微分幾何学セミナー(2006年度)

大阪市立大学数学研究所(OCAMI) での事業の一環として、(幾何解析、トポロジー、代数幾何、数理物理、可積分系、情報数理などにも関わる広い意味の)微分幾何学のセミナーを推進します。

連絡先 大仁田 義裕
加藤 信
〒558-8585
大阪府大阪市住吉区杉本3丁目3番138号
大阪市立大学 大学院理学研究科 数物系専攻
TEL 06-6605-2617(大仁田)
06-6605-2616(加藤)
E-mail ohnita@sci.osaka-cu.ac.jp
shinkato@sci.osaka-cu.ac.jp
日時 3月28日(金) 13:30~15:00
講演者(所属) 村瀬元彦(カリフォルニア大学デイヴィス校, 京大数理研)
タイトル Spヒッチン系とSp不変KP系
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト In this informal talk I explain a concrete example of mirror symmetric pairs of complex manifolds that exhibits Strominger-Yau-Zalsow geometric mirror symmetry. These are obtained as a family of Prym varieties and its Fourier-Mukai dual family. The total space of the family is an algebraically completely integrable Hamiltonian system, and the Hamiltonian vector fields are determined by the (seemingly new) Sp-invariant KP flows.
日時 3月14日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 庄田敏宏(佐賀大学・文化教育)
タイトル 極小曲面論と代数曲線論
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト 平坦トーラスへのコンパクトRiemann面からの共形極小はめ込みはJacobi多様体を経由する事から,極小曲面論と代数曲線論には何らかの相関関係がある. この講演では代数曲線論の観点からみた極小曲面論についてを 講演したい.
日時 2月21日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 大津幸男(九州大学・数理学研究院)
タイトル ランダムネットの調和振動子の統計力学について
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト コンパクリーマン多様体を有限個の点でランダムに近似することを考え,ランダムネットと呼ぶことにする.このランダムネットをグラフと考えると離散ラプラシアンが定まるが,適当なスケール変換で連続なラプラシアンに収束する.この講演 では,ネット上の関数の値を力学変数の組とみなし,ディリクレ積分をポテンシャルエネルギーとすることで調和振動子の量子統計力学を定式化し,その幾何学への応用を考察する.
日時 2月7日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 小野肇(東京工業大学・理工)
タイトル トーリック佐々木・アインシュタイン計量の存在と一意性について
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト 二木昭人氏、Guofang Wang 氏との共同研究に基づく。 この講演では、ケーラー多様体の「奇数次元類似」である佐々木多様体上においてアインシュタイン計量の存在と一意性の問題を考え、トーリックで「横断的なファノ性」を持った佐々木多様体上には、佐々木・アインシュタイン 計量が存在し、ある意味で一意である事を紹介する。
日時 2月7日(水) 13:00~14:30
講演者(所属) 高井博司(首都大学東京・大学院理工学研究科・数理情報科学専攻)
タイトル 非可換4次元多様体上のインスタントンモジュライ空間について
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト Atiyah-Hitchin-Singer が始めた可換4次元多様体上のインスタントンモジュライ空間の幾何的性質をConnes-Devois. Violette が展開した非可換微分幾何学のアイデアを使って非可換4次元多様体上に一般化して得られた 結果を紹介する。 この結果は Donaldson が4次元多様体に新微分不変量を発見した様に新不変量を与える可能性を秘めていると共に超弦理論における分配関数や相関関数のテスト空間に応用が期待される。
日時 1月31日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 橋本義武(大阪市立大学・大学院理学研究科)
タイトル "D. Joyce, Configurations in abelian categories" について
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト D. Joyce, Configurations in abelian categories, I-IV, math.AG/0312190, 0503029, 0410267, 0410268 とその周辺の話題について紹介します. Joyce は,On counting special Lagrangian homology 3-spheres, hep-th/9907013 において,Calabi-Yau 3-folds の新しい不変量の存在を予想し,その構成に向けて,Special Lagrangian submanifolds with isolated conical singularities, I-V のシリーズ,つづいて表題の論文のシリーズを発表しました. この不変量は special Lagrangian submanifolds を数え上げるもので,ミラー対称性を通して Donaldson-Thomas 不変量(Casson 不変量の複素版)に対応することが予想されるものです.
