微分幾何学セミナー(2013年度)

大阪市立大学数学研究所(OCAMI) での事業の一環として、(幾何解析、トポロジー、代数幾何、数理物理、可積分系、情報数理などにも関わる広い意味の)微分幾何学のセミナーを推進します。

連絡先 大仁田 義裕
加藤 信
橋本 要
〒558-8585
大阪府大阪市住吉区杉本3丁目3番138号
大阪市立大学 大学院理学研究科 数物系専攻
TEL 06-6605-2617(大仁田)
06-6605-2616(加藤)
E-mail ohnita@sci.osaka-cu.ac.jp
shinkato@sci.osaka-cu.ac.jp
h-kaname@sci.osaka-cu.ac.jp
日時 3月19日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 本多 正平(九州大学)
タイトル Gromov-Hausdorff収束版Rellich型コンパクト性定理とその応用
場所 数学講究室(共通研究棟301)
アブストラクト 良く知られたRiemann多様体上のRellich型コンパクト性定理のGromov-Hausdorff版とその応用を紹介する. 応用には深谷予想の簡単な証明や,Cheeger等周定数とp-Laplacianの関係等があり,それらについて時間が許す限り解説したい.
日時 3月3日(月) 14:40~16:10
講演者(所属) 山中 仁 (大阪市立大学数学研究所)
タイトル 表現被覆と同変双曲微分同相
場所 数学講究室(共通研究棟301)
アブストラクト 閉多様体上のMorse関数の存在性は広く知られている。その一方で, 不変Morse関数の一般的な存在定理は不変Bott-Morse関数についてのWassermanの結果を除いて知られていない。本講演では表現被覆の概念を導入 し, ある種の同変双曲微分同相の存在が表現被覆の存在を導くことを示す。系として表現被覆の存在が不変Morse関数の存在に対する障碍を与えていることが分かる。 さらに, この結果の逆として,ある種の正則なトーラス作用の 場合には表現被覆の存在が同変双曲微分同相の存在を導くことを示す。
日時 2月19日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 野田 尚廣(名古屋大学&大阪市立大学数学研究所)
タイトル 偏微分方程式の接触幾何学
場所 数学講究室(共通研究棟301)
アブストラクト 本講演では, 偏微分方程式の接触幾何学について述べる. 特に一未知関数に関する偏微分方程式を扱う幾何学的枠組みについて豊富な具体例を出して述べる.
日時 2月13日(木) 10:40~12:10
講演者(所属) 入江 博(東京電機大学)
タイトル Oh の Hamilton 体積最小性予想についての二つの注意
場所 数学講究室(共通研究棟301)
アブストラクト 複素 Euclid 空間の標準的トーラスが Hamilton 微分同相写像による変形の下で体積最小(Hamilton 体積最小)になるか?という Y.-G. Oh による予想がある。 この予想には反例があることが Viterbo により指摘されていたが、 今回の講演では、標準的トーラスのほとんどが Hamilton 体積最小ではないことを示す。 また、複素射影空間の Lagrange トーラスファイバーについての同様の予想にも反例があることを説明したい。
日時 1月30日(木) 16:30~18:00
講演者(所属) サバウ バシレ ソリン(東海大学・札幌キャンバス)
タイトル Some convexity related problems in Finsler geometry
場所 共通研究棟 講究室 (301)
アブストラクト The notion of convexity radius was introduced by J. C. H. Whitehead, but the existence and basic properties were studied only in the analytical and the absolute homogeneous case. We will show the existence of convexity radius for an arbitrary Finsler metric and we study the relation with the injectivity radius. Moreover, we discuss geodesic coordinates and other related topics.
日時 1月29日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 服部 広大(東京大学)
タイトル Taub-NUT変形の一般化
場所 共通研究棟 講究室 (301)
アブストラクト C^2 上には,Taub-NUT 計量と呼ばれる非平坦な超ケーラー計量が存在することが知られている. Taub-NUT 計量はALF計量の最も簡単な例であり,いくつかの構成方法がある. その中でも,超ケーラー商として構成する方法を 一般化することにより,他の4次元ALF計量や,その高次元化に対応する空間を構成することができる. これらは全て超ケーラー多様体であり,自然に正則シンプレクティック多様体と見なすことができる. この講演では,これらの 多様体を正則シンプレクティック多様体と見なしたときに,よく知られたALE空間と双正則シンプレクティック同型となることを説明する.
日時 12月18日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 佐治 健太郎(神戸大学)
タイトル カスプ辺の幾何的不変量
場所 共通研究棟 第一セミナー室(419)
アブストラクト カスプ辺とは定義域と像域の座標変換で (u, v^2, v^3)となる写像芽のことをいう。 カスプ辺は波面と呼ばれるルジャンドル部分多様体のルジャンドルファイブレーションによるの射影の特異点に一番良くあらわれるので波面の特異点を 研究する際には重要である。本セミナーではカスプ辺のいくつかの幾何的不変量について述べる。
日時 12月4日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 森 淳秀(大阪市立大学数学研究所)
タイトル b-Poisson 構造の正則化について
場所 共通研究棟 講究室 (301)
アブストラクト 接触構造のトポロジーは余1階の正則 Poisson 構造のトポロジーと深い関係を 持つ. しかしながら両者について知られていることは多くない. 最も扱いやすい非正則 Poisson 構造として b-Poisson 構造というものがある. それが 2n 次元多様体に与えられると,ある 2n+1 次元の余1階正則 Poisson 多様体を作ることができる. Marcut と Osorno が arXiv:1303.6246 において指摘したのは,この構成が多くの興味深い場合,たとえば S^4 × S^1 の場合に 役に立たないことであった. この件についてちょっとした工夫をお話ししたい.
