数学では無限集合や極限の概念を極めて当たり前のように扱います.無限数列および無限級数の収束ついて定義をしておきます.無限数列 を考えます.この数列において,項の番号 n が限りなく大きくなるとき,がある定まった値 α に限りなく近づくならば,この数列は α に収束するといい,α をこの数列の極限値といいます.また各自然数 n に対してとおいて無限数列を考えたとき,この数列が β に収束するとき,無限級数は β に収束するといいます.極限の概念の導入により,数学はその応用範囲を飛躍的に拡大できます.例えば半径が1の円周の長さについては,その円に外接する4角形の辺の和,8角形の辺の和,16角形の辺の和, と考えていきその数列の極限値を円周の長さと考えることができます.このように曲線の長さや曲面の面積なども極限の概念を用いて初めて正確に扱うことができます.また,加速度運動しているものに対して瞬間的な速度を知るにも極限の概念が必要です.一方,関数を考えるとき最も簡単な関数というのは x に関する整式ですが,例えば sin x のような関数は x の整式で表すことはできません.しかし無限級数を用いれば
と sin x は x の整式の極限として表すことができます.関数は無限級数に表すことにより予想もしなかった全く新しい世界が広がることがあります.この講義では無限や極限について色々な例を通して考えていきたいと思います.そこでは有限の場合に知っている常識が通用しない事がおこります.この講義のなかで少しでも数学の面白さや不思議さが感じてもらえたらと思います.