日時 1月24日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 小池直之(東京理科大学・理)
タイトル 擬リーマン多様体の複素化とアンチケーラー幾何
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト $C^{\omega}$ 擬リーマン多様体 $(M,g)$ の複素化 $M_g^{\bf c}$ が、$M$ の接バンドル $TM$ の $0$ 切断 ( $=M$ ) の( $g$ から決まるある種の複素構造 $J^g$ を備えた) 近傍として定義されることが知られている。 最初に我々は $C^{\omega}$ 擬リーマン多様体間の$C^{\omega}$ 写像 $f : (M,g)\to(\tilde M,\tilde g)$ の複素化$f^{\bf c} : M_g^{\bf c}\to\tilde M_{\tilde g}^{\bf c}$ を定義し、それが $f$ の正則拡張になっている ことを示す。 次に、 $M_g^{\bf c}$ 上であるアンチケーラー計量 (これを $g_A$ と表す) がある自然な方法で定義されることを説明し、 $C^{\omega}$ 等長はめ込み$f : (M,g)\hookrightarrow(\tilde M,\tilde g)$ に対し、 その複素化 $f^{\bf c} : (M_g^{\bf c},g_A)\to (\tilde M_{\tilde g}^{\bf c},\tilde g_A)$ が$M$ の近傍上で正則等長はめ込みになることを示す。 その他、擬リーマン多様体の各点での双対,アンチケーラー多様体上の複素 測地線に沿う複素ヤコビ場,および,アンチケーラー部分多様体の複素フォーカル半径について説明する。
日時 1月17日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 室谷文祥(大阪市立大学・大学院理学研究科)
タイトル 擬等角調和写像と普遍タイヒミュラー空間
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト 普遍タイヒミュラー空間は、ポアンカレ円板から自身への擬等角写像の同値類から定義される。この講演では、擬等角調和写像と普遍タイヒミュラー空間について知られている結果を紹介します。
日時 12月20日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 濱本直樹(大阪市立大学・大学院理学研究科)
タイトル Kerr-Shild 形式で表されるアインシュタイン方程式の解
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト Kerr-Shild形式で表されるEinstein方程式の解を見つける研究が盛んに進められている。 4次元解についてはKerr-Shild形式を用いた解が完全に知られている。 現在で最も一般化された解は高次元Kerr-NUT-AdSで、この解に よるリーマン曲率テンソルはD型であることが計算により分かる。 もし時間が余れば、ベクトルバンドルを用いないベクトルの平行移動の定義について述べる。
日時 12月6日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 長友康行(九州大学・大学院数理学研究院)
タイトル グラスマン多様体への調和写像
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト リーマン多様体からグラスマン多様体への調和写像に対して、リーマン多様体から球面への極小はめ込みに関する「高橋の定理」を一般化する。 この定理を利用して、コンパクト対称空間からグラスマン多様体へのエネルギー密度が 定数関数となる調和写像を記述する。 また、4次元球面から複素グラスマン多様体へのある一階の微分方程式を満たす調和写像と3次元複素射影空間から複素グラスマン多様体への正則写像を関係付ける「Penrose対応」を 紹介したい。
日時 11月15日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 乙藤隆史(日本大学工学部)
タイトル ラグランジュ部分多様体のなす空間上のHofer計量の測地線
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト シンプレクティック多様体とそのラグランジュ部分多様体 L の組に対し、L とハミルトン同位なラグランジュ部分多様体全体からなる空間を考える。 この上にHofer計量と呼ばれる計量が入り、道に対してその長さが定義される。 講演 では、この長さの極値を与える道の特徴付けを紹介する。
日時 11月8日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 浅田明(元 信州大学)
タイトル 可積分接続とループ群バンドル
場所 第1セミナー室
アブストラクト $A$ が 多様体 $M$ 上の可積分接続であれば $trA^{2p-1}$ は閉形式でその(規格化された)ド・ラム類 $b^p$ は $A$ が $M$ 上で $g^{-1}dg$ と書けるとき整クラス $g$ の対数が $M$ で存在するとき消える。 $g$ の対数が $M$ で存在する為の障害は $g$ から構成されるループ群バンドル $B(g)$ として得られ $b^p, p>1$ は $B(g)$ の曲率 接続 を使って書ける。 $c2$ は所謂 ストリング類で、 $B(g)$ の構造群がループ群の中心拡大にリフト できるための障害である。 $B(g)$ は 無限次元バンドルとしての特性から通常の接続以外に微分方程式に関する接続や非可換接続をもち、これらは$B(g)$ の位相的性質を完全に決める。時間があれば 微分方程式に関する 接続で得られる微分方程式の族の eta 不変量を用いて $b1$ を表すことを説明したい。
日時 10月18日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) David Brander (神戸大理,学振研究員)