日時 11月27日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 豊田 哲(鈴鹿工業高専)
タイトル 非線形スペクトルギャップのレーリー商の凸性とグラフ上の最適な距離
場所 共通研究棟 講究室 (301)
アブストラクト 連結なグラフに対する離散ラプラス作用素のスペクトルギャップの非線形の類似物として, 距離空間をターゲットとする非線形スペクトルギャップを定義することができ, 離散群の距離空間への作用についての研究や距離空間の幾何学 における様々な局面でその評価が求められている. この講演では, どのようなタイプの評価が実際に求められていて, その評価のためにはどのような方法があるのか, 特に, 非線形スペクトルギャップの“レーリー商”を(うまい設定の下で) 凸関数とみなす方法についてお話ししたい.
日時 11月13日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 山田 拓身(島根大学)
タイトル 旗多様体上の不定値ケーラー計量の指数と不変複素構造について
場所 数学講究室(共通研究棟301)
アブストラクト Dorfmeister-Guanによりコンパクト等質擬ケーラ多様体は複素多様体として複素トーラスと旗多様体の直積に正則同型となることが示された。また旗多様体には、ケーラー計量以外にも不定値ケーラー計量が 存在することが古くから知られている。本講演では、不定値計量の指数としてどんな場合が現れるかをTルートあるいは組み合わせ的計算法を用いて紹介する。また旗多様体上の不変複素構造と擬ケーラー 計量の分布の関係についても述べる。
日時 10月23日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 本田 淳史(都城高専)
タイトル 凸でない非等方的密度関数とMinkowski空間のCMC曲面
場所 数学講究室(共通研究棟301)
アブストラクト 非等方的平均曲率一定 (CAMC) 曲面は,体積一定なる付加的条件のもとでの非等方的表面エネルギーの臨界点として与えられる. 通常,それらは「凸性条件」と呼ばれる条件を課される. 本講演では 凸性条件を緩めた「非退化」であるクラスに対するCAMC曲面についての結果を紹介する(小磯深幸氏との共同研究).
日時 10月16日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 浦川 肇(東北大学国際教育院)
タイトル Biharmonic immersions に関する B.Y. Chen 予想に向かって
場所 数学講究室(共通研究棟301)
アブストラクト B.Y. Chen 予想とは、「ユークリッド空間内の Biharmonic submanifolds は極小なものに限るであろう」というものである。 さて、ユークリッド空間内の部分多様体の構成方法の一つに、シンプレクティック多様体内のラグランジアン部分多様体、とりわけ、余接束内の閉1-形式のグラフを考える方法がある。 そのグラフがいつ極小となる か、またbiharmonic となるかを議論し、B.Y. Chen 予想に向かって研究の中間報告をしたい。
日時 8月12日(月) (1) 1:30-2:30 (2) 4:00-5:00
講演者(所属) Jason Lotay  (Univ.College London)
タイトル (1) Coassociative conifolds 1: smoothings of cones
(2) Coassociative conifolds 2: singularities and stability
場所 数学講究室(共通研究棟301)
アブストラクト (1) 1:30-2:30 Coassociative conifolds 1: smoothings of cones
Coassociative 4-folds are important examples of calibrated, hence volume-minimizing, submanifolds and are inherently related to Riemannian manifolds with exceptional holonomy group G_2. In this first talk, I will discuss the theory of asymptotically conical coassociative 4-folds, which are smoothings of coassociative cones, including describing their moduli space of deformations. These submanifolds are particularly important for providing local models for resolving singular coassociative 4-folds.
(2) 4:00-5:00 Coassociative conifolds 2: singularities and stability
Singular coassociative 4-folds help us to understand the boundary of the moduli space of smooth coassociative 4-folds and are important from the point of view coassociative fibrations of compact G_2 manifolds. One of the simplest models of a singularity is given by a cone. In this second talk, I will discuss the theory of coassociative conical singularities, with a particular focus on the role of a numerical invariant associated to coassociative cones called the stability index.
日時 7月24日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 石田 政司 (大阪大学)
タイトル 幾何学的フローに沿った多様体の直径評価について
場所 共通研究棟 講究室 (301)
アブストラクト リッチフローに沿って計量を変形するとき, 多様体の直径も変化し得る. 2005年にPeter Toppingは, Perelmanによって導入されたW-汎関数の単調性を応用することで, リッチフローに沿った多様体の直径評価を 証明した. 本講演では, リッチフローを特殊な場合として含む, より一般的な幾何学的フローを考察し, そのフローに沿った多様体の直径評価に関してお話する予定である. 時間が許せば, Qi S. Zhangによる Toppingの結果の精密化に関する最近の仕事(2013年7月)の一般化の試みについてもお話する予定である.
