そして、ハエの脳のライブ手術を見ていただき、光周性や休眠のしくみを探る研究を紹介します。

<プロフィール>
職歴: 大阪市立大学理学部助手,同大学講師を経て,大阪市立大学大学院理学研究科・助教授
学歴: 岡山大学理学部生物学科卒業、同大学院自然科学研究科博士課程修了、理学博士
専門分野: 神経生物学


◇後半:午後3時00分〜午後4時30分
曲線と曲面の数学〜石鹸膜と極小曲面〜
数学科教授 大仁田義裕(定員100名、講義)

 皆さんの身近には, 種々様々な曲がった線や面を見ることができます。そのような「曲線」や「曲面」も数学の興味深い対象です。例えば,優れた打者がホームランしたときの打球は実に美しい軌道を描きます。これは放物線という二次関数で書ける曲線です。女性が懸けている素敵なネックレスの形は放物線のようにも見えますが、双曲線関数のグラフが表す曲線で懸垂線と呼ばれるものです。外国人も感動する日本一の景観の富士山の稜線は,指数関数のグラフによく似ています。最近訪ねた知人宅の玄関前にデザインされた彫刻の稜線は3次曲線のようにも見えますが,数学的にどんな曲線か不明です。 次は、身近な「曲がった面」について見ましょう。
 石鹸水に閉じたワイヤーを浸して石鹸膜やシャボン玉を作る実演から始めましょう。そうすると、たいていはその閉じたワイヤーを縁にして石鹸膜が張りますね。どんな形の閉じたワイヤーに対しても石鹸膜が張られるのでしょうか? あるいは、石鹸膜が張られないような閉じたワイヤーの形はあるのでしょうか?という疑問が湧いてきますね。そこで、どんどん実験してみればわかるかもしれないと思って、ワイヤーを色々な形に閉じて(「結び目」なんかも作ってみたりして)石鹸水につけて見るわけです。次々できる石鹸膜を見ていると、そのうち、なんか楽しい気分になって煩わしいことも忘れて夢中でいろいろやってしまいます。なぜでしょう? まずは難しいこと抜きにして、「石鹸膜の形状は、いつもとてもきれいだ」ということに気づきます。なぜでしょう? 石鹸膜も、なんらかの数学的な「曲面」なのでしょうか?
 空間内に閉じた「曲線」が与えられたとき,それを張る「面積」を最小にする「曲面」を求める問題は「プラトー問題」と呼ばれる数学の有名な問題でした。そのような曲面は、「極小曲面(Minimal Surfaces)」と呼ばれています。実は、石鹸膜は、この「極小曲面」というもので表わされます。数学的には、極小曲面というものは、「エネルギー」を最小化する「写像」を応用して構成されます。このあとは授業でお話したいと思います。 ほかにも、数学には、いろいろ興味深い「曲線」や「曲面」はたくさんあります。
 数学的な「曲線」や「曲面」は、「数式」や「方程式」で表わされて厳密ですが、その形状がなかなか分からないことが多いです。問題の曲線や曲面のだいたいの形でも目で見られるならば、それをもとに「考える」ことができます。数学的対象は一般に難しいですから、できるなら目で見られるように(可視化)して分かりやすくすることはとても大切です。最近は、数学的な「曲線」や「曲面」を可視化する数学的ソフトウエアも20年前には想像できなかったほど進歩してかつ手軽になっています。
 今回は、市大数学研究所の特任助手の酒井高司 氏にも強力な協力をお願いして、コンピュータの最新の数学的ソフトウエア 3D-XplorMath (URL :http://vmm.math.uci.edu/3D-XplorMath/)等を駆使して、曲線・曲面の興味深いグラフィックやムービーをふんだんにご紹介したいと思います。

<プロフィール>
職歴: 東京都立大学理学部数学科・助手, 助教授、
東京都立大学大学院理学研究科数学専攻・助教授、 教授を経て、2005年4月より、大阪市立大学大学院理学研究科数物系専攻・教授
ドイツ・マックス-プランク数学研究所(ボン)客員研究員 (1987-1989)
学歴: 茨城大学理学部数学科卒業
東北大学大学院理学研究科数学専攻博士課程修了, 理学博士
専門分野: 微分幾何学,調和写像論

電子はミクロな磁石〜化学結合から有機物の磁石まで〜
物質科学科教授 手木芳男(定員100名、講義)

 皆さんは、電子というものがミクロな磁石としての性質を持っていることを知っていますか?電子は、マイナスの電荷を帯び“自転(スピン)している”ためミクロな磁石としての性質を持っています。実は、この電子の自転(スピン)の向きが、色々な所に関係しています。皆さんが高校で習う化学結合や元素の周期律にも、このスピンをいうものが関係しています。もちろん物質の磁石としての性質(磁性)は、この電子のスピンの向きがそろうことによって起こるマクロな量子現象です。また、発光現象(りん光)や化学反応などにも関係します。この講義では、高校で習う化学結合と元素の周期律にどのように電子のスピンが関係しているか?から始まって、最近の研究領域である有機物の磁石までを電子のスピンというものに焦点を絞って講義します。

<プロフィール>
職歴: 大阪市立大学理学部助手、助教授を経て、大阪市立大学大学院理学研究科・教授、その間Alexander-von-Humboldt財団・奨学研究員(Stuttgart大学)、分子科学研究所・客員助教授、科学技術振興事業団(JST)・さきがけ21研究者等を兼職
学歴: 大阪市立大学理学部化学科卒業、同大学院理学研究科博士課程修了、理学博士
専門分野: 物性物理化学、磁気共鳴、分子磁性

地球を構成する鉱物
地球学科講師 篠田圭司(定員20名、実習)

 都市に住んでいる我々は普段、地球を造っている原材料物質とも言うべき鉱物を積極的に見る機会は少ないかもしれませんが、高度に研磨された天然結晶や、天然で結晶化した規則正しい外形を示す結晶には目を引かれることがあります。天然に産した一定の化学組成と結晶構造を持つ物質を鉱物と言います。たとえばダイヤモンドは高温高圧下で炭素が結晶化した鉱物です。炭素の身近な例は鉛筆の芯ですが、あの黒い物質の結晶の名前はグラファイトで化学組成は炭素ですがダイヤモンドではありません。
 ダイヤモンドとグラファイトは、結晶化する温度圧力条件の違いで、全く違う物性の結晶となる代表例です。地球の深部は高温高圧の状態で地球を構成する物質の様々な反応が起こり鉱物が結晶化しており、形成時の温度・圧力によって多様な鉱物が形成されます。我々が現在手にできる鉱物は、そのような履歴を経た物質と見なすことができますから、鉱物を調べるとにより様々な地球内部の状態を知ることができます。
 鉱物を研究する手法の一つに高温高圧実験があります。実験室で地球深部の高温高圧状態を実現させて高圧鉱物を合成してみようという試みです。
 本講義では、ダイヤモンドアンビルセルという高圧発生装置を用いて、簡単な模擬実験を行います。温度で物質の状態が変化することはよく体験することですが、圧力をかけることにより水が結晶化する様子を観察します。そして、多様な鉱物標本も紹介します。

<プロフィール>
職歴: 大阪市立大学理学部地球学科助手を経て講師
学歴: 京都大学理学部地質学鉱物学教室卒業、京都大学大学院理学研究科修士課程修了、後期博士課程中途退学、理学博士
専門分野: 鉱物学