タイトル Isometric immersions of space forms as pluriharmonic maps
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト Pluriharmonic maps from an n-dimensional complex manifold into a symmetric space are known to have a loop group formulation, that is they come in families parametererized by a spectral parameter in the unit circle. For the case n=1, it is well known that these have interpretations as special surfaces, depending on the symmetric space involved. In higher dimensions, the applications to special submanifolds appear to be unexplored.
We show that pluriharmonic maps into certain symmetric spaces which satisfy an extra reality condition along a totally real submanifold correspond to isometric immersions with flat normal bundle between space forms, which had already been given a loop group formulation by Ferus and Pedit. Conversely, we can show, using a technique from loop groups, that every such isometric immersion can be extended to such a pluriharmonic map.
日時 10月11日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 坊向伸隆 (大阪市立大学 数学研究所員)
タイトル 実単純リー群と擬ケーラー等質空間について
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト G を連結実リー群とし, H を G の連結閉部分群とする. この時, 商空間 G/H がシンプレクティック等質空間であるとは, G/H 上に不変シンプレクティック形式が存在するときを云う. 特に, それが擬ケーラー等質空間であるとは, G/H 上に そのシンプレクティック形式と両立する不変複素構造が存在するときを云う. この講演の目的は, G が単純である際, シンプレクティック等質空間 G/H が擬ケーラーとなるための必要十分条件を与えることである.
日時 10月4日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 大仁田義裕(大阪市立大学)
タイトル 複素2次超曲面のラグランジュ部分多様体と球面内の等径超曲面
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト この講演は, 中国・清華大学の Hui Ma 副教授との共同研究に基づいています。 講演では、ケーラー多様体内にはめ込まれたラグランジュ部分多様体およびそのハミルトン変形の基本的な性質の説明から始め、アイソモノドロミー の概念によりそのハミルトン変形の特徴付けが与えられます。我々は、階数2のコンパクトエルミート対称空間である複素2次超曲面内のラグランジュ部分多様体に注目します。複素2次超曲面内のラグランジュ部分多様体と単位 標準球面の超曲面幾何学の関係が、ガウス写像を通じて議論されます。我々は、等質等径超曲面の立場から複素2次超曲面内のコンパクト等質ラグランジュ部分多様体、コンパクトリー群のラグランジュ軌道、の分類を与えます。 さらに、我々は球面内の等径超曲面のガウス像として得られる極小ラグランジュ部分多様体のハミルトン安定性を議論し、複素2次超曲面内のハミルトン安定なコンパクト極小ラグランジュ部分多様体の新しい例を得ています。
日時 7月19日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 近藤剛史(京都大学大学院理学研究科)
タイトル Fixed-point property of random groups
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト (井関氏、納谷氏との共同研究) 離散群とそのCAT(0)空間への作用に対して、それが固定点を持つための判定条件が井関-納谷によって得られた。この結果を拡張したものをZukの結果と組合わせることで、密度が1/3より大きい ランダム群が非常に強い固定点性質を持つことが分かることを紹介する。さらに群の非線形性との関係についても触れる。
日時 6月28日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 沢井洋(大阪大学大学院・理学研究科・数学教室)
タイトル 左不変な複素構造をもつコンパクトべき零多様体上の局所共形ケーラー構造について
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト $(M, g, J)$ をコンパクトなエルミート多様体とし, $\Omega$ を $(g, J)$ の基本 $2$ 次形式とする. $d\Omega=\alpha\wedge\Omega$ を満たす閉 $1$ 次形式 $\alpha$ が存在するとき, $(M, g, J)$ を局所共形ケーラー 多様体という. 本講演において, 局所共形ケーラー構造をもつコンパクトべき零多様体を決定する. また, コンパクト可解多様体上の局所共形ケーラー構造についても言及する.