日時 7月17日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 石田 裕昭 (京都大学数理解析研究所, 学振PD)
タイトル 極大なトーラス作用を持つ複素閉多様体について
場所 共通研究棟 講究室 (301)
アブストラクト 連結な(実)多様体MへのコンパクトトーラスGの効果的な作用が極大であるとは, Mのある点xでdim G+dim G_x=dim Mが成り立つときを言う. 複素閉多様体であって, 極大なトーラス作用を持つものの例として, 複素コンパクト トーラス, コンパクトなトーリック多様体, Hopf多様体, Calabi-Eckmann多様体などがあり, また近年, Bosio-Meersseman, Panov-Ustinovskyらによって, Calabi-Eckmann多様体の一般化としてより複雑なトポロジーを持った 非ケーラー多様体の族が構成された. 本講演では, 極大なトーラス作用をもつ複素閉多様体に関して, 講演者が得られた完全な分類についてお話したい.
日時 7月12日(金) 15:00~16:30
講演者(所属) 川上 裕(山口大学)
タイトル 曲面のガウス写像の値分布論的性質について
場所 共通研究棟 第一セミナー室(419)
アブストラクト 複素平面から閉リーマン面への正則写像の除外値数の最良の上限はその閉リーマン面のオイラー数と一致することが知られている. 本講演では,藤本坦孝氏により得られた3次元ユークリッド空間内の完備極小曲面のガウス写像の 除外値数の上限である“4”や,講演者と中條大介氏との共同研究で得ることができた3次元アファイン空間内の弱完備な非固有アファイン波面のラグランジアンガウス写像の除外値数の最良の上限である“3”の幾何学的意味に ついて解説する. また時間が許せば,除外値数の上限以外のガウス写像の値分布論的性質の結果を述べる予定である.
日時 7月3日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 長谷川 大(埼玉大学)
タイトル ホイットニーの傘のケンデリンクの定理
場所 共通研究棟 講究室 (301)
アブストラクト Koenderinkは,3次元ユークリッド空間内の正則曲面において,曲面をある方向から見た輪郭線の曲率と視点方向の法曲率の積でガウス曲率が与えられることを示した. 本講演では,ホイットニーの傘においても同様の関係が 成り立つことを紹介する. 本講演は,埼玉大学の福井敏純氏と神戸大学の佐治健太郎氏との共同研究に基づく.
日時 6月19日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 小林 治(大阪大学)
タイトル 4次元の山辺不変量
場所 共通研究棟 講究室 (301)
アブストラクト 1990年代に C. LeBrun はスピン幾何を用いて山辺不変量の研究で重要な結果を残した.それから15年近く経った今,思う程の進展が無い.LeBrun の結果を再吟味しこの問題の現状を説明したい.
日時 5月29日(水) 14:40~16:10
講演者(所属) 安井 幸則(大阪市立大学)
タイトル CKY対称性と佐々木構造の変形
場所 共通研究棟 講究室 (301)
アブストラクト ブラックホール時空には, 共形キリング矢野(CKY)テンソルと呼ばれる特別な テンソル場で記述される``隠れた対称性”が存在します.
このような対称性はブラックホール時空の分類や時空の(不)安定解析の研究において重要な役割を果たすと考えられています.
本講演の前半部分では, Prog.Theor.Phys. Supple. 189 (2011)に従いCKY対称性に関するこれまでの研究を紹介します. 後半では「トーション」によるCKY対称性の変形について最近の発展を紹介します[arXiv:1207.0247]. 超弦理論や超重力理論の基礎方程式には弦と相互作用する3-形式の場が存在します. 幾何学的には空間のトーションと解釈されるものです. 特に, 超対称性を持つ超重力理論の解を記述するCalabi-Yau多様体や佐々木 多様体のトーション変形の研究は 重要です. CKY対称性を使って, このような多様体に対しても組織的な構成ができることを示します.
日時 4月9日(火)14:40~16:10
講演者(所属) 真瀬 真樹子 (首都大理工/大阪市立大学数学研究所)
タイトル あるK3曲面族の間の対応関係について
場所 共通研究棟 講究室 (301)
アブストラクト 重み付きK3曲面族のPicard格子はBelcastroにより計算され, そのうち幾つかは等長同型であることがわかっている. パート1では重み付きK3曲面族のPicard格子が等長同型ならばそれらの族の一般元には双有理な対応がつくことを 証明する. パート2では非特異トーリックFano 3-foldの中のK3曲面族について議論する. これらの族のPicard格子を計算することができて, しかもそれらは互いに相異なることを示すことができる. したがって, パート1で示した事柄とは 反して, Torelli 型定理により, 非特異トーリックFano 3-foldの中のK3曲面族の間には双有理な対応は存在しないということが示せる. パート3ではある2つの特別なK3曲面族を紹介し, それらのメンバーの間に双有理な対応がある ことを説明する. 最後にbimodal特異点と関連した最近の研究過程について紹介する.
最終更新日: 2017年4月14日