日時 6月14日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 江尻典雄(名城大学理工学部数学科)
タイトル トーラスの極小曲面
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト トーラスの極小曲面の moduli space に関わって現れる複素部分多様体やラグランジュ部分多様体についてその基本的な構成方法を与える。 特に正則曲線を考えた場合に6次元以下のトーラスと8次元以上のトーラスの違いを 知る。
日時 6月7日(水) 16:00~17:30
講演者(所属) 小林亮一(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
タイトル 代数的極小曲面のガウス写像の値分布-ガロア群作用つきのネヴァンリンナ理論へ-
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト 談話会の結果を受けて、不変量 $R$ の解析を、代数的極小曲面を円板に持ち上げて「ガロア群作用つきネヴァンリンナ理論」の枠組みで行う。これは、代数的極小曲面の場合のガウス写像の全分岐値数と除外値数の最良 評価を目指して現在進行中の試みである。
日時 5月19日(金) 14:40~16:10
講演者(所属) 田崎博之(筑波大学大学院数理物質科学研究科)
タイトル 鏡映部分多様体の幾何学
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト 平面曲線の長さを直線との交点数の積分で表現するCroftonの公式をRiemann対称空間の部分多様体の体積を表現する積分公式に拡張することを考える。 平面の場合に直線の役割を演じるものとして、Riemann対称空間 の場合には鏡映部分多様体を採用する。 鏡映部分多様体とは対合的等長変換の不動点集合である。 鏡映部分多様体の集りは対称空間の構造を持ち、さらに不変擬Riemann計量や不変測度を持つ。 擬Riemann計量 に関する余面積公式を定式化し鏡映部分多様体の集りのこれらの性質を利用すると、Croftonの公式をRiemann対称空間の場合に拡張できる。
日時 5月18日(木) 10:40~12:10
講演者(所属) 山田澄生 (東北大学大学院理学研究科)
タイトル 特異点を持つ極小多様体の存在定理について
場所 第2講義室(2068)
アブストラクト 極小多様体の存在を示すために調和写像を使ったのがJ.Douglasのプラトー問題の解法に本質的であった。この講演では幾何学的測度論の枠組みで自然に現れる特異点を持つ極小多様体((M,e,d)極小集合とも呼ばれる)の Douglasの方法に基づいた存在定理に関して、C.Meseとの共同研究で得られた結果を紹介したい。
日時 5月10日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 坊向伸隆 (大阪市立大学 数学研究所員)
タイトル 擬エルミート対称空間と楕円型随伴軌道について
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト 既約擬エルミート対称空間はアフィン対称空間と楕円型随伴軌道の範疇に属する. 故に, それらを楕円型随伴軌道として実現することが可能となる. 本講演では, 擬エルミート対称空間$E_{6(-14)} / (SO^*(10)\times T)$ を 楕円型随伴軌道として実現する.
日時 4月19日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 酒井高司 (大阪市立大学)
タイトル 弱鏡映部分多様体とaustere部分多様体
場所 数学講究室(3040)
アブストラクト 田崎博之氏(筑波大学)、井川治氏(福島高専)との共同研究による。Riemann多様体内の鏡映部分多様体の概念を拡張し、弱鏡映部分多様体の概念を導入する。弱鏡映部分多様体の基本的性質を述べ、austere部分 多様体との関係について説明する。さらに、既約対称空間の線形イソトロピー表現から得られるaustere軌道と弱鏡映軌道の分類を与える。
最終更新日: 2017年4月14日